2019年4月8日月曜日

「象は(が・も)鼻が(は・も)長い。」の「述語論理」。

―「返り点と括弧」に関しては、『「返り点」と「括弧」の関係(https://kannbunn.blogspot.com/2019/01/blog-post_21.html)』をお読み下さい。―
(01)
一階述語論理(いっかいじゅつごろんり、first-order predicate logic)とは、個体の量化のみを許す述語論理 (predicate logic) である。述語論理とは、数理論理学における論理の数学的モデルの一つであり、命題論理を拡張したものである(ウィキペディア)。
(02)
完全性定理により、(古典一階述語論理については)その形式体系が論理的に成り立つ事柄を余すところなく捉えていること、つまり、もうこれ以上推論規則を加える必要がないことが示されるのである(飯田隆 編、論理の哲学、2005年、97頁)。
(03)
自然言語の文を論理式に翻訳するというプログラムを遂行する上で、まず考えなければならないことは、翻訳先の形式言語としてどのような言語を採用すべきかという問題である。ひとつの基準となるのは、一階述語論理である(飯田隆 編、論理の哲学、2005年、226頁)。
(04)
① 私大野です。
といふ「日本語」は、
① ∃x(私x&大野x)⇔
① あるxは私であって大野である。⇔
① 私であって大野であるxが存在する。
といふ「一階述語論理」に相当する。
然るに、
(05)
(3) 既知と未知
この組み合わせは次のような場合に現われる。
 私大野です。
これは、「大野さんはどちらですか」というような問いに対する答えとして使われる。つまり文脈において、「大野」なる人物はすでに登場していて既知である。ところが、それが実際にどの人物なのか、その帰属する先が未知である。その未知の対象を「私」と表現して、それをガで承けた。それゆえこの形は、
 大野私です。
に置きかえてもほぼ同じ意味を表わすといえる(大野晋、日本語の文法を考える、1978年、34頁)。
然るに、
(06)
Q:大野さんはどなたですか。
A:私大野です。
といふのであれば、
A:私は大野であり、私以外は大野ではない
然るに、
(07)
② ∀x(私x→大野x&~私x→~大野x)⇔
② すべてのxについて、xが私であるならばxは大野であり、xが私ではないならばxは大野ではない。
といふのであれば、
② 私は大野であり、私以外は大野ではない
従って、
(05)(06)(07)により、
(08)
② 私大野です。
といふ「日本語」は、
② ∀x(私x→大野x&~私x→~大野x)⇔
② すべてのxについて、xが私であるならばxは大野であり、xが私ではないならばxは大野ではない。
といふ「一階述語論理」に相当する。
然るに、
(09)
(a)
1  (1)∀x(私x→大野x&~私x→~大野x) A
1  (2)   私a→大野a&~私a→~大野a  1UE
1  (3)   私a→大野a           2&E
1  (4)          ~私a→~大野a  2&E
 5 (5)          ~私a       A
  6(6)               大野a  A
 56(7)              ~大野a  45MPP
 56(8)          大野a&~大野a  67&I
  6(9)         ~~私a       58RAA
  6(ア)           私a       9DN
   (イ)          大野a→私a    6アCP
1  (ウ)   私a→大野a&大野a→私a    3イ&I
1  (エ)∀x(私x→大野x&大野x→私x)   ウUI
(b)
1  (1)∀x(私x→大野x& 大野x→ 私x) A
1  (2)   私a→大野a& 大野a→ 私a  1UE
1  (3)   私a→大野a           2&E
1  (4)           大野a→ 私a  2&E
 5 (5)           大野a      A  
  6(6)               ~私a  A
 56(7)                私a  45MPP
 56(8)            ~私a&私a  67&I
  6(9)          ~大野a      58RAA
   (ア)          ~私a→~大野a  69CP
1  (イ)   私a→大野a&~私a→~大野a  3ア&I
1  (ウ)∀x(私x→大野x&~私x→~大野x) イUI
従って、
(09)により、
(10)
(a)∀x(私x→大野x&~私x→~大野x)
(b)∀x(私x→大野x&大野x→  私x)
に於いて、 
(a)ならば(b)であり、
(b)ならば(a)である。
従って、
(10)により、
(11)
(a)∀x(私x→大野x&~私x→~大野x)
(b)∀x(私x→大野x&大野x→  私x)
に於いて、 
(a)=(b) である。
従って、
(08)(11)により、
(12)
② 私大野です。
といふ「日本語」は、
② ∀x(私x→大野x&大野x→  私x)⇔
② ∀x(私x→大野x&~私x→~大野x)⇔
② すべてのxについて、xが私であるならばxは大野であり、xが大野であるばらばxは私である。⇔
② すべてのxについて、xが私であるならばxは大野であり、xが私ではないならばxは大野ではない。
といふ「一階述語論理」に相当する。
然るに、
(13)
③ ∃x(私x&大野x)&~∀x(~私x→~大野x)⇔
③ あるxは私であって大野であるが、すべてのxについて、xが私ではないならばxは大野ではない。といふわけではない。
といふのであれば、
③ 私以外にも、大野はゐる、ことなり、
③ 私以外にも、大野はゐる、のであれば、
③ 私大野です。
といふ、ことになる。
従って、
(13)により、
(14)
③ 私大野です。
といふ「日本語」は、
③ ∃x(私x&大野x)&~∀x(~私x→~大野x)⇔
③ あるxは私であって大野であるが、すべてのxについて、xが私ではないならばxは大野ではない。といふわけではない。
といふ「一階述語論理」に相当する。
然るに、
(15)
(a)
1 (1)~∀x(~私x→ ~大野x) A
1 (2)∃x~(~私x→ ~大野x) 1量化子の関係
 3(3)  ~(~私a→ ~大野a) A
 3(4) ~(~~私a∨ ~大野a) 3含意の定義
 3(5)   ~(私a∨ ~大野a) 4DN
 3(6)   (~私a&~~大野a) 5ド・モルガンの法則
 3(7)   (~私a&  大野a) 6DN
 3(8) ∃x(~私x&  大野x) 7EI
1 (9) ∃x(~私x&  大野x) 238EE
(b)
1 (1) ∃x(~私x&  大野x) A
 2(2)   (~私a&  大野a) A
 2(3) ~~(~私a&  大野a) 2DN
 2(4) ~(~~私a∨ ~大野a) 3ド・モルガンの法則
 2(5)  ~(~私a→ ~大野a) 4含意の定義
 2(6)∃x~(~私x→ ~大野x) 5EI
1 (7)∃x~(~私x→ ~大野x) 126EE
1 (8)~∀x(~私x→ ~大野x) 7量化子の関係
従って、
(15)により、
(16)
(a)~∀x(~私x→~大野x)
(b) ∃x(~私x& 大野x)
に於いて、
(a)ならば(b)であり、
(b)ならば(a)である。
従って、
(16)により、
(17)
(a)~∀x(~私x→~大野x)
(b) ∃x(~私x& 大野x)
に於いて、
(a)=(b) である。
従って、
(14)(17)により、
(18)
③ 私大野です。
といふ「日本語」は、
③ ∃x(私x&大野x)&  ∃x(~私x& 大野x)⇔
③ ∃x(私x&大野x)&~∀x(~私x→~大野x)⇔
③ あるxは私であって大野であるが、あるxは私ではなく、大野である。⇔
③ あるxは私であって大野であるが、すべてのxについて、xが私ではないならばxは大野ではない。といふわけではない。
といふ「一階述語論理」に相当する。
(19)
④ 象動物である。
といふ「日本語」は、
④ ∀x(象x→動物x)⇔
④ すべてのxについて、xが象であるならば、xは動物である。
といふ「一階述語論理」に相当する。
(20)
⑤ 象長い。
といふ「日本語」は、
⑤ すべて象には長い鼻がある。
といふ風に、解することが出来る。
然るに、
(21)
⑤ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}⇔
⑤ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であってyは長い。
といふ「述語論理」は、
⑤ すべて象には長い鼻がある。
といふ「意味」である。
従って、
(20)(21)により、
(22)
⑤ 象長い。
といふ「日本語」は、
⑤ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}⇔
⑤ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であってyは長い。
といふ「一階述語論理」に相当する。
然るに、
(23)
⑤ 象は鼻長い。
といふのであれば、
⑤ 象の鼻以外は、長いのか、長くないのかが、分からない。
然るに、
(24)
⑥ 象は鼻長い。
といふのであれば、
⑥ 象は、鼻以外は長くない
然るに、
(25)
⑥ 象は鼻が長い。
といふのであれば、当然、
⑤ 象は鼻は長い。
従って、
(23)(24)(25)により、
(26)
⑥ 象は鼻長い。
といふ「日本語」は、
⑥ 象は鼻は長い。象は鼻以外は長くない
といふ「意味」である。
従って、
(26)により、
(27)
⑥ 象は鼻が長い。
といふ「日本語」は、
⑥ 象は鼻は長く、鼻以外は長くない。
といふ「意味」である。
従って、
(22)(27)により、
(28)
⑥ 象は鼻長い。
といふ「日本語」は、
⑥ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
⑥ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であってyは長く、すべてのzについて、zが象の鼻でないならば、zは長くない。
といふ「一階述語論理」に相当する。
然るに、
(29)
(1)象は鼻長い。             従って、
(2)象は鼻以外は長くない。         然るに、
(3)兎の耳は長いものの、兎の耳は鼻ではない。従って、
(4)兎は鼻以外(耳)も長い。        従って、
(5)兎は象ではない。
といふ「日本語による推論」は、「妥当(Valid)」である。
然るに、
(30)
1     (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
 2    (2)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
  3   (3)∃x(兎x&象x)                      A
1     (4)   象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)  1UE
 2    (5)   兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za)  1UE
   6  (6)   兎a&象a                       A
   6  (7)   兎a                          6&E
   6  (8)      象a                       6&E
1  6  (9)      ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)  47MPP
 2 6  (ア)      ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za)  58MPP
1  6  (イ)      ∃y(鼻ya&長y)               9&E
 2 6  (ウ)      ∃y(耳ya&長y)               ア&E
    エ (エ)         鼻ba&長b                A
     オ(オ)         耳ba&長b                A
1  6  (カ)                 ∀z(~鼻za→~長z)  9&E
1  6  (キ)                    ~鼻ba→~長b   カUE
 2 6  (ク)                 ∀z(耳za→~鼻za)  ア&E
 2 6  (ケ)                    耳ba→~鼻ba   クUE
    オ (コ)                    耳ba        オ&E
 2 6オ (サ)                        ~鼻ba   ケコMPP
12 6オ (シ)                         ~長b   キサコMPP
    オ (ス)             長b                オ&E
12 6オ (セ)             長b&~長b            シス&I
12 6  (ソ)             長b&~長b            ウオセEE
123   (タ)             長b&~長b            36ソEE
12    (チ)~∃x(兎x&象x)                     3タRAA
12    (ツ)∀x~(兎x&象x)                     チ量化子の関係
12    (テ)  ~(兎a&象a)                     ツUE
12    (ト)  ~兎a∨~象a                      テ、ド・モルガンの法則
12    (ナ)   兎a→~象a                      ト含意の定義
12    (ニ)∀x(兎x→~象x)                     ナUI
12    (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。   ナUI
12    (〃)兎は象ではない。
従って、
(28)(29)(30)により、
(31)
(1)象は鼻長い。             従って、
(2)象は鼻以外は長くない。         然るに、
(3)兎の耳は長いものの、兎の耳は鼻ではない。従って、
(4)兎は鼻以外(耳)も長い。        従って、
(5)兎は象ではない。
といふ「推論」は、「述語論理」としても、「妥当(Valid)」である。
然るに、
(32)
1     (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
ではなく。
1     (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)} A
とするならば、
12    (ニ)∀x(兎x→~象x)                     ナUI
12    (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。   ナUI
12    (〃)兎は象ではない。
といふ「結論」を得ることが、出来ない
従って、
(31)(32)により、
(33)
⑥ 象は鼻長い。
といふ「日本語」を、
⑥ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
⑥ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であってyは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
ではなく、
⑤ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}⇔
⑤ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であってyは長い。
とすることは、出来ない。
