(01)
① 三{二(一)}。
に於いて、
① 二( )⇒( )二
① 三{ }⇒{ }三
といふ「移動」を行ふと、
① {(一)二}三。
(02)
② 二(三{一)}。
に於いて、
② 二( )⇒( )二
② 三{ }⇒{ }三
といふ「移動」を行ふと、
② ({一)二}三。
然るに、
(03)
①{( )}
②({ )}
に於いて、
① は、「括弧」であるが、
② は、「括弧」ではない。
然るに、
(04)
① 三 二 一
② 二 三 一
に於いて、
① であれば、
三
↑
二
↑
一
である。
然るに、
(05)
① 三 二 一
② 二 三 一
に於いて、
二 二
↑ ↓
三
↑
一
である。
然るに、
(06)
「返り点」といふのは、
「下から上へ、返る点」であるため、
二 二
↑ ↓
三
↑
一
のやうに、
「上から下へ、戻る点」は、「返り点」ではない。
従って、
(04)(05)(06)により、
(07)
① 三 二 一
② 二 三 一
に於いて、
① は、「返り点」であるが、
② は、「返り点」ではない。
従って、
(01)~(07)により、
(08)
① 3>2>1
② 2<3>1
といふ「順番」に於いて、
① であれば、「返り点・括弧」を付けることが、可能であり、
② であれば、「返り点・括弧」を付けることが、可能ではない。
然るに、
(09)
(10)
従って、
(09)(10)により、
(11)
例へば、
① レ レ レ
② 二 一レ
③ レ 二 レ 一レ
④ レ 下 二 一 上
⑤ レ 三 二 一
⑥ レ 二 レ レ 一
⑦ 下 レ レ 二 一 上
⑧ レ レ 二 一レ 二 一レ
⑨ レ レ 二 一レ レ
⑩ 乙 下 二 レ 一レ 上レ レ 甲レ
⑪ レ レ
⑫ レ 二‐ 一
といふ「(レ点を含む)返り点」は、
① 四 三 二 一
② 三 二 一
③ 丁 丙 二 一 乙 甲
④ 下 中 二 一 上
⑤ 四 三 二 一
⑥ 下 三 二 一 上
⑦ 下 四 三 二 一 上
⑧ 三 二 一、五 四 三 二 一
⑨ 六 五 四 三 二 一
⑩ 人 丙 下 二 一 中 上 乙 甲 二 一 地 天
⑪ 三 二 一
⑫ 三 二- 一
といふ「(レ点を含まない)返り点」に、「置き換へ」ることが、出来る。
然るに、
(12)
従って、
(10)(12)により、
(13)
「漢字」に「返り点」が付く。 といふことは、言い換へると、
「返り点」に「漢字」が付く。 といふことに、他ならない。
然るに、
(14)
例へば、
⑩ 人{##丙[下〔二(一)中(上)〕乙(甲)]二(一)#地(天)}。
に於いて、
⑩ 二( )⇒( )二
⑩ 中( )⇒( )中
⑩ 下〔 〕⇒〔 〕下
⑩ 乙( )⇒( )乙
⑩ 丙[ ]⇒[ ]丙
⑩ 二( )⇒( )二
⑩ 地( )⇒( )天
⑩ 人{ }⇒{ }人
といふ「移動」を行ふと、
⑩ {##[〔(一)二(上)中〕下(甲)乙]丙(一)二#(天)地}人。
といふ「語順」になる。
従って、
(09)~(14)により、
(15)
(ⅰ)「(レ点を含む)返り点」は、「(レ点を含まない)返り点」に、「置き換へ」ることが、出来る。
(ⅱ)「(レ点を含まない)返り点」は、「括弧」に、「置き換へ」ることが、出来る。
従って、
(16)により、
(17)
(ⅲ)「返り点」は、「括弧」に、「置き換へ」ることが、出来る。
然るに、
(18)
例へば、
⑩ 使籍誠不以畜子憂寒乱心有銭以済医=
⑩ 使{籍誠不[以〔畜(子)憂(寒)〕乱(心)]有(銭)以済(医)}⇒
⑩ {籍誠[〔(子)畜(寒)憂〕以(心)乱]不(銭)有以(医)済}使=
⑩ 籍をして誠に子を畜ひ、寒さを憂ふるを以て心を乱さ不、銭有りて以て医を済さ使む。
といふ「漢文・訓読」に於いて、
⑩ 使 といふ「漢字の意味」は、
⑩ {籍誠不[以〔畜(子)憂(寒)〕乱(心)]有(銭)以済(医)}といふ「15個の漢字」に、及んでゐて、
⑩ 不 といふ「漢字の意味」は、
⑩ [以〔畜(子)憂(寒)〕乱(心)] といふ 「7個の漢字」に、及んでゐて、
⑩ 以 といふ「漢字の意味」は、
⑩ 〔畜(子)憂(寒)〕 といふ 「4個の漢字」に、及んでゐて、
⑩ 畜 といふ「漢字の意味」は、
⑩ (子) といふ 「1個の漢字」に、及んでゐて、
⑩ 憂 といふ「漢字の意味」は、
⑩ (寒) といふ 「1個の漢字」に、及んでゐて、
⑩ 乱 といふ「漢字の意味」は、
⑩ (心) といふ 「1個の漢字」に、及んでゐて、
⑩ 有 といふ「漢字の意味」は、
⑩ (銭 )といふ 「1個の漢字」に、及んでゐて、
⑩ 済 といふ「漢字の意味」は、
⑩ (医) といふ 「1個の漢字」に、及んでゐる。
然るに、
(19)
【ポイント】
本章では漢文訓読のための補足をのべる。
「管到」とは、ある語句がそのあとのどの漢字までかかっているか、という範囲のことである。白文の訓読では、それぞれの漢字の意味や品詞を自分で考え、その漢字が後ろのどこまでかかっているか、考えねばならない。
