昨日(12/23)の記事を、同じ内容で、書き直します。
(01)
目的語と補語とは、それほど区別する必要がないので、両方併せて、補足語と呼んだり、単に補語と呼んだりしている(数研出版、基礎からの漢文、1993年、26頁)。
従って、
(02)
目的語を含めて、「補語」とする。
(03)
前置詞+名詞
に於いて、「名詞」は「前置詞の補語」とする。
(04)
否定詞+命題
に於いて、「命題」は「否定詞の補語」とする。
(05)
不(_観花於野)=(_花を野に観)ず。
に対する、
我不(観花於野)=我(花を野に観)ず。
といふ「語順」は、「意味」の上では、
不(我観花於野)=(我花を野に観)ず。
とする。
然るに、
(06)
ところでこのレーマは現在の論理学のことばでいえば明らかに命題関数である。つまりf(ⅹ)、f(ⅹ,y),f(ⅹ,y,z)といったものである(山下正男、論理学史、1983年、
96・97頁)。
然るに、
(07)
任意の表述の否定は、その表述を’~( )’という空所にいれて書くことにしよう(大修館書店、現代論理学入門、1972年、15頁)。
従って、
(07)(08)により、
(09)
f(x,y) を、
F(x,y) と書くならば、
F(x,y) は「レーマ(命題関数)」であって、
F(x,y) の「否定」は、
~(F(x,y)) である。
然るに、
(10)
「レーマ(ΡΗΜΑ)」は、「動詞(Verb)」といふ「意味」であって、それ故、
~(F(x,y)) の F は、「動詞(レーマ)」である。
従って、
(11)
F は、「名詞(オノマ)」ではないものの、この点に於いて、
~(F(x,y)) は、いはゆる、「命題関数」、そのものではない。
e.g.
F(x)=xはフランス人。
F(x,y)=xはyの兄弟。
F(x,y,z)=xはyとzの息子。
に於いて、F は、「名詞(オノマ)」であって、「動詞(レーマ)」ではない。
然るに、
(12)
否定詞の ΟΥは、それが否定する語の前に来る。そして、殆んどの場合に於いて、動詞を否定するので、ΟΥの基準的な位置は、動詞の直前である(J.グレシャム・メイチェン、新約聖書ギリシャ語原典入門、1967年、71頁)。
従って、
(10)(12)により、
(13)
~(F(x,y)) といふ「レーマ(命題関数)」を、
ΟΥ(F(x,y)) とする。
然るに、
(14)
例えば「使徒が言葉を言う」(an apostle says a word)という文は、ギリシャ語では通常 ΑΠΟΣΤΟΛΟΣ ΛΕΓΕΙ ΛΟΓΟΝ である。だが ΛΕΓΕΙ ΑΠΟΣΤΟΛΟΣ ΛΟΓΟΝ も、ΛΟΓΟΝ ΛΕΓΕΙ ΑΠΟΣΤΟΛΟΣ も共に全く可能である。だから和訳、英訳は、共に順序でなく、語尾を観察することによって決定しなければならない(J.グレシャム・メイチェン、新約聖書ギリシャ語原典入門、1967年、29頁)。
従って、
(13)(14)により、
(15)
~(F(x,y))=ΟΥ(ΛΕΓΕΙ(ΑΠΟΣΤΟΛΟΣ ΛΟΓΟΝ)).
に於いて、「左辺」は、「レーマ(命題関数)」であって、「右辺」は、「命題」である。
然るに、
(16)
~(F(x,y))=ΟΥ(ΛΕΓΕΙ(ΑΠΟΣΤΟΛΟΣ ΛΟΓΟΝ)).
では、Greek が、分りにくいため、
~(F(x,y))=NOT(SAY(APOSTLE WORD)).
とする。
従って、
(03)(16)により、
(17)
~(F(x,y,g(z)))=NOT(SAY(APOSTLE WORD IN(CHURCH))).
であるが、以下では、((( )))を、[〔( )〕]に換へて、
~[F〔x,y,g(z)〕]=NOT[SAY〔APOSTLE WORD IN(CHURCH)〕].
