2019年1月21日月曜日

「返り点」と「括弧」の関係。

(01)
①〈 { 〔 ( ) 〕[ 〔 ( ) 〕 ] } 〉
②  { 〔 ( ) 〕[ 〔 ( ) 〕 ] } 〉
③〈 { 〔 ( ) 〕[ 〔 ( ) 〕 ] }
に於いて、
① に対して、② であれば、〈 が「不足」し、
① に対して、③ であれば、 〉が「不足」する。
従って、
(01)により、
(02)
①( ( ( ( ) )( ( ( ) ) ) ) )
②  ( ( ( ) )( ( ( ) ) ) ) )
③( ( ( ( ) )( ( ( ) ) ) )
に於いて、
① に対して、② であれば、( が「不足」し、
① に対して、③ であれば、 )が「不足」する。
然るに、
(03)
②{ 〔 ( ) 〕[ 〔 ( ) 〕 ] } 〉
③〈 { 〔 ( ) 〕[ 〔 ( ) 〕 ] }
に対して、
②( ( ( ) )( ( ( ) ) ) ) )
③( ( ( ( ) )( ( ( ) ) ) )
の場合は、「括弧」の「過不足」が、「極めて、見えにくい」。
従って、
(01)(02)(03)により、
(04)
①〈 { 〔 ( ) 〕[ 〔 ( ) 〕 ] } 〉
に対する、
①( ( ( ( ) )( ( ( ) ) ) ) )
の場合は、「極めて、読みにくく」、それ故、「役に立たない」。
従って、
(04)により、
(05)
(ⅰ)( )
(ⅱ)〔 〕
(ⅲ)[ ]
(ⅳ){ }
(ⅴ)〈 〉
に於いて、
(ⅴ)が有るならば、その中には、(ⅳ)が有り、
(ⅳ)が有るならば、その中には、(ⅲ)が有り、
(ⅲ)が有るならば、その中には、(ⅱ)が有り、
(ⅱ)が有るならば、その中には、(ⅰ)が有る。
といふ「条件」を満たすならば、そのときに限って、『括弧』である。とする。
然るに、
(06)
① 3 2 1=
① 3〔2(1)〕。
に於いて、
① 2( )⇒( )2
① 3〔 〕⇒〔 〕3
といふ「移動」を行ふと、
① 3〔2(1)〕⇒
① 〔(1)2〕3=
①   1 2 3。
(07)
② 2 3 1=
② 2(3〔1)〕。
に於いて、
① 2( )⇒( )2
① 3〔 〕⇒〔 〕3
といふ「移動」を行ふと、
② 2(3〔1)〕⇒
② (〔1)2〕3=
②     1 2 3。
然るに、
(05)により、
(08)
①〔 ( ) 〕
②(  ) 〕
に於いて、
① は『括弧』であるが、
② は『括弧』ではない
(09)
③ 4 3 2 1=
③ 4[3〔2(1)〕]。
に於いて、
③ 2( )⇒( )2
③ 3〔 〕⇒〔 〕3
③ 4[ ]⇒[ ]4
といふ「移動」を行ふと、
③ 4[3〔2(1)〕]⇒
③ [〔(1)2〕3]4=
③    1 2 3 4。
(10)
④ 2 3 4 1=
④ 2(3〔4[1)〕]。
に於いて、
④ 2( )⇒( )2
④ 3〔 〕⇒〔 〕3
④ 4[ ]⇒[ ]4
④ 2(3〔4[1)〕]⇒
④ (〔[1)2〕3]4=
④    1 2 3 4。
(11)
⑤ 2 4 3 1=
⑤ 2(4[3〔1)〕]。
に於いて、
⑤ 2( )⇒( )2
⑤ 3〔 〕⇒〔 〕3
⑤ 4[ ]⇒[ ]4
⑤ 2(4[3〔1)〕]⇒
⑤ ([〔1)2〕3]4=
⑤    1 2 3 4。
然るに、
(05)により、
(12)
③[ 〔 (  )〕 ]
④(  ) 〕 ]
⑤(  ) 〕 ]
に於いて、
③ は『括弧』であるが、
④ は『括弧』ではなく
⑤ も『括弧』ではない
従って、
(06)~(12)により、
(13)
『括弧』は、
② 2<3  >1
④ 2<3 4>1
⑤ 2<4 3>1
といふ「順番」を、
② 1<2<3