然るに、
(34)
沢田充茂の『現代論理学入門』(一九六ニ年)には楽しい解説が載っています。
・・・・・・たとえば「象は鼻長い」というような表現は、象が主語なのか、鼻が主語なのかはっきりしないから、このままではその論理的構造が明示されていない。いわば非論理的な文章である、というひともある。しかしこの文の論理的な構造をはっきりと文章にあらわして「すべてのxについて、もしそのxが象であるならば、yなるものが存在し、そのyは鼻であり、xはyを所有しており、このyは長い」といえば・・・・・・たとえば動物園で象をはじめて見た小学生が、父親にむかってこのような文章で話しかけたとすれば、その子供は論理的であるといって感心されるまえに社会人としての常識をうたがわれるにきまっている。常識(すなはち共通にもっている情報)でわかっているものはいちいち言明の中にいれないで、いわば暗黙の了解事項として、省略し、できるだけ短い記号の組み合せで、できるだけ多くの情報を伝えることが日常言語の合理性の一つである。・・・・・・
(山崎紀美子、日本語基礎講座―三上文法入門、2003年、214頁)
然るに、
(35)
⑤「すべてのxについて、もしそのxが象であるならば、yなるものが存在し、そのyは鼻であり、xはyを所有しており、このyは長い。」
といふ「日本語」は、
⑤ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}⇔
⑤ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であってyは長い。
といふ「一階述語論理」に相当する。
従って、
(33)(34)(35)により、
(36)
⑤ 象は鼻長い=「すべてのxについて、もしそのxが象であるならば、yなるものが存在し、そのyは鼻であり、xはyを所有しており、このyは長い。」
であって、
⑥ 象は鼻長い=「すべてのxについて、もしそのxが象であるならば、yなるものが存在し、そのyは鼻であり、xはyを所有しており、このyは長い。」
ではない。
(37)
⑦ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
⑦ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であってyは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。といふわけではない。
といふのであれば、
⑦ 象の体には、鼻以外にも、長い部分があることになる。
然るに、
(38)
⑦ 象の体には、鼻以外にも、長い部分があることになる。
といふのであれば、
⑦ 象は鼻長い。
従って、
(37)(38)により、
(39)
⑦ 象は鼻長い。
といふ「日本語」は、
⑦ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
⑦ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であってyは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。といふわけではない。
といふ「一階述語論理」に相当する。
然るに、
(40)
(a)
1 (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→ ~長z)} A
1 (2)   象a→∃y(鼻ya&長y)&~∀z(~鼻za→ ~長z)  1UE
1 (3)   象a→∃y(鼻ya&長y)                 2&E
1 (4)                 ~∀z(~鼻za→ ~長z)  2&E
1 (5)                 ∃z~(~鼻za→ ~長z)  4量化子の関係
 6(6)                   ~(~鼻ca→ ~長c)  A
 6(7)                  ~(~~鼻ca∨ ~長c)  含意の定義
 6(8)                    ~(鼻ca∨ ~長c)  7DN
 6(9)                    (~鼻ca&~~長c)  8ド・モルガンの法則
 6(ア)                    (~鼻ca&  長c)  9DN
 6(イ)                  ∃z(~鼻za&  長z)  アEI
1 (ウ)                  ∃z(~鼻za&  長z)  56イEE
1 (エ)   象a→∃y(鼻ya&長y)& ∃z(~鼻za&  長z)  3エ&I
1 (オ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx&  長z)} エUI
(b)
1 (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx&  長z)} A
1 (2)   象a→∃y(鼻ya&長y)& ∃z(~鼻za&  長z)  1UE
1 (3)   象a→∃y(鼻ya&長y)                 2&E
1 (4)                  ∃z(~鼻za&  長z)  2&E
1 (5)                ~~∃z(~鼻za&  長z)  4DN
1 (6)                ~∀x~(~鼻za&  長z)  5量化子の関係
1 (7)                  ~~(~鼻ca&  長c)  6UE
1 (8)                  ~(~~鼻ca∨  長c)  7ド・モルガンの法則
1 (9)                   ~(~鼻ca→  長c)  8含意の定義
1 (ア)                 ∃z~(~鼻za→  長z)  9EI
1 (イ)                 ~∀z(~鼻za→  長z)  ア量化子の関係 
1 (ウ)   象a→∃y(鼻ya&長y)&~∀z(~鼻za→  長z)  3イ&I
1 (エ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→ ~長z)} ウUI
従って、
(40)により、
(41)
(a)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}
(b)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx& 長z)}
に於いて、
(a)ならば(b)であり、
(b)ならば(a)である。
従って、
(41)により、
(42)
(a)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}
(b)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx& 長z)}
に於いて、
(a)=(b) である。
従って、
(39)(42)により、
(43)
⑦ 象は鼻長い。
といふ「日本語」は、
⑦ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx& 長z)}⇔
⑦ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
⑦ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であってyは長く、あるzは、xの鼻ではないが、長い。⇔
⑦ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であってyは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。といふわけではない。
といふ「一階述語論理」に相当する。
(44)
⑧ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}&∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)}⇔
⑧ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であってyは長く、すべてのxについて、xが象でないならば、あるyがxの鼻であって、長い。といふことはない。
といふのであれば、
⑧ 象は鼻は長く、象以外の動物の鼻は長くはない
然るに、
(45)
⑧{象、兎、キリン、河馬、ライオン}
であれば、
⑧ 象鼻は長い。⇔
⑧ 象は鼻は長い。象以外の動物(兎、キリン、河馬、ライオン)の鼻は長くはない
従って、
(44)(45)により、
(46)
⑧ 象鼻は長い。
といふ「日本語」は、
⑧ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}&∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)}⇔
⑧ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であってyは長く、すべてのxについて、xが象でないならば、あるyがxの鼻であって、長い。といふことはない。
といふ「一階述語論理」に相当する。
然るに、
(47)
(a)
1(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}&∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)} A
1(2)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}                     1&E
1(3)                  ∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)} 1&E
1(4)   象a→∃y(鼻ya&長y)                      2UE
1(5)                     ~象a→~∃y(鼻ya&長y)  3UE
1(6)   象a→∃y(鼻ya&長y) &   ~象a→~∃y(鼻ya&長y)  47&I   
1(7)∀x{象x→∃y(鼻ya&長y) &   ~象x→~∃y(鼻ya&長y)} 6UI
(b)
1(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y) &   ~象x→~∃y(鼻yx&長y)} A
1(2)   象a→∃y(鼻ya&長y) &   ~象a→~∃y(鼻ya&長y)  1UE
1(3)   象a→∃y(鼻ya&長y)                      2&E
1(4)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}                     3UI
1(5)                     ~象a→~∃y(鼻ya&長y)  2&E
1(6)                  ∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)} 5UI
1(7)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}&∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)} 46&I
従って、
(47)により、
(48)
(a)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)} &∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)}
(b)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)  &   ~象x→~∃y(鼻yx&長y)}
に於いて、
(a)ならば(b)であり、
(b)ならば(a)である。
従って、
(48)により、
(49)
(a)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)} &∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)}
(b)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)  &   ~象x→~∃y(鼻yx&長y)}
に於いて、
(a)=(b) である。
従って、
(46)(49)により、
(50)
⑧ 象鼻は長い。
といふ「日本語」は、
⑧ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y) &   ~象x→~∃y(鼻yx&長y)}⇔
⑧ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}&∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)}⇔
⑧ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であってyは長く、xが象でないならば、あるyがxの鼻であって、長い。といふことはない。⇔
⑧ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であってyは長く、すべてのxについて、xが象でないならば、あるyがxの鼻であって、長い。といふことはない。
といふ「一階述語論理」に相当する。
従って、
(22)(28)(39)(50)により、
(51)
⑤ 象は鼻長い。
⑥ 象は鼻長い。
⑦ 象は鼻長い。
⑧ 象鼻は長い。
といふ「日本語」は、それぞれ、順番に、
⑤ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}
⑥ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}
⑦ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}
⑧ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)}
といふ「一階述語論理」に相当する。
従って、
(51)により、
(52)
⑧ 象長い。
⑨ 象長い。
⑩ 象長い。
といふ「日本語」は、それぞれ、順番に、
⑧ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)}
⑨ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}
⑩ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}
といふ「一階述語論理」に、すなはち、
⑧ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であってyは長く、xが象でないならば、あるyがxの鼻であって、長い。といふことはない。
⑨ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であってyは長く、xが象でないならば、あるyがxの鼻であって、長い。といふことはなく、すべてのzについて、zが象の鼻でないならば、zは長くない。
⑩ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であってyは長く、xが象でないならば、あるyがxの鼻であって、長い。といふことはなく、すべてのzについて、zが象の鼻でないならば、zは長くない。といふことはない。
といふ「一階述語論理」に相当する。
然るに、
(53)
(a)
1  (1) P→ Q A
 2 (2)   ~Q A
  3(3) P    A
1 3(4)    Q 13MPP
123(5) ~Q&Q 24&I
12 (6)~P    35RAA
1  (7)~Q→~P 26CP
(b)
1  (1)~Q→~P A
 2 (2)    P A
  3(3)~Q    A
1 3(4)   ~P 13MPP
