(01)
① 君子は其の人を養ふ所以の者を以て人を害せず。
② 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害さない。
③ 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害する。といふことはしない。
④ 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のためであるならば、人々を害さない。
(02)
P=君子である。
Q=彼が人々を養うための手段である土地のために、
R=人々を害する。
従って、
(01)(02)により、
(03)
① 君子は其の人を養ふ所以の者を以て人を害せず。
② P→ (Q&~R)
③ P→~(Q& R)
④ P→ (Q→~R)
然るに、
(04)
②(Q&~R)=QであってRでない。
④(Q→~R)=Qならば、Rでない。
に於いて、
②=④ ではない。
従って、
(04)により、
(05)
② P→ (Q&~R)=Pならば、(QであってRでない)。
④ P→ (Q→~R)=Pならば、(Qならば、Rでない)。
に於いて、
②=④ ではない。
従って、
(01)~(05)により、
(06)
② 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害さない。
④ 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のためであるならば、人々を害さない。
に於いて、
②=④ ではない。
然るに、
(07)
(a)
1 (1)P→~(Q& R) A
2 (2)P A
12 (3) ~(Q& R) 12MPP
4 (4) Q A
5(5) R A
45(6) Q& R 45&
1245(7) ~(Q& R)&
(Q& R) 36&I
12 5(8) ~Q 47RAA
12 (9) R→~Q 58CP
1 (ア) P→(R→~Q) 29CP
(b)
1 (1) P→(R→~Q) A
2 (2) P A
12 (3) (R→~Q) 12MPP
4 (4) Q& R A
4 (5) R 4&E
124 (6) ~Q 35MPP
4 (7) Q 4&E
124 (8) Q&~Q 67&I
12 (9) ~(Q& R) 48RAA
1 (ア)P→~(Q& R) 29CP
従って、
(07)により、
(08)
③ P→~(Q& R)=Pならば、(QであってRである)といふことはない。
④ P→ (Q→~R)=Pならば、(Qならば、Rでない)。
に於いて、
③=④ である。
従って、
(01)(03)(08)により、
(09)
③ 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害する。といふことはしない。
④ 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のためであるならば、人々を害さない。
に於いて、
③=④ である。
従って、
(06)(09)により、
(10)
② 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害さない。
③ 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害する。といふことはしない。
④ 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のためであるならば、人々を害さない。
に於いて、
②=④ ではないが、
③=④ である。
従って、
(10)により、
(11)
② 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害さない。
③ 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害する。といふことはしない。
に於いて、
②=③ ではない。(Q.E.D)
然るに、
(12)
③ P→~(Q& R)=Pならば、(QであってRである)といふことはない。
③ 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害する。といふことはしない。
に於いて、
③ といふことはない。
といふ「否定」は、
③(QであってRである)
③ 彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害する。
に対する、「否定」である。
然るに、
(13)
「否定詞」前置の原則。打消しの言葉は、打ち消す語の前に置く(加藤徹、白文攻略 漢文ひとり学び、2013年、29頁改)。
従って、
(12)(13)により、
(14)
③ 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害する。といふことはしない。
といふ「語順」は、「漢文」であれば、
③ 君子であるならば、といふことはしない。彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害する。
といふ「語順」になる。
従って、
(14)により、
(15)
① 君子は其の人を養ふ所以の者を以て人を害せず。
③ 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害する。といふことはしない。
に於いて、
①=③ であるならば、
① 君子は其の人を養ふ所以の者を以て人を害せず。
とふ「訓読」は、「原文(漢文)」に於いては、
① 君子は+「否定詞」+其の人を養ふ所以の者を以て人を害す。
といふ「語順」になる。
従って、
(15)により、
(16)
① 君子は其の人を養ふ所以の者を以て人を害せず。
③ 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害する。といふことはしない。
に於いて、
①=③ であるならば、
① 君子は其の人を養ふ所以の者を以て人を害せず。
の「原文」である所の「漢文」の、「最初の3文字」は、
③ 君子不
でなければ、ならない。
然るに、
