2022年2月2日水曜日

「象は鼻が長い」の「述語論理」と「三上文法批判」。

(01)
(ⅰ)
1 (1)~∀x(Fx→Gx) A
1 (2)∃x~(Fx→Gx) 1量化子の関係
 3(3)  ~(Fa→Ga) A
 3(4) ~(~Fa∨Ga) 3含意の定義
 3(5)  (Fa&~Ga) 4ド・モルガンの法則
 3(6)∃x(Fx&~Gx) 5EI
1 (7)∃x(Fx&~Gx) 136EE
1 (8)∃x(~Gx&Fx) 7交換法則
(ⅱ)
1  (1)∃x(~Gx&Fx) A
 2 (2) ∀x(Fx→Gx) A
  3(3)   ~Ga&Fa  A
 2 (4)    Fa→Ga  2UE
  3(5)       Fa  3&E
 23(6)       Ga  45MPP
  3(7)   ~Ga     3&E
 23(8)   ~Ga&Ga  67&I
  3(9)~∀x(Fx→Gx) 28RAA
1  (ア)~∀x(Fx→Gx) 139EE
従って、
(01)により、
(02)
① ~∀x(Fx→ Gx)
②  ∃x(Fx&~Gx)
③  ∃x(~Gx&Fx)
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(02)により、
(03)
① ~~∀x(Fx→ Gx)
②  ~∃x(Fx&~Gx)
③  ~∃x(~Gx&Fx)
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(03)により、
(04)
「二重否定律」により、
①  ∀x(Fx→ Gx)
② ~∃x(Fx&~Gx)
③ ~∃x(~Gx&Fx)
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(04)により、
(05)
①  ∀x( 象x→動物x)
③ ~∃x(~動物x&象x)
に於いて、すなはち、
① すべてのxについて(xが象であるならば、xは動物である)。
③(動物ではなくて、象である所のx)は存在しない。
に於いて、
①=③ である。
従って、
(05)により、
(06)
① 象は動物である。
③ 動物でない象はゐない。
に於いて、
①=③ である。
然るに、
(04)により、
(07)
①  ∀x{象x→  ∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
② ~∃x{象x&~[∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)]}
に於いて、
①=② である。
然るに、
(08)
(ⅲ)
1  (1)~[∃y(鼻yx& 長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)] A
1  (2) ~∃y(鼻yx& 長y)∨~∀z(~鼻zx→~長z)  1ド・モルガンの法則
 3 (3) ~∃y(鼻yx& 長y)                A
 3 (4)  ∀y(鼻yx→~長y)                ∵(02)
 3 (5)  ∀y(鼻yx→~長y)∨ ∃z(~鼻zx& 長z)  4∨I
  6(6)              ~∀z(~鼻zx→~長z)  A
  6(7)               ∃z(~鼻zx& 長z)  ∵(04)
  6(8)  ∀y(鼻yx→~長y)∨ ∃z(~鼻zx& 長z)  7∨I
(ⅳ)
1  (1)  ∀y(鼻yx→~長y)∨ ∃z(~鼻zx& 長z)  A
 2 (2)  ∀y(鼻yx→~長y)                A
 2 (3) ~∃y(鼻yx& 長y)                ∵(04)
 2 (4) ~∃y(鼻yx& 長y)∨~∀z(~鼻zx→~長z)  3∨I
  5(5)               ∃x(~鼻zx& 長z)  A
  5(6)              ~∀z(~鼻zx→~長z)  ∵(02)
  5(7) ~∃y(鼻yx& 長y)∨~∀z(~鼻zx→~長z)  6∨I
1  (8) ~∃y(鼻yx& 長y)∨~∀z(~鼻zx→~長z)  12457∨E
1  (9)~[∃y(鼻yx& 長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)] 8ド・モルガンの法則
従って、
(08)により、
(09)
③ ~[∃y(鼻yx& 長y)&∀z(~鼻zx→~長z)]
④   ∀y(鼻yx→~長y)∨∃z(~鼻zx& 長z)
に於いて、
③=④ である。
従って、
(07)(08)(09)により、
(10)
①  ∀x{象x→  ∃y(鼻yx&  長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
② ~∃x{象x&~[∃y(鼻yx&  長y)&∀z(~鼻zx→~長z)]}
③        ~[∃y(鼻yx&  長y)&∀z(~鼻zx→~長z)]
④            ∀y(鼻yx→~長y)∨∃z(~鼻zx&  長z)
に於いて、
①=② であって、
③=④ である。
従って、
(10)により、
(11)
①  ∀x{象x→∃y(鼻yx&  長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
② ~∃x{象x&∀y(鼻yx→~長y)∨∃z(~鼻zx& 長z)}
に於いて、
①=② である。
然るに、
(12)
