2016年10月1日土曜日

「書き下し文」が「同じ」になる場合。

(01)
~=不
&=而
である。
従って、
(01)により、
(02)
① 不愛其才而惜其命薄。
であれば、
① ~愛其才&惜其命薄。
である。
然るに、
(03)
任意の表述の否定は、その表述を’~( )’という空所にいれて書くことにしよう(W.O.クワイン、現代論理学入門、1972年、15頁改)。
従って、
(02)(03)により、
(04)
① ~愛其才&惜其命薄。
であれば、
② 不(愛其才)而惜其命薄。
であるか、
③ 不(愛其才而惜其命薄)。
であるかの、いづれかである。
従って、
(04)により、
(05)
① ~愛其才&惜其命薄。
に対して、
① 誰~愛其才&惜其命薄。
であれば、
② 誰不(愛其才)而惜其命薄。
であるか、
③ 誰不(愛其才而惜其命薄)。
であるかの、いづれかである。
然るに、
(06)
① 誰不愛其才而惜其命薄=
② 誰不〔愛(其才)〕而惜(其命薄)⇒
② 誰〔(其才)愛〕不而(其命薄)惜=
② 誰か〔(其の才を)愛さ〕ずして(其の命の薄きを)惜しまん。
(07)
① 誰不愛其才而惜其命薄=
② 誰不〔愛(其才)而惜(其命薄)〕⇒
③ 誰〔(其才)愛而(其命薄)惜〕不=
③ 誰か〔(其の才を)愛して(其の命の薄きを)惜しま〕ざらんや。
従って、
(05)(06)(07)により、
(08)
① 誰不愛其才而惜其命薄。
といふ「漢文」に対して、
② 誰か其の才を愛さずして其の命の薄きを惜しまん。
③ 誰か其の才を愛して其の命の薄きを惜しまざらんや。
といふ、「二通りの、訓読」が対応する。
然るに、
(09)
④ 誰か〔(其の才を)愛して(其の命の薄きを)惜しま〕ざらんや=
④ 誰〔(其才)愛而(其命薄)惜〕不⇒
④ 誰不〔愛(其才)而惜(其命薄)〕=
④ 誰不愛其才而惜其命薄。
(10)
⑤ 誰か(其の才を)愛して〔(其の命の薄きを)惜しま〕ざらんや=
⑤ 誰(其才)愛而〔(其命薄)惜〕不⇒
⑤ 誰愛(其才)而不〔惜(其命薄)〕=
⑤ 誰愛其才而不惜其命薄。
従って、
(08)(09)(10)により、
(11)
③ 誰か其の才を愛して其の命の薄きを惜しまざらんや。
といふ「訓読」に対して、
④ 誰愛其才而惜其命薄。
⑤ 誰愛其才而惜其命薄。
といふ、「二通りの、漢文」が対応する。
然るに、
(12)
① 誰不愛其才而惜其命薄。
② 誰不〔愛(其才)〕而惜(其命薄)。
② 誰不〔愛(其才)而惜(其命薄)〕。
といふ「漢文」は、
① ~P&Q
② ~(P)&Q
③ ~(P&Q)
に相当し、
③ 誰か其の才を愛して其の命の薄きを惜しまざらんや。
④ 誰か〔(其の才を)愛して(其の命の薄きを)惜しま〕ざらんや。
⑤ 誰か(其の才を)愛して〔(其の命の薄きを)惜しま〕ざらんや。
といふ「訓読」は、
③ P&Q~
④ (P&Q)~
⑤ P&(Q)~
に相当する。
従って、
(08)(11)(12)により、
(13)
① 誰不愛其才而惜其命薄。
に対して、「二通りの、解釈」が成立する「所以」は、
① ~P&Q
に対して、
② ~(P)&Q
③ ~(P&Q)
といふ「二通りの、解釈」が成立する「所以」に他ならず、
③ 誰か其の才を愛して其の命の薄きを惜しまざらんや。
に対して、「二通りの、解釈」が成立する「所以」は、
③ P&Q~
に対して、
④ (P&Q)~
⑤ P&(Q)~
といふ「二通りの、解釈」が成立する「所以」に他ならない。
然るに、
(14)
「ドモルガンの法則」により、
③ ~(P&Q)=
③ ~(P)∨~(Q)
であり、尚且つ、
③ ~(P)∨~(Q)
の場合は、
③ ~(P)
③           ~(Q)
③ ~(P)&~(Q)
である時に、「真(本当)」になる。
従って、
(14)により、
(15)
③ 誰不〔愛(其才)而惜(其命薄)〕。
③ 誰~〔愛(其才)&惜(其命薄)〕。
であれば、
③ 誰か其の才を愛さざらんや。
③                           誰か其の命の薄きを惜しまざらんや。
③ 誰か其の才を愛さざらんや。誰か其の命の薄きを惜しまざらんや。
である時に、「真(本当)」になる。
従って、
(15)により、
(16)
③ 誰不〔愛(其才)而惜(其命薄)〕。
であれば、
③ 誰か其の才を愛さざらんや。誰か其の命の薄きを惜しまざらんや。
は、「真(本当)」である。
然るに、
(17)
③ 誰か其の才を愛さざらんや。誰か其の命の薄きを惜しまざらんや。
の場合は、「反語」である。
然るに、
(18)
反語とは、表現されている内容と反対のことを意味する言い方で、多くは疑問形と同じ形であり、けっきょく、肯定している場合は否定に、否定している場合は肯定の内容になる(赤塚忠、 遠藤哲夫、漢文の基礎、45頁、1973年)。
従って、
(16)(17)(18)により、
(19)
① 誰不愛其才而惜其命薄。
といふ「漢文訓読」に、
③ 誰不〔愛(其才)而惜(其命薄)〕。
といふ「括弧」があるならば、
① 誰もが其の才を愛し、誰もが其の命の薄きを惜しむ。
といふ、「意味」になる。
然るに、
(20)
誰がその(詩人賈島の)才能を愛さず、賈島の命の短いことを惜しまないことがあろうか、その才能と短命を愛惜した。
(多久弘一、多久の漢文公式110、1988年、85頁)
従って、
(19)(20)により、
(21)
① 誰不愛其才而惜其命薄。
といふ「漢文」には、少なくとも、
① 誰~(愛其才&惜其命薄)。
といふ「括弧」が、無ければならない。
平成28年10月01日、毛利太。
―「関連記事」―
「漢文の補足構造」としての「括弧」の付け方(http://kannbunn.blogspot.com/2016/09/blog-post_22.html)。

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