(17)
① 其の人を養ふ所以の者を以て人を害す。
といふ「訓読」は、
① 以其所以養人者害人。
といふ風に、「復文」出来る。
従って、
(16)(17)により、
(18)
① 君子は其の人を養ふ所以の者を以て人を害せず。
② 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害さない。
③ 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害する。といふことはしない。
に於いて、
①=② ではなく、
①=③ であるならば、
① 其の人を養ふ所以の者を以て人を害す。
といふ「訓読(孟子、梁恵王 下)」は、
③ 君子不以其所以養人害人。
といふ風に、「復文」出来る。(Q.E.D)
然るに、
(19)
③ 君子不以其所以養人者害人=
③ 君子不{以[其所-以〔養(人)〕者]害(人)}⇒
③ 君子{[其〔(人)養〕所-以者]以(人)害}不=
③ 君子は{[其の〔(人を)養ふ〕所-以の者を]以て(人を)害せ}ず=
③ 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害する。といふことはしない。
従って、
(18)(19)により、
(20)
① 君子は其の人を養ふ所以の者を以て人を害せず。
② 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害さない。
③ 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害する。といふことはしない。
に於いて、
①=② ではなく、
①=③ であるならば、
③ 君子不以其所以養人者害人=
③ 君子不{以[其所-以〔養(人)〕者]害(人)}⇒
③ 君子{[其〔(人)養〕所-以者]以(人)害}不=
③ 君子は{[其の〔(人を)養ふ〕所-以の者を]以て(人を)害せ}ず=
③ 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害する。といふことはしない。
といふ「漢文訓読」が、成立する。
然るに、
(21)
① 君子は其の人を養ふ所以の者を以て人を害せず。
② 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害さない。
③ 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害する。といふことはしない。
に於いて、
①=② であって、、
①=③ ではないならば、
② 君子以其所以養人者不害人=
② 君子以[其所-以〔養(人)〕者]不〔害(人)〕⇒
② 君子[其〔(人)養〕所-以者]以〔(人)害〕不=
② 君子は[其の〔(人を)養ふ〕所-以の者を]以て〔(人を)害せ〕ず=
② 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害さない。
といふ「訓読」が、成立する。
従って、
(20)(21)により、
(22)
③ 君子不以其所以養人者害人。
といふ「孟子の、原文」を見ない限り、
① 君子は其の人を養ふ所以の者を以て人を害せず。
といふ「訓読」の「原文」が、
② 君子以其所以養人者不害人。
であるのか、
③ 君子不以其所以養人者害人。
であるのかが、分からない。
従って、
(22)により、
(23)
① 君子は其の人を養ふ所以の者を以て人を害せず。
といふ「訓読」は、「曖昧」である。
然るに、
(24)
敢へて、
④ 君子不以其所以養人者害人=
④ 君子不{以[其所-以〔養(人)〕者]}害(人)。
とするならば、
④ 君子不以其所以養人者害人=
④ 君子不{以[其所-以〔養(人)〕者]}害(人)⇒
④ 君子{[其〔(人)養〕所-以者]以}不(人)害=
④ 君子は{[其の〔(人を)養ふ〕所-以の者を]以てせ}ずして(人を)害す=
④ 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のためではなく、人々を害す。
といふ「訓読」が、成立する。
従って、
(20)(21)(23)(24)により、
(25)
① 君子は其の人を養ふ所以の者を以て人を害せず。
といふ「訓読」は、「曖昧」であると、言ふのであれば、
③ 君子不以其所以養人者害人。
といふ「原文(漢文)」も、「曖昧」であると、言はざるを得ない。
然るに、
(26)
従って、
(25)(26)により、
(27)
① 君子は其の人を養ふ所以の者を以て人を害せず。
といふ「訓読」は、「曖昧」であって、
① 君子不以其所以養人者害人。
② 不有祝鮀之佞而有宋朝之美、難乎免於今之世矣。
といふ「漢文」は、「曖昧」である。
然るに、
(28)
① 君子不以其所以養人者害人=
① 君子不{以[其所-以〔養(人)〕者]害(人)}⇒
① 君子{[其〔(人)養〕所-以者]以(人)害}不=
① 君子は{[其の〔(人を)養ふ〕所-以の者を]以て(人を)害せ}ず=
① 君子であるならば、彼が人々を養ふための手段である土地のために、人々を害する。といふことはしない。
といふ「漢文訓読」は、「曖昧」ではない。
(29)
② 不有祝鮀之佞而有宋朝之美、難乎、免於今之世矣=
② 不{有(祝鮀之佞)而有(宋朝之美)}、難乎免(於今之世)矣⇒
② {(祝鮀之佞)有而(宋朝之美)有}不、難乎(於今之世)免矣=
② {(祝鮀の佞)有りて而も(宋朝の美)有ら}不んば、難いかな(今に世に)免るること。
② 祝鮀のやうな弁舌と、その上、宋朝のような美貌が無ければ、今の時世で、無事でゐることは、難しい。
といふ「漢文訓読」も、「曖昧」ではない。
従って、
(27)(28)(29)により、
(30)
① 君子不以其所以養人者害人。
② 不有祝鮀之佞而有宋朝之美、難乎免於今之世矣。
といふ「漢文」は、「曖昧」であるが、
① 君子不{以[其所-以〔養(人)〕者]害(人)}。
② 不{有(祝鮀之佞)、而有(宋朝之美)}難乎免(於今之世)矣。
といふ、「括弧」が付いてゐる「漢文」は、「曖昧」ではない。
平成31年01月19日、毛利太。
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