(01)
(02)~(08)に於いて、
① 敢不走乎。 は、「反語」である。
② 敢不走乎。 は、不敢不走。に、等しい。
③ 不敢不走。 は、「必ず逃げる。」といふ意味である。
といふ三点を、説明します。
(02)
敢不走乎 「敢不~乎」は「あへテ~ざランや」と読む反語形。
(旺文社、漢文の基礎、1973年、40頁)。
従って、
(02)により、
(03)
① 敢不走乎。は、「反語」である。
然るに、
(04)
反語とは、表現されている内容と反対のことを意味する言い方で、多くは疑問形と同じ形であり、日本語でも、「そんなこと誰が知ろうか」と言う場合、「誰が知っているか」とたずねているのではなく、逆に「誰も知ってはいない」ということを言っているのである。けっきょく、肯定している場合は否定に、否定している場合は肯定の内容になる。
(旺文社、漢文の基礎、1973年、45頁)。
然るに、
(05)
① 敢不走乎。 の「否定」は、
② 不敢不走。 である。
従って、
(03)(04)(05)により、
(06)
① 敢不走乎。 は、「反語」であるが故に、
① 敢不走乎。 は、「その否定」である、
② 不敢不走。 に、等しい。
然るに、
(07)
敢不走乎。
敢へて走らざらんや。
どうして逃げないでしょうか(いや、必ず逃げるのです)。
(数研出版、基礎からの漢文、1982年、95頁)。
従って、
(06)(07)により、
(08)
① 敢不走乎=
② 不敢不走=必ず逃げる。
(09)
(10)~(14)に於いて、
② 必ず逃げる=逃げないことを、決してしない。
であることを、説明します。
(10)
② 逃げないことを、しない。
といふことは、要するに、
② 逃げる。
といふ、ことである。
然るに、
(11)
② 逃げる。
といふ「意味(意志)」を、「強める」と、
② 必ず、逃げる。
(12)
② 逃げないことを、しない。
の「意味(意志)」を、「強める」と、
② 逃げないことを、決して、しない。
従って、
(11)(12)により、
(13)
② 必ず、逃げる=
② 逃げないことを、決して、しない。
といふ「等式」が、成立する。
従って、
(08)(13)により、
(14)
② 不敢不走=
② 逃げないことを、決して、しない。
従って、
(14)により、
(15)
③ 不敢不勉=
③ 勉めないことを、決して、しない。
cf.
24囗否定形10 不敢不 ―
(読)アエテ ―ズンバアラズ
(意)どうしても(進んで)―しないではいられない。―しないということは決してしない。〔二重否定〕
敢へて勉めずんばあらず。
どうしても努力しないではいられない、できるだけ努力する。
(多久高弘一、多久の漢文公式110、1988年、24頁)
然るに、
(16)
③ 不敢不勉=
③ 勉めないことを、決して、しない。
であるならば、
④ 不敢視=
④ 視ることを、決して、しない。
cf.
23囗否定形9 不敢 ―
(読)アエテ ―(セ)ズ
(意)決して ―しない。進んで―しない。
昆弟妻嫂、目を側めて敢へて視不。
兄弟、妻、兄嫁は目をそらして、進んでまともに蘇秦を視ようとしなかった(蘇秦の威光を恐れたので)。
(多久高弘一、多久の漢文公式110、1988年、23頁)
従って、
(15)(16)により、
(17)
不敢 ― =決して ―しない。
不敢不 ― =決して ―しないことを、しない。
従って、
(18)
1 市販の問題集・参考書の類、教科書・教師用指導書の類では、「不敢」を「決して・・・ない」と訳している(江連隆、漢文語法ハンドブック、1997年、81頁)。
としても、特に、「不都合」は無い。
平成26年01月16日、毛利太。
(19)
① 背きたい気持ち。
② 背きたくない気持ち。
が、有って、
①>② = 敢背。
①<② = 敢不背。
~(①>②)= 不敢背。
~(①<②)= 不敢不背。
然るに、
(20)
~(①>②)={①≦②}≒①<②
従って、
(17)(19)(20)により、
(24)
言沛公不敢背項王=沛公敢へて項王に背かずと、言はん。
に於ける、
~(①>②)=
不敢背=敢へて背かず。 は、
①<② =
敢不背=敢へて背かず。
といふ「意志」を、強調した、言ひ方である。
平成26年01月17日、毛利太。
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