(01)
(ⅰ)
今両虎共闘、其勢不俱生=
今両虎共闘、其勢不(俱生)⇒
今両虎共闘、其勢(俱生)不=
今、両虎共に闘はば、其の勢ひ、倶には生き不=
今、二頭の虎(藺相如と廉頗)が戦うとすれば、成り行きとして、両方が、死なずに済むということは無い。
(史記、刎頚の交はり)
(02)
(ⅱ)
1 (1)∀x∀y{(虎x&虎y&闘xy)→~(生x&生y)} A
1 (2) ∀y{(虎a&虎y&闘ay)→~(生a&生y)} 1UE
1 (3) (虎a&虎b&闘ab)→~(生a&生b) 2UE
4(4) (虎a&虎b&闘ab) A
14(5) ~(生a&生b) 34MPP
14(6) ~生a∨~生b 5ド・モルガンの法則
14(7) 生a→~生b 6含意の定義
14(8) ~生b∨~生a 6交換法則
14(9) 生b→~生a 8含意の定義
14(ア) (生a→~生b)&(生b→~生a) 79&I
1 (イ) (虎a&虎b&闘ab)→(生a→~生b)&(生b→~生a) 4アCP
1 (ウ) ∀y{(虎a&虎y&闘ay)→(生a→~生y)&(生y→~生a)} イUI
1 (エ)∀x∀y{(虎x&虎y&闘xy)→(生x→~生y)&(生y→~生x)} ウUI
(ⅲ)
1 (1)∀x∀y{(虎x&虎y&闘xy)→(生x→~生y)&(生y→~生x)} A
1 (2) ∀y{(虎a&虎y&闘ay)→(生a→~生y)&(生y→~生a)} 1UE
1 (3) (虎a&虎b&闘ab)→(生a→~生b)&(生b→~生a) 2UE
4 (4) (虎a&虎b&闘ab) A
14 (5) (生a→~生b)&(生b→~生a) 34MPP
14 (6) (生a→~生b) 5&E
7(7) (生a& 生b) A
7(8) 生a 7&E
147(9) ~生b 68MPP
7(ア) 生b 7&E
147(イ) ~生b&生b 9ア&I
14 (ウ) ~(生a&生b) 7イRAA
1 (エ) (虎a&虎b&闘ab)→~(生a&生b) 4ウCP
1 (オ) ∀y{(虎a&虎y&闘ay)→~(生a&生y)} エUI
1 (カ)∀x∀y{(虎x&虎y&闘xy)→~(生x&生y)} オUI
従って、
(02)により、
(03)
② ∀x∀y{(虎x&虎y&闘xy)→~(生x&生y)}。
③ ∀x∀y{(虎x&虎y&闘xy)→(生x→~生y)&(生y→~生x)}。
に於いて、すなはち、
② すべてのxとyについて{xとyが虎であって、xとyが闘へば、(xが生きて、yも生きる)といふことはない}。
③ すべてのxとyについて{xとyが虎であって、xとyが闘へば、(xが生きるならば、yは死に)、(yが生きるならば、xは死ぬ)}。
に於いて、
②=③ である。
従って、
(01)(02)(03)により、
(04)
① 今両虎共闘、其勢不俱生。
② ∀x∀y{(虎x&虎y&闘xy)→~(生x&生y)}。
③ ∀x∀y{(虎x&虎y&闘xy)→(生x→~生y)&(生y→~生x)}。
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(05)
1 (1) 生x→~生y A
2 (2) 生y A
3 (3) 生x A
1 3 (4) ~生y 13MPP
123 (5) 生y&~生y 24&I
12 (6)~生x 35RAA
1 (7) 生y→~生x 26C生x
8 (8) 生x A
9(9) 生y A
1 9(ア) ~生x 79MPP
1 89(イ) 生x&~生x 8ア&I
1 8 (ウ)~生y 9イRAA
1 (エ) 生x→~生y 8ウC生x
従って、
(05)により、
(06)
③ 生x→~生y
④ 生y→~生x
に於いて、
③=④ は「対偶」である。
従って、
(04)(05)(06)により、
(07)
① 今両虎共闘、其勢不俱生。
② ∀x∀y{(虎x&虎y&闘xy)→~(生x&生y)}。
③ ∀x∀y{(虎x&虎y&闘xy)→(生x→~生y)&(生y→~生x)}。
④ ∀x∀y{(虎x&虎y&闘xy)→(生x→~生y)}。