(加藤徹、白文攻略 漢文ひとり学び、2013年、143頁)
然るに、
(20)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。すなわち、その補足構造における語順は、国語とは全く反対である。しかし、訓読は、国語の語順に置きかえて読むことが、その大きな原則となっている。それでその補足構造によっている文も、返り点によって、国語としての語順が示されている。
(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、296頁)
従って、
(18)(19)(20)により、
(21)
⑩ 使籍誠不以畜子憂寒乱心有銭以済医=
⑩ 使{籍誠不[以〔畜(子)憂(寒)〕乱(心)]有(銭)以済(医)}⇒
⑩ {籍誠[〔(子)畜(寒)憂〕以(心)乱]不(銭)有以(医)済}使=
⑩ 籍をして誠に子を畜ひ、寒さを憂ふるを以て心を乱さ不、銭有りて以て医を済さ使む。
といふ「漢文・訓読」に於ける、
⑩ { [ 〔 ( ) ( )〕 ( )] ( ) ( )}
といふ「括弧」は、
(ⅰ)「訓読」の「語順」。
(ⅱ)「漢字」の「管到」。
(ⅲ)「漢文」の「補足構造」。
といふ、「三つ」を、表してゐる。
然るに、
(22)
⑩ 使乙 籍誠不下 以二 畜レ 子 憂一レ 寒 乱上レ 心 有レ 財 以済甲レ 薬。
に於ける、
⑩ 乙 下 二 レ 一レ 上レ レ 甲レ
といふ「返り点」も、
⑩ 使籍誠不以畜子憂寒乱心有銭以済医。
といふ「漢文」に対する、
⑩ 籍をして誠に子を畜ひ、寒さを憂ふるを以て心を乱さ不、銭有りて以て医を済さ使む。
といふ「訓読の語順」を、表してゐる。
従って、
(21)(22)により、
(23)
⑩ {[〔( )( )〕( )]( )( )}
といふ「括弧」と、
⑩ 乙 下 二 レ 一レ 上レ レ 甲レ
といふ「返り点」は、両方とも、
⑩ 使籍誠不以畜子憂寒乱心有銭以済医。
といふ「漢文」の、
(ⅰ)「訓読」の「語順」。
(ⅱ)「漢字」の「管到」。
(ⅲ)「漢文」の「補足構造」。
といふ、「三つ」を、表してゐる。
然るに、
(24)
返り点とは、漢文すなわち古典中国語の語順を、日本語の語順に変換する符号である。
(古田島洋介、湯浅吉信、漢文訓読入門、2011年、45頁)
従って、
(23)(24)により、
(25)
返り点とは、漢文すなわち古典中国語の語順を、日本語の語順に変換する符号である。
といふ「言ひ方」は、
返り点とは、漢文すなわち古典中国語の語順を、日本語の語順に変換する符号であるが、
結果として、返り点は、「漢文の補足構造」を表してゐる。
といふ風に、「言ひ換へ」ることが、出来る。
従って、
(25)により、
(26)
「古典中国語(漢文)の語順を、日本語の語順に変換する符号」が「不要」である場合であっても、
「古典中国語(漢文)の補足構造」を知りたいのであれば、「返り点」は、「有用」である。
然るに、
(27)
(Ⅰ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
(Ⅱ)上 中 下
(Ⅲ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(Ⅳ)天 地 人
(Ⅴ)レ 一レ 上レ 甲レ 天レ
からなる「返り点」よりも、
(Ⅰ)( )
(Ⅱ)〔 〕
(Ⅲ)[ ]
(Ⅳ){ }
からなる「返り点」の方が、「簡単(シンプル)」であるだけに、「読みやすく・書きやすい」。
従って、
(26)(27)により、
(28)
「古典中国語(漢文)の語順を、日本語の語順に変換する符号」が「不要」である場合であっても、
「古典中国語(漢文)の補足構造」を知りたいのであれば、「返り点・括弧」は、「有用」であり、
尚且つ、「返り点」よりも、「括弧」の方が、「読みやすく・書きやすい」。
平成30年12月31日、毛利太。
2018年12月31日月曜日
2018年12月24日月曜日
「返り点」と「括弧」について。
(01)
⑥ 漢文を読む。
といふ風に、「訓読」できる「漢文」は、言ふまでもなく、実際には、
⑥ 読漢文=漢文を読む。
だけである。
然るに、
(02)
① 漢文読=漢文を読む。
② 漢読文=漢文を読む。
③ 文漢読=漢文を読む。
④ 文読漢=漢文を読む。
⑤ 読文漢=漢文を読む。
⑥ 読漢文=漢文を読む。
に対して、敢へて「返り点」を付けると、(03)のやうになる。
(03)
然るに、
(04)
① 漢文読。
といふ「それ」を、
① 123。
といふ「順番」で読むのであれば、「返り点」は、初めから、「不要」である。
従って、
(03)(04)により、
(05)
① 一 二 三
② レ
③ レ
④ 二 三 一
⑤ レ レ
⑥ 二 一
に於いて、固より、
① 一 二 三
