(01)
(∨-導入(∨I)
∨-導入(選言導入)の規則は∨Iと名づけられる.任意の命題が前提として与えられたならば、∨Iは、その命題と任意の命題との選言を結論として導出することを許す。従って、前提としてのPから、P∨Qを結論として、あるいはQ∨Pを結論として導出することができる。またこの場合、Qがどのような命題であるかは問うところではない。明らかに、∨Iの適用においては、一般に結論は前提より遙かに力が弱い。すなわち、Pが真でないときでも、PあるいはQは真でありうる。それにもかかわらず、この規則は、Pが真であるときには、PあるいはQもまた真でなければならない、という意味において受けいれられるのである。たとえば、チャールズI世が斬罪に処せられたということは真である。このことから、彼は斬罪に処せられたかあるいは電気椅子に送られたかであるということが、もちろん彼は電気椅子に送られなかったにもかかわらず、導かれるのである。選言P∨Qは、その選言項の少なくとも1つが真であるならば真である。従って規則∨Iは、真なる前提から偽なる結論へ導くことはありえない(退屈な結論へ導くことはあるとしても)。
(E.J.レモン 著、論理学書、竹尾治一郎・浅野楢英、1973年、29頁)
従って、
(01)により、
(02)
① チャールズI世は斬罪に処せられた。
② チャールズI世は斬罪に処せられたか、または、チャールズI世は電気椅子に送られた。
③ チャールズI世は斬罪に処せられたか、または、チャールズI世は電気椅子に送られなかった。
において、
① ならば、② であり、尚且つ、
① ならば、③ である。
然るに、
(03)
1 (1) P A
1 (2) P∨ Q 1∨I(選言導入の規則)
3 (3) ~P&~Q A
4 (4) P A
3 (5) ~P 3&E
34 (6) P&~P 45&I
4 (7)~(~P&~Q) 36RAA
8 (8) Q A
3 (9) ~Q 3&E
3 8 (ア) Q&~Q 89&I
8 (イ)~(~P&~Q) 3アRAA
1 (ウ)~(~P&~Q) 1478イ∨E
エ (エ) ~P A
オ(オ) ~Q A
エオ(カ) ~P&~Q エオ&I
1 エオ(キ)~(~P&~Q)&
(~P&~Q) 7カ&I
1 エ (ク) ~~Q オキRAA
1 エ (ケ) Q クDN
1 (コ) ~P→Q エケCP(含意の定義)
従って、
(03)により、
(04)
① P
② P∨Q(選言導入の規則)
③ ~P→Q(含意の定義)
において、
① ならば、② であって、尚且つ、
① ならば、③ である。
従って、
(04)により、
(05)
P=チャールズI世は斬罪に処せられた。
Q=チャールズI世は電気椅子に送られた。
であるとして、
① チャールズI世は斬罪に処せられた。
② チャールズI世は斬罪に処せられなかったならば、チャールズI世は電気椅子に送られた。
において、
① ならば、② である。
然るに、
(06)
① チャールズI世は斬罪に処せられた。
② チャールズI世は斬罪に処せられなかったら、チャールズI世は電気椅子に送られた。
というのであれば、
① チャールズI世は斬罪に処せられなかった。
② チャールズI世は斬罪に処せられなかったならば、チャールズI世は電気椅子に送られた。
ということには、ならないため、
③ チャールズI世は電気椅子に送られた。
ということには、ならない。
従って、
(05)(06)により、
(07)
① チャールズI世は斬罪に処せられた。
② チャールズI世は斬罪に処せられなかったならば、チャールズI世は電気椅子に送られた。
において、
① ならば、② である。
としても、「(実質的に、)問題は無い」。
然るに、
(08)
1 (1)∀x{犯人x→男性x&左利きx} A
2 (2)∃x(x=鈴木&~左利きx) A
1 (3) 犯人a→男性a&左利きa 1UE
4(4) a=鈴木&~左利きa A
4(5) a=鈴木 4&E
4(6) ~左利きa 4&E
4(7) ~男性a∨~左利きa 6∨I