④ 1<2<3<4
⑤ 1<2<3<4
といふ「順番」に「並び替へ(ソート)す」ることが、出来ない
従って、
(13)により、
(14)
A、B、C が、「正の整数」であるとき、『括弧』は、
B<C>A &(B=A+1)
といふ「順番」を、
A<B<C
といふ「順番」に「並び替へ(ソート)す」ることが、出来ない
然るに、
(15)
『返り点』は、
「下から上へ、返る点」であって、
からへ、戻る点」ではない
然るに、
(16)
例へば、
② 二<三>一
の場合は、
二 二
↑ ↓
↑ 三


であるため、
  二
  ↓
  三
に於いて、「上から下へ、戻ってゐる」。
従って、
(13)~(16)により、
(17)
② 二 三 一
③ 二 三 四 一
④ 二 四 三 一
といふ「これら」は、『返り点』ではない
然るに、
(18)
上中下点(上・下、上・中・下)は、
一二点だけで示しきれない場合。必ず一二点をまたいで返る場合に用いる。数学の式における( )が一二点で、{ }が上中下点に相当するものと考えるとわかりやすい。
(原田種成、私の漢文講義、1995年、43頁改)
従って、
(18)により、
(19)
(ⅰ)一 二 三 四 五 ・ ・ ・ ・ ・
(ⅱ)上 中 下
に於いて、
(ⅰ)を挟んで「返る」場合に、
(ⅱ)を用ひ、
(ⅱ)を挟んで「返る」場合には、
(ⅰ)を用ひない。
従って、
(19)により、
(20)
⑥ 下 三 二 一 中 三 二 一 上
⑦ 三  二 一 中 三 二 一 上
に於いて、
⑥ は、『返り点』として、「正しい」ものの、例へば、
⑦ は、『返り点』として、「正しくない」。
然るに、
(21)
⑥ 下 三 二 一 中 三 二 一 上
⑦ 三  二 一 中 三 二 一 上
といふ「順番」は、
⑥ 9 3 2 1 8 6 5 4 7
⑦ 3  2 1 8 6 5 4 7
といふ「順番」に「等しい」。
然るに、
(22)
⑥ 9 3 2 1 8 6 5 4 7=
⑥ 9{3〔2(1)〕8[6〔5(4)〕7]}。
に於いて、
⑥ 2( )⇒( )2
⑥ 3〔 〕⇒〔 〕3
⑥ 5( )⇒( )5
⑥ 6〔 〕⇒〔 〕6
⑥ 8[ ]⇒[ ]8
⑥ 9{ }⇒{ }9
といふ「移動」を行ふと、
⑥ 9{3〔2(1)〕8[6〔5(4)〕7]}⇒
⑥ {〔(1)2〕3[〔(4)5〕67]8}9=
⑥ 1 2 3 4 5 6 7 8 9。
然るに、
(23)
⑥{ 〔 ( ) 〕[ 〔 ( ) 〕 ] }
は、『括弧』であって、尚且つ、
⑥ 9 3 2 1 8 6 5 4 7
の中には、
⑥ B<C>A &(B=A+1)
といふ「順番」がない。
然るに、
(24)
⑦ 3  2 1 8 6 5 4 7= 
⑦ 3〔{2(1)〕8[6〔5(4)〕7]}。
に於いて、
⑥ 2( )⇒( )2
⑥ 3〔 〕⇒〔 〕3
⑥ 5( )⇒( )5
⑥ 6〔 〕⇒〔 〕6
⑥ 8[ ]⇒[ ]8
⑥ 9{ }⇒{ }9
といふ「移動」を行ふと、
⑦ 3〔{2(1)〕8[6〔5(4)〕7]}⇒
⑦ 〔{(1)2〕3[〔(4)5〕67]8}9=
⑦ 1 2 3 4 5 6 7 8 9。
然るに、
(25)
⑦〔 ( ) 〕[ 〔 ( ) 〕 ] }
は、『括弧』ではなく、尚且つ、
⑦ 3<>2 1 8 6 5 4 7
の中には、
⑦ B<C>A &(B=A+1)
といふ「順番」がある。
従って、
(19)~(25)により、
(26)
(ⅰ)一 二 三 四 五 ・ ・ ・ ・ ・
(ⅱ)上 中 下
に於いて、
(ⅰ)を挟んで「返る」場合に、
(ⅱ)を用ひ、
(ⅱ)を挟んで「返る」場合には、
(ⅰ)を用ひない。
といふ「ルール」に「違反」しないならば、そのときに限って、
