2018年12月31日月曜日

「返り点」と「括弧」と「管到」と。

(01)
① 三{二(一)}。
に於いて、
① 二( )⇒( )二
① 三{ }⇒{ }三
といふ「移動」を行ふと、
① {(一)二}三。
(02)
② 二(三{一)}。
に於いて、
② 二( )⇒( )二
② 三{ }⇒{ }三
といふ「移動」を行ふと、
② ({一)二}三。
然るに、
(03)
①{( )}
②( 
に於いて、
① は、「括弧」であるが、
② は、「括弧」ではない
然るに、
(04)
① 三 二 一
② 二 三 一
に於いて、
① であれば、
  三
  ↑
  二
  ↑
  一
である。
然るに、
(05)
① 三 二 一
② 二 三 一
に於いて、
  二 二
  ↑ ↓
    三
   ↑
  一
である。
然るに、
(06)
「返り点」といふのは、
「下から上へ、返る点」であるため、
  二 二
  ↑ ↓
    三
   ↑
  一
のやうに、
からへ、戻る点」は、「返り点」ではない
従って、
(04)(05)(06)により、
(07)
① 三 二 一
② 二 三 一
に於いて、
① は、「返り点」であるが、
② は、「返り点」ではない
従って、
(01)~(07)により、
(08)
① 3>2>1
② 2<3>1
といふ「順番」に於いて、
① であれば、「返り点・括弧」を付けることが、可能であり、
② であれば、「返り点・括弧」を付けることが、可能ではない
然るに、
(09)


(10)


従って、
(09)(10)により、
(11)
例へば、
① レ レ レ
② 二 一レ
③ レ 二 レ 一レ
④ レ 下 二 一 上
⑤ レ 三 二 一
⑥ レ 二 レ レ 一
⑦ 下 レ レ 二 一 上
⑧ レ レ 二 一レ 二 一レ
⑨ レ レ 二 一レ レ
⑩ 乙 下 二 レ 一レ 上レ レ 甲レ
⑪ レ レ
⑫ レ 二‐ 一
といふ「(レ点を含む)返り点」は、
① 四 三 二 一
② 三 二 一
③ 丁 丙 二 一 乙 甲
④ 下 中 二 一 上
⑤ 四 三 二 一
⑥ 下 三 二 一 上
⑦ 下 四 三 二 一 上
⑧ 三 二 一、五 四 三 二 一
⑨ 六 五 四 三 二 一
⑩ 人 丙 下 二 一 中 上 乙 甲 二 一 地 天
⑪ 三 二 一
⑫ 三 二- 一
といふ「(レ点を含まない)返り点」に、「置き換へ」ることが、出来る。
然るに、
(12)


