2016年3月6日日曜日

述語論理訓読、漢文訓読。

(01)
「~」は「・・・ではない」、「∨」は「または」、「&」は「かつ」、「→」は「ならば」、「∀」は「すべての」、「∃」は「ある・・・が存在する」の意味です。
(吉永良正、ゲーデル・不完全定理、1992年、200頁改)
従って、
(02)
① 人として死せざるは無し。
② 少年皆其の愛する所の少女有り。
③ 或る少女全少年の愛する所と為る。
④ 親として其の子を愛せざるは無し。
⑤ 親として其の子を愛せざる無きに非ず
といふ「訓読」を、「述語論理」で「記号化」すると、
① ~∃x(Mx&~Dx)
② ∀x(Bx→∃y(Gy&Lxy))
③ ∃x(Gx&∀y(By→Lyx))
④ ∀x(Px→~∃y(Cyx&~Lxy))
⑤ ~∀x(Px→~∃y(Cyx&~Lxy))
といふことになる。
然るに、
(03)
任意の表述の否定は、その表述を’~(  )’という空所にいれて書くことにしよう。
(W.O.クワイン、現代論理学入門、1972年、15頁)。
従って、
(02)(03)により、
(04)
① ~(∃x(Mx&~(Dx)))
② ∀x(Bx→∃y(Gy&Lxy))
③ ∃x(Gx&∀y(By→Lyx))
④ ∀x(Px→~(∃y(Cyx&~(Lxy))))
⑤ ~(∀x(Px→~(∃y(Cyx&~(Lxy)))))
といふことになる。
然るに、
(05)
P(x)は命題型であるが、数学の函数の形と似ているので命題函数(propositional function)ともいう。
(岩波全書、論理学入門、1979年、58頁)
従って、
(04)(05)により、
(06)
① ~(∃x(M(x)&~(D(x))))
② ∀x(B(x)→∃y(G(y)&L(xy)))
③ ∃x(G(x)&∀y(B(y)→L(yx)))
④ ∀x(P(x)→~(∃y(C(yx)&~(L(xy)))))
⑤ ~(∀x(P(x)→~(∃y(C(yx)&~(L(xy))))))
といふことになる。
然るに、
(07)
括弧は曖昧さがない場合は適当に省略される(赤間世紀、AIプログラミング、2008年、13頁)。
むやみに括弧が多くなることは我慢でないのである(E.J.Lemmon、論理学初歩、1973年、59頁)。
従って、
(02)~(07)により、
(08)
① 無人不死。
② 少年皆有其所愛少女。
③ 或少女為全少年所愛。
④ 無親不愛其子。
⑤ 非無親不愛其子。
といふ「漢文」を、「述語論理」で「記号化」し、尚且つ、「括弧を省略する」場合は、
① ~∃x(Mx&~Dx)
② ∀x(Bx→∃y(Gy&Lxy))
③ ∃x(Gx&∀y(By→Lyx))
④ ∀x(Px→~∃y(Cyx&~Lxy))
⑤ ~∀x(Px→~∃y(Cyx&~Lxy))
といふことなり、「括弧を省略しない」場合は、
① ~(∃x(M(x)&~(D(x))))
② ∀x(B(x)→∃y(G(y)&L(xy)))
③ ∃x(G(x)&∀y(B(y)→L(yx)))
④ ∀x(P(x)→~(∃y(C(yx)&~(L(xy)))))
⑤ ~(∀x(P(x)→~(∃y(C(yx)&~(L(xy))))))
といふことになる。
(09)
( )( )( )( )( )( )
のやうに、「丸括弧」だけでは読みにくいため、
( )〔 〕[ ]{ }〈 〉《 》
を用ゐることにする。
従って、
(08)(09)により、
(10)
① 無人不死=
① ~∃x(Mx&~Dx)=
① ~{∃x[M(x)&~〔D(x)〕]}
(11)
② 少年皆有其所愛少女=
② ∀x(Bx→∃y(Gy&Lxy))=
