2025年11月27日木曜日

「質料含意の定義」と「パラドックス」と「ド・モルガンの法則」。

(01)
質料含意のパラドックス
「質料含意のパラドックス (Paradoxes of Material Implication)」とは、古典論理学における「実質含意(質料含意)」の定義が、日常言語で使われる「もし~ならば、…」という条件文の直感的な意味と乖離していることによって生じる、一見すると矛盾しているように見える命題群のことです。
(02)
パラドックスの内容
古典論理学では、「PならばQである (P→ Q)」という実質含意は、前件Pが真で後件Qが偽の場合にのみ偽となり、それ以外の場合は常に真であると定義されます。この定義により、次のような直感に反する結論が導かれます。
偽の命題は、いかなる命題をも含意する(偽の前件のパラドックス)。
例:「もし月がチーズでできていたなら、東京は日本の首都である」は真の命題とみなされる。なぜなら、前件「月がチーズでできている」が偽だからである。
真の命題は、いかなる命題によっても(含意される)。
例:「もし私の犬が吠えるなら、今エクアドルで雨が降っているか、降っていないかのどちらかだ」は真の命題とみなされる。なぜなら、後件「今エクアドルで雨が降っているか、降っていないかのどちらかだ」が常に真だからである。
(03)
なぜパラドックスと呼ばれるのか
これらの例では、前件と後件の間に意味的な関連性が全くないにもかかわらず、論理的な推論としては「真」となってしまいます。日常会話での「もし~ならば、…」という表現には、通常、原因と結果、あるいは論理的な関連性(必然性)が含まれていると直感的に期待されるため、形式論理学の厳密な定義との間に**乖離(かいり)**が生じ、これが「パラドックス(逆説)」と感じられる原因となっています。 この問題を解決するために、C.I.ルイスによる厳密含意(必然的な関連性を導入する様相論理学)や、適切さの論理(前件と後件の関連性を要件とする論理体系)などが提案されてきました。
(生成AI:グーグルGemini)。
然るに、
(04)
(a)
1    (1)    P→ Q   A
 2   (2)    P&~Q   A
 2   (3)    P      2&E
12   (4)       Q   13MPP
 2   (5)      ~Q   2&E
12   (6)    Q&~Q   45
1    (7)  ~(P&~Q)  26RAA
  8  (8) ~(~P∨ Q)  A
   9 (9)   ~P      A
   9 (ア)   ~P∨ Q   ∨I
  89 (イ) ~(~P∨ Q)&
          (~P∨ Q)  8ア&I
  8  (ウ)  ~~P      9イRAA
  8  (エ)    P      ウDN
    オ(オ)       Q   A
    オ(カ)   ~P∨ Q   オ∨I
  8 オ(キ) ~(~P∨ Q)&
          (~P∨ Q)  8カ&I
  8  (ク)      ~Q   オキRAA
  8  (ケ)    P&~Q   エク&I
1 8  (コ)  ~(P&~Q)&
           (P&~Q)  7ケ&I
1    (サ)~~(~P∨ Q)  8コRAA
1    (シ)   ~P∨ Q   サDN
(b)
1     (1) ~P∨ Q   A
 2    (2)  P&~Q   A
  3   (3) ~P      A
 2    (4)  P      2&E
 23   (5) ~P&P    34&I
  3   (6)~(P&~Q)  25RAA
   7  (7)     Q   A
 2    (8)    ~Q   2&E
 2 7  (9)  Q&~Q   78&I
   7  (ア)~(P&~Q)  29RAA
1     (イ)~(P&~Q)  1367ア∨E
    ウ (ウ)  P      A
     エ(エ)    ~Q   A
    ウエ(オ)  P&~Q   ウエ&I
1   ウエ(カ)~(P&~Q)&
          (P&~Q)  イオ&I
1   ウ (キ)   ~~Q   エカRAA
1   ウ (ク)     Q   キDN
1     (ケ)  P→ Q   ウクCP
従って、
(04)により、
(05)
①   P→ Q
② ~(P&~Q)
③  ~P∨ Q
において、
①=②=③ である。
従って、
(05)により、
(06)
「日本語」で書くと、
① Pならば、Qである。
②(PであってQでない)ということはない。
③ Pでないか、または、Qである。
において、
①=②=③ であるが、このとき、
  ②=③ は、「ド・モルガンの法則」であって、
①=  ③ は、「(質料)含意の定義」である。
然るに、
(07)
① Pならば、Qである。
②(PであってQでない)ということはない。
において、
①=② であることは、「直観的に、正しく」、
②(PであってQでない)ということはない。
③ Pでないか、または、Qである。
において、
②=③ であることも、「直観的に、正しい」。
然るに、
(05)(06)により、
(08)
1(1)~P   A
1(2)~P∨Q 1∨I
1(3) P→Q 2含意の定義
従って、
(02)(08)により、
(09)
P=月はチーズで出来ている(偽)。
Q=日本の首都は北京である(偽)。
であるとして、
