2016年9月17日土曜日

「括弧」=「括」+「弧」。

―「09月16日の記事」を書き直します。―
(01)
① 君子不以其所以養人者害人。
に於いて。
 不   の「補足語」は、{以其所‐以養人者害人}である。
 以   の「補足語」は、[其所‐以養人者]である。
 所‐以 の「補足語」は、〔養人〕である。
 害   の「補足語」は、(人)である。
とする。
従って、
(01)により、
(02)
① 君子不以其所以養人者害人。
② 君子不{以[其所‐以〔養(人)〕者]害(人)}。
に於いて、
① の「補足構造」は、
② である。
然るに、
(03)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。すなわち、その補足構造における語順は、国語とは全く反対である。
(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、二九六頁)
従って、
(01)(02)(03)により、
(04)
① 君子不{以[其所‐以〔養(人)〕者]害(人)}。
② 君子{[其〔(人)養〕所‐以者]以(人)害}不。
に於いて、
① は、「漢文の補足構造」であって、
② は、「国語の補足構造」である。
従って、
(04)により、
(05)
① 君子不{以[其所‐以〔養(人)〕者]害(人)}。
に於いて、
   不{ }⇒{ }不
   以[ ]⇒[ ]以
 所‐以〔 〕⇒〔 〕所‐以
   養( )⇒( )養
   害( )⇒( )害
といふ「移動」を行へば、
① 君子不{以[其 所‐以〔養(人)〕者]害(人)}⇒
② 君子{[其〔(人)養〕所‐以者]以(人)害}不=
② 君子は{[其の〔(人を)養ふ〕所‐以の者を]以て(人を)害せ}ず。
といふ「漢文訓読」が、成立する。
然るに、
(06)
① 君子不{以[其所‐以〔養(人)〕者]害(人)}。
① 君子不其所‐以人弧弧者弧害人弧弧。
であって、
② 君子{[其〔(人)養〕所‐以者]以(人)害}不。
② 君子括括括括人弧養弧所‐以者弧以人弧害弧不。
であるとする。
従って、
(05)(06)により、
(07)
   不{ }⇒{ }不
   以[ ]⇒[ ]以
 所‐以〔 〕⇒〔 〕所‐以
   養( )⇒( )養
   害( )⇒( )害
といふ「移動」は、
   不 弧 ⇒ 括 
   以 弧 ⇒ 括 
 所‐以 弧 ⇒ 括 所‐以
   養 弧 ⇒ 括 
   害 弧 ⇒ 括 
といふ「移動」である。
従って、
(05)(06)(07)により、
(08)
① 君子不{以[其所‐以〔養(人)〕者]害(人)}。
① 君子不括以括其所‐以括養括人弧弧者弧害括人弧弧。
に於いて、「の左側の一語が、の右側に在るものと思ひつつ、読む」ならば、「その際の語順」が、「訓読の語順」である。といふ、ことになる。
然るに、
(09)
① 君子は{[其の〔(人 を)養ふ〕所‐以の者を]以て(人 を)害せ}ず。
② 君子は{[其の〔(人間を)養ふ〕所‐以の者を]以て(人 を)害せ}ず。
③ 君子は{[其の〔(人 を)養ふ〕所‐以の者を]以て(人間を)害せ}ず。
② 君子は{[其の〔(人間を)養ふ〕所‐以の者を]以て(人間を)害せ}ず。
である。
注:ただし、漢文で言ふ「人間」は、国語で言ふ「人間」の意味ではない。
従って、
(03)(04)(09)により、
(10)
① 君子不以其所以養人者害人。
② 君子不以其所以養人間者害人。
③ 君子不以其所以養人者害人間。
④ 君子不以其所以養人間者害人間。
といふ「四つの漢文の補足構造」は、
① { [ 〔 ( ) 〕 ] ( ) }
② { [ 〔 ( ) 〕 ] ( ) }
③ { [ 〔 ( ) 〕 ] ( ) }
④ { [ 〔 ( ) 〕 ] ( ) }
といふ、「一通り」しかない。
然るに、
(11)
① v( v( (  )v( v ) ) v )
② v( v( (  )v( v(  ) ) v )
③ v( v( (  )v( v ) ) v(  ))
④ v( v( (  )v( v(  ) ) v(  ))
は、「四通り」であって、「一通り」でない。
従って、
(10)(11)により、
(12)
① v( v( (  )v( v ) ) v )
② v( v( (  )v( v(  ) ) v )
③ v( v( (  )v( v ) ) v(  ))
④ v( v( (  )v( v(  ) ) v(  ))
といふ「それ」が、
① 君子不以其所以養人者害人。
② 君子不以其所以養人間者害人。
③ 君子不以其所以養人者害人間。
④ 君子不以其所以養人間者害人間。
といふ「漢文の、一通りしか無い、補足構造」を表してゐるのであれば、
① v( v( (  )v( v ) ) v )
② v( v( (  )v( v(  ) ) v )
③ v( v( (  )v( v ) ) v(  ))
④ v( v( (  )v( v(  ) ) v(  ))
の中の、「少なくとも、三つのそれ」は、
① 君子不以其所以養人者害人。
② 君子不以其所以養人間者害人。
③ 君子不以其所以養人者害人間。
④ 君子不以其所以養人間者害人間。
といふ「漢文の、補足構造」を、表してはゐない。
然るに、
(13)

