(01)
スコープは、論理演算の働きが及ぶ範囲のことをいう(産業図書、数理言語学辞典、2013年、47頁:命題論理、今仁生美)。
従って、
(02)
スコープは、「論理演算子が、右の記号のどこまでかかるか」ということである。
然るに、
(03)
管到というのは、「上の語が、下のことばのどこまでかかるか」ということである(二畳庵主人、漢文法基礎、1984年、389頁)。
従って、
(04)
「横書き」の場合は、
管到というのは、「左の語が、右のことばのどこまでかかるか」ということである。
従って、
(02)(04)により、
(05)
スコープは、「論理演算子が、右の記号のどこまでかかるか」ということであって、
管到というのは、「左の語が、右のことばのどこまでかかるか」ということである。
従って、
(06)
左の語が、「論理演算子」等、である時、「管到」とは、すなはち、「スコープ」である。
然るに、
(07)
ここで括弧について述べておこう。括弧は、論理演算子のスコープ(scope)を明示する働きを持つ(産業図書、数理言語学辞典、2013年、47頁:命題論理、今仁生美)。
従って、
(06)(07)により、
(08)
「管到(スコープ)」自体は、「目に見えない」が、
「括弧」は、「管到(スコープ)」を明示する働きを持つ。が故に、
「括弧」は、「目に見える、管到(スコープ)」 である。
然るに、
(09)
(1)¬(L(x,y))=
(1)¬(love(mary,john))=
(1)ΟΥ(ΦΙΛΕΕΙ(ΜΑΡΙΑ,ΙΩΑΝΝΗΝ)).
に於いて、
(1)ΟΥ(ΦΙΛΕΕΙ(ΜΑΡΙΑ,ΙΩΑΝΝΗΝ))⇒
(1)((ΜΑΡΙΑ,ΙΩΑΝΝΗΝ)ΦΙΛΕΕΙ)ΟΥ=
(1)((マリアは、ジョンを)愛さ)ない。
は、「ギリシャ語訓読」である。
(10)
(2)瑪利亞不(愛(約翰))⇒
(2)瑪利亞((約翰)愛)不=
(2)マリアは((ジョンを)愛さ)ない。
は、「漢文訓読」である。
然るに、
(11)
(1)ΟΥ(ΦΙΛΕΕΙ(ΜΑΡΙΑ,ΙΩΑΝΝΗΝ))⇒
(1)((ΜΑΡΙΑ,ΙΩΑΝΝΗΝ)ΦΙΛΕΕΙ)ΟΥ=
(1)((マリアは、ジョンを)愛さ)ない。
といふ「ギリシャ語訓読」を、行おうと、行うまいと、
(1)¬(L(x,y))=
(1)¬(love(mary,john))=
(1)ΟΥ(ΦΙΛΕΕΙ(ΜΑΡΙΑ,ΙΩΑΝΝΗΝ)).
といふ「スコープ(括弧)」は、固より、「存在」する。
従って、
(10)(11)により、
(12)
(2)瑪利亞不(愛(約翰))⇒
(2)瑪利亞((約翰)愛)不=
(2)マリアは((ジョンを)愛さ)ない。
といふ「漢文語訓読」を、行おうと、行うまいと、
(2)瑪利亞 不(愛(約翰))。
といふ「管到(括弧)」は、固より、「存在」する。
従って、
(13)
(3)文必求我理不論以解解漢法学。
のやうな、「デタラメ」ではないので、
(3)我不必求以解論理学法解漢文。
には、
(3)我不{必求[以〔解(論理学)法〕解(漢文)]}。
といふ「管到(括弧)」が、「存在」する。
然るに、
(14)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。その補足構造における語順は、国語とは全く反対である。しかし、訓読は、国語の語順に置き換えて読むことが、その大きな原則となっている(鈴木直治著、中国語と漢文、1975年、296頁)。
従って、
(13)(14)により、
(15)
①「管到」=「括弧」=「補足構造」。
②「漢語」と「国語」に於ける「補足構造の語順」は、「対称的(シンメトリー)」である。
といふ、「二点(必要十分条件)」が、有るが故に、
(3)我不必求以解論理学法解漢文=
(3)我不{必求[以〔解(論理学)法〕解(漢文)]}⇒
(3)我{必[〔(論理学)解法〕以(漢文)解]求}不=
(3)我{必ずしも[〔(論理学を)解する法を〕以て(漢文を)解せんことを]求め}ず。
といふ、『返り点に対する「括弧」の用法』は、「可能」になる。
従って、
(15)により、
(16)
(3)我不必求以解論理学法解漢文=
(3)我不{必求[以〔解(論理学)法〕解(漢文)]}⇒
(3)我{必[〔(論理学)解法〕以(漢文)解]求}不=
(3)我{必ずしも[〔(論理学を)解する法を〕以て(漢文を)解せんことを]求め}ず。
といふ「漢文訓読」に於ける、
(3){[〔( )〕( )]}⇒
(3){[〔( )〕( )]}。
といふ「括弧」は、「管到(スコープ)」を表してゐる。
と同時に、「シンタックス(補足構造)」を、表してゐる。
従って、
(16)により、
(17)
(3)我不必求以解論理学法解漢文。
といふ「漢文(原文)」に付く、
(3)丁 丙 下 二 一 上 乙 甲。
といふ「返り点」は、その実、
(3){[〔( )〕( )]}。
といふ「括弧」に対して、付けられてゐる。
従って、
(18)
『返り点に対する「括弧」の用法』は、『「返り点」の「代用」』ではなく、
「返り点」こそが、『「括弧」の、不完全な「代用」』である。
平成26年12月26日、毛利太。
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