123(5) P&~P 24&I
12 (6)  ~~Q 35RAA
12 (7)    Q 6DN
1  (8) P→ Q 27CP
従って、
(53)
(a) P→ Q
(b)~Q→~P
に於いて、
(a)=(b) である。
cf.
「対偶(Contraposition)」は「等しい」。
従って、
(54)
(a) Q→ P
(b)~P→~Q
に於いて、
(a)=(b) である。
従って、
(53)(54)により、
(55)
(c)(P→Q)&( Q→ P)
(d)(P→Q)&(~P→~Q)
に於いて、
(c)=(d) である。
然るに、
(56)
すなわち記号で書けば、
 (P→Q)&(Q→P)
である。しかしこの複合的表現を用いるよりは、2重の矢印を採用して、省略記号として、
  P⇔Q
と書くのが便利であろう。
(論理学初歩、E.J.レモン 著、 竹尾治一郎・浅野楢英 訳、1973年、38頁)
従って、
(55)(56)により、
(57)
(e) P⇔Q
(d)(P→Q)&(~P→~Q)
に於いて、
(e)=(d) である。
従って、
(57)により、
(58)
(e)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)}
(d)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)}
に於いて、
(e)=(d) である。
然るに、
(59)
(e)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)}⇔
(e)すべてのxについて、xが象であるならば、そのとき限って、あるyはxの鼻であって、yは長い。
従って、
(52)(59)により、
(60)
⑧ 象長い。
⑨ 象長い。
⑩ 象長い。
といふ「日本語」は、それぞれ、順番に、
⑧ ∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)}
⑨ ∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}
⑩ ∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}
といふ「一階述語論理」に、すなはち、
⑧ すべてのxについて、xが象であるならば、そのとき限って、あるyはxの鼻であって、yは長い。
⑨ すべてのxについて、xが象であるならば、そのとき限って、あるyはxの鼻であって、yは長く、すべてのzについて、zが象の鼻でないならば、zは長くない。
⑩ すべてのxについて、xが象であるならば、そのとき限って、あるyはxの鼻であって、yは長く、すべてのzについて、zが象の鼻でないならば、zは長くない。といふことはない。
といふ「一階述語論理」に相当する。
(61)
(a)
1 (1) ∃z[~象z& ∃w(鼻wz&長w)] A
 2(2)    ~象c& ∃w(鼻wc&長w)  A
 2(3) ~~[~象c& ∃w(鼻wc&長w)] 2DN
 2(4) ~[~~象c∨~∃w(鼻wc&長w)] 3ド・モルガンの法則
 2(5)  ~[~象c→~∃w(鼻wc&長w)] 4含意の定義
1 (6)∃z~[~象z→~∃w(鼻wz&長w)] 125EE
1 (7)~∀z[~象z→~∃w(鼻wz&長w)] 6量化子の関係
(b)
1 (1)~∀z[~象z→ ~∃w(鼻wz&長w)] A
1 (2)∃z~[~象z→ ~∃w(鼻wz&長w)] 1量化子の関係
 3(3)  ~[~象c→ ~∃w(鼻wc&長w)] A
 3(4) ~[~~象c∨ ~∃w(鼻wc&長w)] 3含意の定義
 3(5)   ~[象c∨ ~∃w(鼻wc&長w)] 4DN
 3(6)   [~象c&~~∃w(鼻wc&長w)] 5ド・モルガンの法則
 3(7)   [~象c&  ∃w(鼻wc&長w)] 6DN
 3(8) ∃z[~象z&  ∃w(鼻wz&長w)] 7EI
1 (9) ∃z[~象z&  ∃w(鼻wc&長w)] 238EE
従って、
(62)
(a) ∃z[~象z& ∃w(鼻wz&長w)]
(b)~∀z[~象z→~∃w(鼻wz&長w)]
に於いて、
(a)ならば(b)であり、
(b)ならば(a)である。
従って、
(62)により、
(63)
(a) ∃z[~象z& ∃w(鼻wz&長w)]
(b)~∀z[~象z→~∃w(鼻wz&長w)]
に於いて、
(a)=(b) である。
従って、
(64)
(a)あるzは象ではなく、あるwはzの鼻であって長い。
(b)すべてのzについて、zが象でないならば、zの鼻であって長い所のwが存在しない。といふわけではない。
に於いて、
(a)=(b) である。
然るに、
(65)
(a)あるzは象ではなく、あるwはzの鼻であって長い。
といふことは、
(a)象以外にも鼻の長い動物がゐる。
といふ、ことである。
然るに、
(66)
(a)象以外にも鼻の長い動物がゐる。
といふのであれば、
(a)象鼻は長い。
といふ、ことになる。
従って、
(62)(66)により、
(67)
⑪ 象鼻は長い。
といふ「日本語」は、
⑪ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z[~象z&∃w(鼻wz&長z)]}⇔
⑪ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であってyは長く、あるzは象ではなく、あるwはzの鼻であって長い。
といふ「一階述語論理」に相当する。
従って、
(22)(28)(39)(67)により、
(68)
⑤ 象は鼻長い。
⑥ 象は鼻長い。
⑦ 象は鼻長い。
⑪ 象鼻は長い。
といふ「日本語」は、それぞれ、順番に、
⑤ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}
⑥ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}
⑦ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}
⑪ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z[~象z&∃w(鼻wz&長z)]}
といふ「一階述語論理」に相当する。
従って、
(68)により、
(69)
⑪ 象長い。
⑫ 象長い。
⑬ 象長い。
といふ「日本語」は、それぞれ、順番に、
⑪ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z[~象z&∃w(鼻wz&長z)]}
⑫ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z[~象z&∃w(鼻wz&長z)]& ∀z(~鼻zx→~長z)}
⑬ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z[~象z&∃w(鼻wz&長z)]&~∀z(~鼻zx→~長z)}
といふ「一階述語論理」に、すなはち、
⑪ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であってyは長く、あるzは象ではなく、あるwはzの鼻であって長い。
⑫ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であってyは長く、あるzは象ではなく、あるwはzの鼻であって長く、すべてのzについて、zが象の鼻でないならば、zは長くない。
⑬ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であってyは長く、あるzは象ではなく、あるwはzの鼻であって長く、すべてのzについて、zが象の鼻でないならば、zは長くない。といふことはない。
といふ「一階述語論理」に相当する。
従って、
(04)~(69)により、
(70)
① 私は大野です。
② 私が大野です。
③ 私も大野です。
④ 象は動物である。
⑤ 象は鼻は長い。
⑥ 象は鼻が長い。
⑦ 象は鼻も長い
⑧ 象が鼻は長い。
⑨ 象が鼻が長い。
⑩ 象が鼻も長い。
⑪ 象も鼻は長い。
⑫ 象も鼻が長い。
⑬ 象も鼻も長い。
といふ「日本語」は、それぞれ、順番に、
① ∃x(私x&大野x)
② ∀x(私x→大野x&~私x→~大野x)
③ ∃x(私x&大野x)&∃x(~私x&大野x)
④ ∀x(象x→動物x)
⑤ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}
⑥ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}
⑦ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}
⑧ ∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)}
⑨ ∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}
⑩ ∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}             
⑪ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z[~象z&∃w(鼻wz&長z)]}
⑫ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z[~象z&∃w(鼻wz&長z)]& ∀z(~鼻zx→~長z)}
⑬ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z[~象z&∃w(鼻wz&長z)]&~∀z(~鼻zx→~長z)}
といふ「一階述語論理」に相当する。
然るに、
(71)
① 私は大野です。⇔
① ∃x(私x&大野x)⇔
① あるxは私であって大野である。⇔
① 私であって大野であるxが存在する。
であるため、
① 大野は学生です。⇔
① ∃x(大野x&学生x)⇔
① あるxは大野であって学生である。⇔
① 大野であって学生であるxが存在する。
である。
従って、
(71)により、
(72)
私が理解するところの「述語論理」に於いては、「私・大野・学生」も「すべて名詞(述語)」であって、「区別」が付かない。
然るに、
(73)
「日本語に即した文法の樹立を」を目指すわれわれは「日本語で人称代名詞と呼ばれているものは、実は名詞だ」と宣言したい。どうしても区別したいなら「人称名詞」で十分だ。日本語の「人称代名詞」はこれからは「人称名詞」と呼ぼう(金谷武洋、日本語文法の謎を解く、2003年、40・41頁)。
従って、
(73)により、
(74)
金谷武洋先生も、所謂、「人称代名詞」を、例へば、「学生」といふ「語」もさうである所の「名詞」としてゐる。
然るに、
(75)
第1に、固有名詞をつぎの符号のひとつとして定義する。
     m,n,・・・・・
第2に、任意の名前をつぎの符号のひとつとして定義する。
     a,b,c,・・・・・
第3に、個体変数をつぎの符号のひとつとして定義する。
     x,y,z,・・・・・
第4に、述語文字をつぎの符号のひとつとして定義する。
     F,G,H,・・・・・
(E.J.レモン 著、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、論理学初歩、1973年、176頁)
従って、
(75)により、
(76)
E.J.レモンの「述語論理」の場合、
① 大野は学生です(大野 is a student)。
といふ「命題」は、
① 学生m
といふ風に、書くことになる。
然るに、
(75)により、
(77)
E.J.レモンの「述語論理」の場合、「人称代名詞」がない。
従って、
(71)(77)により、
(78)
① 私は大野です。⇔
① ∃x(私x&大野x)⇔
① あるxは私であって大野である。⇔
① 私であって大野であるxが存在する。
としないのであれば、
① 私は大野です(I am 大野)。
を、どのやうに「翻訳」してよいのかが、分からない。
(79)
練習問題2 つぎの論証の妥当性を示せ。
(b) すべての駱駝はやさしい馭者を好む。幾らかの駝駝はモハメッドを好まない。モハメッドは馭者である。故にモハメッドは優しくない。
(E.J.レモン 著、竹尾治一郎・浅野楢英、1973年、174頁)。
(80)
解答(b)
1    (1)∀x{駱駝x→∀y(馭者y&優y→好xy)} A
 2   (2)∃x(駱駝x&~好xm)           A
  3  (3)馭者m                    A
   4 (4)   優m                  A
1    (5)   駱駝a→∀y(馭者y&優y→好ay)  1UE
1    (6)   駱駝a→   馭者m&優m→好am   1UE
    7(7)   駱駝a&~好am            A
    7(8)   駱駝a                 7&E
1   7(9)         馭者m&優m→好am    68MPP
  34 (ア)         馭者m&優m        34&I
1 347(イ)                好am    9アMPP
    7(ウ)      ~好am             7&E
1 347(エ)      ~好am&好am         イウ&I
1 3 7(オ)  ~優m                   4エRAA
123  (カ)  ~優m                   27オEE
123  (〃)モハメッド(m)は優しくない。
然るに、
(81)
別解(b)
1       (1)∀x{駱駝x→∀y(馭者y&優y→好xy)} A
 2      (2)∃x∃y(駱駝x&モハメッドy&~好xy)  A
  3     (3)  ∃y(駱駝a&モハメッドy&~好ay)  A
   4    (4)     駱駝a&モハメッドb&~好ab   A
   4    (5)     駱駝a               4&E
   4    (6)         モハメッドb        4&E
   4    (7)                ~好ab   4&E
    8   (8)  ∃y(モハメッドy&馭者y)       A
     9  (9)     モハメッドb&馭者b        A
     9  (ア)            馭者b        9&E
      イ (イ)  ∃y(モハメッドy&優y)        A
       ウ(ウ)     モハメッドb&優b         A
       ウ(エ)            優b         ウ&E
1       (オ)   駱駝a→∀y(馭者y&優y→好ay)  1UE
1  4    (カ)       ∀y(馭者y&優y→好ay)  5オMPP
1  4    (キ)          馭者b&優b→好ab   カUE
     9 ウ(ク)          馭者b&優b       アエ&I
1  4 9 ウ(ケ)                 好ab   キクMPP
1  4 9 ウ(コ)            ~好ab&好ab   7ケ&I
1  4 9  (サ)           ~優b         エコRAA
1  4 9  (シ)    モハメッドb&~優b         6サ&I
1  4 9  (ス) ∃y(モハメッドy&~優y)        シEI
1  48   (セ) ∃y(モハメッドy&~優y)        89スEE
1 3 8   (ソ) ∃y(モハメッドy&~優y)        34セEE
12  8   (タ) ∃y(モハメッドy&~優y)        12ソEE
12  8   (〃)或るyはモハメッドであってyは優しくない。
12  8   (〃)    モハメッドは優しくない。
従って、
(75)(80)(81)により、
(82)
第1に、固有名詞をつぎの符号のひとつとして定義する。
     m,n,・・・・・
といふ「定義」は、実際には、「不要」である。
平成31年04月08日、毛利太。