従って、
(12)(13)により、
(14)
① 君子不v(以v(其(所以)v(養v人)者)害v人)。
② 君子不v(以v(其(所以)v(養v(人間))者)害v人)。
③ 君子不v(以v(其(所以)v(養v人)者)害v(人間))。
④ 君子不v(以v(其(所以)v(養v(人間))者)害v(人間))。
といふ、「漢文訓読の返り点に括弧を導入して構造化する試み」の中の、「少なくとも、三つのそれ」は、
① 君子不以其所以養人者害人。
② 君子不以其所以養人間者害人。
③ 君子不以其所以養人者害人間。
④ 君子不以其所以養人間者害人間。
といふ「漢文の、補足構造」を、表してはゐない。
然るに、
(15)

従って、
(15)により、
(16)
① 君子不以其所以養人者害人。
② 君子不以其所以養人間者害人。
③ 君子不以其所以養人者害人間。
④ 君子不以其所以養人間者害人間。
に対する、「返り点」は、
① 乙 下 二 一レ 上 甲レ
② 乙 下 三 二 一 上 甲レ
③ 丙 下 二 一レ 上 乙 甲
④ 丙 下 三 二 一 上 乙 甲
といふ「四通り」であって、「一通り」ではない。
従って、
(10)(16)により、
(17)
① 乙 下 二 一レ 上 甲レ
② 乙 下 三 二 一 上 甲レ
③ 丙 下 二 一レ 上 乙 甲
④ 丙 下 三 二 一 上 乙 甲
といふ、「返り点」の中の、「少なくとも、三つ」は、
① 君子不以其所以養人者害人。
② 君子不以其所以養人間者害人。
③ 君子不以其所以養人者害人間。
④ 君子不以其所以養人間者害人間。
といふ「漢文の、補足構造」を、表してはゐない。
然るに、
(18)