に於いて、
①=②=③=④ である。
然るに、
(08)
(ⅳ)
1 (1)~∀x∀y{ (虎x&虎y&闘xy)→ ( 生x→~生y)} A
1 (2)∃x~∀y{ (虎x&虎y&闘xy)→ ( 生x→~生y)} 1量化子の関係
1 (3)∃x∃y~{ (虎x&虎y&闘xy)→ ( 生x→~生y)} 2量化子の関係
4 (4) ∃y~{ (虎a&虎y&闘ay)→ ( 生a→~生y)} A
5(5) ~{ (虎a&虎y&闘ay)→ ( 生a→~生y)} A
5(6) ~{~(虎a&虎b&闘ab)∨ ( 生a→~生b)} 5含意の定義
5(7) ~{~(虎a&虎b&闘ab)∨ (~生a∨~生b)} 6含意の定義
5(8) (虎a&虎b&闘ab)&~(~生a∨~生b) 7ド・モルガンの法則
5(9) (虎a&虎b&闘ab)& ( 生a& 生b) 8ド・モルガンの法則
5(ア) ∃y{ (虎a&虎y&闘ay)& ( 生a& 生y)} 9EI
4 (イ) ∃y{ (虎a&虎y&闘ay)& ( 生a& 生y)} 45アEE
4 (ウ) ∃x∃y{ (虎x&虎y&闘xy)& ( 生x& 生y)} イEI
1 (エ) ∃x∃y{ (虎x&虎y&闘xy)& ( 生x& 生y)} 14ウEE
(ⅴ)
1 (1) ∃x∃y{ (虎x&虎y&闘xy)& ( 生x& 生y)} A
2 (2) ∃y{ (虎a&虎y&闘ay)& ( 生a& 生y)} A
3(3) (虎a&虎b&闘ab)& ( 生a& 生b) A
3(4) (虎a&虎b&闘ab)&~(~生a∨~生b) 3ド・モルガンの法則
3(5) ~{~(虎a&虎b&闘ab)∨ (~生a∨~生b)} 4ド・モルガンの法則
3(6) ~{~(虎a&虎b&闘ab)∨ ( 生a→~生b)} 5含意の定義
3(7) ~{ (虎a&虎y&闘ay)→ ( 生a→~生y)} 6含意の定義
3(8) ∃y~{ (虎a&虎y&闘ay)→ ( 生a→~生y)} 7EI
2 (9) ∃y~{ (虎a&虎y&闘ay)→ ( 生a→~生y)} 238EE
2 (ア)∃x∃y~{ (虎x&虎y&闘xy)→ ( 生x→~生y)} 9EI
1 (イ)∃x∃y~{ (虎x&虎y&闘xy)→ ( 生x→~生y)} 12アEE
1 (ウ)∃x~∀y{ (虎x&虎y&闘xy)→ ( 生x→~生y)} イ量化子の関係
1 (エ)~∀x∀y{ (虎x&虎y&闘xy)→ ( 生x→~生y)} ウ量化子の関係
従って、
(08)により、
(09)
④ ~∀x∀y{(虎x&虎y&闘xy)→(生x→~生y)}。
⑤ ∃x∃y{(虎x&虎y&闘xy)&(生x& 生y)}。
に於いて、
④=⑤ である。
従って、
(09)により、
(10)
④ ~~∀x∀y{(虎x&虎y&闘xy)→(生x→~生y)}。
⑤ ~∃x∃y{(虎x&虎y&闘xy)&(生x& 生y)}。
に於いて、
④=⑤ である。
従って、
(10)により、
(11)
「二重否定」により、
④ ∀x∀y{(虎x&虎y&闘xy)→(生x→~生y)}。
⑤ ~∃x∃y{(虎x&虎y&闘xy)&(生x& 生y)}。
⑥{あるxが虎であって、あるyも虎であって、xとyが闘って、xは生き、yも生きる}ということはない。
に於いて、
④=⑤=⑥ である。
従って、
(01)(07)(11)により、
(12)
① 今両虎共闘、其勢不俱生。
② 今、両虎共に闘はば、其の勢ひ、倶には生きず。
③ ∀x∀y{(虎x&虎y&闘xy)→~(生x&生y)}。
④ ∀x∀y{(虎x&虎y&闘xy)→(生x→~生y)&(生y→~生x)}。
⑤ ∀x∀y{(虎x&虎y&闘xy)→(生x→~生y)}。
⑥ ~∃x∃y{(虎x&虎y&闘xy)&(生x& 生y)}。
に於いて、
①=②=③=④=⑤=⑥ である。
然るに、
(12)により、
(13)
「文型」からすれば、
① 今両虎共闘、其勢不俱生。
② ∀x∀y{(虎x&虎y&闘xy)→~(生x&生y)}。
