2017年9月22日金曜日

敢不走乎=不敢不走。

(01)
」が、「助動詞」ではなく、「副詞」であるならば、
① 敢走。
② 敢不走。
③ 不敢走。
④ 不敢不走。
に付く「返り点」は、
① 敢走。
② 敢不走。
③ 不敢走
④ 不敢不一レ走。
であって、「括弧」は、
① 敢走。
② 敢不(走)。
③ 不(敢走)。
④ 不〔敢不(走)〕。
である。
(02)
」が、「副詞」ではなく、「助動詞」であるならば、
① 敢走。
② 敢不走。
③ 不敢走。
④ 不敢不走。
に付く「返り点」は、
① 敢走。
② 敢走。
③ 不走。
④ 不走。
であって、「括弧」は、
① 敢(走)。
② 敢〔不(走)〕。
③ 不〔敢(走)〕。
④ 不[敢〔不(走)〕]。
である。
(03)
① 敢(走)。
② 敢〔不(走)〕。
③ 不〔敢(走)〕。
④ 不[敢〔不(走)〕]。
といふ「漢文」は、
① (走ることを)敢へてする。
② 〔(走ら)ないことを〕敢へてする。
③ 〔(走ることを)敢へてする。〕といふことはない。
④ [〔(走ら)ないことを〕敢へてする。]といふことはない。
といふ風に、「解すること」が、出来る。
従って、
(03)により、
(04)
②   敢〔不(走)〕。 の「否定」は、
[敢〔不(走)〕]。である。
然るに、
(05)
② 敢〔不(走)〕。
は、「反語」ではないが、
② 敢〔不(走)〕
は、「反語」である。
然るに、
(06)
反語とは、表現されている内容と反対のことを意味する言い方で、多くは疑問形と同じ形であり、けっきょく、肯定している場合は否定に、否定している場合は肯定の内容になる(赤塚忠・遠藤哲夫、漢文の基礎、45頁、1973年)。
従って、
(04)(05)(06)により、
(07)
② 敢〔不(走)〕
[敢〔不(走)〕]。
に於いて、
②=④ である。
従って、
(03)(07)により、
(08)
② 敢〔不(走)〕
といふ「反語」は、
④ [〔(走ら)ないことを〕敢へてする。]といふことはない。
といふこと、すなはち、
② 敢へて逃げないといふことはない(逃げるにちがいない)。
といふ、「意味」になる。
cf.
「逃走」は、「複語」なので、「走=逃」である。
然るに、
(09)
虎求百獸而食之、得狐。狐曰、子無敢食我也。天帝使我長百獸。今、子食我、是逆天帝命也。子以我爲不信、吾爲子先行。子隨我後觀。百獸之見我、而敢不走乎
虎、百獣を求めて之を食ひ、狐を得たり。狐曰く、子敢へて我を食らふこと無かれ。 天帝我をして百獣に長たらしむ。今子我を食らはば、是れ天帝の命に逆らふなり。 子我を以って信ならずと為さば、吾子の為に先行せん。 子、我が後に随ひて観よ。 百獣の我を見て、敢へて走らざらんや。と。
虎は、すべてのけだものをつかまえてこれを食べていたが、(あるとき)狐をつかまえた。(すると)狐は(虎に向って)言った。「あなたはけっしてわたしを食べたりしてはいけない。(そもそも)天の神様は、このわたしを百獣のかしらとしたのです。いまもしもあなたがわたしを食べれば、それは天の神様の命令にそむくことになります。あなたがわたしの(言っている)ことをうそだと思うのなら、(わたしのことばほんとうであることを証明するために)わたしがあなたの先に立って歩いてみましょう。あなたはわたしの後についてきて、よくごらんなさい。すべてのけだものたちは、わたし(の姿)を見れば、必ず(おそれて)逃げ出すにちがいありません。」
(赤塚忠・遠藤哲夫、漢文の基礎、45頁、1973年、39頁)
従って、
(07)(08)(09)により、
(10)
② 敢〔不(走)〕
[敢〔不(走)〕]。
に於いて、
②=④ であるならば、
② 敢〔不(走)〕乎。
といふ「反語」は、
④ [〔(走ら)ないことを〕敢へてする。]といふことはない。
といふこと、すなはち、
② 敢へて逃げないといふことはない(逃げるにちがいない)。
といふ、「意味」に、なる必要があって、尚且つ、実際に、その通りである。
然るに、
(01)により、
(11)
「敢」が、「助動詞」ではなく、「副詞」であるならば、
① 敢走。
② 敢不走。
③ 不敢走。
④ 不敢不走。
に対する「訓読」は、
① 敢へて走る。
敢へて走らず
敢へて走らず
④ 敢へて走らざずんばあらず。
である。
従って、
(11)により、
(12)
「敢」が、「助動詞」ではなく、「副詞」であるならば、
走。
走。
の「訓読」は、両方とも、
敢へて走らず
敢へて走らず
である。
然るに、
(13)
走。
走。
の場合は、明らかに、
②=③ ではない
従って、
(12)(13)により、
(14)
」が、「助動詞」ではなく、「副詞」であるならば、
走。
走。
に於いて、
②=③ でない

にも拘らず、
敢へて走らず
敢へて走らず
に於いて、
②=③ ではある
といふ、ことになる。
(15)
② 敢不走。
といふ「漢文」が、
② 〔(走ら)ないことを〕敢へてする。
といふ「意味」であるならば、
② 敢不走。
といふ「漢文」を、
② 敢へて走らず。
といふ風に、「訓読」しても、
② 走らざること敢へてす。
といふ風に、「訓読」しても、どちらとも、「」である
平成29年09月22日、毛利太。

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