(ⅰ)一 二 三 四 五 ・ ・ ・ ・ ・
(ⅱ)上 中 下
が付く「順番」に対しては、『括弧』を付けることが、出来る。
然るに、
(27)
(ⅰ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
(ⅱ)上 中 下
(ⅲ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(ⅳ)天 地 人
に於ける、
(ⅰ)と(ⅱ)の「関係」は、
(ⅱ)と(ⅲ)の「関係」に「等しく」、
(ⅱ)と(ⅲ)の「関係」は、
(ⅲ)と(ⅳ)の「関係」に「等しい」。
従って、
(26)(27)により、
(28)
(ⅰ)( )
(ⅱ)〔 〕
(ⅲ)[ ]
(ⅳ){ }
(ⅴ)〈 〉
といふ『5種類の、括弧』で、「不足」が生じない限り、
(ⅰ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
(ⅱ)上 中 下
(ⅲ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(ⅳ)天 地 人
といふ『返り点』で表すことが出来る「順番」は、『括弧』でも、表すことが出来る。
然るに、
(29)
(ⅵ)レ 一レ 上レ 甲レ 天レ
といふ「レ点」は、「1つ上にしか、返らない」。
従って、
(15)(29)により、
(30)
例へば、
⑧ 下 二 一 中 上
⑨ 下 二 一 中 上レ
に於ける、
⑨ に於いて、
  下
二 ↑
↑ ↑
一 ↑
  中
  ↑
  上
  ↑
  レ
であるため、
⑧ は、「にしか、返らず」、
⑨ も、「にしか、返らない」。
従って、
(15)(28)(30)により、
(31)
(ⅰ)( )
(ⅱ)〔 〕
(ⅲ)[ ]
(ⅳ){ }
(ⅴ)〈 〉
といふ『5種類の、括弧』で、「不足」が生じない限り、
(ⅰ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
(ⅱ)上 中 下
(ⅲ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(ⅳ)天 地 人
(ⅴ)レ 一レ 上レ 甲レ 天レ
といふ『返り点』で表すことが出来る「順番」は、『括弧』でも、表すことが出来る。
然るに、
(32)

然るに、
(33)
⑧ 何不〈令{人謂(韓公叔)曰[秦之敢絶(周)而伐(韓)者、信(東周)也、公何不〔与(周地)発(質使)之(楚)〕。秦必疑(楚)、不〔信(周)〕。是韓不(伐)也]、又謂(秦)曰[韓彊与(周地)、将〔以疑(周於秦)〕也。周不〔敢不(受)〕]}〉⇒
⑧ 何〈{人(韓公叔)謂[秦之敢(周)絶而(韓)伐者、(東周)信也、公何〔(周地)与(質使)発(楚)之〕不。秦必(楚)疑、〔(周)信〕不。是韓(伐)不也]曰、又(秦)謂[韓彊(周地)与、将〔以(周於秦)疑〕也。周〔敢(受)不〕不]曰}令〉不=
⑧ 何ぞ〈{人をして(韓の公叔に)謂ひて[秦の敢へて(周)を絶って(韓を)伐たんとするは、(東周を)信ずればなり、公何ぞ〔(周に地を)与へ(質使を)発して(楚に)之かしめ〕ざる、秦必ず(楚を)疑ひ、〔(周を)信ぜ〕ざらん。是れ韓(伐たれ)ざらんと]曰ひ、又(秦に)謂ひて[韓彊ひて(周に地を)与ふるは、将に〔以て(周を秦に)疑はしめんと〕するなり。周〔敢へて(受け)ずんば〕あらずと]曰は}令め〉ざる。
従って、
(32)(33)により、
(34)
⑧ レ 丁 二 一 地 レ レ 二 一 下 二 一 二 一 上レ レ レ レ 天レ レ 丙 二 一 三 二 一 乙 甲レ
といふ『返り点』が表す「順番」は、