2019年4月7日日曜日

「象が鼻が長い。」の「一階述語論理」。

―「4月5日の、一番目の記事」の「続き」を書きます。―
(21)
(ⅰ)象は鼻は長い。
(ⅱ)象は鼻長い。
(ⅲ)象は鼻も長い。
といふ「日本語」は、それぞれ、
(ⅰ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}
(ⅱ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}
(ⅲ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}
といふ「述語論理」に「翻訳」される。
(22)
(a)
1  (1) P→ Q A
 2 (2)   ~Q A
  3(3) P    A
1 3(4)    Q 13MPP
123(5) ~Q&Q 24&I
12 (6)~P    35RAA
1  (7)~Q→~P 26CP
(b)
1  (1)~Q→~P A
 2 (2)    P A
  3(3)~Q    A
1 3(4)   ~P 13MPP
123(5) P&~P 24&I
12 (6)  ~~Q 35RAA
12 (7)    Q 6DN
1  (8) P→ Q 27CP
従って、
(22)により、
(23)
(a) P→ Q
(b)~Q→~P
に於いて、
(a)=(b) である。
cf.
対偶(Contraposition)」は「等しい」。
従って、
(24)
(a) Q→ P
(b)~P→~Q
に於いて、
(a)=(b) である。
従って、
(23)(24)により、
(25)
(c)(P→Q)&( Q→ P)
(d)(P→Q)&(~P→~Q)
に於いて、
(c)=(d) である。
然るに、
(26)
すなわち記号で書けば、
 (P→Q)&(Q→P)
である。しかしこの複合的表現を用いるよりは、2重の矢印を採用して、省略記号として、
  P⇔Q
と書くのが便利であろう。
(論理学初歩、E.J.レモン 著、 竹尾治一郎・浅野楢英 訳、1973年、38頁)
従って、
(25)(26)により、
(27)
(e) P⇔Q
(d)(P→Q)&(~P→~Q)
に於いて、
(e)=(d) である。
従って、
(27)により、
(28)
(e)P⇔Q
(d)PならばQであり、PでないならばQでない
に於いて、
(e)=(d) である。
従って、
(28)により、
(29)
(e)P⇔Q
(d)PはQであり、P以外はQでない
に於いて、
(e)=(d) である。
然るに、
(30)
(3) 既知と未知
この組み合わせは次のような場合に現われる
 私大野です。
これは、「大野さんはどちらですか」というような問いに対する答えとして使われる。つまり文脈において、「大野」なる人物はすでに登場していて既知である。ところが、それが実際にどの人物なのか、その帰属する先が未知である。その未知の対象を「私」と表現して、それをガで承けた。それゆえこの形は、
 大野私です。
に置きかえてもほぼ同じ意味を表わすといえる(大野晋、日本語の文法を考える、1978年、34頁)。
然るに、
(31)
Q:大野さんはどなたですか。
A:私大野です。
といふのであれば、
A:私は大野であり、私以外は大野ではない
従って、
(29)(30)(31)により、
(32)
(e)P⇔Q
(f)PQである。
(d)PはQであり、P以外はQでない
に於いて、
(e)=(d)=(f) である。
従って、
(21)(27)(32)により、
(33)
(ⅳ)象鼻は長い。
(〃)象は鼻が長く、象以外は鼻は長くない
といふ「日本語」は、
(ⅳ)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)}
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)}
といふ「述語論理」に、相当する。
然るに、
(34)
1  (1)象鼻は長い。                            A
1  (〃)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)}                  A
1  (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx& 長y)}}Df.⇔
 2 (2)兎は象ではない。                           A
 2 (〃)∀x{兎x→~象x}                         A 
 2 (3)   兎a→~象a                          2UI
  4(4)   兎a                              A
 24(5)      ~象a                          34MPP
1  (6)   象a→∃y(鼻ya&長y)&~象a→~∃y(鼻ya& 長y)  1UE
1  (7)                 ~象a→~∃y(鼻ya& 長y)  6&E
124(8)                     ~∃y(鼻ya& 長y)  57MPP
124(9)                     ∀y~(鼻ya& 長y)  8量化子の関係
124(ア)                       ~(鼻ba& 長b)  9UE
124(イ)                        ~鼻ba∨~長b   ア、ド・モルガンの法則 
124(ウ)                         鼻ba→~長b   イ含意の定義
124(エ)                      ∀y(鼻ya→~長y)  ウUI
12 (オ)   兎a→∀y(鼻ya→~長y)                  4エCP
12 (カ)∀x{兎x→∀y(鼻yx→~長y)}                 オUI
12 (〃)すべてのxについて{xが兎であるならば、すべてyについて(yがxの鼻であるならば、yは長くない)。}
12 (〃)兎の鼻は長くない。
従って、
(34)により、
(35)
(1)象鼻は長い。 然るに、
(2)兎は象ではない。従って、
(3)兎の鼻は長くない。
といふ「日本語による推論」は、「古典一階述語論理による推論」としても「妥当(Valid)」である。
cf.
完全性定理により、(古典一階述語論理については)その形式体系が論理的に成り立つ事柄を余すところなく捉えていること、つまり、もうこれ以上推論規則を加える必要がないことが示されるのである(飯田隆 編、論理の哲学、2005年、97頁)。
然るに、
(21)(33)により、
(36)
(ⅴ)象長い。
といふ「日本語」は、
(ⅴ)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
といふ「述語論理」に、相当する。
然るに、        
(34)(36)により、
(37)
「同じこと」なので、わざわざ、書く必要もないものの、
1  (1)象長い。                                          A
1  (〃)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}                  A
1  (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx& 長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} Df.⇔
1  (2)   象a→∃y(鼻ya&長y)&~象a→~∃y(鼻ya& 長y)&∀z(~鼻za→~長z)  1UE
1  (3)   象a→∃y(鼻ya&長y)&~象a→~∃y(鼻ya& 長y)               2&E
 4 (4)兎は象ではない。                                        A
 4 (〃)∀x{兎x→~象x}                                      A
 4 (5)   兎a→~象a                                       4UI
  6(6)   兎a                                           A
 46(7)      ~象a                                       56MPP
1  (8)                  ~象a→~∃y(鼻ya& 長y)                              3&E
146(9)                     ~∃y(鼻ya& 長y)               78MPP
146(ア)                     ∀y~(鼻ya& 長y)               9量化子の関係
146(イ)                       ~(鼻ba& 長b)               アUI
146(ウ)                        ~鼻ba∨~長b                イ、ド・モルガンの法則
146(エ)                         鼻ba→~長b                ウ含意の定義
146(カ)                      ∀y(鼻ya→~長y)               エUI
14 (キ)   兎a→∀y(鼻ya→~長y)                               6カCP
14 (ク)∀x{兎x→∀y(鼻yx→~長y)}                              キUI
14 (〃)すべてのxについて{xが兎であるならば、すべてyについて(yがxの鼻であるならば、yは長くない)。}
14 (〃)兎の鼻は長くない。
従って、
(37)により、
(38)
(1)象長い。 然るに、
(2)兎は象ではない。従って、
(3)兎の鼻は長くない。
といふ「日本語による推論」は、「古典一階述語論理による推論」としても「妥当(Valid)」である。
従って、
(21)(34)(37)により、
(38)
(ⅰ)象は鼻は長い。
(ⅱ)象は鼻長い。
(ⅲ)象は鼻も長い。
(ⅳ)象鼻は長い。
(ⅴ)象長い。
といふ「日本語」は、それぞれ、
(ⅰ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}
(ⅱ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}
(ⅲ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}
(ⅳ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)}
(ⅴ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
といふ「一階述語論理」に「翻訳」される。
然るに、
(39)
自然言語の文を論理式に翻訳するというプログラムを遂行する上で、まず考えなければならないことは、翻訳先の形式言語としてどのような言語を採用すべきかという問題である。ひとつの基準となるのは、一階述語論理である。しかし、現在では、自然言語のさまざまな構文を自然な形で扱うためには、一階述語論理の言語では不十分であるという考えが広く受け入れられている(飯田隆 編、論理の哲学、2005年、226頁)。
とのことである。
然るに、
(40)
自然言語のさまざまな構文を自然な形で扱うためには、一階述語論理言語では不十分である。
といふことは、そんなことは、「当り前」過ぎるのであって、それ故、
(38)(39)により、
自然言語のさまざまな構文を自然な形で扱うためには、一階述語論理言語では不十分であるが、少なくとも、
(ⅰ)象は鼻は長い。
(ⅱ)象は鼻長い。
(ⅲ)象は鼻も長い。
(ⅳ)象鼻は長い。
(ⅴ)象長い。
といふ「日本語」に関しては、「一階述語論理言語」によって、「翻訳可能」である。
といふ、ことになる。
平成31年04月07日、毛利太。

2019年4月6日土曜日

「象は(すべての象について、)」は「主語・主題」である?