といふ「それ」は、「返り点」ではない。
然るに、
(06)
「返り点」といふのは、
「下から上へ、上る点」であるため、
「上から下へ、下る点」は、「返り点」ではない。
然るに、
(07)
① 一 二 三
であれば、
一
↓
二
↓
三
であるため、
「上から下へ、降りてゐる。」
(08)
④ 二 三 一
であれば、
二 二
↑ ↓
三
↑
一
であるため、
「下から上へ、返り、
上から下へ、降りてゐる。」
従って、
(06)~(08)により、
(09)
② レ
③ レ
⑤ レ レ
⑥ 二 一
ではなく、
① 一 二 三
④ 二 三 一
といふ「それ」は、固より、「返り点」ではない。
従って、
(05)(09)により、
(10)
② 1 3>2。
③ 2>1 3。
⑤ 3>2>1。
⑥ 3>1<2。
ではなく、
① 1<2<3。
といふ「順番」と、
④ 2<3>1。
といふ「順番」に対しては、「原理的」に、「返り点」は付かないのであって、まず第一に、このことを、確認したい。
然るに、
(11)
① 不[可〔不(告)〕]。
② 我聞〔鳥啼(樹)〕。
③ 鳥獣不[可〔与(之)同(群)〕]。
④ 不[足〔為(外人)道〕]也。
⑤ 耕者不[可〔以不(益急)〕]矣。
⑥ 無{友[不〔如(己)〕者]}。
⑦ 当世士大夫無{不[知〔有(劉老人)〕]者}。
⑧ 聖人所〔不(知)〕
⑨ 曽子之母非〈不{知[子不〔殺(人)〕]}〉也。
⑩ 使{籍誠不[以〔畜(子)憂(寒)〕乱(心)]有(銭)以済(医)}。
⑪ 欲〔取(之)〕。
⑫ 欲〔取‐捨(之)〕。
に於いて、
□( )⇒( )□
□〔 〕⇒〔 〕□
□[ ]⇒[ ]□
□{ }⇒{ }□
□〈 〉⇒〈 〉□
といふ「移動」を行ふと、
① [〔(告)不〕可]不。
② 我〔鳥(樹)啼〕聞。
③ 鳥獣[〔(之)与(群)同〕可]不。
④ [〔(外人)為道〕足]不也。
⑤ 耕者[〔以(益急)不〕可]不矣。
⑥ {[〔(己)如〕不者]友}無。
⑦ 当世士大夫{[〔(劉老人)有〕知]不者}無。
⑧ 聖人〔(知)不〕所未{必[〔愚人(知)所〕為]不}不也。
⑨ 曽子之母〈{[子〔(人)殺〕不]知}不〉非也。
⑩ {籍誠[〔(子)畜(寒)憂〕以(心)乱]不(銭)有以(医)済}使。
⑪ 〔(之)取〕欲。
⑫ 〔(之)取‐捨〕欲。
といふ「語順」、すなはち、
① 告げ不る可から不。
② 我、鳥の樹に啼くを聞く。
③ 鳥獣は、之と与に群を同じくす可から不。
④ 外人の為に、道ふに足ら不る也。
⑤ 耕す者、以て益々急なら不る可から不矣。
⑥ 己に如か不る者を、友とする無かれ。
⑦ 当世士大夫、劉老人有るを知不る者無し。
⑧ 聖人の知ら不る所、未だ必ずしも愚人の知る所と為さ不んばあら不る也。
⑨ 曽子の母子、子の人を殺さ不るを知ら不るに非ざる也。
⑩ 籍をして誠に子を畜ひ、寒さを憂ふるを以て心を乱さ不、銭有りて以て医を済さ使む。
⑪ 之を取らんと欲す。
⑫ 之を取‐捨せんと欲す。
といふ「語順」になる。
然るに、
(12)
例へば、
⑩ 人{籍誠丙[下〔二(一)中(上)〕乙(甲)]二(一)以地(天)}。
に於いて、
⑩ 二( )⇒( )二
⑩ 中( )⇒( )中
⑩ 下〔 〕⇒〔 〕下
⑩ 乙( )⇒( )乙
⑩ 丙[ ]⇒[ ]丙
⑩ 二( )⇒( )二
⑩ 地( )⇒( )天
⑩ 人{ }⇒{ }人
といふ「移動」を行ふと、
⑩ {籍誠[〔(一)二(上)中〕下(甲)乙丙](一)二以(天)地}人。
といふ「語順」になる。
然るに、
(13)
⑩ 人{籍誠丙[下〔二(一)中(上)〕乙(甲)]二(一)以地(天)}。
に於いて、
⑩ 人 = 使
⑩ □ = 籍
⑩ □ = 誠
⑩ 丙 = 不
⑩ 下 = 以
⑩ 二 = 畜
⑩ 一 = 子
⑩ 中 = 憂
⑩ 上 = 寒
⑩ 乙 = 乱
⑩ 乙 = 心
⑩ 二 = 有
⑩ 一 = 銭
⑩ □ = 以
⑩ 地 = 済
⑩ 天 = 医
といふ「代入(Replacement)」を行ふと、
⑩ 使{籍誠不[以〔畜(子)憂(寒)〕乱(心)]有(銭)以済(医)}。
といふ「語順」になる。
従って、
(12)(13)により、
(14)
⑩ 使人 籍誠不丙 以下 畜二 子一 憂中 寒上 乱乙 心甲 有二 財一 以済地 薬天。
といふ「返り点」は、
⑩ 人使 籍誠丙不 下以 二畜 一子 中憂 上寒 乙乱 甲心 二有 一財 以地済 天薬。
といふ「返り点」と、「同じ」である。
従って、
(14)により、
(15)
⑩ 使{籍誠不[以〔畜(子)憂(寒)〕乱(心)]有(銭)以済(医)}=
⑩ 人{籍誠丙[下〔二(一)中(上)〕乙(甲)]二(一)以地(天)}。
に於いて、
⑩ 二( )⇒( )二
⑩ 中( )⇒( )中
⑩ 下〔 〕⇒〔 〕下
⑩ 乙( )⇒( )乙
⑩ 丙[ ]⇒[ ]丙
⑩ 二( )⇒( )二
⑩ 地( )⇒( )天
⑩ 人{ }⇒{ }人
といふ「移動」を行ふと、すなはち、
⑩ 畜( )⇒( )畜