① もし月がチーズで出来ていたならば、日本の首都は北京である。
という「命題」は「真」である。
然るに、
(10)
1  (1)   ~P       A
1  (2)   ~P∨Q     1∨I
1  (3)    P→Q     2含意の定義
   (4)   ~P→(P→Q) 13CP
 5 (5)   ~P& P    A
 5 (6)   ~P       5&E
 5 (7)       P→Q  46MPP
 5 (8)       P    5&E
 5 (9)         Q  78MPP
   (ア)  (~P&P)→Q  59CP
  イ(イ) ~(P∨~P)    A
  イ(ウ)  (~P&P)    ウ、ド・モルガンの法則
  イ(オ)         Q  アウMPP
   (カ) ~(P∨~P)→Q  イオCP
   (キ)~~(P∨~P)∨Q  カ含意の定義
   (ク)  (P∨~P)∨Q  キDN
   (〃)  ( 排中律 )∨Q  キDN
   (〃)  ( 恒真式 )∨Q  キDN
従って、
(08)(09)(10)により、
(11)
P=月はチーズで出来ている(偽)。
Q=日本の首都は北京である(偽)。
であるとして、
② もし(月がチーズで出来ているか、または、月がチーズで出来ていない)ということが無いならば、日本の首都は北京である。
という「命題」は「」である。
然るに、
(12)
② もし(月がチーズで出来ているか、または、月がチーズで出来ていない。)
という「命題」は、「排中律(恒真式)」である。
従って、
(12)により、
(13)
②   (月がチーズで出来ているか、または、月がチーズで出来ていない)ということが無い
ということは、「有り得ない」。
従って、
(11)(12)(13)により、
(14)
② もし(月がチーズで出来ているか、または、月がチーズで出来ていない)ということが無いならば、日本の首都は北京である。
という「命題」は「」であるとしても、
②   (月がチーズで出来ているか、または、月がチーズで出来ていない)ということが無い
ということは、「有り得ない」。
という「理由」により、
② 日本の首都は北京である。
ということも、「(それが偽である限り、)有り得ない」。
従って、
(09)(10)(14)により、
(15)
① もし月がチーズで出来ていたならば、日本の首都は北京である。
という「命題」は「(質料含意として)」である。
という「言い方」は、「実質的」に、
① もし月がチーズで出来ていたならば、日本の首都は北京である(が、ただし月はチーズではない)。
という「命題」が「」である。
という「意味」になる。
然るに、
(16)
① もし月がチーズで出来ていたならば、日本の首都は北京である(が、ただし月はチーズではない)。
という「命題」が「真」であるとしても、「パラドックス」には、ならない
然るに、
(17)
1 (1)  ~(Q∨~Q)  A
 2(2)    Q      A
 2(3)    Q∨~Q   2∨I
12(4)  ~(Q∨~Q)&
        (Q∨~Q)  13&I
1 (5)   ~Q      24RAA
1 (6)    Q∨~Q   5∨I
  (7) ~~(Q∨~Q)  16RAA
  (8)    Q∨~Q   7DN(は排中律)
  (9)~P∨(Q∨~Q)  8∨I
  (ア) P→(Q∨~Q)  9含意の定義
  (イ) P∨(Q∨~Q)  A
  (ウ)~P→(Q∨~Q)  イ含意の定義
  (エ) P→(Q∨~Q)&
     ~P→(Q∨~Q)  アウ&I
  (〃)~P∨(Q∨~Q)&
      P∨(Q∨~Q)  9イ&I
  (〃)~P∨( 排中律 )&
      P∨( 排中律 )  9イ&I
従って、
(02)(17)により、
(18)
P=月はチーズで出来ている(偽)。
Q=今エクアドルで雨が降っている。
として、
① 月がチーズで出来ている ならば、(今エクアドルで雨が降っているか、または、今エクアドルで雨が降っていない)。
② 月がチーズで出来ていないならば、(今エクアドルで雨が降っているか、または、今エクアドルで雨が降っていない)。
という「命題」は、両方とも、「真(トートロジー)」である。
然るに、
(19)
① 月がチーズで出来ている ならば、(今エクアドルで雨が降っているか、または、今エクアドルで雨が降っていない)。
② 月がチーズで出来ていないならば、(今エクアドルで雨が降っているか、または、今エクアドルで雨が降っていない)。
という「命題」は、両方とも、「(同時に)真」である。
ということは、要するに、
③ 月がチーズであろうと、月がチーズなかろうと、いずれにせよ、(今エクアドルで雨が降っているか、または、今エクアドルで雨が降っていない)。
ということに、「等しい」。
然るに、
(02)(19)により、
(20)
③ 月がチーズであろうと、月がチーズでなかろうと、いずれにせよ、(今エクアドルで雨が降っているか、または、今エクアドルで雨が降っていない)。
ということは、「当然」であって、「パラドックス」ではない
従って、
(16)(20)により、
(21)
① もし月がチーズで出来ていたならば、日本の首都は北京である(が、ただし月はチーズではない)。
③ 月がチーズであろうと、月がチーズでなかろうと、いずれにせよ、(今エクアドルで雨が降っているか、または、今エクアドルで雨が降っていない)。
という「命題」は、両方とも、「パラドックス」ではない
