2019年1月23日水曜日

「雑説、韓愈」と「連言の否定」について。

(01)
(a)
1  (1)~(P&Q)  A
 2 (2)    Q   A
  3(3)  P     A
 23(4)  P&Q   23&I
123(5)~(P&Q)&
       (P&Q)  14&I
12 (6) ~P     35RAA
1  (7) Q→~P   26CP
(b)
 1 (1) Q→~P  A
  2(2) P& Q  A
  2(3) P     2&E
  2(4)    Q  2&E
 12(5)   ~P  14MPP
 12(6) P&~P  35&I
 1 (7)~(P&Q) 26RAA
従って、
(01)により、
(02)
① ~(P& Q)
②   Q→~P
に於いて、
①=② である。
ものの、このこと(トートロジー)を仮に、『連言否定』といふ風に、呼ぶことにする。
然るに、
(03)
1 (1)  Q     A
 2(2)~(P& Q) A
 2(3)  Q→~P  2連言の否定
12(4)    ~P  13MPP
12(5) ~P& Q  14&I
然るに、
(04)
P=其の能の千里なるを知る。
Q=馬を養ふ。
従って、
(03)(04)により、
(05)
1 (1)馬を養ふ。                        A
 2(2)其の能の千里なるを知って、馬を養ふ。といふわけではない。 A
 2(3)馬を養ふならば、其の能の千里なるを知らない。       2連言否定
12(4)        其の能の千里なるを知らない。       13MPP
12(5)其の能の千里なるを知らずして、馬を養ふ。         14&I
従って、
(05)により、
(06)
① 馬は養ふが、其の能の千里なるを知って、馬を養ふ。といふわけではない。
② 其の能の千里なるを知らずして、馬を養ふ。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(07)
① 馬は養ふが、其の能の千里なるを知って、馬を養ふ。といふわけではない。
② 其の能の千里なるを知らずして、馬を養ふ。
に於いて、
①「馬を養ふ」の「主語」は、「馬を養ふ者」であって、
②「馬を養ふ」の「主語」は、「馬を養ふ者」である。
従って、
(06)(07)により、
(08)
① 馬を養ふ者は、其の能の千里なるを知って、馬を養ふ。といふわけではない。
② 馬を養ふ者は、其の能の千里なるを知らずして、馬を養ふ。
といふ「意味」に於いて、
①=② である。
然るに、
(09)
① 馬を養う者は、其の能の千里なるを知って、馬を養ふ。といふわけではない。のだ。
② 馬を養う者は、其の能の千里なるを知らずして、馬を養ふ。のだ。
といふ「日本語」を、「漢文」に「訳す」際は、
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也。
② 食(馬)者、不〔知(其能千里)〕而食也。
といふ風に、「訳す」ことになる。
然るに、
(10)
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也。
に於いて、
① 食( )⇒( )食
① 不〔 〕⇒〔 〕不
① 知( )⇒( )知
といふ「移動」を行ふと、
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也⇒
① (馬)食者、〔(其能千里)知而食〕不也=
① (馬を)食ふ者は、〔(其の能の千里なるを)知りて食は〕ざるなり。
(11)
② 食(馬)者、不〔知(其能千里)〕而食也。
に於いて、
② 食( )⇒( )食
② 不〔 〕⇒〔 〕不
② 知( )⇒( )知
といふ「移動」を行ふと、
② 食(馬)者、不〔知(其能千里)〕而食也⇒
② (馬)食者、〔(其能千里)知〕不而食也=
② (馬を)食ふ者は、〔(其の能の千里なるを)知ら〕ずして食ふなり。
(12)
③ 食(馬)者、知(其能千里)而不(食)也。
に於いて、
③ 食( )⇒( )食
③ 知( )⇒( )知
③ 不( )⇒( )不
といふ「移動」を行ふと、
③ 食(馬)者、知(其能千里)而不(食)也⇒
③ (馬)食者、(其能千里)知而(食)不也=
③ (馬を)食ふ者は、(其の能の千里なるを)知りて(食は)ざるなり。
従って、
(10)(11)(12)により、
(13)
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也。
