(01)
質料含意のパラドックス
「質料含意のパラドックス (Paradoxes of Material Implication)」とは、古典論理学における「実質含意(質料含意)」の定義が、日常言語で使われる「もし~ならば、…」という条件文の直感的な意味と乖離していることによって生じる、一見すると矛盾しているように見える命題群のことです。
(02)
パラドックスの内容
古典論理学では、「PならばQである (P→ Q)」という実質含意は、前件Pが真で後件Qが偽の場合にのみ偽となり、それ以外の場合は常に真であると定義されます。この定義により、次のような直感に反する結論が導かれます。
偽の命題は、いかなる命題をも含意する(偽の前件のパラドックス)。
例:「もし月がチーズでできていたなら、東京は日本の首都である」は真の命題とみなされる。なぜなら、前件「月がチーズでできている」が偽だからである。
真の命題は、いかなる命題によっても(含意される)。
例:「もし私の犬が吠えるなら、今エクアドルで雨が降っているか、降っていないかのどちらかだ」は真の命題とみなされる。なぜなら、後件「今エクアドルで雨が降っているか、降っていないかのどちらかだ」が常に真だからである。
(03)
なぜパラドックスと呼ばれるのか
これらの例では、前件と後件の間に意味的な関連性が全くないにもかかわらず、論理的な推論としては「真」となってしまいます。日常会話での「もし~ならば、…」という表現には、通常、原因と結果、あるいは論理的な関連性(必然性)が含まれていると直感的に期待されるため、形式論理学の厳密な定義との間に**乖離(かいり)**が生じ、これが「パラドックス(逆説)」と感じられる原因となっています。
この問題を解決するために、C.I.ルイスによる厳密含意(必然的な関連性を導入する様相論理学)や、適切さの論理(前件と後件の関連性を要件とする論理体系)などが提案されてきました。
(生成AI:グーグルGemini)。
然るに、
(04)
(a)
1 (1) P→ Q A
2 (2) P&~Q A
2 (3) P 2&E
12 (4) Q 13MPP
2 (5) ~Q 2&E
12 (6) Q&~Q 45
1 (7) ~(P&~Q) 26RAA
8 (8) ~(~P∨ Q) A
9 (9) ~P A
9 (ア) ~P∨ Q ∨I
89 (イ) ~(~P∨ Q)&
(~P∨ Q) 8ア&I
8 (ウ) ~~P 9イRAA
8 (エ) P ウDN
オ(オ) Q A
オ(カ) ~P∨ Q オ∨I
8 オ(キ) ~(~P∨ Q)&
(~P∨ Q) 8カ&I
8 (ク) ~Q オキRAA
8 (ケ) P&~Q エク&I
1 8 (コ) ~(P&~Q)&
(P&~Q) 7ケ&I
1 (サ)~~(~P∨ Q) 8コRAA
1 (シ) ~P∨ Q サDN
(b)
1 (1) ~P∨ Q A
2 (2) P&~Q A
3 (3) ~P A
2 (4) P 2&E
23 (5) ~P&P 34&I
3 (6)~(P&~Q) 25RAA
7 (7) Q A
2 (8) ~Q 2&E
2 7 (9) Q&~Q 78&I
7 (ア)~(P&~Q) 29RAA
1 (イ)~(P&~Q) 1367ア∨E
ウ (ウ) P A
エ(エ) ~Q A
ウエ(オ) P&~Q ウエ&I
1 ウエ(カ)~(P&~Q)&
(P&~Q) イオ&I
1 ウ (キ) ~~Q エカRAA
1 ウ (ク) Q キDN
1 (ケ) P→ Q ウクCP
従って、
(04)により、
(05)
① P→ Q
② ~(P&~Q)
③ ~P∨ Q
において、
①=②=③ である。
従って、
(05)により、
(06)
「日本語」で書くと、
① Pならば、Qである。
②(PであってQでない)ということはない。
③ Pでないか、または、Qである。
において、
①=②=③ であるが、このとき、
②=③ は、「ド・モルガンの法則」であって、
①= ③ は、「(質料)含意の定義」である。
然るに、
(07)
① Pならば、Qである。
②(PであってQでない)ということはない。
において、
①=② であることは、「直観的に、正しく」、
②(PであってQでない)ということはない。
③ Pでないか、または、Qである。
において、
②=③ であることも、「直観的に、正しい」。
然るに、
(05)(06)により、
(08)
1(1)~P A
1(2)~P∨Q 1∨I
1(3) P→Q 2含意の定義
従って、
(02)(08)により、
(09)
P=月はチーズで出来ている(偽)。
Q=日本の首都は北京である(偽)。
であるとして、
① もし月がチーズで出来ていたならば、日本の首都は北京である。