⑩ 憂( )⇒( )憂
⑩ 以〔 〕⇒〔 〕以
⑩ 乱( )⇒( )乱
⑩ 不[ ]⇒[ ]不
⑩ 有( )⇒( )有
⑩ 済( )⇒( )済
⑩ 使{ }⇒{ }使
といふ「移動」を行ふと、
⑩ {籍誠[〔(一)二(上)中〕下(甲)乙丙](一)二以(天)地}人=
⑩ {籍誠[〔(子)畜(寒)憂〕以(心)乱]不(銭)有以(医)済}使=
⑩ 籍をして誠に子を畜ひ、寒さを憂ふるを以て心を乱さ不、銭有りて以て医を済さ使む。
といふ「語順」になる。
従って、
(14)(15)により、
(16)
⑩ 使{籍誠不[以〔畜(子)憂(寒)〕乱(心)]有(銭)以済(医)}。
といふ「漢文」に付く「返り点」は、
⑩ 人 丙 下 二 一 中 上 乙 甲 二 一 地 天
でなければ、ならない。
然るに、
(17)
① 四[三〔二(一)〕]。
② 三〔 二(一)〕。
③ 丁[丙〔二(一)乙(甲)〕]。
④ 下[中〔二( 一)上〕] 。
⑤ 四[三〔 二( 一)〕] 。
⑥ 下{中[三〔二(一)〕上]}。
⑦ 下{四[三〔二( 一)〕]上}。
⑧ 三〔二(一)〕五{ 四[三〔 二(一)〕]} 。
⑨ 六〈五{四[ 三〔二(一)〕]}〉 。
⑩ 人{ 丙[下〔二(一)中(上)〕乙(甲)]二(一) 地(天)}。
⑪ 三〔二(一)〕。
⑫ 三〔二‐二(一)〕。
に於いて、
□( )⇒( )□
□〔 〕⇒〔 〕□
□[ ]⇒[ ]□
□{ }⇒{ }□
□〈 〉⇒〈 〉□
といふ「移動」を行ふと、
① [〔(一)二〕三]四。
② 〔 (一)二〕三。
③ [〔(一)二(甲)乙〕丙]丁。
④ [〔( 一)二上〕中]下 。
⑤ [〔 ( 一)二〕三]四 。
⑥ {[〔(一)二〕三上]中}下。
⑦ {[〔( 一)二〕三]四上}下。
⑧ 〔(一)二〕三{ [〔 (一)二〕三]四}五 。
⑨ 〈{[ 〔(一)二〕三]四}五〉六 。
⑩ { [〔(一)二(上)中〕下(甲)乙丙](一)二 (天)地}人。
⑪ 〔(一)二〕三。
⑫ 〔(一)二‐二〕三。
といふ「語順」になる。
従って、
(11)~(17)により、
(18)
① 不[可〔不(告)〕]。
② 我聞〔鳥啼(樹)〕。
③ 鳥獣不[可〔与(之)同(群)〕]。
④ 不[足〔為(外人)道〕]也。
⑤ 耕者不[可〔以不(益急)〕]矣。
⑥ 無{友[不〔如(己)〕者]}。
⑦ 当世士大夫無{不[知〔有(劉老人)〕]者}。
⑧ 聖人所〔不(知)〕未{必不[為〔愚人所(知)〕]}也。
⑨ 曽子之母非〈不{知[子不〔殺(人)〕]}〉也。
⑩ 使{籍誠不[以〔畜(子)憂(寒)〕乱(心)]有(銭)以済(医)}。
⑪ 欲〔取(之)〕。
⑫ 欲〔取‐捨(之)〕。
といふ「漢文」に付く「返り点」は、
① 四 三 二 一
② 三 二 一
③ 丁 丙 二 一 乙 甲
④ 下 中 二 一 上
⑤ 四 三 二 一
⑥ 下 中 三 二 一 上
⑦ 下 四 三 二 一 上
⑧ 三 二 一 五 四 三 二 一
⑨ 六 五 四 三 二 一
⑩ 人 丙 下 二 一 中 上 乙 甲 二 一 地 天
⑪ 三 二 一
⑫ 三 二‐二 一
でなければ、ならない。
然るに、
(19)
③ 丁 丙 二 一 乙 甲
に関しては、
③ □ 下 二 一 中 上
と、「同じ」である。
従って、
(20)
① 四 三 二 一
② 三 二 一
③ 丁 丙 二 一 乙 甲
④ 下 中 二 一 上
⑤ 四 三 二 一
⑥ 下 中 三 二 一 上
⑦ 下 四 三 二 一 上
⑧ 三 二 一 五 四 三 二 一
⑨ 六 五 四 三 二 一
⑩ 人 丙 下 二 一 中 上 乙 甲 二 一 地 天
⑪ 三 二 一
⑫ 三 二‐二 一
といふ「返り点」の「ルール」は、(21)のやうになる。
すなはち、
(21)
(Ⅰ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
(Ⅱ)上 中 下
(Ⅲ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(Ⅳ)天 地 人
であるとして、
(Ⅰ)を挟んで「返る」場合は、
(Ⅱ)を用ひる。
(Ⅱ)を挟んで「返る」場合は、
(Ⅲ)を用ひる。
(Ⅲ)を挟んで「返る」場合は、
(Ⅳ)を用ひる。ものの、
③ □ 下 二 一 中 上
のやうに、
(Ⅱ)上 中 下
といふ「三組」では、足りない場合は、已むを得ず、
③ 丁 丙 二 一 乙 甲
のやうに、
(Ⅰ)を挟んで「返る」場合であっても、
(Ⅱ)ではなく、
(Ⅲ)を用ひる。
といふのが、「ルーツ」である。
然るに、
(22)
(Ⅰ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
(Ⅱ)上 中 下
(Ⅲ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(Ⅳ)天 地 人
であるとして、
(Ⅰ)を挟んで「返る」場合は、