② 食(馬)者、不〔知(其能千里)〕而食也。
③ 食(馬)者、知(其能千里)而不(食)也。
に対する「訓読」は、
① (馬を)食ふ者は、〔(其の能の千里なるを)知りて食は〕ざるなり。
② (馬を)食ふ者は、〔(其の能の千里なるを)知ら〕ずして食ふなり。
③ (馬を)食ふ者は、(其の能の千里なるを)知りて(食は)ざるなり。
である。
然るに、
(14)
① (馬を)食ふ者は、〔(其の能の千里なるを)知りて食は〕ざるなり。
③ (馬を)食ふ者は、(其の能の千里なるを)知りて(食は)ざるなり。
に於いて、
③ であれば、
③ (馬を)食ふ者は、(其の能の千里なるを)知ってゐる。
従って、
(08)(13)(14)により、
(15)
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也。
② 食(馬)者、不〔知(其能千里)〕而食也。
③ 食(馬)者、知(其能千里)而不(食)也。
に対する「訓読」は、
① (馬を)食ふ者は、〔(其の能の千里なるを)知りて食は〕ざるなり。
② (馬を)食ふ者は、〔(其の能の千里なるを)知ら〕ずして食ふなり。
③ (馬を)食ふ者は、(其の能の千里なるを)知りて(食は)ざるなり。
であるが、「意味」としては、それぞれ、
① (馬を)食ふ者は、(其の能の千里なるを)知らないで、食ふ。
② (馬を)食ふ者は、(其の能の千里なるを)知らないで、食ふ。
③ (馬を)食ふ者は、(其の能の千里なるを)知ってゐて、食ふ。
といふ、ことになる。
従って、
(15)により、
(16)
① 食馬 者、不 其能千里 而食 也=馬を食ふ者は、其の能の千里なるを知りて食はざるなり。
② 食馬 者、不 其能千里 而食 也=馬を食ふ者は、其の能の千里なるを知らずして食ふなり。
③ 食馬 者知 其能千里 而不食 也=馬を食ふ者は、其の能の千里なるを知りて食はざるなり。
といふ「漢文訓読」に於いて、「意味」に関しては、
①=② であって、      「訓読」に関しては、
①=③ である。
従って、
(16)により、
(17)
① 食馬 者、不 其能千里 而食 也。
② 食馬 者、不 其能千里 而食 也。
③ 食馬 者知 其能千里 而不食 也。
といふ「漢文」に於いて、「それぞれの、3つの漢文の意味は、違って来る。」といふことには、ならない。
然るに、
(18)

従って、
(17)(18)により、
(19)
① 食馬 者、不 其能千里 而食 也。
② 食馬 者、不 其能千里 而食 也。
③ 食馬 者知 其能千里 而不食 也。
に於ける、「それぞれの、3つの漢文の意味は、違って来る。」といふ、62年前の、中西先生による、「説明」は、「正しく」はない
然るに、
(20)
1   (1) P      A
 2  (2)    P   A
  3 (3)~(Q&P)  A
   4(4)  Q     A
 2 4(5)  Q&P   24&
 234(6)~(Q&P)&
        (Q&P)  35&I
 23 (7) ~Q     46RAA
  3 (8) P→~Q   27CP
1 3 (9)   ~Q   18MPP
∴   (ア)P,~(Q&P)├ ~Q
従って、
(20)により、
(21)
① P,~(Q&P)├ ~Q
といふ「連式(sequent)」は、「妥当(valid)」である。
従って、
(22)
P=馬を養ふ。
Q=其の能の千里なるを知る。
であるとして、
① 馬を養ふ、~(其の能の千里なるを知る。&馬を養ふ。)├ ~(其の能の千里なるを知る)。
といふ「連式(sequent)」は、「妥当(valid)」である。
従って、
(22)により、
(23)
① 馬を養ふ、其の能の千里なるを知るって馬を養ふ。といふことはない。故に、其の能の千里なるを知らない。
といふ「連式(sequent)」は、「妥当(valid)」である。
然るに、
(24)
① 馬を養ふ、其の能の千里なるを知って馬を養ふ。といふことはない。故に、其の能の千里なるを知らない。
に於いて、
①「養ふ」の「主語」は、「馬を養ふ者」であって、
①「知る」の「主語」も、「馬を養ふ者」である。
従って、
(23)(24)により、
(25)
① 馬を養ふ者は、其の能の千里なるを知って馬を養ふ。といふことはない。故に、馬を養ふ者は、其の能の千里なるを知らずに、馬を養ふ。
といふ「連式(sequent)」は、「妥当(valid)」である。
然るに、
(26)