という「命題」は「真」である。
然るに、
(10)
1 (1) ~P A
1 (2) ~P∨Q 1∨I
1 (3) P→Q 2含意の定義
(4) ~P→(P→Q) 13CP
5 (5) ~P& P A
5 (6) ~P 5&E
5 (7) P→Q 46MPP
5 (8) P 5&E
5 (9) Q 78MPP
(ア) (~P&P)→Q 59CP
イ(イ) ~(P∨~P) A
イ(ウ) (~P&P) ウ、ド・モルガンの法則
イ(オ) Q アウMPP
(カ) ~(P∨~P)→Q イオCP
(キ)~~(P∨~P)∨Q カ含意の定義
(ク) (P∨~P)∨Q キDN
(〃) ( 排中律 )∨Q キDN
(〃) ( 恒真式 )∨Q キDN
従って、
(08)(09)(10)により、
(11)
P=月はチーズで出来ている(偽)。
Q=日本の首都は北京である(偽)。
であるとして、
② もし(月がチーズで出来ているか、または、月がチーズで出来ていない)ということが無いならば、日本の首都は北京である。
という「命題」は「真」である。
然るに、
(12)
② もし(月がチーズで出来ているか、または、月がチーズで出来ていない。)
という「命題」は、「排中律(恒真式)」である。
従って、
(12)により、
(13)
② (月がチーズで出来ているか、または、月がチーズで出来ていない)ということが無い。
ということは、「有り得ない」。
従って、
(11)(12)(13)により、
(14)
② もし(月がチーズで出来ているか、または、月がチーズで出来ていない)ということが無いならば、日本の首都は北京である。
という「命題」は「真」であるとしても、
② (月がチーズで出来ているか、または、月がチーズで出来ていない)ということが無い。
ということは、「有り得ない」。
という「理由」により、
② 日本の首都は北京である。
ということも、「(それが偽である限り、)有り得ない」。
従って、
(09)(10)(14)により、
(15)
① もし月がチーズで出来ていたならば、日本の首都は北京である。
という「命題」は「(質料含意として)真」である。
という「言い方」は、「実質的」に、
① もし月がチーズで出来ていたならば、日本の首都は北京である(が、ただし、月はチーズではない)。
という「命題」が「真」である。
という「意味」になる。
然るに、
(16)
① もし月がチーズで出来ていたならば、日本の首都は北京である(が、ただし、月はチーズではない)。
という「命題」が「真」であるとしても、「パラドックス」には、ならない。
然るに、
(17)
1 (1) ~(Q∨~Q) A
2(2) Q A
2(3) Q∨~Q 2∨I
12(4) ~(Q∨~Q)&
(Q∨~Q) 13&I
1 (5) ~Q 24RAA
1 (6) Q∨~Q 5∨I
(7) ~~(Q∨~Q) 16RAA
(8) Q∨~Q 7DN(は排中律)
(9)~P∨(Q∨~Q) 8∨I
(ア) P→(Q∨~Q) 9含意の定義
(イ) P∨(Q∨~Q) A
(ウ)~P→(Q∨~Q) イ含意の定義
(エ) P→(Q∨~Q)&
~P→(Q∨~Q) アウ&I
(〃)~P∨(Q∨~Q)&
P∨(Q∨~Q) 9イ&I
(〃)~P∨( 排中律 )&
P∨( 排中律 ) 9イ&I
従って、
(02)(17)により、
(18)
P=月はチーズで出来ている(偽)。
Q=今エクアドルで雨が降っている。
として、
① 月がチーズで出来ている ならば、(今エクアドルで雨が降っているか、または、今エクアドルで雨が降っていない)。
② 月がチーズで出来ていないならば、(今エクアドルで雨が降っているか、または、今エクアドルで雨が降っていない)。
という「命題」は、両方とも、「真(トートロジー)」である。
然るに、
(19)
① 月がチーズで出来ている ならば、(今エクアドルで雨が降っているか、または、今エクアドルで雨が降っていない)。
② 月がチーズで出来ていないならば、(今エクアドルで雨が降っているか、または、今エクアドルで雨が降っていない)。
という「命題」は、両方とも、「(同時に)真」である。
ということは、要するに、
③ 月がチーズであろうと、月がチーズでなかろうと、いずれにせよ、(今エクアドルで雨が降っているか、または、今エクアドルで雨が降っていない)。
ということに、「等しい」。
然るに、
(02)(19)により、
(20)
③ 月がチーズであろうと、月がチーズでなかろうと、いずれにせよ、(今エクアドルで雨が降っているか、または、今エクアドルで雨が降っていない)。
ということは、「当然」であって、「パラドックス」ではない。
従って、
