2014年12月4日木曜日

「逆である(仮題)」。

(01)
「読む」のであれば、「何か」、「読む」のであって、その場合の、
「何か」が、「読む」の「目的語」である。
(02)
「居る」のであれば、「何処か」、「居る」のであって、その場合の、
「何処か」が、「居る」の「補語」である。
然るに、
(03)
目的語と補語とは、それほど区別する必要はないので、両方併せて、補足語と読んだり、単に補語と読んだりしている(数研出版、基礎からの漢文、1993年、26頁)。
加へて、
(04)
なお「」字は置いたり置かなかったりして一定していないし、いつどういうときに置くという規則もない。そこで、「」と同じ働きをする「于」などとあわせて、そういう文字がきているときは、「」や「」がつくというふうに、まず考えておくことだ(二畳庵主人、漢文法基礎、1984年、40頁)。
従って、
(01)~(04)により、
(05)
① 馴己=己馴れる。
に於いて、「(を・)」が有るが故に、
①(於己)は、「馴れる」の「補足語」である。
(06)
不=~ 
は、「何か」を「否定」するため、「否定する語句」を必要とし、それ故、
任意の表述の否定は、その表述を’~〔  〕’という空所にいれて書くことにしよう(大修館書店、現代論理学入門、1972年、15頁改)。
従って、
(05)(06)により、
(07)
① 不〔馴(己)〕=己馴れる。
に於いて、
①〔馴(於己)〕は、「不」の「補足語」である。
(08)
② I fear〈that{they will[not〔obey(me)〕]}〉⇒
② I 〈{they [〔(me)obey〕not]will}that〉fear=
② 私は〈{彼らが[〔(私に)従は〕ない]であらう}といふことを〉心配する。
に於いて、
② fear の、「補足語」は、
② that=they will not obey me.
である。
然るに、
(09)
① 恐[衆狙之不〔馴(於己)〕]⇒
① [衆狙之〔(於己)馴〕不]恐=
① [衆狙の〔(己に)馴れ〕不るを]恐る=
① [猿たちが〔(自分に)馴れ従は〕なくなるであろうことを]心配する。
従って、
(08)(09)により、
(10)
① 恐[衆狙之不〔馴(於己)〕]。
に於いて、
①[衆狙之不〔馴(於己)〕]=
②{they will[not〔obey(me)〕]}
は、「恐(fear)」の「補足語」である。
然るに、
(11)
① 恐[衆狙之不〔馴(於己)〕]。
ではなく、
① 四[衆狙之三〔二(於一)〕]。
であるとして、
① 四[衆狙之三〔二(於一)〕]⇒
① [衆狙之〔(於一)二〕三]四=
① [衆狙に〔(一に)二れ〕三るを]四る。
然るに、
(12)
① 恐[衆狙之不〔馴(於己)〕]。
① 四[衆狙之三〔二(於一)〕]。
であれば、
四=恐
三=不
二=馴
一=己 
である。
従って、
(11)(12)により、
(13)
① 恐[衆狙之不〔馴(於己)〕]。
に付く「返り点」は、
① 四 三 二 一。
である。
然るに、
(14)
「教科書」等に於ける、「朝三暮四の、返り点」は、
① 二 一レ 二 一。
である。
従って、
(01)~(14)により、
(15)
① 恐[衆狙之不〔馴(於己)〕]。
といふ、「補足構造」に付く「返り点」は、
① 四 三 二 一。
① 二 一レ 二 一。
である。
従って、
(15)により、
(16)
① 恐衆狙之不馴於己。
といふ「漢文」に於ける、
①[〔( )〕]。
といふ「補足構造」を、「返り点」に、「置き換へた結果」が、
① 四 三 二 一。
① 二 一レ 二 一。
といふ「返り点」であって、
① 四 三 二 一。
① 二 一レ 二 一。
といふ「返り点」を、「括弧」に、「置き換へた結果」が、
①[〔( )〕]。