⑧〈{( )[( )( )( )〔( )( )( )〕( )〔( )〕( )]( )[( )〔( )〕〔( )〕]}〉
といふ『括弧』でも、表すことが出来る。
従って、
(31)(34)により、
(35)
事実上」、
(ⅰ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
(ⅱ)上 中 下
(ⅲ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(ⅳ)天 地 人
(ⅴ)レ 一レ 上レ 甲レ 天レ
といふ『5種類の、返り点』で表すことが出来る「順番」は、
(ⅰ)( )
(ⅱ)〔 〕
(ⅲ)[ ]
(ⅳ){ }
(ⅴ)〈 〉
といふ『5種類の、括弧』で、表すことが出来る。
加へて、
(36)
(ⅰ)( )
(ⅱ)〔 〕
(ⅲ)[ ]
(ⅳ){ }
(ⅴ)〈 〉
といふ『括弧』の方が、
(ⅰ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
(ⅱ)上 中 下
(ⅲ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(ⅳ)天 地 人
(ⅴ)レ 一レ 上レ 甲レ 天レ
といふ『返り点』よりも、「簡単(シンプル)」である。
(37)
① B(A)。
に於いて、『括弧の』を、「に読む」ならば、
① A→B。 
といふ「順番」で、「読む」ことになる。
従って、
(37)により、
(38)
② C〔B(A)〕。
に於いて、『括弧の』を、「に読む」ならば、
② A→B→C。
といふ「順番」で、「読む」ことになる。
従って、
(38)により、
(39)
③ #C〔#B(#A)#〕#。
に於いて、「#」に関しては、「そのまま、左から右へ、読み」、「アルファベット」に関しては、『括弧の』を、「に読む」ならば、
③ #→#→#→A→B→#→C→#。
といふ「順番」で、「読む」ことになる。
従って、
(39)により、
(40)
③ #C〔#B(#A)#〕#=
③ 我非〔必読(英文)者〕也。
であるならば、
③ 我→必→英→文→読→者→非→也。
といふ「順番」で、「読む」ことになる。
従って、
(40)により、
(41)
③ 我非必読英文者也。
といふ「漢文」を、
③ 我→必ずしも→英→文を→読む→者に→非ざる→なり。
といふ風に、「訓読して欲しい」のであれば、
③ 我非〔必読(英文)者〕也。
といふ風に、『括弧』を加へれば良い。
cf.
③ 我非 必読英文 也。
③ 私は、必ずしも、英文を読む者である。といふわけではない、のだ。
然るに、
(42)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。すなわち、その補足構造における語順は、国語とは全く反対である。しかし、
訓読は、国語の語順に置きかえて読むことが、その大きな原則となっている。それでその補足構造によっている文も、返り点によって、国語
としての語順が示されている。
(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、296頁)
従って、
(41)(42)により、
(43)
③ 我非常読英文者也=
③ 我不〔常読(英文)者〕也⇒
③ 我〔必(英文)読者〕非也=
③ 我は必ずしも英文を読む者に非ざるなり。
といふ「漢文訓読」に於ける、
③   〔  (  ) 〕
といふ『括弧』は、
(ⅰ)一つには、「漢文訓読」の「語順」  を示してゐて、
(ⅱ)一つには、「漢文自体」の「補足構造」を示してゐる。
平成31年01月21日、毛利太。

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