(01)
「昨日(7月28日)の記事」で示した通り、
① 敢・・・
② 不敢・・・
は、それぞれ、
①「・・・する」ことは困難であっても「・・・する」。
②「・・・する」ことが困難であるため「・・・しない(出来ない)」。
といふ「意味」である。
然るに、
(02)
①「走」 =「逃げる」
②「不走」=「逃げない」
である。
従って、
(01)(02)により、
(03)
① 敢不走=「逃げない」ことは困難であっても「逃げない」。
② 不敢不走=「逃げない」ことは困難であるため「逃げないことをしない(出来ない)」。
然るに、
(04)
②「逃げないことをしない(出来ない)」。といふことは、
②「とどまることをしない(出来ない)」。といふことである。
従って、
(03)(04)により、
(05)
① 敢不走=「逃げない」ことは困難であっても「逃げない」。
② 不敢不走=「逃げない」ことは困難であるため「とどまることをしない(出来ない)」。
然るに、
(06)
① 敢不走=敢へて走らず。
③ 敢不走乎=敢へて走らざらんや。
に於いて、
③ は、① の「反語」である。
然るに、
(07)
反語とは、表現されている内容と反対のことを意味する言い方で、多くは疑問形と同じ形であり、けっきょく、肯定している場合は否定に、否定している場合は肯定の内容になる。
(赤塚忠・遠藤哲夫、漢文の基礎、45頁、1973年)
従って、
(06)(07)により、
(08)
① 敢不走=敢へて走らず。
② 不敢不走=敢へて走らずんばあらず。
③ 敢不走乎=敢へて走らざらんや。
に於いて、
②=③ である。
従って、
(05)(08)により、
(09)
① 敢不走=「逃げない」ことは困難であっても「逃げない」。
② 不敢不走=「逃げない」ことは困難であるため「とどまることをしない(出来ない)」。
③ 敢不走乎=「逃げない」ことは困難であるため「とどまることをしない(出来ない)」。
といふ、ことになる。
然るに、
(10)
① 虎求(百獣)而食(之)得(狐)。
② 狐曰子無〔敢食(我)〕也。
③ 天帝使〔我長(百獣)〕。
④ 今子食(我)是逆(天帝命)也。
⑤ 子以(我)為〔不(信)〕吾為(子)先行。
⑥ 子随(我後)観。
⑦ 百獣之見(我)而敢不(走)乎。
⑧ 虎以為(然)。
⑨ 故遂与(之)行。
⑩ 獣見(之)皆走。
⑪ 虎不[知〔獣畏(己)而走〕]也。
⑫ 以為〔畏(弧)〕也。
(11)
① 虎百獣を求めて之を食らひ狐を得たり。
② 狐曰く、子敢へて我を食らふこと無かれ也。
③ 天帝、我をして百獣に長たら使む。
④ 今子我を食らはば、是れ天帝の命に逆らふ也。
⑤ 子我を以て信なら不と為さば、吾子の為に先行せむ。
⑥ 子我が後に随ひて観よ。
⑦ 百獣之我を見て敢へて走ら不らん乎。
⑧ 虎以て然りと為す。
⑨ 故に遂に之与行く。
⑩ 獣之を見て皆走る。
⑪ 虎獣の己を畏れて走るを知ら不る也。
⑫ 以て狐を畏るると為す也。
(戦国策、虎の威を借る)
従って、
(09)(10)(11)により、
(12)
⑦ 百獣之見我而敢不走乎=
⑦ 百獣之見(我)而敢不(走)乎⇒
⑦ 百獣之(我)見而敢(走)不乎=
⑦ 百獣の(我を)見て敢へて(走ら)不らんや=
③ 百獣たちは、私を見ては、「逃げない」ことは困難であるため「とどまることをしない(出来ない)」。
といふ、ことになる。
然るに、
(13)
すべてのけだものたちは、わたしの(の姿)をみれば、必ず(おそれて)逃げ出すにちがいありません。
(赤塚忠・遠藤哲夫、漢文の基礎、39頁、1973年)
従って、
(01)~(13)により、
(14)
① 敢・・・
② 不敢・・・
は、それぞれ、
①「・・・する」ことは困難であっても「・・・する」。
②「・・・する」ことが困難であるため「・・・しない(出来ない)」。
といふ「意味」である。
とする「理解」は、「正しい」。
平成30年07月29日、毛利太。
(a)『返り点と括弧』については、『「括弧」の「順番」(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post.html)』他をお読み下さい。
(b)『返り点』については、『「返り点」の「付け方」を教へます(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-poslt_3.html)』他をお読み下さい。
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