(Ⅱ)を用ひ、
(Ⅱ)を挟んで「返る」場合は、
(Ⅲ)を用ひ、
(Ⅲ)を挟んで「返る」場合は、
(Ⅳ)を用ひる。
といふ「ルール」は、「極めて、簡単」である。
然るに、
(23)
学校で習ふ所の、「実際の、返り点」は、「レ点」が有るため、
(Ⅰ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
(Ⅱ)上 中 下
(Ⅲ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(Ⅳ)天 地 人
ではなく、
(Ⅰ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
(Ⅱ)上 中 下
(Ⅲ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(Ⅳ)天 地 人
(Ⅴ)レ 一レ 上レ 甲レ 天レ
である。
然るに、
(24)
大学生に返り点を打たせると、レ点の原則違反から生じる誤りが大半をしめます(古田島洋介、これならわかる返り点、2009年、60頁)。
従って、
(23)(24)により、
(25)
(Ⅰ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
(Ⅱ)上 中 下
(Ⅲ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(Ⅳ)天 地 人
に対して、「本来は不要」である、
(Ⅴ)レ 一レ 上レ 甲レ 天レ
が加はると、「返り点」は、「一段と、難しくなる」。
従って、
(26)
といふ「(レ点を用ひない)返り点」よりも、
といふ「(レ点を用ひる)返り点」の方が、「一段と、難しい」。
従って、
(27)
全くの「初学者」は、
① 不可不告。
② 我聞鳥啼樹。
③ 鳥獣不可与之同群。
④ 不足為外人道也。
⑤ 耕者不可以不益急矣。
⑥ 無友不如己者。
⑦ 当世士大夫無不知有劉老人者。
⑧ 聖人所不知未必不為愚人所知也。
⑨ 曽子之母非不知子不殺人也。
⑩ 使籍誠不以畜子憂寒乱心有財以済薬。
⑪ 欲取之。
⑫ 欲取捨之。
に対して、いきなり、
① レ レ レ
② 二 一レ
③ レ 二 レ 一レ
④ レ 下 二 一 上
⑤ レ 三 二 一
⑥ レ 二 レ レ 一
⑦ 下 レ レ 二 一 上
⑧ レ レ 二 一レ 二 一レ
⑨ レ レ 二 一レ レ
⑩ 乙 下 二 レ 一レ 上レ レ 甲レ
⑪ レ レ
⑫ レ 二‐ 一
といふ「(レ点を用ひる)返り点」を付けようとするのではなく、
① 不可不告。
② 我聞鳥啼樹。
③ 鳥獣不可与之同群。
④ 不足為外人道也。
⑤ 耕者不可以不益急矣。
⑥ 無友不如己者。
⑦ 当世士大夫無不知有劉老人者。
⑧ 聖人所不知未必不為愚人所知也。
⑨ 曽子之母非不知子不殺人也。
⑩ 使籍誠不以畜子憂寒乱心有財以済薬。
⑪ 欲取之。
⑫ 欲取捨之。
に対して、取り敢へず、
① 四 三 二 一
② 三 二 一
③ 丁 丙 二 一 乙 甲
④ 下 中 二 一 上
⑤ 四 三 二 一
⑥ 下 三 二 一 上
⑦ 下 四 三 二 一 上
⑧ 三 二 一 五 四 三 二 一
⑨ 六 五 四 三 二 一
⑩ 人 丙 下 二 一 中 上 乙 甲 二 一 地 天
⑪ 三 二 一
⑫ 三 二- 一
といふ「(レ点を用ひない)返り点」を、「確実に、付けれるように、する」べきである。
(28)
① 四 三 二 一
② 三 二 一
③ 丁 丙 二 一 乙 甲
④ 下 中 二 一 上
⑤ 四 三 二 一
⑥ 下 三 二 一 上
⑦ 下 四 三 二 一 上
⑧ 三 二 一、五 四 三 二 一
⑨ 六 五 四 三 二 一
⑩ 人 丙 下 二 一 中 上 乙 甲 二 一 地 天
⑪ 三 二 一
⑫ 三 二- 一
といふ「(レ点を用ひない)返り点」を、「確実に、付けれるようになった」時点で、
1 連続した二字の上下を転倒させる場合は、必ずレ点を用い、他の返り点を用いてはならない。
2 連続した二字の上下を転倒させる以外の場合は、レ点を用いてはならない(古田島洋介、これならわかる返り点、2009年、60頁)。
といふ「分かりにくい、ルール」に基づいて、
① 四 三 二 一
② 三 二 一
③ 丁 丙 二 一 乙 甲
④ 下 中 二 一 上
⑤ 四 三 二 一
⑥ 下 三 二 一 上
⑦ 下 四 三 二 一 上
⑧ 三 二 一、五 四 三 二 一
⑨ 六 五 四 三 二 一
⑩ 人 丙 下 二 一 中 上 乙 甲 二 一 地 天
⑪ 三 二 一
⑫ 三 二- 一
といふ「(レ点を用ひない)返り点」を、
① レ レ レ
② 二 一レ
③ レ 二 レ 一レ
④ レ 下 二 一 上
⑤ レ 三 二 一
⑥ レ 二 レ レ 一
⑦ 下 レ レ 二 一 上
⑧ レ レ 二 一レ 二 一レ
⑨ レ レ 二 一レ レ
⑩ 乙 下 二 レ 一レ 上レ レ 甲レ
