2018年11月25日日曜日

「象は鼻も長い。」と「述語論理」。

(a)『返り点と括弧』については、『「返り点」と「括弧」(略8)(https://kannbunn.blogspot.com/2018/09/blog-post_17.html)』他もお読み下さい。
(b)『返り点』については、『「返り点」の「付け方」を教へます(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post_3.html)』他をお読み下さい。
(01)
「前回(20日)の記事」等で、確認した通り、
(a)象は鼻長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(b)象は鼻長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)}。
に於いて、
(a)=(b) である。
然るに、
(02)
(c)
1  (1)~∀z(~鼻zx→ ~長z) A  
1  (2)∃x~(~鼻zx→ ~長z) 1量化子の関係
 3 (3)  ~(~鼻cx→ ~長c) A
 3 (4) ~(~~鼻cx∨ ~長c) 3含意の定義
 3 (5)   ~(鼻cx∨ ~長c) 4DN
 3 (6)    ~鼻cx&~~長c  5ド・モルガンの法則
 3 (7)    ~鼻cx&長c    6DN
 3 (8) ∃z(~鼻zx&長z)   7EI
1  (9) ∃z(~鼻zx&長z)   138EE
(d)
1 (1)  ∃z(~鼻zx& 長z) A
 2(2)     ~鼻cx& 長c  A
 2(3)  ~~(~鼻cx& 長c) 2DN
 2(4)  ~(~~鼻cx∨~長c) 3ド・モルガンの法則
 2(5)   ~(~鼻cx→~長c) 4含意の定義
 2(6) ∃z~(~鼻zx→~長z) 5EI
1 (7) ∃z~(~鼻zx→~長z) 126EE
1 (8)~∀z(~鼻zx→ ~長z) 量化子の関係
従って、
(02)により、
(03)
(a)~∀z(~鼻zx→~長z)
(b) ∃z(~鼻zx& 長z)
に於いて、
(a)ならば(b)であり、
(b)ならば(a)である。
従って、
(03)により、
(04)
(c)~∀z(~鼻zx→~長z)
(d) ∃z(~鼻zx& 長z)
に於いて、
(c)=(d)である。
従って、
(01)(04)により、
(05)
(a)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(b)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)}。
に於いて、
(a)=(b) である。が故に、
(c)象は鼻_長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}。
(d)象は鼻_長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx& 長z)}。
に於いて、
(c)=(d)である。
従って、
(05)により、
(06)
(c)象は鼻_長い=すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、そのyは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならばzは長くない、といふわけではない}。
(d)象は鼻_長い=すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、そのyは長く、尚且つ、あるzは、xの鼻ではないが、長い}。
に於いて、
(c)=(d)である。
然るに、
(06)により、
(07)
(d)すべてのxについて{xが象であるならば、・・・・・・・・}。
であるため、
(d)あるyはxの鼻であって、
(d)あるzは、xの鼻ではないが、長い。
に於ける、xとは、「」である。
従って、
(06)(07)により、
(08)
(d)象は鼻_長い=すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはの鼻であって、そのyは長く、尚且つ、あるzは、の鼻ではないが、長い}。
といふことになる。
然るに、
(09)
(d)象は鼻_長い=すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはの鼻であって、そのyは長く、尚且つ、あるzは、の鼻ではないが、長い}。
といふことは、
(d)象は、鼻(y)の他に、鼻以外(z)「長い」。
といふことに、他ならない。
従って、
(05)~(09)により、
(10)
(c)象は鼻長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}。
(d)象は鼻長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx& 長z)}。
でなければ、ならない。
従って、
(01)(10)により、
(11)
(a)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(b)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)}。
(c)象は鼻も長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}。
(d)象は鼻も長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx& 長z)}。
然るに、
(12)
(e)象は鼻_長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
(e)象は鼻_長い=すべてのxについて{xが象であるならば、あるyは象の鼻であって、そのyは長い}。
と言ふのであれば、
(e)象の鼻は長い。としても、
(e)象の鼻以外については、「長いとも、短いとも、言ってゐない」。
然るに、
(13)
(e)象は鼻は長い。
と言ふのであれば、
(e)象の鼻は長い。としても、
(e)象の鼻以外については、「長いとも、短いとも、言ってゐない」。
従って、
(12)(13)により、
(14)
(e)象は鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
(e)象は鼻は長い=すべてのxについて{xが象であるならば、あるyは象の鼻であって、そのyは長い}。
でなければ、ならない。
従って、
(11)(14)により、
(15)
(Ⅰ)象は鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
(Ⅱ)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(Ⅲ)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)}。
(Ⅳ)象は鼻も長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}。
(ⅴ)象は鼻も長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx& 長z)}。
といふ「等式」が、成立する。
cf.
