(01)
「次の計算」では、
「ド・モルガンの法則」や、「含意の定義」等の「定理(公式)」を用いることにする。
(02)
(ⅰ)
1 (1) ∀x{犯人x→[(田中x∨鈴木x)&~(田中x&鈴木x)]} A
1 (2) 犯人a→[(田中a∨鈴木a)&~(田中a&鈴木a)] 1UE
3 (3) 犯人a A
13 (4) (田中a∨鈴木a)&~(田中a&鈴木a) 23MPP
13 (5) (田中a∨鈴木a) 4&E
13 (6) ~~田中a∨鈴木a 5DN
13 (7) ~田中a→鈴木a 6含意の定義
8 (8) ~田中a A
138 (9) 鈴木a 78MPP
138 (ア) 犯人a&鈴木a 39&I
13 (イ) ~田中a→(犯人a& 鈴木a) 8アCP
1 (ウ) 犯人a→[~田中a→(犯人a& 鈴木a)] 3イCP
エ (エ) 犯人a& ~田中a A
エ (オ) 犯人a エ&E
1 エ (カ) ~田中a→(犯人a& 鈴木a) ウオMPP
エ (キ) ~田中a エ&E
1 エ (ク) 犯人a& 鈴木a カキMPP
1 (ケ) (犯人a&~田中a)→(犯人a& 鈴木a) エクCP
13 (コ) ~(田中a& 鈴木a) 4&E
13 (サ) ~田中a∨~鈴木a コ、ド・モルガンの法則
13 (シ) 田中a→~鈴木a サ含意の定義
1 (ス) 犯人a→(田中a→~鈴木a) 3シCP
セ(セ) 犯人a& 田中a A
セ(ソ) 犯人a セ&E
1 セ(タ) 田中a→~鈴木a スソMPP
セ(チ) 田中a セ&E
1 セ(ツ) ~鈴木a タチMPP
1 セ(テ) 犯人a&~鈴木a セツ&I
1 (ト) (犯人a& 田中a)→(犯人a&~鈴木a) セテCP
1 (ナ) (犯人a&~田中a)→(犯人a& 鈴木a)&
(犯人a& 田中a)→(犯人a&~鈴木a) ケト&I
1 (ニ)∀x{[(犯人x&~田中x)→(犯人x& 鈴木x)]&
[(犯人x& 田中x)→(犯人x&~鈴木x)]} ナUI
(ⅱ)
1 (1)∀x{[(犯人x&~田中x)→(犯人x& 鈴木x)]&
[(犯人x& 田中x)→(犯人x&~鈴木x)]} A
1 (2) (犯人a&~田中a)→(犯人a& 鈴木a)&
(犯人a& 田中a)→(犯人a&~鈴木a) 1UE
1 (3) (犯人a&~田中a)→(犯人a& 鈴木a) 2&E
4 (4) 犯人a A
5 (5) ~田中a A
45 (6) 犯人a ~田中a 45&I
145 (7) 犯人a& 鈴木a 36MPP
145 (8) 鈴木a 7&E
14 (9) ~田中a→鈴木a 58CP
14 (ア) 田中a∨鈴木a 9含意の定義
イ (イ) (犯人a& 田中a)→(犯人a&~鈴木a) 2&E
ウ(ウ) 田中a A
4 ウ(エ) 犯人a& 田中a 4ウ&I
14 ウ(カ) 犯人a&~鈴木a イエMPP
14 ウ(キ) ~鈴木a カ&E
14 (ク) 田中a→~鈴木a ウキCP
14 (ケ) ~田中a∨~鈴木a ク含意の定義
14 (コ) ~(田中a& 鈴木a) ケ、ド・モルガンの法則
14 (サ) (田中a∨ 鈴木a)&~(田中a&鈴木a) アコ&I
1 (シ) 犯人a→[(田中a∨ 鈴木a)&~(田中a&鈴木a)] 4サCP
1 (ス) ∀x{犯人x→[(田中x∨ 鈴木x)&~(田中x&鈴木x)]} シUI
従って、
(02)により、
(03)
① ∀x{犯人x→[(田中x∨鈴木x)&~(田中x&鈴木x)]}
② ∀x{[(犯人x&~田中x)→(犯人x&鈴木x)]&[(犯人x&田中x)→(犯人x&~鈴木x)]}
において、
①=② である。
然るに、
(02)により、
(04)
「同じ計算」を、
「ド・モルガンの法則」や、「含意の定義」の「定理(公式)」を用いないことにする。
(05)
(ⅰ)