(16)(20)により、
(21)
① もし月がチーズで出来ていたならば、日本の首都は北京である(が、ただし、月はチーズではない)。
③ 月がチーズであろうと、月がチーズでなかろうと、いずれにせよ、(今エクアドルで雨が降っているか、または、今エクアドルで雨が降っていない)。
という「命題」は、両方とも、「パラドックス」ではない。
従って、
(01)~(21)により、
(22)
質料含意のパラドックス
「質料含意のパラドックス (Paradoxes of Material Implication)」とは、古典論理学における「実質含意(質料含意)」の定義が、日常言語で使われる「もし~ならば、…」という条件文の直感的な意味と乖離していることによって生じる、一見すると矛盾しているように見える命題群のことです。
とは言うものの、
(a)
1 (1) P→ Q A
2 (2) P&~Q A
2 (3) P 2&E
12 (4) Q 13MPP
2 (5) ~Q 2&E
12 (6) Q&~Q 45
1 (7) ~(P&~Q) 26RAA
8 (8) ~(~P∨ Q) A
9 (9) ~P A
9 (ア) ~P∨ Q ∨I
89 (イ) ~(~P∨ Q)&
(~P∨ Q) 8ア&I
8 (ウ) ~~P 9イRAA
8 (エ) P ウDN
オ(オ) Q A
オ(カ) ~P∨ Q オ∨I
8 オ(キ) ~(~P∨ Q)&
(~P∨ Q) 8カ&I
8 (ク) ~Q オキRAA
8 (ケ) P&~Q エク&I
1 8 (コ) ~(P&~Q)&
(P&~Q) 7ケ&I
1 (サ)~~(~P∨ Q) 8コRAA
1 (シ) ~P∨ Q サDN
(b)
1 (1) ~P∨ Q A
2 (2) P&~Q A
3 (3) ~P A
2 (4) P 2&E
23 (5) ~P&P 34&I
3 (6)~(P&~Q) 25RAA
7 (7) Q A
2 (8) ~Q 2&E
2 7 (9) Q&~Q 78&I
7 (ア)~(P&~Q) 29RAA
1 (イ)~(P&~Q) 1367ア∨E
ウ (ウ) P A
エ(エ) ~Q A
ウエ(オ) P&~Q ウエ&I
1 ウエ(カ)~(P&~Q)&
(P&~Q) イオ&I
1 ウ (キ) ~~Q エカRAA
1 ウ (ク) Q キDN
1 (ケ) P→ Q ウクCP
(c)
1 (1) ~P A
1 (2) ~P∨Q 1∨I
1 (3) P→Q 2含意の定義
(4) ~P→(P→Q) 13CP
5 (5) ~P& P A
5 (6) ~P 5&E
5 (7) P→Q 46MPP
5 (8) P 5&E
5 (9) Q 78MPP
(ア) (~P&P)→Q 59CP
イ(イ) ~(P∨~P) A
イ(ウ) (~P&P) ウ、ド・モルガンの法則
イ(オ) Q アウMPP
(カ) ~(P∨~P)→Q イオCP
(キ)~~(P∨~P)∨Q カ含意の定義
(ク) (P∨~P)∨Q キDN
(〃) ( 排中律 )∨Q キDN
(〃) ( 恒真式 )∨Q キDN
(d)
1 (1) ~(Q∨~Q) A
2(2) Q A
2(3) Q∨~Q 2∨I
12(4) ~(Q∨~Q)&
(Q∨~Q) 13&I
1 (5) ~Q 24RAA
1 (6) Q∨~Q 5∨I
(7) ~~(Q∨~Q) 16RAA
(8) Q∨~Q 7DN(は排中律)
(9)~P∨(Q∨~Q) 8∨I
(ア) P→(Q∨~Q) 9含意の定義
(イ) P∨(Q∨~Q) A
(ウ)~P→(Q∨~Q) イ含意の定義
(エ) P→(Q∨~Q)&
~P→(Q∨~Q) アウ&I
(〃)~P∨(Q∨~Q)&
P∨(Q∨~Q) 9イ&I
(〃)~P∨( 排中律 )&
P∨( 排中律 ) 9イ&I
という「計算」の「意味」を考える限り、
①「もし月がチーズで出来ていたなら、北京が日本の首都である。」という「命題」も、
③「もし月がチーズで出来ているならば、(今エクアドルで雨が降っているか、または、今エクアドルで雨が降っていない)。」という「命題」も、
という「命題」も、両方とも、「パラドックス」である。
ということには、ならない。
すなわち、
(21)(22)により、
(23)
もう一度、述べるものの、
① もし月がチーズで出来ていたならば、日本の首都は北京である(が、ただし、月はチーズではない)。
③ 月がチーズであろうと、月がチーズでなかろうと、いずれにせよ、(今エクアドルで雨が降っているか、または、今エクアドルで雨が降っていない)。
という「命題」は、両方とも、「パラドックス」ではない。
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