2016年1月20日水曜日

「(H28年のセンター試験の)白文」を解説します。

―「1月18日の記事」を書き直します。―
(01)
漢語文法の基礎となっている文法的な関係として、次の四つの関係をあげることができる。
(一)主述関係  主語 ― 述語
(二)修飾関係 修飾語 ― 被修飾語
(三)補足関係 叙述語 ― 補足関係
(四)並列関係 並列語 ― 並列語
(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、281~283頁改)
(02)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。すなわち、その補足構造における語順は、国語とは全く反対である。
(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、296頁)
従って、
(03)
目的語と補語とは、それほど区別する必要がないので、両方併せて、補足語と呼んだり補語と呼んだりしている。
(数研出版、基礎からの漢文、1982年、26頁)
従って、
(01)(02)(03)により、
(04)
「返り点」が付くのは「述語+補語」であって、「述語+補語」以外に、「返り点」は付かない。
(05)
問4 傍線部A「哀其身不能一日事乎母也」の返り点の付け方と書き下し文の組み合わせとして最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。解答番号は[33]。
(06)
其書 であれば、
其は、 修飾語 であって、
書は、被修飾語 である。
(07)
其書在机上=THE BOOK IS ON DESK.
であれば、
其書=THE BOOK
は、「主語」である。
(08)
我見其書=I SEE THE BOOK.
であれば、
其書=THE BOOK
は、「補語」である。
従って、
(07)(08)により、
(09)
我見其書在机上=我其の書の机上に在るを見る。
であれば、
我 =主語
其書=主語
である。
従って、
(10)
我見其書在机上=我其の書の机上に在るを見る。
に対して、
_見其書在机上=_其の書の机上に在るを見る。
であれば、
主語=其書
は、そのままであるが、
主語=私
は、省略されてゐる。
然るに、
(11)
「文脈」からすらば、
荷字哀其身不能一日事乎母也。
であるため、
哀其身不能一日事乎母也。
に於いて、
哀 の主語(荷字)は、省略されてゐる。
(12)
I OFTEN READ THE BOOK.
であれば、
READ(他動詞)
だけが、「述語」である。
(13)
哀其身不能一日事乎母也。
であれば、
哀(他動詞)
不(否定詞)
能(助動詞)
事(他動詞)
といふ四つが、「述語」である。
従って、
(13)により、
(14)
哀其身不能一日事乎母也。
に於いて、
其身=主語
一日=修飾語(副詞)
乎 =前置詞(格助詞・に)
母 =名詞
也 =断定
は、「述語」ではない。
然るに、
(15)
事乎母=母に事へる。
であるため、
事 =他動詞 の「補語」は、明らかに、「乎母」である。
(16)
一日=修飾語(副詞)
であるため、
能 =助動詞 の「補語」は、明らかに、「一日事乎母」である。
(17)
不 =否定 の「補語」は、明らかに、「能一日事乎母」である。
然るに、
(18)
其身 は、「能一日事乎母」の、主語 であるため、
哀 =動詞 の「補語」は、明らかに、「其身不能一日事乎母」である。
従って、
(15)~(18)により、
(19)
哀(他動詞)
不(否定詞)
能(助動詞)
事(他動詞)
に対する、「補足語」は、
其身不能一日事乎母
  不能一日事乎母
    一日事乎母
       乎母
である。
従って、
(19)により、
(20)
哀{其身不能一日事乎母}
    不[能一日事乎母]
      能〔一日事乎母〕
          事(乎母)
とすれば、これらの四つは、
哀其身不能一日事乎母也。
といふ「漢文」に於ける、「補足構造」を、表してゐる。
従って、
(20)により、
(21)
哀其身不能一日事乎母也。
に於ける、「補足構造」は、
哀{其身不[能〔一日事(乎母)〕]}也。
である。
然るに、
(02)により、
(22)
漢文と、国語では、「補足構造」に於ける「語順が逆」になる。
従って、
(21)(22)により、
(23)
哀其身不能一日事乎母也=
哀{其身不[能〔一日事(乎母)〕]}也。
に於いて、
哀{ }⇒{ }哀
不[ ]⇒〔 〕不
能〔 〕⇒〔 〕能
事( )⇒( )事
といふ「倒置」を行ふと、
哀{其身不[能〔一日事(乎母)〕]}也⇒
{其身[〔一日(乎母)事〕能]不}哀也=
{其の身の[〔一日として(母に)事ふる〕能は]不るを}哀しむなり。
といふ「漢文訓読」が、成立する。
従って、
(24)