1    (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
 2   (2)∀x{兎x→∃y(長y&耳yx)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
  3  (3)∃x(兎x&象x)                      A
1    (4)   象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)  1UE
 2   (5)   兎a→∃y(長y&耳ya)&∀z(耳za→~鼻za)  2UE
   6 (6)   兎a&象a                       A
   6 (7)      象a                       6&E
   6 (8)   兎a                          6&E
1  6 (9)      ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)  47MPP
 2 6 (ア)      ∃y(長y&耳ya)&∀z(耳za→~鼻za)  58MPP
 2 6 (イ)      ∃y(長y&耳ya)               ア&E
    ウ(ウ)         長b&耳ba                A
1  6 (エ)                 ∀z(~鼻za→~長z)  9&E
 2 6 (オ)                 ∀z(耳za→~鼻za)  ア&E
1  6 (カ)                    ~鼻ba→~長b   エUE
 2 6 (キ)                    耳ba→~鼻ba   オUE
    ウ(ク)            耳ba                ウ&E
 2 6ウ(ケ)                        ~鼻ba   キクMPP
12 6ウ(コ)                         ~長b   カケMPP
    ウ(サ)         長b                    ウ&E
12 6ウ(シ)         長b&~長b                コサ&I
12 6 (ス)         長b&~長b                イウシEE
123  (セ)         長b&~長b                36スEE
12   (ソ)~∃x(兎x&象x)                     36セRAA
12   (タ)∀x~(兎x&象x)                     ソ量化子の関係
12   (チ)  ~(兎a&象a)                     タUE
12   (ツ)  ~兎a∨~象a                      チ、ド・モルガンの法則
12   (テ)   兎a→~象a                      ツ含意の定義
12   (ト)∀x(兎x→~象x)                     テUI
従って、 (12)により、
(13)
(ⅰ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。然るに、
(ⅱ)∀x{兎x→∃y(長y&耳yx)&∀z(耳zx→~鼻zx)}。従って、
(ⅲ)∀x(兎x→~象x)。
といふ「推論(三段論法)」、すなはち、
(ⅰ)すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない}。   然るに、
(ⅱ)すべてのxについて{xが兎であるならば、あるyは長くて、xの耳であり、すべてのzについて、zがxの耳であるならば、zはxの鼻ではない}。従って、
(ⅲ)すべてのxについて(xが兎であるならば、xは象ではない。)
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当」である。
従って、
(13)により、
(14)
(ⅰ)象は鼻が長い。然るに、
(ⅱ)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。従って、
(ⅲ)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当」である。
従って、
(12)(13)(14)により、
(15)
① 象は鼻が長い。
② 象は鼻は長く、鼻以外は長くない。
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
④ すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない}。
に於いて、
①=②=③=④ である。
従って、
(11)(15)により、
(16)
「番号」を付け直すと、
① 象は鼻が長い。
② 象は鼻は長く、鼻以外は長くない。
③ 鼻が長くないか、鼻以外が長い象は、存在しない。
④   ∀x{象x→∃y(鼻yx& 長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
⑤ ~∃x{象x&∀y(鼻yx→~長y)∨∃z(~鼻zx& 長z)}。
⑥ すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない}。
