(01)
訓読の際に下から必ず返って読む特別の文字がある。これを「返読文字」という。
・・・・・
易 やすし 易欺。 欺き易し。 だましやすい。
難 かたし。難登。 登り難し。 登ることがむずかしい。
・・・・・
(鳥羽田重直、漢文の基礎、1985年、22頁)。
従って、
(02)
易入難出=入り易く、出で難し。
然るに、
(03)
確認ドリル
・・・・・
(8) 入るは易く出づるは難し。 (8)入易出難。
・・・・・
(吹野安、基礎漢文問題精講、1995年、21頁)。
従って、
(02)(03)により、
(04)
① 易入難出=入り易く、出で難し。
② 入易出難=入るは易く、出づるは難し。
従って、
(04)により、
(05)
① 易入難出 ⇒ 易・難 は、「返読文字」である。
② 入易出難 ⇒ 易・難 は、「返読文字」ではない。
然るに、
(06)
to enter is easy.
to exit is hard.
を、Yahoo!で、「翻訳」すると、
入ることは簡単です。
出ることは難しいです。
従って、
(05)(06)により、
(07)
② 入易出難 ⇒ 易・難 は、「返読文字」ではない。
に於いて、
入 = to enter.
出 = to exit.
である。といふ、ことになる。
然るに、
(08)
動詞や形容詞が、そのままの形で、一種の抽象名詞のようにも用いられることは、現代漢語においても、その通常の用法であって、動詞・形容詞の「名物化」・「事物化」などと呼ばれている(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、 289頁)。
(09)
不定詞にはtoのない動詞の原形だけのものもあり、これを原形不定詞(toなし不定詞)という(文英堂、シグマ総合英語、1998年、141頁)。
従って、
(05)~(09)により、
(10)
② 入易出難 ⇒ 易・難 は、「返読文字」ではない。
に於いて、
入 出 は、
動詞の「名物化」・「事物化」であって、「英語」で言へば、「原形不定詞(toなし不定詞)」である。
といふ、ことになる。
従って、
(10)により、
(11)
① 少年易(老)⇒
① 少年(老)易=
① 少年老い易し(朱子)。
に対して、
② 破(山中賊)易⇒
② (山中賊)破易=
② 山中賊は破り易し(王陽明)。
の、
② 破山中賊=山中の賊を破る
の、場合も、
動詞の「名物化」・「事物化」であって、「英語」で言へば、「原形不定詞(toなし不定詞)」である。
といふ、ことになる。
然るに、
(12)
「有」は「もつ」が原義だから「・・・・がある」にあたり「・・・・である」ではない。〔対〕無(中沢希男、同訓異字辞典、1980年、20頁)。
従って、
(13)
「有」は、「持つ(HAVE)」が、原義であって、
「無」は、「持たない(HAVE NO)」が、原義ある。
従って、
(14)
我有老母=我に老母有り(管鮑の交はり)。
の「直訳」は、
I HAVE 老母。
である。
従って、
(15)
_有老母=老母有り。
は、
我有老母=S+V+O(英語の第三文型)
の、
我(SUBJECT)
が、「省略」された「結果」である。
に、違いない。
従って、
(16)
_有老母。
が、
_老母有。
となることは、
I HAVE 老母。
の「語順」が、
I 老母 HAVE。
となるくらひに、「不自然」なことである。といふことに、なる。
従って、
(17)
千里馬+常有=千里の馬は+常に有り(韓愈)。
といふ「語順」は、
I HAVE 老母。
の「語順」が、
I 老母 HAVE。
となるくらひに、「不自然」なことである。といふことに、なる。
然るに、
(18)
◎漢文の基本構造
(1)[主語]-[述語]
孔子聖人〔孔子は聖人なり〕
(旺文社、高校基礎漢和辞典、1984年、846頁)
従って、
(18)により、
(19)
漢文の場合は、
A=名詞
B=名詞
であるとき、
AB=A者B也。
AB=AはBである。
ということに、なる。
加へて、
(20)
名詞的用法[編集]
おもに主語、目的語、補語の役割を果たす。
To play (=Playing) baseball is fun.(野球することは楽しい)
I want to be a scholar.(私は学者になりたい)
My plan is to stay in New York.(ニューヨークに滞在する予定だ)
(不定詞:ウィキペディア)。
従って、
(17)~(20)により、
(21)
千里馬常有=千里の馬は常に有り(韓愈)。
は、
千里馬 is 常有(補語)。
であると、みなすことが、出来る。
従って、
(21)により、
(22)
千里馬常有=千里の馬は常に有り(韓愈)。
は、
千里馬 is 常有=千里馬は「常有」である。
といふ、「意味」である。はずである。
従って、
(23)
千里馬常有=千里の馬は常に有り(韓愈)。
の、「常有」は、「常在」と同様に、「名詞(不定詞)」である。
cf.
2.常在( 名 ) スル いつもそこにあること。いつもそこに居ること。〔大辞林 第三版〕
なほ、
(24)
千里馬常有=千里の馬は常に有り(韓愈)。
が、「倒置」であれば、
千里馬常有之。
千里馬是常有。
千里馬者常有矣。
のやうに、書くものと、思はれる。
cf.
【之】[副詞]こレ
倒置の明示《目的語を強調するために目的語を動詞の前に出す倒置の場合、倒置をしたことを明示するために目的語と動詞の間に副詞「之」を入れる。「こレ」と読むが、特定のものを指示しない》〔注〕倒置の明示には、「之」の代わりに「是」を用いることもある(天野成之、漢文基本語辞典、1999年、142頁)。
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