従って、
(10)(12)により、
(13)
「漢字」に「返り点」が付く。 といふことは、言い換へると、
返り点」に「漢字」が付く。 といふことに、他ならない。
然るに、
(14)
例へば、
⑩ 人{##丙[下〔二(一)中(上)〕乙(甲)]二(一)#地(天)}。
に於いて、
⑩ 二( )⇒( )二
⑩ 中( )⇒( )中
⑩ 下〔 〕⇒〔 〕下
⑩ 乙( )⇒( )乙
⑩ 丙[ ]⇒[ ]丙
⑩ 二( )⇒( )二
⑩ 地( )⇒( )天
⑩ 人{ }⇒{ }人
といふ「移動」を行ふと、
⑩ {##[〔(一)二(上)中〕下(甲)乙]丙(一)二#(天)地}人。
といふ「語順」になる。
従って、
(09)~(14)により、
(15)
(ⅰ)「(レ点を含む)返り点」は、「(レ点を含まない)返り点」に、「置き換へ」ることが、出来る。
(ⅱ)「(レ点を含まない)返り点」は、「括弧」に、「置き換へ」ることが、出来る。
従って、
(16)により、
(17)
(ⅲ)「返り点」は、「括弧」に、「置き換へ」ることが、出来る。
然るに、
(18)
例へば、
⑩ 使籍誠不以畜子憂寒乱心有銭以済医=
⑩ 使{籍誠不[以〔畜(子)憂(寒)〕乱(心)]有(銭)以済(医)}⇒
⑩ {籍誠[〔(子)畜(寒)憂〕以(心)乱]不(銭)有以(医)済}使=
⑩ 籍をして誠に子を畜ひ、寒さを憂ふるを以て心を乱さ不、銭有りて以て医を済さ使む。
といふ「漢文・訓読」に於いて、
⑩ 使 といふ「漢字の意味」は、
⑩  {籍誠不[以〔畜(子)憂(寒)〕乱(心)]有(銭)以済(医)}といふ「15個の漢字」に、及んでゐて、
⑩ 不 といふ「漢字の意味」は、
⑩ [以〔畜(子)憂(寒)〕乱(心)] といふ 「7個の漢字」に、及んでゐて、
⑩  以 といふ「漢字の意味」は、
⑩ 〔畜(子)憂(寒)〕 といふ 「4個の漢字」に、及んでゐて、
⑩ 畜 といふ「漢字の意味」は、         
⑩ (子) といふ 「1個の漢字」に、及んでゐて、
⑩ 憂 といふ「漢字の意味」は、
⑩ (寒) といふ 「1個の漢字」に、及んでゐて、
⑩ 乱 といふ「漢字の意味」は、
⑩ (心) といふ 「1個の漢字」に、及んでゐて、
⑩ 有 といふ「漢字の意味」は、
⑩ (銭 )といふ 「1個の漢字」に、及んでゐて、
⑩ 済 といふ「漢字の意味」は、
⑩ (医) といふ 「1個の漢字」に、及んでゐる。
然るに、
(19)
 【ポイント】
 本章では漢文訓読のための補足をのべる。
管到」とは、ある語句がそのあとのどの漢字までかかっているか、という範囲のことである。白文の訓読では、それぞれの漢字の意味や品詞を自分で考え、その漢字が後ろのどこまでかかっているか、考えねばならない。
(加藤徹、白文攻略 漢文ひとり学び、2013年、143頁)
然るに、
(20)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。すなわち、その補足構造における語順は、国語とは全く反対である。しかし、訓読は、国語の語順に置きかえて読むことが、その大きな原則となっている。それでその補足構造によっている文も、返り点によって、国語としての語順が示されている。
(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、296頁)
従って、
(18)(19)(20)により、
(21)
⑩ 使籍誠不以畜子憂寒乱心有銭以済医=
⑩ 使{籍誠不[以〔畜(子)憂(寒)〕乱(心)]有(銭)以済(医)}⇒
⑩ {籍誠[〔(子)畜(寒)憂〕以(心)乱]不(銭)有以(医)済}使=
⑩ 籍をして誠に子を畜ひ、寒さを憂ふるを以て心を乱さ不、銭有りて以て医を済さ使む。
といふ「漢文・訓読」に於ける、
⑩  {   [ 〔 ( ) ( )〕 ( )] ( )  ( )}
といふ「括弧」は、
(ⅰ)「訓読」の「語順」。
(ⅱ)「漢字」の「管到」。
(ⅲ)「漢文」の「補足構造」。
といふ、「三つ」を、表してゐる。
然るに、
(22)
⑩ 使 籍誠不一レ 寒 乱上レ 以済甲レ
に於ける、
⑩ 乙 下 二 レ 一レ 上レ レ 甲レ
といふ「返り点」も、
⑩ 使籍誠不以畜子憂寒乱心有銭以済医。
といふ「漢文」に対する、
⑩ 籍をして誠に子を畜ひ、寒さを憂ふるを以て心を乱さ不、銭有りて以て医を済さ使む。
といふ「訓読の語順」を、表してゐる。
従って、
(21)(22)により、
(23)
⑩ {[〔( )( )〕( )]( )( )}
といふ「括弧」と、
⑩ 乙 下 二 レ 一レ 上レ レ 甲レ
といふ「返り点」は、両方とも、
⑩ 使籍誠不以畜子憂寒乱心有銭以済医。
といふ「漢文」の、
(ⅰ)「訓読」の「語順」。
(ⅱ)「漢字」の「管到」。
(ⅲ)「漢文」の「補足構造」。
といふ、「三つ」を、表してゐる。
然るに、
(24)
返り点とは、漢文すなわち古典中国語の語順を、日本語の語順に変換する符号である。
(古田島洋介、湯浅吉信、漢文訓読入門、2011年、45頁)
従って、
(23)(24)により、
(25)
返り点とは、漢文すなわち古典中国語の語順を、日本語の語順に変換する符号である。
といふ「言ひ方」は、
返り点とは、漢文すなわち古典中国語の語順を、日本語の語順に変換する符号であるが、
結果として、返り点は、「漢文の補足構造」を表してゐる。
といふ風に、「言ひ換へ」ることが、出来る。
従って、
(25)により、
(26)
「古典中国語(漢文)の語順を、日本語の語順に変換する符号」が「不要」である場合であっても、
「古典中国語(漢文)の補足構造」を知りたいのであれば、「返り点」は、「有用」である。
然るに、
(27)
(Ⅰ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
(Ⅱ)上 中 下
(Ⅲ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(Ⅳ)天 地 人
(Ⅴ)レ 一レ 上レ 甲レ 天レ
からなる「返り点」よりも、
(Ⅰ)( )
(Ⅱ)〔 〕
(Ⅲ)[ ]
(Ⅳ){ }
からなる「返り点」の方が、「簡単(シンプル)」であるだけに、「読みやすく・書きやすい」。
従って、
(26)(27)により、
(28)
「古典中国語(漢文)の語順を、日本語の語順に変換する符号」が「不要」である場合であっても、
「古典中国語(漢文)の補足構造」を知りたいのであれば、「返り点・括弧」は、「有用」であり、
 尚且つ、「返り点」よりも、「括弧」の方が、「読みやすく・書きやすい」。
平成30年12月31日、毛利太。

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