(01)
まったく【全く】(副)〔雅語。「またく」の強調形〕そうとしか形容できないほど強く感じることを表す。「―〔=いかなる意味においても・(全然)〕忘れていた・―〔=実に〕つらい話だ・―〔=お世辞抜きで〕うまいね・これは ― の幸運だった」〔元来は、否定表現を伴った〕
(新明解国語辞典 第四版、1991年、1222頁)
従って、
(01)により、
(02)
まったく【全く】(副)は、〔元来は、否定表現を伴った〕。
然るに、
(03)
たえて【絶えて】〔副〕①〔下に打消の語を伴って〕まったく(~ない)。全然(~ない)。
(古語林、1997年、802頁)
加へて、
(04)
(三)叙述の副詞(副詞の呼応)あるきまった語と呼応して意味の述べ方を助けるもの。
(1)打消(禁止)と呼応するもの。
― 中略、―
心やましきさまにたえて(ゼンゼン・マッタク)ことづてもなし(蜻蛉日記)
(代々木ゼミ方式 受験国文法、1980年、17・18頁)
従って、
(02)(03)(04)により、
(05)
「全く=全然=絶えて」は、「打消(禁止)」と呼応する「呼応の副詞」である。
然るに、
(06)
① 少しも食べる。
② 少しは食べる。
③ 少しも食べない。
に於いて、
① 少しも食べる。
といふ「日本語」は、無い。
従って、
(05)(06)により、
(07)
③ 少しも食べない。
に於ける、
③ 少しも
は、「打消(禁止)」と呼応する「呼応の副詞」である。
従って、
(05)(07)により、
(08)
③ 絶不(食)⇒
③ 絶へて(食せ)不=
③ 少しも(食べ)ない。
に於いて、
③ 絶
は、
③ 不
に「係ってゐる」と、すべきである。
然るに、
(09)
③ 不(食)⇒
③ (食せ)不=
③ (食べ)ない。
に於いて、
③ 不
は、
③ 食
に「係ってゐる」と、すべきである。
従って、
(08)(09)により、
(10)
③ 絶不(食)⇒
③ 絶へて(食せ)不=
② 少しも(食べ)ない。
に於いて、
③ 絶 は 不 に「係ってゐて」、
③ 不 は 食 に「係ってゐる」。 が故に、
③ 絶不 は 食 に「係ってゐる」と、すべきである。
従って、
(10)により、
(11)
④ 何不(食)⇒
④ 何ぞ(食らは)不る=
④ どうして (食べ)ないのか。
に於いて、
④ 何不 は 食 に「係ってゐる」と、すべきである。
然るに、
(12)
【盍】コウ(カフ)②〔盍 ・ ・ ・ ・ ・ ・〕(再読文字)「なんゾ ・ ・ ・ ・ ・ ・ざル」と読み、「どうして ・ ・ ・ ・ ・ ・ しないのか、 ・ ・ ・ ・ ・ ・ すればよいではないか」の意。「何不 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」と同じで「何不カフ」の二音が「盍カフ・コウ」の一音につまったもので「蓋」と同じに用いる(旺文社、高校基礎漢和辞典、1984年、558頁)。
従って、
(11)(12)により、
(13)
④ 盍(食)⇒
④ 何ぞ(食らは)不る=
④ どうして (食べ)ないのか。
に於いて、
④ 盍=何不 は 食 に「係ってゐる」と、すべきである。
従って、
(10)~(13)により、
(14)
④ なんぞ・ざる=何不=盍
のやうに、
③ たへて・ず =絶不=囗
に相当する、
③ 囗
といふ「漢字」が有るのであれば、
③ 囗
といふ「漢字」は、「盍」と同じく、「再読文字」であるが、
③ 絶不=囗
に相当する、
③ 囗
といふ「漢字」は無い。
然るに、
(15)
(4)当然(命令)と呼応するもの。
なんぢまさに知るべし。(オ前ハ当然知ラナケレバナラナヌ)(今昔物語)
徳をつかんと思はばすべからくまづその心づかいを修業すべし(徳ヲツモウト思ッタラ当然ナスベキコトトシテ、マズソノ心ノ使イ方ヲ修業シナケレバナラヌ)(徒然草)
(代々木ゼミ方式 受験国文法、1980年、19頁)
従って、
(14)(15)により、
(16)
⑤ マサニ ・ ・ ・ ・ ・ スベシ。
⑥ スベカラク ・ ・ ・ ・ ・ スベシ。
に相当する、
⑤ 囗
⑥ 囗
といふ「漢字」があれば、それらの「漢字」は、「日本語」から見れば、
⑤ 囗=呼応の副詞+助動詞。
⑥ 囗=呼応の副詞+助動詞。
といふ「形」をしてゐることになる。
然るに、
(17)
7 再読文字
当 まさニ ・ ・ ・ ・ ・ スベシ。
宜 よろシク ・ ・ ・ ・ ・ スベシ。
(鳥羽田重直、漢文の基礎、1985年、25頁改)
(1)「未」「將」「當」「應」「宜」「須」「猶」「盍」などの諸字は、一字でありながら、最初副詞によみ、次に動詞あるいは助動詞によむのが例になっている。
(中沢希男、 渋谷玲子、漢文訓読の基礎、90頁)
従って、
(16)(17)により、
(18)
「日本語」から見たとき、「再読文字」は、その「意味」として、「呼応の副詞」を含んでゐる。
平成27年11月23日、毛利太。
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