(01)
(a)象は鼻は長い。
といふのであれば、
(a)象の鼻以外は、長いのか、長くないのかが、分からない。
然るに、
(02)
(b)象は鼻長い。
といふのであれば、
(b)象は、鼻以外は長くない
然るに、
(03)
(b)象は鼻長い。
といふのであれば、当然、
(a)象は鼻は長い。
従って、
(01)(02)(03)により、
(04)
(b)象は鼻長い。
といふ「日本語」は、
(c)象は鼻は長い。象は鼻以外は長くない
といふ「意味」である。
然るに、
(05)
(b)
1 (1)∀x{象x→ ∃y( 鼻yx& 長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)} A
1 (2)   象a→ ∃y( 鼻ya& 長y)&~∃z(~鼻za& 長z)  1UE
 3(3)   象a                              A
13(4)       ∃y( 鼻ya& 長y)&~∃z(~鼻za& 長z)  23MPP
13(5)       ∃y( 鼻ya& 長y)                4&E
1 (6)   象a→{∃y( 鼻ya& 長y)}               35CP
1 (7)∀x{象a→ ∃y( 鼻yx& 長y)}               6UI
13(8)      ~∃z(~鼻za& 長z)                4&U
1 (9)   象a→~∃z(~鼻za& 長z)                38CP
1 (ア)∀x{象a→~∃z(~鼻za& 長z)}               9UI
1 (イ)∀x{象x→ ∃y( 鼻yx& 長y)}&
     ∀x{象x→~∃z(~鼻zx& 長z)}               7ア&I
(c)
1 (1)∀x{象x→ ∃y( 鼻yx& 長y)}&
     ∀x{象x→~∃z(~鼻zx& 長z)}               A
1 (2)∀x{象x→ ∃y( 鼻yx& 長y)}               1&E
1 (3)   象a→ ∃y( 鼻ya& 長y)                2UE
 4(4)   象a                              A
14(5)       ∃y( 鼻ya& 長y)                34MPP
1 (6)∀x{象x→~∃z(~鼻zx& 長z)}               1&E
1 (7)   象a→~∃z(~鼻za& 長z)                4UE
14(8)      ~∃z(~鼻za& 長z)                47MPP
14(9)       ∃y( 鼻ya& 長y)&~∃z(~鼻za& 長z)  58&I
1 (ア)   象a→ ∃y( 鼻ya& 長y)&~∃z(~鼻za& 長z)  49CP
1 (イ)∀x{象a→ ∃y( 鼻yx& 長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)} アUI
cf.
 (b){Fa&Fb&Fc & Ga&Gb&Gc}=∀x{Fx &   Gx}
 (c){Fa&Fb&Fc}&{Ga&Gb&Gc}=∀x{Fx}&∀x{Gx}
 であるため、「以上の結果」は、「当然」である。
従って、
(05)により、
(06)
(b)∀x{象a→∃y(鼻yx&長y) &      ~∃z(~鼻zx&長z)}
(c)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}&∀x{象x→~∃z(~鼻zx&長z)}
に於いて、
(b)=(c) である。
従って、
(06)により、
(07)
(b)すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、長く、                      あるzがxの鼻ではなくて、長い。といふことはない。}
(c)すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、長い。}&すべてのxについて{xが象であるならば、あるzがxの鼻ではなくて、長い。といふことはない。}
に於いて、
(b)=(c) である。
然るに、
(08)
「すべてのxについて、xが象であるならば」といふことは、
「すべての象について」といふことである。
然るに、
(09)
「すべての象について・・・・。」といふことは、
「象・・・・。」といふことである。
従って、
(06)~(09)により、
(10)
(b)∀x{象a→∃y(鼻yx&長y) &      ~∃z(~鼻zx&長z)}
(c)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}&∀x{象x→~∃z(~鼻zx&長z)}
に於いて、
(b)象は・・・・。
(c)象は・・・・。象は・・・・。
である。
(01)(04)(10)により、
(11)
(a)象は鼻は長い。
(b)象は鼻長い。
(c)象は鼻は長い。象は鼻以外は長くない
といふ「日本語」は、
(a)すべての象は鼻は長い。
(b)すべての象は鼻長い。
(c)すべての象は鼻は長い。すべての象は鼻以外は長くない
といふ「意味」、すなはち、
(a)∀x{象a→∃y(鼻yx&長y)}
(b)∀x{象a→∃y(鼻yx&長y) &      ~∃z(~鼻zx&長z)}
(c)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}&∀x{象x→~∃z(~鼻zx&長z)}
といふ「意味」、すなはち、
(b)すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、長く。}
(b)すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、長く、                      あるzがxの鼻ではなくて、長い。といふことはない。}
(c)すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、長い。}&すべてのxについて{xが象であるならば、あるzがxの鼻ではなくて、長い。といふことはない。}
といふ「意味」である。
然るに、
(12)
(b)すべての象は鼻が長い。
といふのであれば、
(b)は、「象(といふ動物)」を「話題(主題・題目)」にしてゐる。
従って、
(11)(12)により、
(13)
(b)象は鼻長い。
といふのであれば、
(b)は、「象」を「話題(主題・題目)」にしてゐる。
然るに、
(14)
近年になって言語学や外国語としての日本語文法の分野では「主題」(あるいは「題目」)をマークするものとして「は」を捉えることが常識となっている(金谷武洋、日本語に主語はいらない、2002年、101頁)。
従って、
(12)(13)(14)により、
(15)
(b)象は鼻が長い。
に於ける、
(b)象は
は、「話題(主題・題目)」である。
然るに、
(16)
(b)∀x{象a→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx&長z)}
に於いて、
(b)∀x は、
(b)  {象a→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx&長z)}
の「文頭」にあって、「文末」まで、「掛かってゐる」。
従って、
(06)~(10)(16)により、
(17)
(b)象は、鼻が長い=
(b)象は{鼻が長い}。
に於いて、
「象は(話題・主題・題目)」は、「文頭」にあって、「文末」まで、「掛かってゐる」。
然るに、
(18)
日本語のコプラはハであろう。― 中略、―
そして、ハはむろん主辞の方に入れなければならない。
 主 辞    賓 辞
 The dog is an animal.
 犬は   動物である。
(三上章、日本語の論理、1963年、6頁改)。
然るに、
(19)
(d)犬は動物である。⇔
(d)∀x{犬x→動物x}
従って、
(17)(18)(19)により、
(20)
(d)犬は、動物である=
(d)犬は{動物である}。
に於いて、
「犬は(主辞)」は、「文頭」にあって、「文末」まで、「掛かってゐる」。
従って、
(17)(19)により、
(20)
(b)象は鼻が長い =象は{鼻が長い}。
(d)犬は動物である=犬は{動物である}。
に於いて、
「象は(主題)」は、「文頭」にあって、「文末」まで、「掛かってゐる」。
「犬は(主辞)」は、「文頭」にあって、「文末」まで、「掛かってゐる」。
然るに、
(21)
「象は鼻が長い」はどれが主辞がわからないから、このままでは非論理的な構造の文である、と言う人がもしあった(沢田『入門』二九ペ)とすれば、その人は旧『論理学』を知らない人であろう、これはこのままで、
 象は 鼻が長い。 
 主辞 賓辞
とはっきりしている。速水式に簡単明リョウである。意味も、主辞賓辞の関係も小学生にもわかるはずの文である。これに文句をつけたり、それを取り次いだりするのは、人々が西洋文法に巻かれていることを語る以外の何物でもない。このまま定理扱いしてもよろしい。そしてこの定理の逆は真でないとして、鼻の長いもの例に、鞍馬山の天狗だの、池の尾の禅珍内供だのを上げるのも一興だろう。それでおしまいである(三上章、日本語の論理、1963年、13・14頁)。
従って、
(20)(21)により、
(22)
三上章先生が言ふ、
(b)象は鼻が長い=象は{鼻が長い}。
に於ける、
(b)象は 
は「主」であって、「主」ではない。
然るに、
(23)
大辞林 第三版の解説
しゅじ【主
「主」に同じ。
従って、
(22)(23)により、
(24)
三上章先生が言ふ、
(b)象は鼻が長い=象は{鼻が長い}。
に於ける、
(b)象は 
は「主語主辞)」である。
然るに、
(25)
「象は鼻が長い」の構造:日本語の述語の機能から考える 2/2(投稿日: 2017年2月8日 作成者: 丸山有彦)
三上章は『象は鼻が長い』という本を書いて、日本語には主語がないと主張しました。「象は鼻が長い」という文の「象は」というのは主語ではなく、主題なのだという主張でした。助詞「は」がつく語は主題になります。「は」は文の区切りになるようです。
従って、
(26)
(24)と(25)は、「矛盾」する。
平成31年04月06日、毛利太。

2019年4月5日金曜日

「三上章 著、象は鼻が長い、1960年」は「名著」ではない。

―「先ほどの記事(4月5日)」の「続き」を書きます。―
(21)
(ⅰ)象は鼻は長い。
(ⅱ)象は鼻長い。
(ⅲ)象は鼻も長い。
といふ「日本語」は、それぞれ、
(ⅰ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}
(ⅱ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}
(ⅲ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}
といふ「述語論理」に「翻訳」される。
従って、
(21)により、
(22)
(ⅳ)タゴール記念会館はが理事長です。
といふ「日本語」は、
(ⅳ)∀x{タゴール記念会館x→∃y(私y&理事長yx)&∀z(~私z→~理事長zx)}=
(ⅳ)すべてのxについて{xがタゴール記念会館であるならば、あるyは私であって、yはxの理事長であって、すべてのzについて、zが私でないならば、zはxの理事長ではない。}
といふ「述語論理」に「翻訳」される。
然るに、
(23)
(a)
1  (1)∀x{タゴール記念会館x→∃y(私y&理事長yx)&∀z(~私z→~理事長zx)} A
1  (2)   タゴール記念会館a→∃y(私y&理事長ya)&∀z(~私z→~理事長za)  1UE
1  (3)   タゴール記念会館a→∃y(私y&理事長ya)                 2&E
1  (4)                          ∀z(~私z→~理事長za)  2&E
1  (5)                             ~私c→~理事長ca   1UE
 6 (6)                             ~私c          A
  7(7)                                  理事長ca   A
16 (8)                                 ~理事長ca   56MPP
167(9)                           理事長ca&~理事長ca   78&I
1 7(ア)                            ~~私c          69RAA
1 7(イ)                              私c          アDN
1  (ウ)                              理事長ca→ 私c   7イCP
1  (エ)                          ∀z( 理事長za→ 私z)  ウUI
1  (オ)   タゴール記念会館a→∃y(私y&理事長ya)&∀z( 理事長za→ 私z)  3エ&I
1  (カ)∀x{タゴール記念会館x→∃y(私y&理事長yx)&∀z( 理事長zx→ 私z)} オUI
(b)
1  (1)∀x{タゴール記念会館x→∃y(私y&理事長yx)&∀z( 理事長zx→ 私z)} A
1  (2)   タゴール記念会館a→∃y(私y&理事長ya)&∀z( 理事長za→ 私z)  1UE
1  (3)   タゴール記念会館a→∃y(私y&理事長ya)                 2&E
1  (4)                          ∀z( 理事長za→ 私z)  2&E
1  (5)                              理事長ca→ 私c   4UE
 6 (6)                              理事長ca       A
  7(7)                                    ~私c   A
16 (8)                                     私c   56MPP
167(9)                                 ~私c&私x   78&I
1 7(ア)                             ~理事長ca       69RAA
1  (イ)                             ~私c→~理事長ca   7アCP
1  (ウ)                          ∀z(~私z→~理事長zx)  イUI
1  (エ)   タゴール記念会館a→∃y(私y&理事長ya)&∀z(~私z→~理事長za)  イウ&I
1  (オ)∀x{タゴール記念会館x→∃y(私y&理事長yx)&∀z(~私z→~理事長zx)} エUI
従って、
(23)により、
(a)∀x{タゴール記念会館x→∃y(私y&理事長yx)&∀z(~私z→~理事長zx)}
(b)∀x{タゴール記念会館x→∃y(私y&理事長yx)&∀z( 理事長zx→ 私z)}
に於いて、
(a)ならば(b)であり、
(b)ならば(a)である。
従って、
(23)により、
(24)
(a)∀x{タゴール記念会館x→∃y(私y&理事長yx)&∀z(~私z→~理事長zx)}
(b)∀x{タゴール記念会館x→∃y(私y&理事長yx)&∀z( 理事長zx→ 私z)}
に於いて、
(a)=(b) である。
従って、
(22)(24)により、
(25)
(a)タゴール記念会館は私理事長です=
(〃)∀x{タゴール記念会館x→∃y(私y&理事長yx)&∀z(~私z→~理事長zx)}=
(〃)すべてのxについて{xがタゴール記念会館であるならば、あるyは私であって、yはxの理事長であって、すべてのzについて、zが私でないならば、zはxの理事長ではない。}
(b)∀x{タゴール記念会館x→∃y(私y&理事長yx)&∀z( 理事長zx→ 私z)}=
(〃)すべてのxについて{xがタゴール記念会館であるならば、あるyは私であって、yはxの理事長であって、すべてのzについて、zがxの理事長であるならば、zは私である。}
に於いて、
(a)=(b) である。
然るに、
(26)
(b)すべてのzについて、zがxの理事長であるならば、zは私である。
といふことを、「普通の日本語」で言ふならば、
(b)xの理事長は私です。
といふことに、他ならない。
従って、
(25)(26)により、
(27)
(a)タゴール記念会館は私理事長です=∀x{タゴール記念会館x→∃y(私y&理事長yx)&∀z(~私z→~理事長zx)}。
(b)タゴール記念会館は理事長私です=∀x{タゴール記念会館x→∃y(私y&理事長yx)&∀z( 理事長zx→ 私z)}。
に於いて、
(a)=(b) である。
従って、
(27)により、
(28)
(a)私理事長です=∀z(~私z→~理事長zx)}。
(b)理事長私です=∀z( 理事長zx→ 私z)}。
に於いて、
(a)=(b) である。
従って、
(21)~(28)により、
(29)
(ⅰ)象は鼻は長い。
(ⅱ)象は鼻長い。
(ⅲ)象は鼻も長い。
といふ「日本語」が、それぞれ、
(ⅰ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}
(ⅱ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}
(ⅲ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}
といふ「述語論理」に「翻訳」される。
といふことを、知ってゐるならば、
(a)私理事長です。
(b)理事長私です。
に於いて、
(a)=(b) である。
といふことは、「当然」である。
然るに、
(30)
よく知られているように、「私理事長です」は語順を変え、
 理事長、私です。
と直して初めて主辞賓辞が適用されのである。また、かりに大倉氏が、
 タゴール記念館は、私理事です。
と言ったとすれば、これは主辞「タゴール記念館」を品評するという心持ちの文である
(三上章、日本語の論理、1963年、40・41頁)
然るに、
(31)
 タゴール記念館は、私理事です。
と言ったとすれば、これは主辞「タゴール記念館」を品評するという心持ちの文である
といふ「論評」は、「述語論理」とは、関係がない。
従って、
(29)(30)(31により、
(32)
「日本語の論理、昭和38年」を書いた時点での、三上章先生は、
(ⅰ)象は鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
(ⅱ)象は鼻長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(ⅲ)象は鼻も長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「等式」を、知らないまま、「三上章 著、日本語の論理」を書いてゐる。
従って、
(32)により、
(33)
「象は鼻が長い、昭和35年」を書いた時点での、三上章先生も、
(ⅰ)象は鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
(ⅱ)象は鼻長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(ⅲ)象は鼻も長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「等式」を、知らないまま、「三上章 著、象は鼻が長い」を書いてゐる。
然るに、
(34)
伝統的論理学を清水滉『論理学』(1916年)で代表させよう。わたしのもっているのが四十三年の第十九冊の一冊で、なお引き続き刊行だろうから、前後かなり多くの読者をもつ論理学書と考えられる。新興の記号論理学は、沢田允茂『現代論理学入門』(1962年)を参照することにする(三上章、日本語の論理、1963年、4頁)。
従って、
(33)(34)により、
(35)
三上章先生は、
(ⅰ)象は鼻は長い。
(ⅱ)象は鼻長い。
(ⅲ)象は鼻も長い。
といふ「日本語」を分析する上で、「現代論理学(述語論理)」の知識は、必要である。
としつつも、その一方で、これらの「日本語」を、「述語論理」に「置き換へる」ことを、怠ってゐる。
従って、
(33)(34)(35)により、
(36)
「三上章 著、象は鼻が長い、1960年」といふ「著書」は、三上先生が意図したそれとは異なり、「現代論理学(述語論理)的」には、「不完全な著書」であると、言はざるを得ない。
平成31年04月05日、毛利太。