(Ⅱ)  ∀z(~鼻zx→~長z)
(Ⅲ) ~∃z(~鼻zx& 長z)
に対する「否定」が、それぞれ、
(Ⅳ) ~∀z(~鼻zx→~長z)
(ⅴ)~~∃z(~鼻zx& 長z)=∃z(~鼻zx&長z)は、「二重否定」。
であることに、「注意」せよ。
然るに、
(16)
沢田充茂の『現代論理学入門』(一九六ニ年)には楽しい解説が載っています。
・・・・・・たとえば「象は鼻長い」というような表現は、象が主語なのか、鼻が主語なのかはっきりしないから、このままではその論理的構造が明示されていない。いわば非論理的な文章である、というひともある。しかしこの文の論理的な構造をはっきりと文章にあらわして「すべてのxについて、もしそのxが象であるならば、yなるものが存在し、そのyは鼻であり、xはyを所有しており、このyは長い」といえば・・・・・・たとえば動物園で象をはじめて見た小学生が、父親にむかってこのような文章で話しかけたとすれば、その子供は論理的であるといって感心されるまえに社会人としての常識をうたがわれるにきまっている。常識(すなはち共通にもっている情報)でわかっているものはいちいち言明の中にいれないで、いわば暗黙の了解事項として、省略し、できるだけ短い記号の組み合せで、できるだけ多くの情報を伝えることが日常言語の合理性の一つである。・・・・・・
(山崎紀美子、日本語基礎講座―三上文法入門、2003年、214頁)
然るに、
(17)
「  yなるものが存在し、そのyは鼻であり、xはyを所有している」といふことは、
「あるyは          xの鼻である。          」といふことに、他ならない。
従って、
(17)により、
(18)
「すべてのxについて、もしそのxが象であるならば、yなるものが存在し、そのyは鼻であり、xはyを所有しており、このyは長い。」といふことは、
「すべてのxについて、    xが象であるならば、あるyは        xの鼻であって、          そのyは長い。」といふことに、他ならない。
従って、
(14)(18)により、
(19)
「すべてのxについて、もしそのxが象であるならば、yなるものが存在し、そのyは鼻であり、xはyを所有しており、このyは長い。」といふことは、
(e)象は鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
(e)象は鼻は長い=すべてのxについて{xが象であるならば、あるyは象の鼻であって、そのyは長い}。
といふことに、他ならない。
従って、
(16)(19)により、
(20)
沢田充茂の『現代論理学入門』(一九六ニ年)には楽しい解説が載っています。
・・・・・・たとえば「象は鼻が長い」というような表現は、象が主語なのか、鼻が主語なのかはっきりしないから、このままではその論理的構造が明示されていない。いわば非論理的な文章である、というひともある。
に於ける、「象は鼻が長い。」は、
実際には、「象は鼻が長い。」ではなく、
         「象は鼻長い。」である。
従って、
(20)により、
(21)
沢田充茂先生の、「象は鼻長い。」は、
(Ⅰ)象は鼻長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
であって、
(Ⅱ)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(Ⅲ)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)}。
ではない。
然るに、
(22)
つまり沢田氏によれば、「象は鼻長い」というのは合理的省略を行った言語表現であり、そこには明確な論理構造がある、ということです。三上はこれを文型として登録すべきであると主張しています。象をFに、鼻をGに、長いをHに変え、文型の公式として、
 Fは、GがHだ。
を作っておきます。すると、この公式に当てはまる文はたいてい機械的にパラフレーズできます。
(山崎紀美子、日本語基礎講座―三上文法入門、2003年、214・5頁改)
従って、
(20)
『現代論理学入門(一九六ニ年)』の中で、
沢田充茂先生の、「象は鼻長い。」を、
(Ⅱ)象は鼻長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(Ⅲ)象は鼻長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)}。
といふ風に、「翻訳」してゐたならば、
(Ⅱ)FはGHだ=∀x{Fx→∃y(Gyx&Hy)& ∀z(~Gzx→~Hz)}。
(Ⅲ)FはGHだ=∀x{Fx→∃y(Gyx&Hy)&~∃z(~Gzx& Hz)}。
といふ公式を、三上章先生は、文型として登録すべきであると主張した。
といふことになる。
然るに、
(21)
これまでに、何度も、示した通り、
1     (1)象は鼻長い。                        A
1     (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
1     (〃)すべてのxについて、xが象であるならば、有るyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。 A
 2    (2)兎の耳は長く、兎の耳は鼻ではない。              A
 2    (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
 2    (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、有るyはxの耳であって長く、すべてのzについて、zがxの耳ならば、zはxの鼻ではない。 A
  3   (3)有る兎は象である。                      A
  3   (〃)∃x(兎x&象x)                      A
