2015年3月10日火曜日

矣(完了)・焉(継続)。

(01)
[り]ら り り る れ れ
「接続]四段の已然形およびサ変の未然形に付く。
[意味]① 完了 ある動作・作用が、時間に関係なく終了した意を表す。<・・・・・・タ>
(代々木ライブラリー、受験国文法、1980年、119・120頁)
然るに、
(02)
矣<完了>[例]不幸短命死矣。[読み]不幸短命にして死せり。[訳]〔顔回は〕不幸にも死んでしたった。<論語・雍也>
(天野成之、漢文基本語辞典、1999年、17頁)
従って、
(01)(02)により、
(03)
=死せ(サ変・未然形)
であれば、
矣(完了)=り(完了
である。
然るに、
(04)
燭滅せ
燭滅―ろうそくが消えてしまいました。断定をあらわす終助詞。
(中西清、初歩の漢文、1989年、27頁)
従って、
(04)により、
(05)
(断定)=(完了)
であるものの、
り(断定)=り(完了
は、矛盾する。
然るに、
(06)
[ぬ]な に ぬ ぬる ぬれ ね
[接続]動詞、形容詞および助動詞の連用形に付く。
[意味]① 完了 ある動作・作用が、時間に関係なく終了した意を表す。<・・・・・・タ。・・・・・・てしまう。・・・・・・てしまった。>
(代々木ライブラリー、受験国文法、1980年、110頁)
従って、
(06)により、
(07)
やん(マ行四段・連用形・撥音便)ぬる(完了・連体形)かな(終助詞・詠嘆)=終わっ・てしまった・なあ。
である。
然るに、
(08)
[慣用表現]
1 已乎[読み]やんヌルかな。[訳]もう駄目だ、もうおしまいだ。<陶潜、帰去来辞>
従って、
(07)(08)により、
(09)
乎=やん(マ行四段・連用形・撥音便)ぬる完了・連体形)かな(終助詞・詠嘆)。
であれば、
完了)=完了
であっても、問題は無い。
従って、
(03)(09)により、
(10)

乎。
に於いて、
完了
であっても、問題は無い。
然るに、
(11)
[慣用表現]
2 而已[読み]のみ ⇒ 九ページ。
[例]夫子之道、忠恕而已矣。[読み]夫子の道は、忠恕のみ。[訳]先生の道は、真心と思いやりに外ならない。<論語・里仁>
(天野成之、漢文基本語辞典、19・9頁)
然るに、
(12)
先生の道は、忠恕にして、終はりで、完了
といふことで、
夫子之道は、忠恕のみ。
と「訓読」してゐるのであれば、
而已
に於いて、
完了
であっても、問題は無い。
従って、
(10)(12)により、
(13)
死矣。
乎。
而已
に於いて、
完了
であっても、問題は無い。
従って、
(13)により、
(14)
 は、基本的に、
完了
を意味し、その、
完了
といふ意味から、例へば、
② 確信
③ 決意
等の意味が、派生すると、思はれる。
(15)
并力西向、秦必破矣=力を并せて西に向はば秦必ず破れん。
であれば、
并力西向、秦必破矣=力を并せて西に向ったその時点で、秦の敗北は完了してゐる(のも同然である)。
といふ「気分(確信)」を、
秦必破矣 の、 は、表してゐると、思はれる。
(16)
有赴東海而死矣=東海に赴きて死する有るのみ。
であれば、
有赴東海而死矣=東海に赴ひて、死んで完了(、それ以外は無い)。
といふ「気分(決意)」を、
而死矣 の、 は、表してゐると、思はれる。
(17)
本当にさうかどうかは別にして、とにかく、何となく、そんな気がする。
然るに、
(18)
には継続・進行を表わす作用がある。これは完了を表わすのと対照的である。
(布施郁三、中国古典に於ける矣・焉の解釈、1984年、37頁)
従って、
(18)により、
(19)
先世避秦時乱率妻子邑人、来此絶境不復出=先世秦時の乱を避けて、妻子邑人を率ゐて、この絶境に来たり、復た出でず。
であれば、
不復出 の、焉 は、
来此絶境不復出焉=この絶境に来てからは、二度とここから出ない状態が、続いてゐる
といふ「継続」を表してゐる。と、思はれる。
(20)
十室之邑、必有忠信如丘者=十室の邑、必ず忠信丘のごとき者有らん。
であれば、
有忠信如丘者 の、焉 は、
有忠信如丘者焉=良心と約束を守ることでは、孔子ぐらいの者は、昔から絶えず、ゐ続けてゐる
といふ「継続」を表してゐる。と、思はれる。
然るに、
(21)
徂徠は、「也」は「ナリ」、「矣」は「ケル」、「焉」は「ケレ」となおしてみればよいと説明している。
(二畳庵主人、漢文法基礎、1984年、158頁)
従って、
(21)により、
(22)
少なくとも、荻生徂徠が書いた、
① ・ ・ ・ ・ ・ ・ 矣。
② ・ ・ ・ ・ ・ ・ 焉。
に関しては、
① 完了
② 継続
といふ「意味」は無い。
平成27年03月10日、毛利太。

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