② ∀x[B(x)→∃y〔G(y)&L(xy)〕]
(12)
③ 或少女為全少年所愛=
③ ∃x(Gx&∀x(Bx→Lyx))=
③ ∃x[G(x)&∀y〔B(y)→L(yx)〕]
(13)
④ 無親不愛其子=
④ ∀x(Px→~∃y(Cyx&~Lxy))=
④ ∀x〈P(x)→~{∃y[C(yx)&~〔L(xy)〕]}〉
(14)
⑤ 非無親不愛其子=
⑤ ~∀x(Px→~∃y(Cyx&~Lxy))=
⑤ ~《∀x〈P(x)→~{∃y[C(yx)&~〔L(xy)〕]}〉》
然るに、
(15)
「記号」などというものは歴史的経緯や何やらの「人的な事情」に依存して決まっている便宜的なものにすぎず、数学の本質そのものではない。そして、現在一般的に使われている数学の記号は欧米起源のものなので、日本語とは「すれ違う」側面がある、というだけである。実際に、a+bの代わりに、日本語の「aとbを足す」という表現に応じて、ab+という記号で足し算を表しても支障はない。「ab+なんて思いっきりヘン」と感じるかもしれないが、それは「慣れていないだけ」である。その証拠に、ab+のような「日本語の語順に応じた記号」の体系が構成されていて、それが有益であることが実証されている。
(中島匠一、集合・写像・論理、2012年、190頁)
従って、
(10)(15)により、
(16)
① 無人不死=
① ~∃x(Mx&~Dx)=
① ~{∃x[M(x)&~〔D(x)〕]}=
① {[(x)M&〔(x)D〕~]∃x}~
(11)(15)により。
(17)
② 少年皆有其所愛少女=
② ∀x(Bx→∃y(Gy&Lxy))=
② ∀x[B(x)→∃y〔G(y)&L(xy)〕]=
② [(x)B→〔(y)G&(xy)L〕∃y]∀x
(12)(15)により、
(18)
③ 或少女為全少年所愛=
③ ∃x(Gx&∀x(Bx→Lyx))=
③ ∃x[G(x)&∀y〔B(y)→L(yx)〕]=
③ [(x)G&〔(y)B→(yx)L〕∀y]∃x
(13)(15)により、
(19)
④ 無親不愛其子=
④ ∀x(Px→~∃y(Cyx&~Lxy))=
④ ∀x〈P(x)→~{∃y[C(yx)&~〔L(xy)〕]}〉=
④ 〈(x)P→{[(yx)C&〔(xy)L〕~]∃y}~〉∀x
(14)(15)により、
(20)
⑤ 非無親不愛其子=
⑤ ~∀x(Px→~∃y(Cyx&~Lxy))=
⑤ ~《∀x〈P(x)→~{∃y[C(yx)&~〔L(xy)〕]}〉》=
⑤ 《〈(x)P→{[(yx)C&〔(xy)L〕~]∃y}~〉∀x》~
然るに、
(21)
① {[(x)M&〔(x)D〕~]∃x}~
といふ「述語論理」を、「日本語」に「逐語訳」すると、
① xは人であり、尚且つ、xは死なない。といふ、そのやうなxは存在しない。
(22)
② [(x)B→〔(y)G&(xy)L〕∃y]∀x
といふ「述語論理」を、「日本語」に「逐語訳」すると、
② xが少年であるならば、yは少女であり、尚且つ、xはyを愛する。といふ、そのやうなyが存在する。といふことは、全てのxに於いて、正しい。
cf.
② Every boy loves a certain girl.
(23)
③ [(x)G&〔(y)B→(yx)L〕∀y]∃x
といふ「述語論理」を、「日本語」に「逐語訳」すると、
③ xは少女であり、尚且つ、yが少年であるならば、yはxを愛する。といふことが、全てのyに於いて、正しい。といふ、そのやうなxが存在する。
cf.
③ There is a girl who is loved by all the boys.