⑪ レ レ
⑫ レ 二‐ 一
といふ「(レ点を用ひる)返り点」に、「書き直せる」ように、すべきである。
平成30年12月25日、毛利太。
⑥ 漢文を読む。
といふ風に、「訓読」できる「漢文」は、言ふまでもなく、実際には、
⑥ 読漢文=漢文を読む。
だけである。
然るに、
(02)
① 漢文読=漢文を読む。
② 漢読文=漢文を読む。
③ 文漢読=漢文を読む。
④ 文読漢=漢文を読む。
⑤ 読文漢=漢文を読む。
⑥ 読漢文=漢文を読む。
に対して、敢へて「返り点」を付けると、(03)のやうになる。
(03)
然るに、
(04)
① 漢文読。
といふ「それ」を、
① 123。
といふ「順番」で読むのであれば、「返り点」は、初めから、「不要」である。
従って、
(03)(04)により、
(05)
① 一 二 三
② レ
③ レ
④ 二 三 一
⑤ レ レ
⑥ 二 一
に於いて、固より、
① 一 二 三
といふ「それ」は、「返り点」ではない。
然るに、
(06)
「返り点」といふのは、
「下から上へ、上る点」であるため、
「上から下へ、下る点」は、「返り点」ではない。
然るに、
(07)
① 一 二 三
であれば、
一
↓
二
↓
三
であるため、
「上から下へ、降りてゐる。」
(08)
④ 二 三 一
であれば、
二 二
↑ ↓
三
↑
一
であるため、
「下から上へ、返り、
上から下へ、降りてゐる。」
従って、
(06)~(08)により、
(09)
② レ
③ レ
⑤ レ レ
⑥ 二 一
ではなく、
① 一 二 三
④ 二 三 一
といふ「それ」は、固より、「返り点」ではない。
従って、
(05)(09)により、
(10)
② 1 3>2。
③ 2>1 3。
⑤ 3>2>1。
⑥ 3>1<2。
ではなく、
① 1<2<3。
といふ「順番」と、
④ 2<3>1。
といふ「順番」に対しては、「原理的」に、「返り点」は付かないのであって、まず第一に、このことを、確認したい。
然るに、
(11)
① 不[可〔不(告)〕]。
② 我聞〔鳥啼(樹)〕。
③ 鳥獣不[可〔与(之)同(群)〕]。
④ 不[足〔為(外人)道〕]也。
⑤ 耕者不[可〔以不(益急)〕]矣。
⑥ 無{友[不〔如(己)〕者]}。
⑦ 当世士大夫無{不[知〔有(劉老人)〕]者}。
⑧ 聖人所〔不(知)〕
⑨ 曽子之母非〈不{知[子不〔殺(人)〕]}〉也。
⑩ 使{籍誠不[以〔畜(子)憂(寒)〕乱(心)]有(銭)以済(医)}。
⑪ 欲〔取(之)〕。
⑫ 欲〔取‐捨(之)〕。
に於いて、
□( )⇒( )□
□〔 〕⇒〔 〕□
□[ ]⇒[ ]□
□{ }⇒{ }□
□〈 〉⇒〈 〉□
といふ「移動」を行ふと、
① [〔(告)不〕可]不。
② 我〔鳥(樹)啼〕聞。
③ 鳥獣[〔(之)与(群)同〕可]不。
④ [〔(外人)為道〕足]不也。
⑤ 耕者[〔以(益急)不〕可]不矣。
⑥ {[〔(己)如〕不者]友}無。
⑦ 当世士大夫{[〔(劉老人)有〕知]不者}無。
⑧ 聖人〔(知)不〕所未{必[〔愚人(知)所〕為]不}不也。
⑨ 曽子之母〈{[子〔(人)殺〕不]知}不〉非也。
⑩ {籍誠[〔(子)畜(寒)憂〕以(心)乱]不(銭)有以(医)済}使。
⑪ 〔(之)取〕欲。
⑫ 〔(之)取‐捨〕欲。
といふ「語順」、すなはち、
① 告げ不る可から不。
② 我、鳥の樹に啼くを聞く。
③ 鳥獣は、之と与に群を同じくす可から不。
④ 外人の為に、道ふに足ら不る也。
⑤ 耕す者、以て益々急なら不る可から不矣。
⑥ 己に如か不る者を、友とする無かれ。
⑦ 当世士大夫、劉老人有るを知不る者無し。
⑧ 聖人の知ら不る所、未だ必ずしも愚人の知る所と為さ不んばあら不る也。
⑨ 曽子の母子、子の人を殺さ不るを知ら不るに非ざる也。
⑩ 籍をして誠に子を畜ひ、寒さを憂ふるを以て心を乱さ不、銭有りて以て医を済さ使む。
⑪ 之を取らんと欲す。
⑫ 之を取‐捨せんと欲す。
といふ「語順」になる。
然るに、
(12)
例へば、
⑩ 人{籍誠丙[下〔二(一)中(上)〕乙(甲)]二(一)以地(天)}。
に於いて、
⑩ 二( )⇒( )二
⑩ 中( )⇒( )中
⑩ 下〔 〕⇒〔 〕下
⑩ 乙( )⇒( )乙
⑩ 丙[ ]⇒[ ]丙
⑩ 二( )⇒( )二
⑩ 地( )⇒( )天
⑩ 人{ }⇒{ }人
といふ「移動」を行ふと、
⑩ {籍誠[〔(一)二(上)中〕下(甲)乙丙](一)二以(天)地}人。
といふ「語順」になる。
然るに、
(13)
⑩ 人{籍誠丙[下〔二(一)中(上)〕乙(甲)]二(一)以地(天)}。
に於いて、
⑩ 人 = 使
⑩ □ = 籍
⑩ □ = 誠
⑩ 丙 = 不
⑩ 下 = 以
⑩ 二 = 畜
⑩ 一 = 子
⑩ 中 = 憂
⑩ 上 = 寒
⑩ 乙 = 乱
⑩ 乙 = 心
⑩ 二 = 有
⑩ 一 = 銭
⑩ □ = 以
⑩ 地 = 済
⑩ 天 = 医
といふ「代入(Replacement)」を行ふと、