1 (1) ∀x{犯人x→[(田中x∨ 鈴木x)&~(田中x&鈴木x)]} A
1 (2) 犯人a→[(田中a∨ 鈴木a)&~(田中a&鈴木a)] 1UE
3 (3) 犯人a A
13 (4) (田中a∨ 鈴木a)&~(田中a&鈴木a) 23MPP
13 (5) 田中a∨ 鈴木a 4&E
6 (6) ~田中a&~鈴木a A
7 (7) 田中a A
6 (8) ~田中a 6&E
67 (9) 田中a&~田中a 78&I
7 (ア) ~(~田中a&~鈴木a) 69RAA
イ (イ) 鈴木a A
6 (ウ) ~鈴木a 6&E
6 イ (エ) 鈴木a&~鈴木a イウ&I
イ (オ) ~(~田中a&~鈴木a) 6エRAA
13 (カ) ~(~田中a&~鈴木a) 57アイオ∨E
キ (キ) ~田中a A
ク (ク) ~鈴木a A
キク (ケ) ~田中a&~鈴木a キク&I
13 キク (コ) ~(~田中a&~鈴木a)&(~田中a&鈴木a) カケ&I
13 キ (サ) ~~鈴木a クコRAA
13 キ (シ) 鈴木a サDN
13 キ (ス) 犯人a&鈴木a 3シ&I
13 (セ) ~田中a→(犯人a&鈴木a) キスCP
1 (ソ) 犯人a→[~田中a→(犯人a&鈴木a)] 3セCP
タ (タ) 犯人a& ~田中a A
タ (チ) 犯人a タ&E
1 タ (ツ) ~田中a→(犯人a&鈴木a) ソチMPP
タ (テ) ~田中a タ&E
1 タ (ト) (犯人a&鈴木a) ツテMPP
1 (ナ)(犯人a&~田中a)→(犯人a&鈴木a) タトCP
13 (ニ) ~(田中a&鈴木a) 4&E
ヌ (ヌ) 田中a A
ネ (ネ) 鈴木a A
ヌネ (ノ) 田中a&鈴木a ヌネ&I
13 ヌネ (ハ) ~(田中a&鈴木a)&(田中a&鈴木a) ニノ&I
13 ヌ (ヒ) ~鈴木a ネハRAA
13 ヌ (フ) 犯人a&~鈴木a 3ヒ&I
13 (ヘ) 田中a→(犯人a&~鈴木a) ヌフCP
1 (ホ) 犯人a→[田中a→(犯人a&~鈴木a)] 3ヘCP
マ(マ) 犯人a& 田中a A
マ(ミ) 犯人a マ&E
1 マ(ム) 田中a→(犯人a&~鈴木a) ホミMPP
1 マ(メ) 田中a マ&E
1 マ(モ) 犯人a&~鈴木a ムメMPP
1 (ヤ) (犯人a&田中a)→(犯人a&~鈴木a) マモCP
1 (ラ) [(犯人a&~田中a)→(犯人a& 鈴木a)]&
[(犯人a& 田中a)→(犯人a&~鈴木a)] ナヤ&I
1 (リ)∀x{[(犯人x&~田中x)→(犯人x& 鈴木x)]&
[(犯人x& 田中x)→(犯人x&~鈴木x)]} ラUI
(ⅱ)
1 (1)∀x{[(犯人x&~田中x)→(犯人x& 鈴木x)]&
[(犯人x& 田中x)→(犯人x&~鈴木x)]} A
1 (2) [(犯人a&~田中a)→(犯人a& 鈴木a)]&
[(犯人a& 田中a)→(犯人a&~鈴木a)] 1UE
1 (3) (犯人a&~田中a)→(犯人a& 鈴木a) 2&E
4 (4) 犯人a A
5 (5) ~田中a A
45 (6) 犯人a&~田中a 45&I
145 (7) 犯人a& 鈴木a 36MPP
145 (8) 鈴木a 7&E
14 (9) ~田中a→ 鈴木a 58CP
ア (ア) ~田中a&~鈴木a A
ア (イ) ~田中a ア&E
14 ア (ウ) 鈴木a 9イMPP
ア (エ) ~鈴木a ア&E
14 ア (オ) 鈴木a&~鈴木a ウエ&I
14 (カ) ~(~田中a&~鈴木a) アオRAA
キ (キ) ~(田中a∨ 鈴木a) A
ク (ク) 田中a A
ク (ケ) 田中a∨ 鈴木a ク∨I
キク (コ) ~(田中a∨ 鈴木a)&(田中a∨ 鈴木a) キケ&I
キ (サ) ~田中a クコRAA
シ (シ) 鈴木a A
シ (ス) 田中a∨ 鈴木a シ∨I