といふ「括弧」である。わけではない。
従って、
(17)
「任意の漢文」に於ける『補足構造(括弧)』を、
 レ
 一 二 三 四 五 ・・・・・
 レ
 上 中 下 # # ・・・・・
 レ
 甲 乙 丙 丁 戊 ・・・・・
 レ
 天 地 人 # # ・・・・・
 レ
等で置き換へた「結果」が、「或る、返り点」で、あるならば、
「その、返り点」は、必然的に、『括弧』で、「置き換へられる」。
従って、
(18)
③ 何不令人謂韓公叔曰秦之敢絶周而伐韓者信東周也公何不与周地発質使之楚秦必疑楚不信周是韓不伐也又謂秦曰韓彊与周地将以疑周於秦也周不敢不受。
といふ「漢文」に付く、
③ レ 丁 二 一 地 レ レ 二 一 下 二 一 二 一 上レ レ レ レ 天レ レ 丙 二 一 三 二 一 乙 甲レ 。
といふ「返り点」であっても、その実、
③ 何不〈令{人謂(韓公叔)曰[秦之敢絶(周)而伐(韓)者、信(東周)也、公何不〔与(周地)発(質使)之(楚)〕、秦必疑(楚)、不〔信(周)〕、是韓不(伐)也]、又謂(秦)曰、[韓彊与(周地)、将〔以疑(周於秦)〕也、周不〔敢不(受)〕]}〉⇒
③ 何〈{人(韓公叔)謂[秦之敢(周)絶而(韓)伐者、(東周)信也、公何〔(周地)与(質使)発(楚)之〕不、秦必(楚)疑、〔(周)信〕不、是韓(伐)不也]曰、又(秦)謂、[韓彊(周地)与、将〔以(周於秦)疑〕也、周〔敢(受)不〕不]曰}令〉不=
③ 何ぞ〈{人をして(韓の公叔に)謂ひて[秦之敢へて(周を)絶つ而(韓を)伐んとする者、(東周を)信ずれば也、公何ぞ〔(周に地を)与へ(質使を)発して(楚に)之かしめ〕不る、秦必ず(楚を)疑ひ、〔(周を)信ぜ〕不らん、是れ韓(伐たれ)不らん也と]曰ひ、又(秦に)謂ひて、[韓彊ひて(周に地を)与ふるは、将に〔以て(周を於秦に)疑はしめんとする〕也、周〔敢へて(受け)不んば〕不ずと]曰は}令め〉不る。
といふ『括弧(捕捉構造)』に、付けられてゐる。といふ、ことになる。
cf.
通常の包含関係に従って甲乙点を打った後、その外側で四つの返り点が必要になったらどうするのでしょうか。その場合もやはり甲乙点と天地人を逆転させるしかないのです。そのような例を一つ示しましょう。根気のよい方は訓読に従って字を逐ってみてください。あまりの複雑ゆえに嫌気がさす方は、読み飛ばしても結構です(これならわかる返り点―入門から応用まで―古田島洋介、91頁)。
従って、
(17)(18)により、
(19)
古田島先生は、
③ 何不令人謂韓公叔曰秦之敢絶周而伐韓者信東周也公何不与周地発質使之楚秦必疑楚不信周是韓不伐也又謂秦曰韓彊与周地将以疑周於秦也周不敢不受。
といふ「漢文」に於ける、
③ 〈{( )[( )( )( )〔( )( )( )〕( )〔( )〕( )]( )[( )〔( )〕〔( )〕]}〉。
といふ『括弧(捕捉構造)』を、
③ レ 丁 二 一 地 レ レ 二 一 下 二 一 二 一 上レ レ レ レ 天レ レ 丙 二 一 三 二 一 乙 甲レ 。
といふ「返り点」に「置き換へ」、私は、「逆」に、
③ レ 丁 二 一 地 レ レ 二 一 下 二 一 二 一 上レ レ レ レ 天レ レ 丙 二 一 三 二 一 乙 甲レ 。
といふ「返り点」を、
③ 〈{( )[( )( )( )〔( )( )( )〕( )〔( )〕( )]( )[( )〔( )〕〔( )〕]}〉。
といふ『括弧(捕捉構造)』に、「戻した」。ことになる。
従って、
(18)(19)により、
(20)
古田島先生の言ふ、『包含関係』といふ「言ひ方」は、『補足構造(括弧)』に、「読み換へる」ことが、出来る。
平成26年12月04日、毛利太。

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