「象は鼻が、鼻も、鼻は、長い。」の「述語論理」。

(01)
1     (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
 2    (2)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
  3   (3)∃x(兎x&象x)                      A
1     (4)   象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)  1UE
 2    (5)   兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za)  1UE
   6  (6)   兎a&象a                       A
   6  (7)   兎a                          6&E
   6  (8)      象a                       6&E
1  6  (9)      ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)  47MPP
 2 6  (ア)      ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za)  58MPP
1  6  (イ)      ∃y(鼻ya&長y)               9&E
 2 6  (ウ)      ∃y(耳ya&長y)               ア&E
    エ (エ)         鼻ba&長b                A
     オ(オ)         耳ba&長b                A
1  6  (カ)                 ∀z(~鼻za→~長z)  9&E
1  6  (キ)                    ~鼻ba→~長b   カUE
 2 6  (ク)                 ∀z(耳za→~鼻za)  ア&E
 2 6  (ケ)                    耳ba→~鼻ba   クUE
    オ (コ)                    耳ba        オ&E
 2 6オ (サ)                        ~鼻ba   ケコMPP
12 6オ (シ)                         ~長b   キサコMPP
    オ (ス)             長b                オ&E
12 6オ (セ)             長b&~長b            シス&I
12 6  (ソ)             長b&~長b            ウオセEE
123   (タ)             長b&~長b            36ソEE
12    (チ)~∃x(兎x&象x)                     3タRAA
12    (ツ)∀x~(兎x&象x)                     チ量化子の関係
12    (テ)  ~(兎a&象a)                     ツUE
12    (ト)  ~兎a∨~象a                      テ、ド・モルガンの法則
12    (ナ)   兎a→~象a                      ト含意の定義
12    (ニ)∀x(兎x→~象x)                     ナUI
12    (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。   ナUI
12    (〃)兎は象ではない。
然るに、
(02)
(a)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
(d)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}
といふ「述語論理」は、それぞれ、
(a)すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。}
(d)すべてのxについて{xが兎であるならば、あるyはxの耳であって、yは長く。すべてのzについて、zがxの耳であるならば、zはxの鼻ではない。}
といふ「意味」である。
然るに、
(03)
(a)すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。}
(d)すべてのxについて{xが兎であるならば、あるyはxの耳であって、yは長く、すべてのzについて、zがxの耳であるならば、zはxの鼻ではない。}
といふことは、すなはち、
(a)象は鼻以外は長くない。
(d)兎の耳は長いものの、兎の耳は鼻ではない。
といふ「意味」である。
従って、
(01)(02)(03)により、
(04)
(1)象は鼻以外は長くない。         然るに、
(2)兎の耳は長いものの、兎の耳は鼻ではない。従って、
(3)兎は鼻以外(耳)も長い。        従って、
(4)兎は象ではない。
といふ「推論」は、「述語論理」としても、「妥当」である。
然るに、
(05)
(c)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}
といふ「述語論理」は、
(c)すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長い。}
といふ「意味」である。
然るに、
(06)
(c)すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長い。}
といふのあれば、
(c)象は、鼻以外も、長い。  のか、
(c)象は、鼻以外は、長くない。のかが、分からない。
然るに、
(07)
(c)象は鼻長い。
といふのあれば、
(c)象は、鼻以外も、長い。  のか、
(c)象は、鼻以外は、長くない。のかが、分からない。
従って、
(05)(06)(07)により、
(08)
(c)象は鼻は長い。
といふ「日本語」は、
(c)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}=
(c)すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長い。}
といふ「述語論理」に相当する。
然るに、
(09)
(a)象は鼻長い。
といふのあれば、
(a)象は鼻以外は長くない
従って、
(02)(03)(09)により、
(10)
(a)象は鼻長い。
といふ「日本語」は、
(a)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}=
(a)すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。}
といふ「述語論理」に相当する。
然るに、
(11)
(a)
1 (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→ ~長z)} A
1 (2)   象a→∃y(鼻ya&長y)&~∀z(~鼻za→ ~長z)  1UE
1 (3)   象a→∃y(鼻ya&長y)                 2&E
1 (4)                 ~∀z(~鼻za→ ~長z)  2&E
1 (5)                 ∃z~(~鼻za→ ~長z)  4量化子の関係
 6(6)                   ~(~鼻ca→ ~長c)  A
 6(7)                  ~(~~鼻ca∨ ~長c)  含意の定義
 6(8)                    ~(鼻ca∨ ~長c)  7DN
 6(9)                    (~鼻ca&~~長c)  8ド・モルガンの法則
 6(ア)                    (~鼻ca&  長c)  9DN
 6(イ)                  ∃z(~鼻za&  長z)  アEI
1 (ウ)                  ∃z(~鼻za&  長z)  56イEE
1 (エ)   象a→∃y(鼻ya&長y)& ∃z(~鼻za&  長z)  3エ&I
1 (オ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx&  長z)} エUI
(b)
1 (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx&  長z)} A
1 (2)   象a→∃y(鼻ya&長y)& ∃z(~鼻za&  長z)  1UE
1 (3)   象a→∃y(鼻ya&長y)                 2&E
1 (4)                  ∃z(~鼻za&  長z)  2&E
1 (5)                ~~∃z(~鼻za&  長z)  4DN
1 (6)                ~∀x~(~鼻za&  長z)  5量化子の関係
1 (7)                  ~~(~鼻ca&  長c)  6UE
1 (8)                  ~(~~鼻ca∨  長c)  7ド・モルガンの法則
1 (9)                   ~(~鼻ca→  長c)  8含意の定義
1 (ア)                 ∃z~(~鼻za→  長z)  9EI
1 (イ)                 ~∀z(~鼻za→  長z)  ア量化子の関係 
1 (ウ)   象a→∃y(鼻ya&長y)&~∀z(~鼻za→  長z)  3イ&I
1 (エ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→ ~長z)} ウUI
従って、
(11)により、
(12)
(a)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}
(b)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx& 長z)}
に於いて、
(a)ならば、(b)であり、
(b)ならば、(a)である。
従って、
(12)により、
(13)
(a)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}
(b)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx& 長z)}
に於いて、
(a)=(b) である。
然るに、
(14)
「&」と「∨」は、「→」よりも「より強く結合する」。
(E.J.レモン 著、竹尾 治一郎・浅野楢英 訳、論理学初歩、1973年、59頁)
従って、
(13)(14)により、
(15)
(a)∀x{象x→[∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)]}
(b)∀x{象x→[∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx& 長z)]}
に於いて、
(a)=(b) である。
従って、
(15)により、
(16)
(a)すべてのxについて{xが象であるならば[あるyはxの鼻であって、yは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。といふことはない]。}
(b)すべてのxについて{xが象であるならば[あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzはxの鼻ではなく、zは長い]。}
に於いて、
(a)=(b) である。
然るに、
(17)
(b)すべてのxについて{xが象であるならば[あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzはxの鼻ではなく、zは長い]。}
といふことは、
(b)すべての{象は[長い鼻と、長い鼻以外を、持ってゐる]。}
といふことに、他ならない。
然るに、
(18)
(b)すべての{象は[長い鼻と、長い鼻以外を、持ってゐる]。}
といふことは、
(c)象は鼻も長い。
といふことに、他ならない。
従って、
(11)~(18)により、
(19)
(a)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}
(b)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx& 長z)}
(c)象は鼻も長い。
に於いて、
(a)=(b)=(c) である。
従って、
(11)~(19)により、
(20)
(b)象は鼻も長い。
といふ「日本語」は、
(b)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}=
(b)すべてのxについて{xが象であるならば[あるyはxの鼻であって、yは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。といふことはない]。}
といふ「述語論理」に相当する。
従って、
(08)(10)(20)により、
(21)
(ⅰ)象は鼻長い。
(ⅱ)象は鼻長い。
(ⅲ)象は鼻長い。
といふ「日本語」は、それぞれ、
(ⅰ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}
(ⅱ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}
(ⅲ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}
といふ「述語論理」に「翻訳」される。
平成31年04月05日、毛利太。