キ シ (セ) ~(田中a∨ 鈴木a)&(田中a∨ 鈴木a) キシ&I
キ (ソ) ~鈴木a シセRAA
キ (タ) ~田中a&~鈴木a サソ&I
14 キ (チ) ~(~田中a&~鈴木a)&(~田中a&~鈴木a) カタ&I
14 (ツ) ~~(田中a∨ 鈴木a) キチRAA
14 (テ) 田中a∨ 鈴木a ツDN
1 (ト) (犯人a& 田中a)→(犯人a&~鈴木a) 2&E
ナ (ナ) 田中a A
4 ナ (ニ) 犯人a& 田中a 4ナ&I
14 ナ (ヌ) 犯人a&~鈴木a トニMPP
14 ナ (ネ) ~鈴木a ヌ&E
14 (ノ) 田中a→~鈴木a ナネCP
ハ (ハ) 田中a& 鈴木a A
ハ (ヒ) 田中a ハ&E
14 ハ (フ) ~鈴木a ノヒMPP
ハ (ヘ) 鈴木a ハ&E
14 ハ (ホ) ~鈴木a&鈴木a フヘ&I
14 (マ) ~(田中a& 鈴木a) ハホRAA
14 (ミ) (田中a∨ 鈴木a)&~(田中a&鈴木a) テマ&I
1 (ム) 犯人a→[(田中a∨ 鈴木a)&~(田中a&鈴木a)] 4ミCP
1 (メ) ∀x{犯人x→[(田中x∨ 鈴木x)&~(田中x&鈴木x)]} ムUI
従って、
(05)により、
(06)
① ∀x{犯人x→[(田中x∨鈴木x)&~(田中x&鈴木x)]}
② ∀x{[(犯人x&~田中x)→(犯人x&鈴木x)]&[(犯人x&田中x)→(犯人x&~鈴木x)]}
において、
①=② である。
従って、
(03)(06)により、
(07)
いずれにせよ、
① ∀x{犯人x→[(田中x∨鈴木x)&~(田中x&鈴木x)]}
② ∀x{[(犯人x&~田中x)→(犯人x&鈴木x)]&[(犯人x&田中x)→(犯人x&~鈴木x)]}
において、
①=② である。
従って、
(07)により、
(08)
「日本語に翻訳」すると、
① すべてのxについて{xが犯人であるならば、[(xは田中であるか、または、鈴木である)が、(xが田中であって、尚且つ、xが鈴木である)ということはない]}。
② すべてのxについて{[(xが犯人であって、xが田中ではない)ならば、(xは犯人であって、xは鈴木であり)]、尚且つ、[(xが犯人であって、xが田中である)ならば、(xは犯人であって、xは鈴木ではない)]}
において、
①=② である。
従って、
(08)により、
(09)
「普通の日本語(日常言語)に翻訳」すると、
①「犯人は、田中か鈴木であるが、田中が犯人で、その上、鈴木も犯人である、ということはない。」
②「犯人が田中でないならば、犯人は鈴木であり、犯人が田中であるならば、犯人は鈴木ではない。」
において、
①=② である。
従って、
(07)(08)(09)により、
(10)
① ∀x{犯人x→[(田中x∨鈴木x)&~(田中x&鈴木x)]}
② ∀x{[(犯人x&~田中x)→(犯人x&鈴木x)]&[(犯人x&田中x)→(犯人x&~鈴木x)]}
という「述語論理(数学語)」は、
③「犯人は、田中か鈴木の、単独犯である。」
という「意味」である。
従って、
(09)(10)により、
(11)
①「犯人は、田中か鈴木であるが、田中が犯人で、その上、鈴木も犯人である、ということはない。」
②「犯人が田中でないならば、犯人は鈴木であり、犯人が田中であるならば、犯人は鈴木ではない。」
③「犯人は、田中か鈴木の、単独犯である。」
において、
①=②=③ である。
然るに、
(12)
「グーグルの生成AI(Gemini)」に、
① ∀x{犯人x→[(田中x∨鈴木x)&~(田中x&鈴木x)]}
② ∀x{[(犯人x&~田中x)→(犯人x&鈴木x)]&[(犯人x&田中x)→(犯人x&~鈴木x)]}
という「述語論理式」を読めるか、どうかと、「質問」したところ、
(13)
次の2つの日本語は、意味としては、同じですか?