② 馬を養ふ者は、其の能の千里なるを知らずに、馬を養ふ。故に、馬を養ふ者は、其の能の千里なるを知って馬を養ふ。といふことはない。
といふ「連式(sequent)」も、「妥当(valid)」である。
従って、
(25)(26)により、
(27)
① 馬を養ふ者は、其の能の千里なるを知って養ふ。といふことはない。
② 馬を養ふ者は、其の能の千里なるを知らずに、養ふ。
に於いて、
①=② である。
従って、
(15)(27)により、
(28)
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也=馬を養ふ者は、其の能の千里なるを知るって養ふ。といふことはない。
② 食(馬)者、不〔知(其能千里)〕而食也=馬を養ふ者は、其の能の千里なるを知らずに、養ふ。
に於いて、
①=② である。
従って、
(16)(28)により、
(29)
いづれにせよ、
① 食馬 者、不 其能千里 而食 也=馬を食ふ者は、其の能の千里なるを知りて食はざるなり。
② 食馬 者、不 其能千里 而食 也=馬を食ふ者は、其の能の千里なるを知らずして食ふなり。
といふ「漢文訓読」に於いて、「意味」に関しては、
①=② である。
然るに、
(29)により、
(30)
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也=馬を養ふ者は、其の能の千里なるを知るって養ふ。といふことはない。
② 食(馬)者、不〔知(其能千里)〕而食也=馬を養ふ者は、其の能の千里なるを知らずに、養ふ。
に於いて、
①=② である。としても、
① 不〔知(其能千里)而食〕也=其の能の千里なるを知るって養ふ。といふことはない。
② 不〔知(其能千里)〕而食也=其の能の千里なるを知らずに、養ふ。
に於いて、
①=② である。といふ、わけではない。
然るに、
(31)
① 不〔知(其能千里)而食〕。
② 不〔知(其能千里)〕而食。
といふ「漢文」は、
① ~〔知(其能千里)&食〕。
② ~〔知(其能千里)〕&食。
といふ風に、書くことが出来る。
従って、
(31)により、
(32)
P=知(其能千里)
Q=食
であるとして、
① 不〔知(其能千里)而食〕。
② 不〔知(其能千里)〕而食。
といふ「漢文」は、
① ~(P&Q)。
② ~(P)&Q。
といふ風に、書くことが出来る。
然るに、
(33)
① ~(P&Q)。
② ~(P)&Q。
といふ「式」は、『連言否定』である。
然るに、
(34)
任意の表述の否定は、その表述を’~(  )’という空所にいれて書くことにしよう;しかし丸括弧はその内部が連言でないかぎり削除しよう(W.O.クワイン著、杖下隆英訳、現代論理学入門、1972年、15頁)。
従って、
(33)(34)により、
(35)
クワイン先生は、
① ~(P&Q)。
② ~(P)&Q。
といふ「連言」を、
① ~P&Q。
② ~P&Q。
といふ風に、書くべきではない。
といふ風に、述べてゐる。
すなはち、
(36)
① ~P&Q。
② ~P&Q。
といふ風に、書いてしまふと、
① ~(P&Q)。
② ~(P)&Q。
に於いて、
① であるのか、
② であるのか、「区別がつかない」が故に、
① ~(P&Q)。
② ~(P)&Q。
といふ「連言」は、
① ~P&Q。
② ~P&Q。
といふ風に、書いてはいけない。
といふ風に、クワイン先生は、言ってゐる。
従って、
(32)(36)により、
(37)
① 不〔知(其能千里)而食〕。
② 不〔知(其能千里)〕而食。
といふ「漢文(連言)」は、
① 不知其能千里而食。
② 不知其能千里而食。
といふ風に、書いてはいけない。
といふ風に、クワイン先生は、言ってゐる。
従って、
(37)により、
(38)
① 不(知其能千里而食)=其の能の千里なるを知りて食はざるなり。
② 不(知其能千里)而食=其の能の千里なるを知らずして食ふなり。
といふ「2通りの訓読」がなされる「所以」は、クワイン先生の立場からすれば、「漢文の側」にあるのであって、「訓読の側」にあるわけではない。
従って、
(38)により、
(39)
① 不知其能千里而食。
② 不知其能千里而食。
といふ「1通りの、漢文」に対して、
① 其の能の千里なるを知りて食はざるなり。
② 其の能の千里なるを知らずして食ふなり。
といふ「2通りの、訓読」があるからと言って、そのことが、「漢文訓読」の「欠点」になってゐる。
といふわけではない
平成31年01月23日、毛利太。

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