従って、
(18)により、
(19)
① 君子不v(以v(其(所以)v(養v人)者)害v人)。
② 君子不v(以v(其(所以)v(養v(人間))者)害v人)。
③ 君子不v(以v(其(所以)v(養v人)者)害v(人間))。
④ 君子不v(以v(其(所以)v(養v(人間))者)害v(人間))
に於ける、
①         (所以)
②         (所以)
③         (所以)
④                 (所以)
に関しては、
①          所‐以
②          所‐以
③          所‐以
④                  所‐以
といふ「ハイフンの代用」である。
従って、
(19)により、
(20)
① 君子不v(以v(其(所以)v(養v人)者)害v人)。
② 君子不v(以v(其(所以)v(養v(人間))者)害v人)。
③ 君子不v(以v(其(所以)v(養v人)者)害v(人間))。
④ 君子不v(以v(其(所以)v(養v(人間))者)害v(人間))
に於ける、
①         (所以)
②         (所以)
③         (所以)
④                 (所以)
に関しては、「補足構造」を表してはゐない。
従って、
(12)(20)により、
(21)
① v( v( (  )v( v ) ) v )
② v( v( (  )v( v(  ) ) v )
③ v( v( (  )v( v ) ) v(  ))
④ v( v( (  )v( v(  ) ) v(  ))
といふ「それ」は、「四つ」とも、
① 君子不以其所以養人者害人。
② 君子不以其所以養人間者害人。
③ 君子不以其所以養人者害人間。
④ 君子不以其所以養人間者害人間。
といふ「漢文の、補足構造」を、表してはゐない。
(22)
⑤ 不〔常読(漢文)〕⇒
⑤ 〔常(漢文)読〕不=
⑤ 〔常には(漢文を)読ま〕ず。
の「返り点」は、
⑤ 三 二 一
であって、
⑥ 何不[以〔善(漢文)者〕従]⇒
⑥ 何[〔(漢文)善者〕以従]不=
⑥ 何ぞ[〔(漢文を)善くする者を〕以て従へ]不る。
の「返り点」は、
⑥ 乙 下 二 一 上 甲
である。
(23)
⑤ 三 二 一
⑥ 乙 下 二 一 上 甲
のやうに、「ハイフン」と「レ点」が無い場合は、
⑤ 不〔常読(漢文)〕。
⑥ 何不[以〔善(漢文)者〕従]。
といふ「括弧」を、
⑤ 不(常読(漢文))。
⑥ 何不(以(善(漢文)者)従)。
に替へた上で、「括の左」に「レ点」を加へれば、
⑤ 不v(常読v(漢文))。
⑥ 何不v(以v(善v(漢文)者)従)。
といふ、「漢文訓読の返り点に括弧を導入して構造化する試み」を、得ることになる。
然るに、
(24)
⑤ 不v(常読v(漢文))。
⑥ 何不v(以v(善v(漢文)者)従)。
のやうに、「にだけ「レ点」を加へるのであれば、
⑤ 不(常読(漢文))。
⑥ 何不(以(善(漢文)者)従)。
のやうに、「レ点」を「省略」しても、「そこに在るべき、レ点」の「位置」を見失ふことはない。
従って、
(25)
⑤ 不v(常読v(漢文))。
⑥ 何不v(以v(善v(漢文)者)従)。
に於いて、
⑤  v   v
⑥   v  v  v
は、「不要」である。
平成28年09月17日、毛利太。
―「関連記事」―
(a)「レ点」は要らない。「括弧」があれば、「返り点」も要らない。(http://kannbunn.blogspot.com/2016/08/blog-post_22.html
(b)「括弧」は「返り点」の「代用」ではない。(http://kannbunn.blogspot.com/2016/08/01_25.html
(c)「一二点」だけでは、「読みにくい」。(http://kannbunn.blogspot.com/2016/08/blog-post_26.html
(d)「(レ点を含む)返り点」は、「構造(syntax)」を表してゐない。(http://kannbunn.blogspot.com/2016/08/syntax.html)
(e)「括弧と返り点」で表すこと出来る「訓読」の「順番」。(http://kannbunn.blogspot.com/2016/08/blog-post_31.html
(f)「括弧」の読み方。(http://kannbunn.blogspot.com/2016/09/blog-post.html)
(g)「返り点、括弧、構造化。」(http://kannbunn.blogspot.com/2016/09/blog-post_11.html

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