といふ「漢文訓読」が成立する。
然るに、
(25)
「一字だけ上の漢字」に返る場合は、「レ点」を用ゐ、
「二字より上の漢字」に返る場合は、「一二点」等を用ゐる。
従って、
(24)(25)により、
(26)



従って、
(26)により、
(27)

従って、 
(27)により、
(28)
問4 傍線部A「哀其身不能一日事乎母也」の返り点の付け方と書き下し文の組み合わせとして最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。解答番号は[33]。
の「答へ」は、④であり、「新聞の答へ」も、④である。
従って、
(01)~(28)により、
(29)
哀其身不能一日事乎母也。
といふ「白文」を「訓読」したいのであれば、少なくとも、
哀 は、「述語」であるか?
其 は、「述語」であるか?
身 は、「述語」であるか?
不 は、「述語」であるか?
能 は、「述語」であるか?
一 は、「述語」であるか?
日 は、「述語」であるか?
事 は、「述語」であるか?
乎 は、「述語」であるか?
母 は、「述語」であるか?
也 は、「述語」であるか?
といふ「質問」に、答へられなければ、ならない。
(30)
哀=動詞
不=否定
能=助動詞
事=動詞
といふ四つが、「述語」である。と思ふのであれば、
哀其身不能一日事乎母也。
に対して、
哀(其身不(能(一日事(乎母也。
といふ風に、( を加へて欲しい。
(31)
その次に、
哀(其身不(能(一日事(乎母也。
に於ける、
( ( ( (
に対する、
 ) ) ) )
を考へて欲しい。
(32)
考へた「結果」として、
哀(其身不(能(一日事(乎母))))也=
哀{其身不[能〔一日事(乎母)〕]}也。
といふ「括弧」を、得ることが出来たのであれば、その人は、
哀其身不能一日事乎母也。
といふ「白文」を、
{其の身の[〔一日として(母に)事ふる〕能は]不るを}哀しむなり。
といふ風に、「訓読」出来ても、不思議ではない。
(33)
米国有求以解英文法解漢文者。
といふ「白文」の、「述語」に対して、アンダーラインを引いて欲しい。
(34)
アンダーラインが、
米国有求以解英文法漢文者。
といふ風に、ならなかったとしたら、すなはち、

有 求 以 解 解
に対して、アンダーラインが引かれなかったとしたら、その人は、
米国有求以解英文法解漢文者。
といふ「白文」を、
米国有{求[以〔解(英文)法〕解(漢文)]者}⇒
米国{[〔(英文)解法〕以(漢文)解]求者}有=
米国に{[〔(英文を)解する法を〕以て(漢文を)解せんことを]求る者}有り。
といふ風に、「訓読」することを、諦めなければならない。
然るに、
(35)
taishomaron0706_0104さん2015/12/3010:00:41
返り点を打つコツを教えてください。
学校で漢文をほとんど教えて貰わなかったので独学で勉強しています。
ですが返り点を付けられません。
何回も解き直しますが答えの通りになりません。
なぜ読みも書いていないのに白文だけ読んで返り点が打てるのか不思議です。
私には白文だけをみて返り点を打つことができません。
どうしたら打てますか?
漢文を早く上達させるにはどうしたら良いですか?
閲覧数:56 回答数:1
従って、
(34)(35)により、
(36)
taishomaron0706_0104さんのやうな方には、、
取りあへず、「白文」の「述語」に対して、アンダーラインを引けるやうに、なってもらいたい。
平成28年01月20日、毛利太。

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