4(8) ~(男性a&左利きa) 7ド・モルガンの法則
1 4(9) ~犯人a 38MTT
1 4(ア) a=鈴木&~犯人a 59&I
1 4(イ)∃x(x=鈴木&~犯人x) アEI
12 (ウ)∃x(x=鈴木&~犯人x) 24EE
〔注〕鈴木は、「述語」ではなく「固有名(proper name)」。
従って、
(08)により、
(09)
(ⅰ)∀x{犯人x→男性x&左利きx}。然るに、
(ⅱ)∃x(x=鈴木&~左利きx)。 従って、
(ⅲ)∃x(x=鈴木&~犯人x)。
という「推論」、すなわち、
(ⅰ)すべてのxについて{xが犯人であるならば、xは男性であって、左利きである}。然るに、
(ⅱ)あるxは(鈴木であって、左利きではない)。従って、
(ⅲ)あるxは(鈴木であって、犯人ではない)。
という「推論」、すなわち、
(ⅰ)犯人は、男性であって、左利きである。然るに、
(ⅱ)鈴木は、男性で有り得たとしても、右利きである。従って、
(ⅲ)鈴木は、男性であっても、女性であっても、犯人ではない。
という「推論」は、「妥当」である。
従って、
(08)(09)により、
(10)
1 (1)∀x{犯人x→男性x&左利きx} A
2 (2)∃x(x=鈴木&~左利きx) A
1 (3) 犯人a→男性a&左利きa 1UE
4(4) a=鈴木&~左利きa A
4(5) a=鈴木 4&E
4(6) ~左利きa 4&E
4(7) ~男性a∨~左利きa 6∨I
4(8) ~(男性a&左利きa) 7ド・モルガンの法則
1 4(9) ~犯人a 38MTT
1 4(ア) a=鈴木&~犯人a 59&I
1 4(イ)∃x(x=鈴木&~犯人x) アEI
12 (ウ)∃x(x=鈴木&~犯人x) 24EE
という「述語計算(predicate calculus)」は、明らかに「妥当」である。
従って、
(10)により、
(11)
4(7) ~男性a∨~左利きa 6∨I
という「選言導入(∨I)」は、「妥当」である。
従って、
(08)~(11)により、
(12)
4(7) ~男性a∨~左利きa 6∨I
という「選言導入(∨I)」は、「妥当」でないとするならば、
(ⅰ)犯人は、男性であって、左利きである。然るに、
(ⅱ)鈴木は、いずれにせよ、右利きである。従って、
(ⅲ)鈴木は、犯人ではない。
という「推論」は、「(述語論理としては)妥当」ではない。
従って、
(01)(12)により、
(13)
例えば、
(ⅰ)犯人は、男性であって、左利きである。然るに、
(ⅱ)鈴木は、いずれにせよ、右利きである。従って、
(ⅲ)鈴木は、犯人ではない。
という「推論」が、「(述語論理としても)妥当」である。
とするならば、
V-導入(選言導入)の規則は∨Iと名づけられる.任意の命題が前提として与えられたならば、∨Iは、その命題と任意の命題との選言を結論として導出することを許す。従って、前提としてのPから、PVQを結論として、あるいはQ∨Pを結論として導出することができる。またこの場合、Qがどのような命題であるかは問うところではない。明らかに、VIの適用においては、一般に結論は前提より遙かに力が弱い。すなわち、Pが真でないときでも、PあるいはQは真でありうる。それにもかかわらず、この規則は、Pが真であるときには、PあるいはQもまた真でなければならない、という意味において受けいれられるのである。たとえば、チャールズI世が斬罪に処せられたということは真である。このことから、彼は斬罪に処せられたかあるいは電気椅子に送られたかであるということが、もちろん彼は電気椅子に送られなかったにもかかわらず、導かれるのである。選言P∨Qは、その選言項の少なくとも1つが真であるならば真である。従って規則∨Iは、真なる前提から偽なる結論へ導くことはありえない(退屈な結論へ導くことはあるとしても)。
という「規則」を、「除くこと」は、「出来ない」。
令和7年7月18日、毛利太。
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