⑩ 使{籍誠不[以〔畜(子)憂(寒)〕乱(心)]有(銭)以済(医)}。
といふ「語順」になる。
従って、
(12)(13)により、
(14)
⑩ 使人 籍誠不丙 以下 畜二 子一 憂中 寒上 乱乙 心甲 有二 財一 以済地 薬天。
といふ「返り点」は、
⑩ 人使 籍誠丙不 下以 二畜 一子 中憂 上寒 乙乱 甲心 二有 一財 以地済 天薬。
といふ「返り点」と、「同じ」である。
従って、
(14)により、
(15)
⑩ 使{籍誠不[以〔畜(子)憂(寒)〕乱(心)]有(銭)以済(医)}=
⑩ 人{籍誠丙[下〔二(一)中(上)〕乙(甲)]二(一)以地(天)}。
に於いて、
⑩ 二( )⇒( )二
⑩ 中( )⇒( )中
⑩ 下〔 〕⇒〔 〕下
⑩ 乙( )⇒( )乙
⑩ 丙[ ]⇒[ ]丙
⑩ 二( )⇒( )二
⑩ 地( )⇒( )天
⑩ 人{ }⇒{ }人
といふ「移動」を行ふと、すなはち、
⑩ 畜( )⇒( )畜
⑩ 憂( )⇒( )憂
⑩ 以〔 〕⇒〔 〕以
⑩ 乱( )⇒( )乱
⑩ 不[ ]⇒[ ]不
⑩ 有( )⇒( )有
⑩ 済( )⇒( )済
⑩ 使{ }⇒{ }使
といふ「移動」を行ふと、
⑩ {籍誠[〔(一)二(上)中〕下(甲)乙丙](一)二以(天)地}人=
⑩ {籍誠[〔(子)畜(寒)憂〕以(心)乱]不(銭)有以(医)済}使=
⑩ 籍をして誠に子を畜ひ、寒さを憂ふるを以て心を乱さ不、銭有りて以て医を済さ使む。
といふ「語順」になる。
従って、
(14)(15)により、
(16)
⑩ 使{籍誠不[以〔畜(子)憂(寒)〕乱(心)]有(銭)以済(医)}。
といふ「漢文」に付く「返り点」は、
⑩ 人 丙 下 二 一 中 上 乙 甲 二 一 地 天
でなければ、ならない。
然るに、
(17)
① 四[三〔二(一)〕]。
② 三〔 二(一)〕。
③ 丁[丙〔二(一)乙(甲)〕]。
④ 下[中〔二( 一)上〕] 。
⑤ 四[三〔 二( 一)〕] 。
⑥ 下{中[三〔二(一)〕上]}。
⑦ 下{四[三〔二( 一)〕]上}。
⑧ 三〔二(一)〕五{ 四[三〔 二(一)〕]} 。
⑨ 六〈五{四[ 三〔二(一)〕]}〉 。
⑩ 人{ 丙[下〔二(一)中(上)〕乙(甲)]二(一) 地(天)}。
⑪ 三〔二(一)〕。
⑫ 三〔二‐二(一)〕。
に於いて、
□( )⇒( )□
□〔 〕⇒〔 〕□
□[ ]⇒[ ]□
□{ }⇒{ }□
□〈 〉⇒〈 〉□
といふ「移動」を行ふと、
① [〔(一)二〕三]四。
② 〔 (一)二〕三。
③ [〔(一)二(甲)乙〕丙]丁。
④ [〔( 一)二上〕中]下 。
⑤ [〔 ( 一)二〕三]四 。
⑥ {[〔(一)二〕三上]中}下。
⑦ {[〔( 一)二〕三]四上}下。
⑧ 〔(一)二〕三{ [〔 (一)二〕三]四}五 。
⑨ 〈{[ 〔(一)二〕三]四}五〉六 。
⑩ { [〔(一)二(上)中〕下(甲)乙丙](一)二 (天)地}人。
⑪ 〔(一)二〕三。
⑫ 〔(一)二‐二〕三。
といふ「語順」になる。
従って、
(11)~(17)により、
(18)
① 不[可〔不(告)〕]。
② 我聞〔鳥啼(樹)〕。
③ 鳥獣不[可〔与(之)同(群)〕]。
④ 不[足〔為(外人)道〕]也。
⑤ 耕者不[可〔以不(益急)〕]矣。
⑥ 無{友[不〔如(己)〕者]}。
⑦ 当世士大夫無{不[知〔有(劉老人)〕]者}。
⑧ 聖人所〔不(知)〕未{必不[為〔愚人所(知)〕]}也。
⑨ 曽子之母非〈不{知[子不〔殺(人)〕]}〉也。
⑩ 使{籍誠不[以〔畜(子)憂(寒)〕乱(心)]有(銭)以済(医)}。
⑪ 欲〔取(之)〕。
⑫ 欲〔取‐捨(之)〕。
といふ「漢文」に付く「返り点」は、
① 四 三 二 一
② 三 二 一
③ 丁 丙 二 一 乙 甲
④ 下 中 二 一 上
⑤ 四 三 二 一
⑥ 下 中 三 二 一 上
⑦ 下 四 三 二 一 上
⑧ 三 二 一 五 四 三 二 一
⑨ 六 五 四 三 二 一
⑩ 人 丙 下 二 一 中 上 乙 甲 二 一 地 天
⑪ 三 二 一
⑫ 三 二‐二 一
でなければ、ならない。
然るに、
(19)
③ 丁 丙 二 一 乙 甲
に関しては、
③ □ 下 二 一 中 上
と、「同じ」である。
従って、
(20)
① 四 三 二 一
② 三 二 一
③ 丁 丙 二 一 乙 甲
④ 下 中 二 一 上
⑤ 四 三 二 一
⑥ 下 中 三 二 一 上
⑦ 下 四 三 二 一 上
⑧ 三 二 一 五 四 三 二 一
⑨ 六 五 四 三 二 一
⑩ 人 丙 下 二 一 中 上 乙 甲 二 一 地 天
⑪ 三 二 一
⑫ 三 二‐二 一
といふ「返り点」の「ルール」は、(21)のやうになる。
すなはち、
(21)
(Ⅰ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
(Ⅱ)上 中 下
(Ⅲ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(Ⅳ)天 地 人