(24)
④ 〈(x)P→{[(yx)C&〔(xy)L〕~]∃y}~〉∀x
といふ「記号」を、「日本語」に「逐語訳」すると、
④ xが親であるならば、yはxの子供であり、尚且つ、xはyを愛さない。といふ、そのやうなyが存在しない。といふことは、全てのxに於いて、正しい。
(25)
⑤ 《〈(x)P→{[(yx)C&〔(xy)L〕~]∃y}~〉∀x》~
といふ「記号」を、「日本語」に「逐語訳」すると、
⑤ xが親であるならば、yはxの子供であり、尚且つ、xはyを愛さない。といふ、そのやうなyが存在しない。といふことは、全てのxに於いて、正しい。とは言へない。
従って、
(16)~(25)により、
(26)
① ~∃x(Mx&~Dx)=
① ~{∃x[M(x)&~〔D(x)〕]}=
① {[(x)M&〔(x)D〕~]∃x}~=
① xは人であり、尚且つ、xは死なない。といふ、そのやうなxは存在しない。
は、「述語論理訓読」である。
(27)
② ∀x(Bx→∃y(Gy&Lxy))=
② ∀x[B(x)→∃y〔G(y)&L(xy)〕]=
② [(x)B→〔(y)G&(xy)L〕∃y]∀x=
② xが少年であるならば、yは少女であり、尚且つ、xはyを愛する。といふ、そのやうなyが存在する。といふことは、全てのxに於いて、正しい。
は、「述語論理訓読」である。
(28)
③ ∃x(Gx&∀x(Bx→Lyx))=
③ ∃x[G(x)&∀y〔B(y)→L(yx)〕]=
③ [(x)G&〔(y)B→(yx)L〕∀y]∃x=
③ xは少女であり、尚且つ、yが少年であるならば、yはxを愛する。といふことが、全てのyに於いて、正しい。といふ、そのやうなxが存在する。
は、「述語論理訓読」である。
(29)
④ ∀x(Px→~∃y(Cyx&~Lxy))=
④ ∀x〈P(x)→~{∃y[C(yx)&~〔L(xy)〕]}〉=
④ 〈(x)P→{[(yx)C&〔(xy)L〕~]∃y}~〉∀x=
④ xが親であるならば、yはxの子供であり、尚且つ、xはyを愛さない。といふ、そのやうなyが存在しない。といふことは、全てのxに於いて、正しい。
は、「述語論理訓読」である。
(30)
⑤ ~∀x(Px→~∃y(Cyx&~Lxy))=
⑤ ~《∀x〈P(x)→~{∃y[C(yx)&~〔L(xy)〕]}〉》=
⑤ 《〈(x)P→{[C(yx)&〔(xy)L〕~]∃y}~〉∀x》~=
⑤ xが親であるならば、yはxの子供であり、尚且つ、xはyを愛さない。といふ、そのやうなyが存在しない。といふことは、全てのxに於いて、正しい。とは言へない。
は、「述語論理訓読」である。
然るに、
(31)
① 無人不死=
① 無〔人不(死)〕⇒
① 〔人(死)不〕無=
① 人として死せ不るは無し。
は、「漢文訓読」である。
(32)
② 少年皆有其所愛少女=
② 少年皆有〔其所(愛)少女)〕⇒
② 少年皆〔其(愛)所少女)〕有=
② 少年皆其の愛する所の少女有り。
は、「漢文訓読」である。
(33)
③ 或少女為全少年所愛=
③ 或少女為〔全少年所(愛)〕⇒
③ 或少女〔全少年(愛)所〕為=
③ 或る少女全少年の愛する所と為る。
は、「漢文訓読」である。
(34)
④ 無親不愛其子=
④ 無[親不〔愛(其子)〕]⇒
④ [親〔(其子)愛〕不]無=
④ 親として其の子を愛せ不るは無し。
は、「漢文訓読」である。
(35)
⑤ 非無親不愛其子=
⑤ 非{無[親不〔愛(其子)〕]}⇒
⑤ {[親〔(其子)愛〕不]無}非=
⑤ 親として其の子を愛せ不る無きに非ず。
は、「漢文訓読」である。
従って、
(21)~(35)により、