「象は鼻が長く、象の鼻が長い。」の「述語論理式」。

(01)
1     (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
 2    (2)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
  3   (3)∃x(兎x&象x)                      A
1     (4)   象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)  1UE
 2    (5)   兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za)  1UE
   6  (6)   兎a&象a                       A
   6  (7)   兎a                          6&E
   6  (8)      象a                       6&E
1  6  (9)      ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)  47MPP
 2 6  (ア)      ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za)  58MPP
1  6  (イ)      ∃y(鼻ya&長y)               9&E
 2 6  (ウ)      ∃y(耳ya&長y)               ア&E
    エ (エ)         鼻ba&長b                A
     オ(オ)         耳ba&長b                A
1  6  (カ)                 ∀z(~鼻za→~長z)  9&E
1  6  (キ)                    ~鼻ba→~長b   カUE
 2 6  (ク)                 ∀z(耳za→~鼻za)  ア&E
 2 6  (ケ)                    耳ba→~鼻ba   クUE
    オ (コ)                    耳ba        オ&E
 2 6オ (サ)                        ~鼻ba   ケコMPP
12 6オ (シ)                         ~長b   キサコMPP
    オ (ス)             長b                オ&E
12 6オ (セ)             長b&~長b            シス&I
12 6  (ソ)             長b&~長b            ウオセEE
123   (タ)             長b&~長b            36ソEE
12    (チ)~∃x(兎x&象x)                     3タRAA
12    (ツ)∀x~(兎x&象x)                     チ量化子の関係
12    (テ)  ~(兎a&象a)                     ツUE
12    (ト)  ~兎a∨~象a                      テ、ド・モルガンの法則
12    (ナ)   兎a→~象a                      ト含意の定義
12    (ニ)∀x(兎x→~象x)                     ナUI
12    (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。   ナUI
12    (〃)兎は象ではない。
従って、
(01)により、
(02)
1     (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
 2    (2)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
  3   (3)∃x(兎x&象x)                      A
に於いて、
(1)であって、尚且つ、
(2)であるならば、
(3)ではない。
といふ「命題」は、「述語論理」として、「真」である。
従って、
(02)により、
(03)
(1)すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
(2)すべてのxについて、xが兎であるならば、あるyはxの耳であって、yは長く。すべてのzについて、zがxの耳であるならば、zはxの鼻ではない。
(3)あるxは兎であって象である。
に於いて、
(1)であって、尚且つ、
(2)であるならば、
(3)ではない。
といふ「命題」は、「述語論理」として、「真」である。
従って、
(03)により、
(04)
(1)象は鼻以外は長くない。         然るに、
(2)兎の耳は長いものの、兎の耳は鼻ではない。従って、
(〃)兎は鼻以外(耳)長い。        従って、
(3)兎は象ではない。
といふ「推論」は、「述語論理」としても、「正しい」。
然るに、
(05)
(ⅱ)象は鼻長い。
といふのではなく、
(ⅰ)象は鼻長い。
といふのであれば、
(ⅰ)象は、鼻以外長い。のかも知れない。
然るに、
(06)
(ⅰ)象は、鼻以外長い。のかも知れない。
といふのであれば、
(ⅰ)象は、耳長い。のかも知れない。
然るに、
(07)
(ⅰ)象は、耳長い。のかも知れない。
といふのであれば、
(1)象は、耳長い。のかも知れない。    然るに、
(2)兎の耳は長いものの、兎の耳は鼻ではない。従って、
(3)兎は象ではない。
といふ「推論」は、「正しくない」。
然るに、
(08)
(ⅰ)象は鼻長い。
といふのではなく、
(ⅱ)象は鼻長い。
といふのであれば、
(ⅱ)象は、鼻以外は長くない
従って、
(04)(08)により、
(09)
(1)象は鼻長い。             従って、
(〃)象は、鼻以外は長くない。        然るに、
(2)兎の耳は長いものの、兎の耳は鼻ではない。従って、
(〃)兎は鼻以外(耳)長い。        従って
(3)兎は象ではない。
といふ「推論」は、「述語論理」としても、「正しい」。
(10)
1    (1)∀x{~象x→∀y(鼻yx→~長y)}     A
 2   (2)∀x( 兎x→~象x)             A
  3  (3)∀x{ 兎x→∃y(耳yx& 長y)}     A
   4 (4)    兎a                  A
1    (5)   ~象a→∀y(鼻ya→~長y)}     1UE
 2   (6)    兎a→~象a              2UE
  3  (7)    兎a→∃y(耳ya& 長y)      3UE
 2 4 (8)       ~象a              46MPP
12 4 (9)        ∀y(鼻ya→~長y)     58MPP
12 4 (ア)           鼻ba→~長b      9UI
  34 (イ)        ∃y(耳ya& 長y)     47MPP
    ウ(ウ)           耳ba& 長b      A
          ウ(エ)           耳ba          ウ&E
    ウ(オ)                長b      ウ&E
    ウ(カ)              ~~長b      オDN
12 4ウ(キ)          ~鼻ba          アカMTT
12 4ウ(ク)          ~鼻ba&耳ba      エキ&I
12 4ウ(ケ)          ~鼻ba&耳ba&長b   オク&I
12 4ウ(コ)       ∃y(~鼻ya&耳ya&長y)  ケEI
1234 (サ)       ∃y(~鼻ya&耳ya&長y)  イウコEE
123  (シ)    兎a→∃y(~鼻ya&耳ya&長y)  4サCP
123  (ス)∀x{ 兎x→∃y(~鼻yx&耳yx&長y)} シUI
従って、
(10)により、
(11)
1    (1)∀x{~象x→∀y(鼻yx→~長y)}     A
 2   (2)∀x( 兎x→~象x)             A
  3  (3)∀x{ 兎x→∃y(耳yx& 長y)}     A
123  (ス)∀x{ 兎x→∃y(~鼻yx&耳yx&長y)} シUI
に於いて。
(1)であって、
(2)であって、
(3)であるならば、
(4)である。
従って、
(11)により、
(12)
(1)すべてのxについて、xが象でないならば、すべてのyについて、yがxの鼻であるならば、yは長くない。
(2)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。
(3)すべてのxについて、xが兎であるならば、あるyはxの耳であって、yは長い。
(4)すべてのxについて、xが兎であるならば、あるyはxの鼻ではなく耳であって、yは長い。
に於いて。
(1)であって、
(2)であって、
(3)であるならば、
(4)である。
といふ「推論」は、「述語論理」としても、「正しい」。
従って、
(12)により、
(13)
(1)象以外の鼻は長くない。然るに、
(2)兎は象ではない。   然るに、
(3)兎の耳は長い。    従って、
(4)兎の鼻ではなく、兎の耳は長い。
といふ「推論」は、「述語論理」としても、「正しい」。
然るに、
(14)
(ⅰ)象の鼻長い。
といふのであれば、
(ⅰ)象以外の鼻も長い。のかも知れないし、
(ⅱ)象の鼻長い。
といふのであれば、
(ⅱ)象以外の鼻は長くない
従って、
(12)(13)(14)により、
(15)
(1)象の鼻長い。    従って、
(〃)象の鼻以外は長くない。然るに、
(2)兎は象ではない。   然るに、
(3)兎の耳は長い。    従って、
(4)兎の鼻ではなく、兎の耳は長い。
といふ「推論」は、「述語論理」としても、「正しい」。
平成31年04月04日、毛利太。

2019年4月4日木曜日

「シンタックス(構造)」と「語順」。(Ⅱ)。

(01)
① 彼立於門前三十分=
① 彼立〔於(門前)〕三十分。
に於いて、
① 立〔 〕⇒〔 〕立
① 於( )⇒( )於
といふ「移動」を行ふと、
① 彼立〔於(門前)〕三十分⇒
② 彼〔(門前)於〕立三十分=
② 彼〔(門前)に〕立つこと三十分。
といふ「漢文・訓読」が、成立する。
然るに、
(02)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。すなわち、その補足構造における語順は、国語とは全く反対である。しかし、訓読は、国語の語順に置きかえて読むことが、その大きな原則となっている。それでその補足構造によっている文も、返り点によって、国語としての語順が示されている(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、296頁)。
従って、
(01)(02)により、
(03)
① 彼立〔於(門前)〕三十分。⇔
② 彼〔(門前)に〕立つこと三十分。
といふ「漢文・訓読」に於いて、
① の「語順」と、
② の「語順」は、「同じ」ではないが、
①〔 ( ) 〕
②〔 ( ) 〕
といふ「補足構造」自体に、「変り」はない
然るに、
(04)
③ He had been standing in front of the door for 30 minutes=
③ He had《been〈standing{in[front〔of(the door)〕]for(30 minutes)}〉》.
に於いて、
③    had《 》⇒《 》had
③   been〈 〉⇒〈 〉been
③ standing{ }⇒{ }standing
③       in[ ]⇒[ ]in
③  front〔 〕⇒〔 〕front
③       of( )⇒( )of
③    for( )⇒( )for
といふ「移動」を行ふと、
③ He had《been〈standing{in[front〔of(the door)〕]for(30 minutes)}〉》⇒
④ He 《〈{[〔(the door)of〕front]in(30 minutes)for}standing〉been》had=
④ 彼は 《〈{[〔(ドア)の〕前]に(30分)間}立って〉ゐ》た。
といふ「英文・訓読」が、成立する。
従って、
(03)(04)により、
(05)
③ He had《been〈standing{in[front〔of(the door)〕]for(30 minutes)}〉》⇔
④ 彼は 《〈{[〔(ドア)の〕前]に(30分)間}立って〉ゐ》た。
といふ「英文・訓読」に於いて、
③ の「語順」と、
④ の「語順」は、「同じ」ではないが、
③《 〈 { [ 〔 ( ) 〕 ]( ) } 〉 》
④《 〈 { [ 〔 ( ) 〕 ]( ) } 〉 》
といふ「補足構造」自体に、「変り」はない
然るに、
(06)
① 彼立〔於(門前)〕三十分。⇔
② 彼〔(門前)に〕立つこと三十分。
に於ける、
①〔 ( ) 〕
②〔 ( ) 〕
といふ「補足構造」と、
③ He had《been〈standing{in[front〔of(the door)〕]for(30 minutes)}〉》⇔
④ 彼は 《〈{[〔(ドア)の〕前]に(30分)間}立って〉ゐ》た。
に於ける、
③《 〈 { [ 〔 ( ) 〕 ]( ) } 〉 》
④《 〈 { [ 〔 ( ) 〕 ]( ) } 〉 》
といふ「補足構造」は、言ふ迄もなく、「同じ」ではない
従って、
(03)~(06)により、
(07)
① 彼立〔於(門前)〕三十分。⇔
② 彼〔(門前)に〕立つこと三十分。
といふ「漢文・訓読」の場合は、
① の「語順」と、
② の「語順」は、「同じ」ではないが、
①〔 ( ) 〕
②〔 ( ) 〕
といふ「補足構造」は、「同じ」であり、
① 彼立〔於(門前)〕三十分 ⇔
④ 彼は 《〈{[〔(ドア)の〕前]に(30分)間}立って〉ゐ》た。
といふ「漢文・和訳」の場合は、
① の「語順」と、
④ の「語順」が、「同じ」ではないだけではなく、
①〔 ( ) 〕
④《 〈 { [ 〔 ( ) 〕 ]( ) } 〉 》
といふ「補足構造」も、「同じ」ではない。
従って、
(08)
「漢文・訓読」とは、「原文(漢文)のシンタックス」を保存した形で行はれる、「逐語訳」であり、
「漢文・和訳」とは、「原文(漢文)のシンタックス」を無視した形で行はれる、「 意訳 」である。
然るに、
(09)
大学(京都帝国大学)に入った二年め(昭和5年)の秋、倉石武四郎先生が中国の留学から帰られ、授業を開始されたことは、私だけではなく、当時の在学生に一大衝撃を与えた。先生は従来の漢文訓読を全くすてて、漢籍を読むのにまず中国語の現代の発音に従って音読し、それをただちに口語に訳することにすると宣言されたのである。この説はすぐさま教室で実行された。私どもは魯迅の小説集『吶喊』と江永の『音学弁徴』を教わった。これは破天荒のことであって、教室で中国の現代小説を読むことも、京都大学では最初であり、全国のほかの大学でもまだなかったろうと思われる(『心の履歴』、「小川環樹著作集 第五巻」、筑摩書房、176頁)。
従って、
(08)(09)により、
(10)
 昭和五年、中国から帰国した、倉石武四郎先生は、
「原文(漢文)のシンタックス」を保存した形で行はれる、「翻訳」を止めて、
「原文(漢文)のシンタックス」を無視した形で行はれる、「翻訳」を、授業に、取り入れた。
といふことになる。
(11)
その「結果」として、今日に至って、
語順が異なれば、シンタックスも異なる」が故に、「大学に入っても、一般に中国文学科では訓読法指導しない。漢文つまり古典中国語も現代中国語で発音してしまうのが通例で、訓読法なぞ時代遅れの古臭い方法だと蔑む雰囲気さえ濃厚だという(古田島洋介、日本近代史を学ぶための、文語文入門、2013年、はじめに ⅳ)。
といふことになる。
然るに、
(12)
 もう一度、確認すると、
③ He had《been〈standing{in[front〔of(the door)〕]for(30 minutes)}〉》⇔
④ 彼は 《〈{[〔(ドア)の〕前]に(30分)間}立って〉ゐ》た。
といふ「英文・訓読」に於ける、
③《 〈 { [ 〔 ( ) 〕 ]( ) } 〉 》
④《 〈 { [ 〔 ( ) 〕 ]( ) } 〉 》
といふ「括弧(補足構造)」が示してゐる通り、
語順が異なれば、シンタックスも異なる(語順が等しいければ、そのときに限って、シンタックスは等しい)。」といふ「理解」は、「単なる、誤解」に過ぎない。
平成31年04月02日、毛利太。