  3   (〃)あるxは兎であって象である。                 A
1     (4)   象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)  1UE
 2    (5)   兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za)  1UE
   6  (6)   兎a&象a                       A
   6  (7)   兎a                          6&E
   6  (8)      象a                       6&E
1  6  (9)      ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)  47MPP
 2 6  (ア)      ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za)  58MPP
1  6  (イ)      ∃y(鼻ya&長y)               9&E
 2 6  (ウ)      ∃y(耳ya&長y)               ア&E
    エ (エ)         鼻ba&長b                A
     オ(オ)         耳ba&長b                A
1  6  (カ)                 ∀z(~鼻za→~長z)  9&E
1  6  (キ)                    ~鼻ba→~長b   カUE
 2 6  (ク)                 ∀z(耳za→~鼻za)  ア&E
 2 6  (ケ)                    耳ba→~鼻ba   クUE
    オ (コ)                    耳ba        オ&E
 2 6オ (サ)                        ~鼻ba   ケコMPP
12 6オ (シ)                         ~長b   キサコMPP
    オ (ス)             長b                オ&E
12 6オ (セ)             長b&~長b            シス&I
12 6オ (ソ)          ∃y(長y&~長y)           セEI
12 6  (タ)          ∃y(長b&~長b)           ウオソEE
123   (チ)          ∃y(長b&~長b)           36タEE
12    (ツ)~∃x(兎x&象x)                     3チRAA
12    (テ)∀x~(兎x&象x)                     ツ量化子の関係
12    (ト)  ~(兎a&象a)                     テUE
12    (ナ)  ~兎a∨~象a                      ト、ド・モルガンの法則
12    (ニ)   兎a→~象a                      ナ含意の定義
12    (ヌ)∀x(兎x→~象x)                     ニUI
12    (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。   ニUI
12    (〃)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当(Valid)」である。
従って、
(20)(21)により、
(22)
一九六ニ年の、沢田充茂先生が、
(α)象は鼻長い。然るに、
(β)兎の耳は長く、兎の耳は鼻ではない。故に、
(γ)兎は象でない。
といふ「推論(三段論法)」の「妥当性(Validity)」を証明せよ。
といふ「問題」を、考へて、自分自身で、解いてゐたとするならば、
(Ⅱ)FはGがHだ=∀x{Fx→∃y(Gyx&Hy)& ∀z(~Gzx→~Hz)}。
(Ⅲ)FはGがHだ=∀x{Fx→∃y(Gyx&Hy)&~∃z(~Gzx& Hz)}。
といふ公式を、三上章先生は、文型として登録すべきであると、主張してゐた、ことになる。
然るに、
(23)
現代日本語の研究の中で最も精力的に行われてきた分野の一つは「」と「」の違いに関するものがあります。両者の違いは日本語を学ぶ学習者にとって最も困難な学習項目であります。
(庵功雄、新しい日本語学入門、254頁)
然るに、
(24)
∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}
∴  ∀x(兎x→~象x)
といふ「推論(三段論法)」が、「妥当(Validi)」であるか「否」か。
といふ「問題」は、
∀x{Fx→∃y(Gyx&Hy)&∀z(~Gzx→~Hz)}
∀x{Lx→∃y(Myx&Hy)&∀z(Mzx→~Gzx)}
∴  ∀x(Lx→~Fx)
といふ「推論(三段論法)」が、「妥当(Validi)」であるか「否」か。
といふ「問題」であるため、「日本語」を知ってゐようと、ゐまいと、「関係」が無い。
従って、
(21)~(24)により、
(25)
「日本語」は初心者であるが、「論理学」ならば知ってゐるといふ、日本語学習者の方が、ゐるのであれば、取り敢へず、
∀x{Fx→∃y(Gyx&Hy)&∀z(~Gzx→~Hz)}
∀x{Lx→∃y(Myx&Hy)&∀z(Mzx→~Gzx)}
∴  ∀x(Lx→~Fx)
といふ「推論(三段論法)」の、「妥当性(Validity)」の「検証」を、勧めたい。

平成30年11月24日、毛利太。

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