従って、
(01)~(21)により、
(22)
質料含意のパラドックス
「質料含意のパラドックス (Paradoxes of Material Implication)」とは、古典論理学における「実質含意(質料含意)」の定義が、日常言語で使われる「もし~ならば、…」という条件文の直感的な意味と乖離していることによって生じる、一見すると矛盾しているように見える命題群のことです。
とは言うものの、
(a)
1    (1)    P→ Q   A
 2   (2)    P&~Q   A
 2   (3)    P      2&E
12   (4)       Q   13MPP
 2   (5)      ~Q   2&E
12   (6)    Q&~Q   45
1    (7)  ~(P&~Q)  26RAA
  8  (8) ~(~P∨ Q)  A
   9 (9)   ~P      A
   9 (ア)   ~P∨ Q   ∨I
  89 (イ) ~(~P∨ Q)&
          (~P∨ Q)  8ア&I
  8  (ウ)  ~~P      9イRAA
  8  (エ)    P      ウDN
    オ(オ)       Q   A
    オ(カ)   ~P∨ Q   オ∨I
  8 オ(キ) ~(~P∨ Q)&
          (~P∨ Q)  8カ&I
  8  (ク)      ~Q   オキRAA
  8  (ケ)    P&~Q   エク&I
1 8  (コ)  ~(P&~Q)&
           (P&~Q)  7ケ&I
1    (サ)~~(~P∨ Q)  8コRAA
1    (シ)   ~P∨ Q   サDN
(b)
1     (1) ~P∨ Q   A
 2    (2)  P&~Q   A
  3   (3) ~P      A
 2    (4)  P      2&E
 23   (5) ~P&P    34&I
  3   (6)~(P&~Q)  25RAA
   7  (7)     Q   A
 2    (8)    ~Q   2&E
 2 7  (9)  Q&~Q   78&I
   7  (ア)~(P&~Q)  29RAA
1     (イ)~(P&~Q)  1367ア∨E
    ウ (ウ)  P      A
     エ(エ)    ~Q   A
    ウエ(オ)  P&~Q   ウエ&I
1   ウエ(カ)~(P&~Q)&
          (P&~Q)  イオ&I
1   ウ (キ)   ~~Q   エカRAA
1   ウ (ク)     Q   キDN
1     (ケ)  P→ Q   ウクCP
(c)
1  (1)   ~P       A
1  (2)   ~P∨Q     1∨I
1  (3)    P→Q     2含意の定義
   (4)   ~P→(P→Q) 13CP
 5 (5)   ~P& P    A
 5 (6)   ~P       5&E
 5 (7)       P→Q  46MPP
 5 (8)       P    5&E
 5 (9)         Q  78MPP
   (ア)  (~P&P)→Q  59CP
  イ(イ) ~(P∨~P)    A
  イ(ウ)  (~P&P)    ウ、ド・モルガンの法則
  イ(オ)         Q  アウMPP
   (カ) ~(P∨~P)→Q  イオCP
   (キ)~~(P∨~P)∨Q  カ含意の定義
   (ク)  (P∨~P)∨Q  キDN
   (〃)  ( 排中律 )∨Q  キDN
   (〃)  ( 恒真式 )∨Q  キDN
(d)
1 (1)  ~(Q∨~Q)  A
 2(2)    Q      A
 2(3)    Q∨~Q   2∨I
12(4)  ~(Q∨~Q)&
        (Q∨~Q)  13&I
1 (5)   ~Q      24RAA
1 (6)    Q∨~Q   5∨I
  (7) ~~(Q∨~Q)  16RAA
  (8)    Q∨~Q   7DN(は排中律)
  (9)~P∨(Q∨~Q)  8∨I
  (ア) P→(Q∨~Q)  9含意の定義
  (イ) P∨(Q∨~Q)  A
  (ウ)~P→(Q∨~Q)  イ含意の定義
  (エ) P→(Q∨~Q)&
     ~P→(Q∨~Q)  アウ&I
  (〃)~P∨(Q∨~Q)&
      P∨(Q∨~Q)  9イ&I
  (〃)~P∨( 排中律 )&
      P∨( 排中律 )  9イ&I
という「計算」の「意味」を考える限り
①「もし月がチーズで出来ていたなら、北京が日本の首都である。」という「命題」も、
③「もし月がチーズで出来ているならば、(今エクアドルで雨が降っているか、または、今エクアドルで雨が降っていない)。」という「命題」も、
という「命題」も、両方とも、「パラドックス」である。
ということには、ならない
すなわち、
(21)(22)により、
(23)
もう一度、述べるものの、
① もし月がチーズで出来ていたならば、日本の首都は北京である(が、ただし月はチーズではない)。
③ 月がチーズであろうと、月がチーズでなかろうと、いずれにせよ、(今エクアドルで雨が降っているか、または、今エクアドルで雨が降っていない)。
という「命題」は、両方とも、「パラドックス」ではない

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