⑦ {xが象であって、尚且つ、すべてのyについて(yがxの鼻であるのに、yが長くない)か、または、ある(zはxの鼻ではないのに、zは長い)}といふ、そのやうなxは存在しない。
に於いて、
①=②=③=④=⑤=⑥=⑦ である。
従って、
(16)により、
(17)
(ⅰ)象は鼻が長い。従って、
(ⅱ)鼻が長くないか、鼻以外が長い象は、存在しない。然るに、
(ⅲ)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。従って、
(ⅳ)兎は象ではない。
といふ「推論」は、「妥当」である。
従って、
(16)(17)により、
(18)
(ⅰ)象は鼻が長い。従って、
(ⅱ)鼻が長くないか、鼻以外が長い象は、存在しない。然るに、
(ⅲ)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。従って、
(ⅳ)兎は象ではない。
といふ「推論」は、「妥当」である以上、
① 象は鼻が長い。
② 象は鼻は長く、鼻以外は長くない。
③ 鼻が長くないか、鼻以外が長い象は、存在しない。
といふ「日本語」は、
①=②=③ であって、尚且つ、
④  ∀x{象x→∃y(鼻yx& 長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
⑤ ~∃x{象x&∀y(鼻yx→~長y)∨∃z(~鼻zx& 長z)}。
といふ「論理式」は、
④=⑤ であって、尚且つ、
①=②=③=④=⑤ である。
といふことを、「否定」することは、出来ない。
然るに、
(19)
伝統的論理学を速水滉『論理学』(16)で代表させよう。わたしのもっているのが四十三年の第十九刷一万部中の一冊で、なお引続き刊行だろうから、前後かなり多く読者を持つ論理学書と考えられる。新興の記号論理学の方は、沢田充茂の『現代論理学入門』(62)を参照することにする(三上章、日本語の論理、1963年、4頁)。
(20)
「象は鼻が長い」はどれが主辞がわからないから、このままでは非論理的な構造の文である、と言う人がもしあった(沢田『入門』二九ペ)とすれば、その人は旧『論理学』を知らない人であろう、これはこのままで、
 象は 鼻が長い
 主辞 賓辞
とはっきりしている。速水式に簡単明リョウである。意味も、主辞賓辞の関係も小学生にもわかるはずの文である。これに文句をつけたり、それを取り次いだりするのは、人々が西洋文法に巻かれていることを語る以外の何物でもない。このまま定理扱いしてもよろしい。そしてこの定理の逆は真でないとして、鼻の長いもの例に、鞍馬山の天狗だの、池の尾の禅珍内供だのを上げるのも一興だろう。それでおしまいである(三上章、日本語の論理、1963年、13・14頁)。
従って、
(18)(19)(20)により、
(21)
三上章先生は、『日本語の論理、1963年』を上梓するに当たって、
① 象は鼻が長い。
といふ「日本語」を、自ら、
②  ∀x{象x→∃y(鼻yx& 長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
③ ~∃x{象x&∀y(鼻yx→~長y)∨∃z(~鼻zx& 長z)}。
といふ「述語論理式」に、「翻訳」しようとは、しなかった。
つまりは、「述語論理」を学ぶことが無いままに、『日本語の論理、1963年』を上梓した。
従って、
(21)により、
(22)
三上章先生は、
① 象は鼻が長い。
といふ「日本語」を論じるに当たって、
②  ∀x{象x→∃y(鼻yx& 長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
③ ~∃x{象x&∀y(鼻yx→~長y)∨∃z(~鼻zx& 長z)}。
といふ「述語論理式」を「意識」することが、皆無なのであって、私には、そのことが、大いに不満である。
(23)
日本文法において、主語の代わりに縦横無尽に活躍するのは、「ハ」という係助詞だ。「象ハ鼻ガ長イ」の「象ハ」は主語ではない。「象について言えば」と話題を提示しているのである。「X(エックス)ハ」の本務は提題である。 「本務」と言うからには兼務がある。先の文の内容は、「象ノ鼻ガ長イこと」と言い換えられる。ここに、もとの文にはなかった「ノ」という助詞が顕(あらわ)れる。ということは、もとの文では「ハ」が「ノ」を代行しており、そのため「ノ」が隠されていたのだ、と三上は解釈する。「ハ」の兼務は、「ガノニヲ」といった助詞の代行である。
(三上章「象は鼻が長い」 「ハ」に潜む他者からの問い)
(24)
① 象は動物である。
② 象は鼻が長い。
① ∀x(象x→動物x)。
② ∀x{象x→∃y(鼻yx& 長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
① すべてのxについて(xが象であるならば、xは動物である)。
② すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない}。
従って、
(23)(24)により、
(25)
① 象は動物である。
② 象は鼻が長い。
といふ「日本語」に於ける、
① 象は
② 象は
といふ「日本語」は、確かに、
① ∀x(象x→
② ∀x{象x→
といふ「意味」、すなはち、
① すべてのxについて(xが象であるならば、
② すべてのxについて{xが象であるならば、
といふ「意味」、すなはち、
①「象について言えば」
②「象について言えば」
といふ「意味」では、ある。
令和04年02月02日、毛利太。

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