2019年1月25日金曜日

「雑説、韓愈」の「連言の否定」について(Ⅲ)。

(01)
(a)
1  (1)~(Q&P)  A
 2 (2)  Q     A
  3(3)    P   A
 23(4)  Q&P   23&I
123(5)~(Q&P)&
       (Q&P)  14&I
12 (6)   ~P   35RAA
1  (7) Q→~P   26CP
(b)
1 (1)  Q→~P   A
 2(2)  Q& P   A
 2(3)  Q      2&E    
 2(4)     P   2&E
12(5)    ~P   13MPP
12(6)  P&~P   45&I
1 (7)~(Q& P)  26RAA
(02)
(c)
1  (1) Q→~P   A
 2 (2)    P   A
  3(3) Q      A
1 3(4)   ~P   13MPP
123(5) P&~P   24&I
12 (6)~Q      35RAA
1  (7) P→~Q   26CP
(d)
1  (1) P→~Q   A
 2 (2)    Q   A
  3(3) P      A
1 3(4)   ~Q   13MPP
123(5) Q&~Q   24&I
12 (6)~P      35RAA
1  (7) Q→~P   26CP
従って、
(01)(02)により、
(03)
① ~(Q& P)=Qであって、Pである。といふことはない。
②   Q→~P =Qであるならば、Pでない。
③    P→~Q =Pであるならば、Qでない。
に於いて、
①=②=③ であるが、このとき、
①=②     を、「含意の定義」と言ひ、
  ②=③ を、   「対偶」と言ふ。
然るに、
(04)
1 (1)     Pである。          仮定
 2(2)QであってPである。といふことはない。 仮定
 2(3)Qならば、Pでない。          2含意の定義
 2(4)Pならば、Qでない。          3対偶
12(5)     Qでない。          14前件肯定。
∴ (6)Pである。QであってPである。といふことはない。├ Qでない。 
従って、
(04)により、
(05)
(a)
1 (1)  P     A
 2(2)~(Q& P) A
 2(3)  Q→~P  2含意の定義
 2(4)  P→~Q  3対偶
12(5)    ~Q  14MPP
∴ (6)P,~(Q&P)├ ~Q
従って、
(04)(05)により、
(06)
① Pである。QであってPである。といふことはない。├ Qでない。 
といふ「連式(sequent)」、すなはち、
① P,~(P&Q)├ ~Q
といふ「連式(sequent)」は、「妥当(valid)」である。
然るに、
(07)
(b)
1(1)P&~(Q&P) A
1(2)P        1&E
1(3)  ~(Q&P) 1&E
1(4)   Q→~P  3含意の定義
1(5)   P→~Q  4対偶
1(6)     ~Q  25MPP
1(7)   P&~Q  26&I
∴(8)P&~(Q&P)├ P&~Q
(b)
1(1)P&~(Q)&P A
1(2)P        1&E
1(3)   ~Q    1&E
1(4)P& ~Q    23&I
∴(5)P&~(Q)&P├ P&~Q
従って、
(07)により、
(08)
① P&~(Q&P)├ P&~Q
② P&~(Q)&P├ P&~Q
といふ「連式(sequents)」は、「妥当(valid)」である。
従って、
(06)(08)により、
(09)
① P,~(P&Q)├ ~Q
① P&~(Q&P)├ P&~Q
② P&~(Q)&P├ P&~Q
といふ「連式(sequents)」は、「妥当(valid)」である。
従って、
(09)により、
(10)
① P,~(Q&P)├ P&~Q
② P,~(Q)&P├ P&~Q
といふ「連式(sequents)」は、「妥当(valid)」である。
然るに、
(11)
~ = 不
& = 而
├ = 故、
である。
従って、
(12)
「論理式」は、「漢字」で書くことが、出来る。
従って、
(10)(11)(12)により、
(13)
① P、不(Q而P)。故、P、不Q。
② P、不(Q)而P。故、P、不Q。
といふ「連式(sequents)」は、「妥当(valid)」である。
従って、
(13)により、
(14)
P=食馬(馬を養ふ)。
Q=知其能千里(其の能の千里なるを知る)。
であるとして、
① 食馬、不〔知其能千里而食馬〕。故、食馬、不〔知其能千里〕。
② 食馬、不〔知其能千里〕而食馬。故、食馬、不〔知其能千里〕。
といふ「連式(sequents)」は、「妥当(valid)」である。
然るに、
(15)
馬を養ふ者(食馬者) は、当然、
馬を養ふ (食馬)。
従って、
(14)(15)により、
(16)
① 食馬者、不〔知其能千里而食馬〕。故、食馬者、不〔知其能千里〕。
② 食馬者、不〔知其能千里〕而食馬。故、食馬者、不〔知其能千里〕。
といふ「連式(sequents)」は、「妥当(valid)」である。
然るに、
(17)
(ⅰ)
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也。