2019年4月2日火曜日

「シンタックス(構造)」と「語順」。

(01)
(a)
1(1)  ~∃x(人x& ~死x) A
1(2)  ∀x~(人x& ~死x) 1量化子の関係
1(3)    ~(人a& ~死a) 1UE
1(4)     ~人a∨~~死a  3ド・モルガンの法則
1(5)     ~人a∨  死a  4DN
1(6)      人a→  死a  5含意の定義
1(7)   ∀x(人x→  死x) 6UI
(b)
1(1)   ∀x(人x→  死x) A
1(2)      人a→  死a  1UE
1(3)     ~人a∨  死a  2含意の定義
1(4)  ~~(~人a∨  死a) 3DN
1(5)  ~(~~人a& ~死a) 4ド・モルガンの法則
1(6)    ~(人a& ~死a) 5DN
1(7)  ∀x~(人a& ~死a) 5UI
1(8)~~∀x~(人a& ~死a) 7DN
1(9)~∃x~~(人a& ~死a) 8量化子の関係
1(ア)  ~∃x(人x& ~死x) 9DN
従って、
(01)により、
(02)
① ~∃x( 人x&~死x)=(xは人であってxは死なない。)といふ、そのやうなxは存在しない。
②  ∀x( 人x→ 死x)=すべてのxについて(xが人ならばxは死ぬ)。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(03)
(c)
1    (1)  ∀x(人x→  死x) A
1    (2)     人a→  死a  1UE
 3   (3)     人a& ~死a  A
 3   (4)     人a       3&E
13   (5)          死a    24MPP
 3   (6)         ~死a  3&E
13   (7)      死a&~死a  56&I
1    (8)        ~~死a  37RAA
1    (9)          死a  1DN
1    (ア)     ~人a∨ 死a  9∨I
1    (イ)  ∀x(~人x∨ 死x) アUI
(d)
1    (1)  ∀x(~人x∨ 死x) A
1    (2)     ~人a∨ 死a  1UE
 3   (3)      人a&~死a  A
1    (4)     ~人a      A
 3   (5)      人a      3&E
13   (6)     ~人a& 人a  45&I
1    (7)    ~(人a&~死a) 36RAA
  8  (8)          死a  A
 3   (9)         ~死a  3&E
 38  (ア)      死a&~死a  89&I
  8  (イ)    ~(人a&~死a) 3アRAA
1    (ウ)    ~(人a&~死a) 2478イ∨E
   エ (エ)      人a      A
    オ(オ)         ~死a  A
   エオ(カ)      人a&~死a  エオ&I
1  エオ(キ)    ~(人a&~死a)
            &(人a&~死a) ウカ&I
1  エ (ク)        ~~死a  1キRAA
1  エ (ケ)          死a  クDN
1    (コ)      人a→ 死a  エケCP
1    (サ)  ∀x(人x→  死x) コUI
従って、
(03)により、
(04)
②  ∀x( 人x→ 死x)=すべてのxについて(xが人ならばxは死ぬ)。
③  ∀x(~人x∨ 死x)=すべてのxについて(xは人でないか、xは死ぬ)。
に於いて、
②=③ である。
然るに、
(05)
同じ意味内容のものが修辞とか倒置法とかによっていろいろな形態が表現されうるが、論理学では、表現形態が相異なったいくつかの文が同じ意味内容を示すかぎり、それを同一の命題として取りあつかう。また日本語で表そうと外国語で書こうと、同一の主張内容を示すかぎり、同一の命題と見なされる(上田泰治、論理学、1967年、40頁)。
従って、
(02)(04)(05)により、
(06)
① ~∃x( 人x&~死x)=(xは人であってxは死なない。)といふ、そのやうなxは存在しない。
②  ∀x( 人x→ 死x)=すべてのxについて(xが人ならばxは死ぬ)。
③  ∀x(~人x∨ 死x)=すべてのxについて(xは人でないか、xは死ぬ)。
という「3つ」は、「命題(Proposition)」として、
①=②=③ である。
然るに、
(07)
しかしそこへ翻訳が行われる形式言語は、自然言語シンタックスとは幾らか違ったシンタックスをもっており、また限られた述語 ― 論理的結合記号、変数、固有名、述語文字、および2つの量記号 ― しかもたない。その言語のおもな長所は、その記法上の制限にもかかわらず、非常に広範な表現力をもっていることである(E.J.レモン 著、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、1973年、130頁)。
従って、
(06)(07)により、
(08)
① ~∃x( 人x&~死x)=(xは人であってxは死なない。)といふ、そのやうなxは存在しない。
②  ∀x( 人x→ 死x)=すべてのxについて(xが人ならばxは死ぬ)。
③  ∀x(~人x∨ 死x)=すべてのxについて(xは人ではないか、xは死ぬ)。
という「3つ」は、「構造(syntax)」としては、
①=② ではなく、①=③ ではなく、
②=① ではなく、②=③ ではなく、
③=① ではなく、③=② ではない。
従って、
(06)(08)により、
(09)
「命題(Proposition)」 として「等しい」ことと、
「構造(シンタックス)」として「等しい」ことは、「同じ」ではない。
然るに、
(10)
① ~∃x(人x&~死x)
に於いて、
④ ~=不
④ ∃=有
④ &=而
従って、
(10)により、
(11)
① ~∃x(人x&~死x)
④ 不有x(人x而不死x)
に於いて、
①=④ である。
然るに、
(12)
任意の表述の否定は、その表述を’~(  )’という空所にいれて書くことにしよう;しかし丸括弧はその内部が連言でないかぎり削除しよう(W.O.クワイン著、杖下隆英訳、現代論理学入門、1972年、15頁)。
従って、
(11)(12)により、
(13)
「括弧」を省略しないのであれば、
① ~[∃x〔人x&~(死x)〕]
④ 不[有x〔人x而不(死x)〕]
に於いて、
①=④ である。
然るに、
(14)
④ 不[有x〔人x而不(死x)〕]
から、
④  [ x〔 x  ( x)〕]
を除くと、
④ 不有人而不死。
は、「漢文」である。
然るに、
(15)
④ 不有人而不死=
④ 不人而不一レ死=
④ 不[有〔人而不(死)〕]。
に於いて、
④ 不[ ]⇒[ ]不
④ 有〔 〕⇒〔 〕有
④ 不( )⇒( )不
といふ「移動」を行ふと、
④ 不[有〔人而不(死)〕]⇒
④ [〔人而(死)不〕有]不=
④ [〔人にして(死せ)ざるは〕有ら]ず=
④ 人であって、死なない者は、存在しない=
④ xが人であって、xが死なない。といふ、そのやうなxは存在しない。
然るに、
(16)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。すなわち、その補足構造における語順は、国語とは全く反対である。しかし、訓読は、国語の語順に置きかえて読むことが、その大きな原則となっている。それでその補足構造によっている文も、返り点によって、国語としての語順が示されている(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、296頁)。
従って、
(15)(16)により、
(17)
④ 不人而不一レ死=
④ 不[有〔人而不(死)〕]⇔
④ [〔人にして(死せ)ざるは〕有ら]ず。
に於ける、
④[ 〔 ( ) 〕 ]
④[ 〔 ( ) 〕 ]
といふ「括弧」は、
④ 不有人而不死 ⇔
④ 人にして死せざるは有らず。
といふ「漢文・訓読」に於ける、「補足構造」といふ「構造(シンタックス)」を表してゐる。
然るに、
(18)
返り点とは、漢文すなわち古典中国語の語順を、日本語の語順に変換する符号である(古田島洋介、湯浅吉信、漢文訓読入門、2011年、45頁)。
従って、
(17)(18)により、
(19)
④ 不有人而不死 ⇔
④ 人にして死せざるは有らず。
といふ「漢文・訓読」に於ける、「語順」は異なるものの、
④[ 〔 ( ) 〕 ]
④[ 〔 ( ) 〕 ]
といふ「構造(シンタックス)」は変はらない。
然るに、
(05)により、
(20)
④ 不有人而不死 ⇔
④ 人にして死せざるは有らず。
といふ「漢文・訓読」と、
⑤ 人皆有死 ⇔
⑤ 人皆死有り。
といふ「漢文・訓読」は、「命題(Proposition)」としては、「等しい」ものの、「構造(シンタックス)」としては、「等しくない」。
従って、
(19)(20)により、
(21)
「語順が異なれば、シンタックスも異なる」が故に、「大学に入っても、一般に中国文学科では訓読法を指導しない(古田島洋介、日本近代史を学ぶための、文語文入門、2013年、はじめに ⅳ)。とは言ふものの、
語順が異なれば、シンタックスも異なる(語順が等しければ、そのときに限って、シンタックスも等しい)」といふ「発想」自体が、「誤解」に過ぎない。
然るに、
(22)
⑥ 是以大學始敎必使學者皍凡天下之物莫不因其已知之理而益極之以求至乎其極= ⑥ 是以、大學始敎、必使 學者皍 凡天下之物、莫上レ 其已知之
、益々極 之、以求上レ 乎其極
⑥ 是以、大學始敎、必使〈學者皍(凡天下之物)、莫{不[因(其已知之理)、而益極(之)、以求〔至(乎其極)〕]}〉⇒
⑥ 是以、大學始敎、必〈學者(凡天下之物)皍、{[(其已知之理)因、而益(之)極、以〔(乎其極)至〕求]不}莫〉使=
⑥ 是を以て、大學の始敎は、必ず〈學者をして(凡そ天下の物に)皍きて、{[(其の已に知るの理に)因って、益々(之を)極め、以て〔(其の極に)至るを〕求め]不るを}莫から〉使む=
⑥ そのため、大學の敎へを始める際には、必ず〈學者をして(凡そ天下の物に)ついて、{[(その學者がすでに知っているの理に)依って、益々(これを)極め、以て〔(その極点に)至ることを〕求め]ないことが}無いやうに〉させる。:
従って、
(16)(22)により、
(23)
⑥ 是以大學始敎必使學者皍凡天下之物莫不因其已知之理而益極之以求至乎其極(大學、伝五章)⇔
⑥ 是を以て、大學の始敎は、必ず學者をして凡そ天下の物に皍きて、其の已に知るの理に因って、益々之を極め、以て其の極に至るを求め不るを莫から使む。
といふ「漢文訓読」が成立する、といふことは、
⑥ 是以大學始敎必使學者皍凡天下之物莫不因其已知之理而益極之以求至乎其極(大學、伝五章)。
といふ「漢文」には、
⑥〈 ( ){ [ ( )( )〔 (  ) 〕 ] 〉
といふ「構造(シンタックス)」が有って、
⑥ 是を以て、大學の始敎は、必ず學者をして凡そ天下の物に皍きて、其の已に知るの理に因って、益々之を極め、以て其の極に至るを求め不るを莫から使む。
といふ「訓読」にも、
⑥〈 ( ){ [ ( )( )〔 (  ) 〕 ] 〉
といふ「構造(シンタックス)」が有る。
といふことを、示してゐる。
従って、
(17)~(23)により、
(24)
例へば、
④ 不有人而不死 ⇔
④ 人にして死せざるは有らず。
といふ「漢文・訓読」であっても、
⑥ 是以大學始敎必使學者皍凡天下之物莫不因其已知之理而益極之以求至乎其極(大學、伝五章)⇔
⑥ 是を以て、大學の始敎は、必ず學者をして凡そ天下の物に皍きて、其の已に知るの理に因って、益々之を極め、以て其の極に至るを求め不るを莫から使む。
といふ「漢文・訓読」であっても、「語順が異なるが故に、シンタックス異なる。」といふことには、ならない。
(25)
「漢文・訓読」とは、「原文(漢文)のシンタックス」を保存した形で行はれる、「逐語訳」であり、それ故、「訓読」よりも「正確な、漢文の、国語への翻訳」は、有り得ない。
平成31年04月01日、毛利太。