③ すべてのxとyについて{xとyが虎であって、xとyが闘へば、(xは生きて、yも生きる)といふことはない}。
に於いて、
①≒②=③ である。
然るに、
(14)
相如聞之、毎朝常称病、不欲与争列。
出望見、輒引車避匿。其舍人皆以為恥。
相如曰、夫以秦之威、相如廷叱之、辱其群臣。
相如雖駑、独畏廉将軍哉。
顧念強秦不敢加兵於趙者、徒以吾両人在也。
今両虎共闘、其勢不倶生。
吾所以為此者、先国家之急、而後私讐也。
といふ「漢文の全体」を、「述語論理式」に「翻訳する(置き換へる)」ことは、「(恐らくは)無理である」。
然るに、
(15)
問題は、自然言語文をマシン上で走らせる形のプログラムに自動変換できるかということであり、それを容易にするのに適切なプログラミング言語の選択である。ところで、論理式をプログラムとして見て行こうという立場に立つと、意味を論理的に把えようという立場と、手続き的に把えようという立場が融合してくるわけである。
(岩波講座 情報科学―7 論理と意味、長尾真・淵一博、1983年、167・168頁)
然るに、
(16)
第五世代コンピュータ(だいごせだいコンピュータ)計画とは、1982年から1992年にかけて日本の通商産業省(現経済産業省)所管の新世代コンピュータ技術開発機構(ICOT)が進めた国家プロジェクトで、いわゆる人工知能コンピュータの開発を目的に総額540億円の国家予算が投入された(ウィキペディア)。
従って、
(01)(14)(15)(16)により、
(17)
「昭和58年当時の、人工知能の研究者」は、例へば、
相如はこれを聞いて、朝廷に出仕すべきことがあるたびにいつも病気と偽って(欠席し、)席次を争うことを望まなかった。また外出して遠くに(廉頗の姿を)見かけると、そのたびごとに車を引き返して避け隠れた。相如の近臣たちは皆この態度を恥であると思った。(相如は家来たちに)こう言った。「そもそも秦王ほどの威力にもかかわらず、この藺相如は、秦王を(秦国の)朝廷で叱責し、その群臣をはずかしめてきたのだ。私は、いかにも愚鈍であるが、どうして廉将軍を恐れることがあろうか。(いや、恐れることはない。)思うに、強国である秦が、あえて趙に戦争を仕掛けてこないのは、我ら二人(の武勇と知恵)がそろっているからだろう。今もし両虎(廉頗と藺相如)が闘うことがあれば、その結果として、どちらも生き残るわけにはいかない。私がこのように(廉頗将軍を避けて逃げ隠れ)している訳は、国家の危急を第一とし、個人的な恨みを後まわしにしているからだ」(kintorekokugo)。
といふ「日本語」を、「コンピューター上で走らせる形のプログラム」によって、
「∀x∀y{(虎x&虎y&闘xy)→~(生x&生y)}」のやうな「述語論理式」に、「自動的に翻訳」しようとしていた。
といふ、ことになる。
然るに、
(18)
第五世代コンピュータは、当初の期待に反して多くの課題を抱え、その目標を完全に達成することができませんでした。このため、第五世代コンピュータは失敗だったと評価されることが少なくありません(>>JITERA)。
従って、
(16)(17)(18)により、
(19)
第五世代コンピュータ(日本発)に関しても、
さて、統計的な手法が登場する以前、自然言語処理の技術を使う自動翻訳や質疑応答の分野では、研究者たちはAIに文法などの言葉のルールを覚えさせ、論理的、演繹的な手法で精度を上げようとしました。けれど、その手法は何度試みても失敗を繰り返しました(AI vs. 教科書が読めない子供たち、新井紀子、2018年、124頁)。
といふ、ことになる。
(20)
「もし二頭の虎が闘へば、少なくとも、一方の虎は死ぬ。」といふ「日本語」ならば、ともかく、例へば、「相如はこれを聞いて、朝廷に出仕すべきことがあるたびにいつも病気と偽って欠席し、席次を争うことを望まなかった。」といふ「日本語」を、「述語論理」に「翻訳」することは、「無理である」に、「決まってゐる」。
令和6年11月21日、毛利太。
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