(01)
次のやうに、書くことにする。
Mⅹ=ⅹは人である。
Dⅹ=ⅹは死ぬ。
然るに、
(02)
任意の表述の否定は,その表述を’~( )’という空所にいれて書くことにしよう。
(W.O.クワイン、現代論理学入門、1972年、15頁)
従って、
(01)(02)により、
(03)
Mⅹ・~(Dⅹ)=
ⅹは人であり・ⅹは死なない。
然るに、
(04)
(∃ⅹ)(・・・・・)
と書いて、「・・・・・であるようなⅹが存在する」あるいは「・・・・・である対象ⅹが見出されうる」ということを意味するのである(E.J.レモン、論理学初歩、1973年、123頁) 。
従って、
(03)(04)により、
(05)
(∃ⅹ)(Mⅹ・~(Dⅹ)) =
(ⅹは人であり・ⅹは死なない)ようなⅹが存在する。
従って、
(02)(05)により、
(06)
(∃ⅹ)(Mⅹ・~(Dⅹ)) を、
~( )で括ると、
~((∃ⅹ)(Mⅹ・~(Dⅹ))) =
((ⅹは人であり・ⅹは死なない)やうなⅹが存在する)といふことはない。
然るに、
(07)
~(∃ⅹ)(ⅹは人間である・~ⅹは死ぬものである)
は ― ’あらゆる人間は死ぬものである’(Everyman man is mortal),’すべての人間は死ぬものである’(All men are mortal)と同様に ― 単に’人間は死ぬものである(Man is mortal),あるいは’人間達は死ぬものである(Men are mortal)と言いあらわすことができるであろう(W.O.クワイン、現代論理学入門、1972年、127頁) 。
従って、
(06)(07)により、
(08)
W.O.クワインは、
~((∃ⅹ)(Mⅹ・~(Dⅹ)))
とは書かずに、
~(∃ⅹ)(Mⅹ・~Dⅹ)=
~(∃ⅹ)(ⅹは人間である・~ⅹは死ぬものである)
といふ風に、書いてゐる。
然るに、
(09)
括弧が多くなることは我慢できないので(E.J.レモン、論理学初歩、1973年、59頁)、 括弧は曖昧さがない場合には適当に省略される(赤間世紀、Prologで学ぶAIプログラミング、平成20年、13頁)。
従って、
(08)(09)により、
(10)
~(∃ⅹ)(Mⅹ・~Dⅹ) は、
~((∃ⅹ)(Mⅹ・~(Dⅹ)))
と書くべきところを、括弧が多くなることは我慢できないので、「括弧」が、「省略」されてゐる。
然るに、
(11)
1.∀ⅹ . A(ⅹ)
2.∃ⅹ . A(ⅹ)
3.∀ⅹ . ¬A(ⅹ)
4.∃ⅹ. ¬A(ⅹ)
なお、∀ⅹ や ∃ⅹ のように前置記号のすぐ後におかれる変項(全称または存在記号に属する変項)を束縛変項(bound variable)と呼ぶ(ウィキペディア:数理論理学)。
とあるやうに、
(∃ⅹ)は、
∃ⅹ と書いても、よい。
従って、
(10)(11)により、
(12)
~((∃ⅹ)(Mⅹ・~(Dⅹ)))=
~∃ⅹ Mⅹ・~Dⅹ
然るに、
(13)
~∃ⅹ Mⅹ・~Dⅹ=
There is not an ⅹ such that ⅹ has M and ⅹ has not D.
に於ける「an ⅹ」は、「ⅹ=ⅹ=ⅹ」以外に、特に、「意味」はない。
従って、
(12)(13)により、
(14)
~((∃ⅹ)(Mⅹ・~(Dⅹ)))=
~∃ⅹ Mⅹ・~Dⅹ=
~∃ M・~D
然るに、
(15)
~∃ M・~D
不有人不死。
といふ「二つ」を、「← の方向」で読んで、「→ の方向」で書くと、
死なない・人は、存在しない。
死なない人は、有らず。
従って、
(15)により、
(16)
不有人不死=
~∃ M・~D
従って、
(14)(15)(16)により、
(17)
不有人不死=
~∃ M・~D=
~∃ⅹ Mⅹ・~Dⅹ=
~((∃ⅹ)(Mⅹ・~(Dⅹ)))=
(((死な)ない・人は)存在し)ない。
然るに、
(18)
不有人不死。
の「漢文訓読」は、
不有人不死=
不[有〔人不(死)〕]⇒
[〔人(死)不〕有]不=
[〔人として(死せ)不るは〕有ら]不。
(19)
~∃ M・~D
の「述語論理訓読」は、
~∃ M・~D=
~[(∃ⅹ)〔Mⅹ・~(Dⅹ)〕]⇒
[〔Mⅹ・(Dⅹ)~〕(∃ⅹ)]~=
[〔人であって・(死な)ないⅹは〕(存在し)]ない。
従って、
(13)~(19)により、
(20)
① 不有人不死 =不[有〔人不(死)〕]。
② ~∃ M・~D=~[(∃ⅹ)〔Mⅹ・~(Dⅹ)〕].
に於いて、
①=②
といふ「等式」は、「正しい」。
従って、
(20)により、
(21)
① 不有人不死=フツユウジンフツシ。
と読もうと、
① 不有人不死=人として死せ不るは無し。
と読もうと、
① 不有人不死=There is no man who doesn’t die.
と読もうと、
① 不有人不死。
といふ「漢文」は、
① 不[有〔人不(死)〕]=
② ~[(∃ⅹ)〔Mⅹ・~(Dⅹ)〕].
といふ「シンタックス(構造)」をしてゐる。と、せざるを得ない。
(22)
このことは、
① ~(∃ⅹ)(Mⅹ・~Dⅹ)
といふ「述語論理」を、
② There is not an ⅹ such that ⅹ has M and ⅹ has not D.
と読まずに、
③ Mであって・Dでないⅹは、存在しない。
と読んでも、
① ~(∃ⅹ)(Mⅹ・~Dⅹ)
の「意味」としては、
②=③
であることと、「同じこと」である。
cf.
シナや極東の王国では、一般に文字をも語をも表わすのではなく、事物あるいは観念を表わすような、実物符号で書くのがならいになっている。そしてそれゆえに、たがいに相手の言語を理解しない国々と地方が、それにもかかわらず、たがいに相手の書き物を読むことができるのであるが、それは符号のほうが言語の及ばぬほどほど広い範囲で了解されるからである(フランシス・ベーコン、学問の進歩、第二巻)。
従って、
(23)
~(∃ⅹ)(Mⅹ・~Dⅹ) =
~((∃ⅹ)(Mⅹ・~(Dⅹ))) =
(((死な)ない・人は)存在し)ない。
に於ける、
((( )))
といふ「括弧」が、「実在」であるやうに、
不有人不死=
不[有〔人不(死)〕]=
[〔人として(死せ)不るは〕有ら]不。
に於ける、
[〔( )〕]
といふ「括弧」は、「実在」である。
平成26年06月26日、毛利太。
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