に於いて、
① 食( )⇒( )食
① 不〔 〕⇒〔 〕不
① 知( )⇒( )知
といふ「移動」を行ふと、
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也⇒
① (馬)食者、〔(其能千里)知而食〕不也=
① (馬を)食ふ者は、〔(其の能の千里なるを)知りて食は〕ざるなり=
① 馬を養ふ者は、〔(其の馬の能力が千里であることを)知って養ふ。〕といふわけではないのだ。
(ⅱ)
② 食(馬)者、不〔知(其能千里)〕而食也。
に於いて、
② 食( )⇒( )食
② 不〔 〕⇒〔 〕不
② 知( )⇒( )知
といふ「移動」を行ふと、
② 食(馬)者、不〔知(其能千里)〕而食也⇒
② (馬)食者、〔(其能千里)知〕不而食也=
② (馬を)食ふ者は、〔(其の能の千里なるを)知ら〕ずして食ふなり=
② 馬を養ふ者は、〔(其の馬の能力が千里であること)を知ら〕ずに養ふ。のだ。
(ⅲ)
③ 食(馬)者、不〔知(其能千里)〕也。
に於いて、
③ 食(馬)⇒( )食
③ 不〔 〕⇒〔 〕不
③ 知( )⇒( )知
といふ「移動」を行ふと、
③ 食(馬)者、不〔知(其能千里)〕也⇒
③ (馬)食者、〔(其能千里)知〕不也=
③ (馬)を食ふ者は、〔(其の能の千里なるを)知ら〕ざるなり=
③ (馬)を養ふ者は、〔(其の馬の能力が千里であることを)知ら〕ないのだ=
② 馬を養ふ者は、〔(其の馬の能力が千里であること)を知ら〕ずに養ふ。のだ。
cf.
① P&~(Q&P)├ P&~Q
② P&~(Q)&P├ P&~Q
③ P&~(Q)  ├ P&~Q
従って、
(16)(17)により、
(18)
① 食馬、不〔知其能千里而食馬〕。故、食馬、不〔知其能千里〕。
② 食馬、不〔知其能千里〕而食馬。故、食馬、不〔知其能千里〕。
といふ「連式(sequents)」は、「妥当(valid)」である。が故に、
① 馬を養ふ者は、〔其の馬の能力が千里であることを知って養ふ。〕といふわけではないのだ。故に、馬を養ふ者は、〔其の馬の能力が千里であることを知ら〕ないのだ。
② 馬を養ふ者は、〔其の馬の能力が千里であることを知ら〕ずに養ふ。のだ。故に、馬を養ふ者は、〔其の馬の能力が千里であることを知ら〕ないのだ。
といふ「連式(sequents)」は、「妥当(valid)」である。
然るに、
(19)
① 食馬者、不〔知其能千里而食馬〕。故、食馬者、不〔知其能千里〕。
② 食馬者、不〔知其能千里〕而食馬。故、食馬者、不〔知其能千里〕。
といふ「連式(sequents)」の「結論(conclision)」が、両方とも、
①                 故、食馬者、不〔知其能千里〕。
②                 故、食馬者、不〔知其能千里〕。
である。といふことからすると、
① 食馬者、不〔知其能千里而食馬〕。
② 食馬者、不〔知其能千里〕而食馬。
といふ「前提(premisses)」に於いて、
①=② であるとしも、ヲカシクはない。
然るに、
(20)
① 馬を養ふ者は、其の馬の能力が千里であることを知って養ふ。といふわけではない。
といふのであれば、
② 馬を養ふ者は、其の馬の能力が千里であることを知らずに、養ふ。
といふことになるし、
② 馬を養ふ者は、其の馬の能力が千里であることを知らずに、養ふ。
といふのであれば、
① 馬を養ふ者は、其の馬の能力が千里であることを知って養ふ。といふわけではない。
といふ、ことになる。
従って、
(18)(19)(20)により、
(21)
① 食馬、不〔知其能千里而食馬〕。故、食馬、不〔知其能千里〕。
② 食馬、不〔知其能千里〕而食馬。故、食馬、不〔知其能千里〕。
といふ「連式(漢文)」は、「結論」が「等しい」が故に、
① 食馬、不〔知其能千里而食馬〕。
② 食馬、不〔知其能千里〕而食馬。
といふ「漢文(命題)」は、「同じ」であると、すべきである。
従って、
(17)(21)により、
(22)
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也。⇔(馬を)食ふ者は、〔(其の能の千里なるを)知りて食は〕ざるなり。
② 食(馬)者、不〔知(其能千里)〕而食也。⇔(馬を)食ふ者は、〔(其の能の千里なるを)知ら〕ずして食ふなり。
といふ「二つの、漢文訓読」は、「書き下し文」は違ってゐても、「意味」としては、「同じ」である。
然るに、
(23)
◆ 不 其能千里 而食 也 この句は、別に、
a「不 其能千里 而食  也」と返り点をつけて「その能の千里なるを知らずして食ふなり。」(=その能力が千里もあるのを知らずに養っている。)と訓読することができる(赤塚忠・遠藤哲夫、漢文の基礎、1973、156頁)。
従って、
(22)(23)により、
(24)
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也。
② 食(馬)者、不〔知(其能千里)〕而食也。
といふ「漢文」に対する、
① 不 其能千里 而食 也。
② 不 其能千里 而食  也。
といふ「二つの、返り点」は、「意味としては同じである。」といふ、ことからすれば、「どちらでも良い」。
平成31年01月26日、毛利太。

0 件のコメント:

コメントを投稿