とする。
然るに、
(18)
ない=NOT
言ふ=SAY
使徒=APOSTLE
言葉=WORD
にて=IN
教会=CHURCH
従って、
(18)により、
(19)
① ない [言ふ 〔使徒 言葉 にて(教会) 〕]=
① NOT[SAY〔APOSTLE WORD IN(CHURCH)〕].
然るに、
(20)
① ない[言ふ〔使徒は 言葉 にて(教会)〕]⇒
① [〔使徒は 言葉を(教会)にて〕言は]ない。
従って、
(19)(20)により、
(21)
① NOT[SAY〔APOSTLE WORD IN(CHURCH)〕]⇒
① [〔APOSTLE WORD(CHURCH)IN〕SAYS]NOT=
① [〔使徒は 言葉を(教会)にて〕言は]ない。
従って、
(17)(21)により、
(22)
① NOT[SAY〔APOSTLE WORD IN(CHURCH)〕]=
① ΟΥ[ΛΕΓΕΙ〔ΑΠΟΣΤΟΛΟΣ ΛΟΓΟΝ ΕΝ(ΕΚΚΛΗΣΙΑ)〕].
といふ「ギリシャ語」は、
① ~[F〔x,y,g(z)〕]
といふ、「シンタックス」をしてゐて、
① [〔使徒は 言葉を(教会)にて〕言は]ない。
といふ「日本語」は、
① [〔x,y,(z)g〕F]~
といふ、「シンタックス」をしてゐる。
然るに、
(23)
例えば、「3 と 4 を加算する」という演算を、一般的に数式の表記に用いられる中置記法で記述すると、以下のようになる。
3 + 4
一方、逆ポーランド記法では、加算を表す演算子 + を、被演算子である 3 と 4 の後(右)に置いて、以下のよう記述する。
3 4 +
逆ポーランド記法による表現は日本語などSOV型の言語の文法とよく似ており、上式であれば「3 と 4 を加算する」とそのままの順序で読み下せる。逆ポーランド記法を使うForthの影響を受けているプログラミング言語Mindでは、上式を「3 と 4 とを 足す」と記述する(ウィキペディア:逆ポーランド記法)。
従って、
(23)により、
(24)
① ~[F〔x,y,g(z)〕]
① [〔x,y,(z)g〕F]~
に於いて、後者は、「逆ポーランド記法」に、相当する。
然るに、
(25)
① ~[F〔x,y,g(z)〕] に対して、
② [F~〔x,y,g(z)〕] の場合は、
「命題関数(レーマ)」とは言へず、この「順番」は、「ギリシャ語」としては、
② SAY NOT APOSTLE WORD IN CHURCH.
といふ「語順」に、相当する。
然るに、
(26)
② SAYS〔NOT[APOSTLE WORD IN(CHURCH)〕]⇒
② 〔[APOSTLE WORD (CHURCH)IN〕SAYS]NOT=
② 〔[使徒は 言葉を(教会)にて〕言は]ない。
然るに、
(27)
② 〔[( )〕]
の場合は、〔 〕の中に、[ が有るため、『括弧』ではない。
(28)
① ~[F〔x,y,g(z)〕] に対して、
③ ~[〔x,y,g(Fz)〕] の場合は、
「命題関数(レーマ)」とは、言へず、この「順番」は、「ギリシャ語」としては、
③ NOT APOSTLE WORD IN SAY CHURCH.
といふ「語順」に、相当する。
然るに、
(29)
① NOT SAY APOSTLE WORD IN CHURCH.
の「語順」を、
③ NOT APOSTLE WORD IN SAY CHURCH.
といふ風に、変へるならば、
③ NOT[APOSTLE WORD IN(SAY〔CHURCH)〕]⇒
③ [APOSTLE WORD (〔CHURCH)IN〕SAYS]NOT=
③ [使徒は 言葉を(〔教会)の中で〕言は]ない。
然るに、
(30)
③ [(〔 )〕]
の場合も、( )の中に、〔 が有るため、『括弧』ではない。
従って、
(22)~(30)により、
(31)
① ~[F〔x,y,g(z)〕]=
① NOT SAY APOSTLE WORD IN CHURCH.
② [f~〔x,y,g(z)〕]=
② SAY NOT APOSTLE WORD IN CHURCH.