①「犯人は、田中か鈴木であるが、田中が犯人で、その上、鈴木も犯人である、ということはない。」
②「犯人が田中でないならば、犯人は鈴木であり、犯人が田中であるならば、犯人は鈴木ではない。」
という風に、「質問」をしたところ、
いいえ、2つの日本語は意味が異なります。
①「犯人は、田中か鈴木であるが、田中が犯人で、その上、鈴木も犯人である、ということはない。」
この文は、犯人が田中であるか鈴木であるかのいずれか一方であることを示していますが、両方が同時に犯人である可能性は否定していません。つまり、共犯はあり得るということです。
②「犯人が田中でないならば、犯人は鈴木であり、犯人が田中であるならば、犯人は鈴木ではない。」
この文は、犯人が田中であるか鈴木であるかの否定的な論理関係を表しています。つまり、どちらか一方が犯人であり、両方が同時に犯人であることも、どちらも犯人ではないことも有り得ません。
従って、
(10)~(13)により、
(14)
「グーグルの生成AI(Gemini)」は、
① ∀x{犯人x→[(田中x∨鈴木x)&~(田中x&鈴木x)]}
② ∀x{[(犯人x&~田中x)→(犯人x&鈴木x)]&[(犯人x&田中x)→(犯人x&~鈴木x)]}
という「述語論理式」も、
①「犯人は、田中か鈴木であるが、田中が犯人で、その上、鈴木も犯人である、ということはない。」
②「犯人が田中でないならば、犯人は鈴木であり、犯人が田中であるならば、犯人は鈴木ではない。」
という「日本語」も、「両方とも、読めない」ということになる。
然るに、
(15)
現在の情報検索や、自然言語処理は、基本的に論理で処理させることを当面諦めて、統計と確率の手法でAIに言語を学習させようとしています。つまり文章の意味はわからなくても、その文章に出てくる既知の単語とその組合せから統計的に推測して、正しそうな回答を導き出そうとしているのです(AI vs. 教科書が読めない子供たち、新井紀子、2018年、122頁)。
(16)
統計と確率なら案外当たる
前述したとおり、現在、自然言語処理で成功した企業は、皆、この失敗から学んでいます。大量の常識の暗記と簡単な論理推論による質疑応答や自動翻訳を実現することに見切りをつけた後、数学に残された別の言葉でこの難題に挑みました。統計と確率です。ただし、統計では論理のような確実な推論は難しい。さらには、見たことがない例に対してどう判断するかは予想がつきません。けれども、結構当たります。そうなのです。論理も理解もないのに、「結構当たる」のです(AI vs. 教科書が読めない子供たち、新井紀子、2018年、127頁)。
従って、
(14)(15)(16)により、
(17)
「人工知能(AI)の研究者」は、「人工知能(AI)」に対して、
① ∀x{犯人x→[(田中x∨鈴木x)&~(田中x&鈴木x)]}
② ∀x{[(犯人x&~田中x)→(犯人x&鈴木x)]&[(犯人x&田中x)→(犯人x&~鈴木x)]}
といい「論理式」を、「理解」させることを、諦めてしまった。
という、ことになる。
令和6年5月28日、毛利太。