(36)
① 無〔人不(死)〕。
② 少年皆有[其所〔愛(少女)〕]。
③ 或少女為〔全少年所(愛)〕。
④ 無[親〔不〔愛(其子)〕]。
⑤ 非{無[親不〔愛(其子)〕]}。
に対する、
① 無人不死。
② 少年皆有其所愛少女。
③ 或少女為全少年所愛。
④ 無親不愛其子。
⑤ 非無親不愛其子。
といふ「漢文」の場合は、「全ての括弧が、省略」されてゐるのに対して、
① ~{∃x[M(x)&~〔D(x)〕]}
② ∀x[B(x)→∃y〔G(y)&L(xy)〕]
③ ∃x[G(x)&∀y〔B(y)→L(yx)〕]
④ ∀x〈P(x)→~{∃y[C(yx)&~〔L(xy)〕]}〉
⑤ ~《∀x〈P(x)→~{∃y[C(yx)&~〔L(xy)〕]}〉》

に対する、
① ~∃x(Mx&~Dx)
② ∀x(Bx→∃y(Gy&Lxy))
③ ∃x(Gx&∀y(By→Lyx))
④ ∀x(Px→~∃y(Cyx&~Lxy))
⑤ ~∀x(Px→~∃y(Cyx&~Lxy))
といふ「述語論理」の場合は、
「述語」に続く( )と、
「否定」に続く( )が、「省略」されてゐる。
従って、
(36)により、
(37)
① ~∃x(Mx&~Dx)
② ∀x(Bx→∃y(Gy&Lxy))
③ ∃x(Gx&∀y(By→Lyx))
④ ∀x(Px→~∃y(Cyx&~Lxy))
⑤ ~∀x(Px→~∃y(Cyx&~Lxy))
といふ「述語論理」に、
① ~{∃x[M(x)&~〔D(x)〕]}
② ∀x[B(x)→∃y〔G(y)&L(xy)〕]
③ ∃x[G(x)&∀y〔B(y)→L(yx)〕]
④ ∀x〈P(x)→~{∃y[C(yx)&~〔L(xy)〕]}〉
⑤ ~《∀x〈P(x)→~{∃y[C(yx)&~〔L(xy)〕]}〉》
といふ「括弧」が有るやうに、
① 無人不死。
② 少年皆有其所愛少女。
③ 或少女為全少年所愛。
④ 無親不愛其子。
⑤ 非無親不愛其子。
といふ「漢文」にも、
① 無〔人不(死)〕。
② 少年皆有[其所〔愛(少女)〕]。
③ 或少女為〔全少年所(愛)〕。
④ 無[親〔不〔愛(其子)〕]。
⑤ 非{無[親不〔愛(其子)〕]}。
といふ「括弧」が、有ります。
然るに、
(38)
① 無〔人不(死)〕⇒
① 〔人(死)不〕無=
① 人として死せ不るは無し。
といふ「漢文」の場合は、
① 不[有〔人而不(死)〕]⇒
① [〔人而(死)不〕有]不=
① 人にして死せ不るは有ら不。
といふ「漢文」に等しい。
然るに、
(39)
① 不[有〔人而不(死)〕]
といふ「漢文」を、
① 不{有[人(x)而不〔死(x)〕]}
とすれば、
① 不{有[人(x)而不〔死(x)〕]}=
① ~{∃x[M(x)&~〔D(x)〕]}
といふ「等式」が、成立する。
従って、
(40)
① 不[有〔人而不(死)〕]
① ~{∃x[M(x)&~〔D(x)〕]}
に於いて、「異なる」のは、ただ単に、「x」といふ「変数の有無」だけである。
従って、
(41)
「漢文」は、「述語論理」のやうな「言語」である。
といふ、ことになる。
(42)
① 不[有〔人不(死)〕]。
といふ「漢文」に於ける、
① [〔( )〕]
をといふ「括弧」を「否定」することは、
① ~{∃x[M(x)&~〔D(x)〕]}
といふ「述語論理」に於ける、
① {[( )〔( )〕]}
といふ「括弧」を「否定」することに、等しい。

従って、
(42)により、
(43)


平成28年03月06日、毛利太。

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