③ ~[〔x,y,g(Fz)〕]=
③ NOT APOSTLE WORD IN SAY CHURCH.
に於いて、
① であるならば、その時に限って、『「括弧」を用ゐた「ギリシャ語訓読」』は「可能」である。といふ、ことになる。
然るに、
(01)~(08)により、
(32)
① ~[F〔x,y,g(z)〕]⇔
① [〔x,y,(z)g〕f]~.
に於いて、
① ~ の「補語」は、[ ]のコンテンツ であって、
① F の「補語」は、〔 〕のコンテンツ であって、
① g の「補語」は、( )のコンテンツ である。
従って、
(31)(32)により、
(33)
① ~ の「補語」は、F〔x,y,g(z)〕 であるが、
② ~ の「補語」は、 〔x,y,g(z)〕 であって、①とは、一致せず、
③ ~ の「補語」は、〔x,y,g(Fz)〕 であって、①とは、一致しない。
(34)
① F の「補語」は、x,y,g(z) であるが、
② に、Fの「補語」は無く、
③ も、Fの「補語」が無い。
(35)
① g の「補語」は、z であるが、
③ g の「補語」は、Fz であって、Fは、「前置詞の補語」であるにも拘わらず、「名詞(オノマ)」ではない。
然るに、
(36)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。その補足構造における語順は、国語とは全く反対である。しかし、訓読は、国語の語順に置き換えて読むことが、その大きな原則となっている(鈴木直治著、中国語と漢文、1975年、296頁)。
然るに、
(37)
① ~[F〔x,y,g(z)〕]⇔
①[〔x,y,(z)g〕F] ~.
に於いて、
~=ない=NOT
F=言ふ=SAY
x=使徒=APOSTLE
y=言葉=WORD
g=にて=IN
z=教会=CHURCH
を、「除く」と、
①[〔 , ,( )〕]⇔
①[〔 , ,( )〕].
従って、
(37)により、
(38)
① ~[F〔x,y,g(z)〕]⇔
①[〔x,y,(z)g〕F] ~.
の「補足構造」は、
①[〔 , ,( )〕]⇔
①[〔 , ,( )〕].
といふ「形」で共通であって、「補足の順番」が、「反対」である。と、すべきである。
従って、
(39)
① ΟΥ[ΛΕΓΕΙ〔ΑΠΟΣΤΟΛΟΣ ΛΟΓΟΝ ΕΝ(ΕΚΚΛΗΣΙΑ)〕].
① [〔使徒は 言葉を(教会)にて〕言は]ない。
に於いて、両者は、「シンタックス(構造)」が、「同じ」である。
然るに、
(40)
Kretheus1 ekhei2 onaton3 paro4 morokwroi5 poimeinei6.
クレーテウスは1 羊飼い6 モログロス5 から4 借地権を3 受け取る2.
Kokalos1 apedoke2 elaiwon3 tosson4 Eumedei5.
コーカロスは1 エウメーデスに5 これだけの4 オリーブを3 支払った2.
ここに見る配列型は日本語のそれと正反対、つまり完全にSVO型のそれである。このような統語型が紀元前2千年のギリシャ語に現れたことは注目すべきである(ピュロス文書の年代はB.C.1200頃)この点で、ギリシャ語はエーゲ海を挟んで東方小アジアのヒッタイト語とは著しい対照をなしている(松本克己、世界言語への視座、2006年、143頁)。
従って、
(40)により、
(41)
② Kretheus1 ekhei2{onaton3[paro4〔morokwroi5(poimeinei6)〕]}⇒
② Kretheus1 {[〔(poimeinei6)morokwroi5〕paro4]onaton3}ekhei2=
② クレーテウスは1{[〔(羊飼い6)モログロス5〕から4]借地権を3}受け取る2.
③ Kokalos1 apedoke2[elaiwon3〔tosson4(Eumedei5)〕]⇒
③ Kokalos1 [〔(Eumedei5)tosson4〕elaiwon3]apedoke2=
③ コーカロスは1 [〔(エウメーデスに5)これだけの4〕オリーブを3]支払った2.
のやうな、「4千年前のギリシャ語」であっても、これらの場合であれば、「日本語」と、「シンタックス(構造)」が、「同じ」である。
平成26年12月23・24日、毛利太。
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