であるとして、
(Ⅰ)を挟んで「返る」場合は、
(Ⅱ)を用ひる。
(Ⅱ)を挟んで「返る」場合は、
(Ⅲ)を用ひる。
(Ⅲ)を挟んで「返る」場合は、
(Ⅳ)を用ひる。ものの、
③ □ 下 二 一 中 上
のやうに、
(Ⅱ)上 中 下
といふ「三組」では、足りない場合は、已むを得ず、
③ 丁 丙 二 一 乙 甲
のやうに、
(Ⅰ)を挟んで「返る」場合であっても、
(Ⅱ)ではなく、
(Ⅲ)を用ひる。
といふのが、「ルーツ」である。
然るに、
(22)
(Ⅰ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
(Ⅱ)上 中 下
(Ⅲ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(Ⅳ)天 地 人
であるとして、
(Ⅰ)を挟んで「返る」場合は、
(Ⅱ)を用ひ、
(Ⅱ)を挟んで「返る」場合は、
(Ⅲ)を用ひ、
(Ⅲ)を挟んで「返る」場合は、
(Ⅳ)を用ひる。
といふ「ルール」は、「極めて、簡単」である。
然るに、
(23)
学校で習ふ所の、「実際の、返り点」は、「レ点」が有るため、
(Ⅰ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
(Ⅱ)上 中 下
(Ⅲ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(Ⅳ)天 地 人
ではなく、
(Ⅰ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
(Ⅱ)上 中 下
(Ⅲ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(Ⅳ)天 地 人
(Ⅴ)レ 一レ 上レ 甲レ 天レ
である。
然るに、
(24)
大学生に返り点を打たせると、レ点の原則違反から生じる誤りが大半をしめます(古田島洋介、これならわかる返り点、2009年、60頁)。
従って、
(23)(24)により、
(25)
(Ⅰ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
(Ⅱ)上 中 下
(Ⅲ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(Ⅳ)天 地 人
に対して、「本来は不要」である、
(Ⅴ)レ 一レ 上レ 甲レ 天レ
が加はると、「返り点」は、「一段と、難しくなる」。
従って、
(26)
といふ「(レ点を用ひない)返り点」よりも、
といふ「(レ点を用ひる)返り点」の方が、「一段と、難しい」。
従って、
(27)
全くの「初学者」は、
① 不可不告。
② 我聞鳥啼樹。
③ 鳥獣不可与之同群。
④ 不足為外人道也。
⑤ 耕者不可以不益急矣。
⑥ 無友不如己者。
⑦ 当世士大夫無不知有劉老人者。
⑧ 聖人所不知未必不為愚人所知也。
⑨ 曽子之母非不知子不殺人也。
⑩ 使籍誠不以畜子憂寒乱心有財以済薬。
⑪ 欲取之。
⑫ 欲取捨之。
に対して、いきなり、
① レ レ レ
② 二 一レ
③ レ 二 レ 一レ
④ レ 下 二 一 上
⑤ レ 三 二 一
⑥ レ 二 レ レ 一
⑦ 下 レ レ 二 一 上
⑧ レ レ 二 一レ 二 一レ
⑨ レ レ 二 一レ レ
⑩ 乙 下 二 レ 一レ 上レ レ 甲レ
⑪ レ レ
⑫ レ 二‐ 一
といふ「(レ点を用ひる)返り点」を付けようとするのではなく、
① 不可不告。
② 我聞鳥啼樹。
③ 鳥獣不可与之同群。
④ 不足為外人道也。
⑤ 耕者不可以不益急矣。
⑥ 無友不如己者。
⑦ 当世士大夫無不知有劉老人者。
⑧ 聖人所不知未必不為愚人所知也。
⑨ 曽子之母非不知子不殺人也。
⑩ 使籍誠不以畜子憂寒乱心有財以済薬。
⑪ 欲取之。
⑫ 欲取捨之。
に対して、取り敢へず、
① 四 三 二 一
② 三 二 一
③ 丁 丙 二 一 乙 甲
④ 下 中 二 一 上
⑤ 四 三 二 一
⑥ 下 三 二 一 上
⑦ 下 四 三 二 一 上
⑧ 三 二 一 五 四 三 二 一
⑨ 六 五 四 三 二 一
⑩ 人 丙 下 二 一 中 上 乙 甲 二 一 地 天
⑪ 三 二 一
⑫ 三 二- 一
といふ「(レ点を用ひない)返り点」を、「確実に、付けれるように、する」べきである。
(28)
① 四 三 二 一
② 三 二 一
③ 丁 丙 二 一 乙 甲
④ 下 中 二 一 上
⑤ 四 三 二 一
⑥ 下 三 二 一 上
⑦ 下 四 三 二 一 上
⑧ 三 二 一、五 四 三 二 一
⑨ 六 五 四 三 二 一
⑩ 人 丙 下 二 一 中 上 乙 甲 二 一 地 天
⑪ 三 二 一
⑫ 三 二- 一
といふ「(レ点を用ひない)返り点」を、「確実に、付けれるようになった」時点で、
1 連続した二字の上下を転倒させる場合は、必ずレ点を用い、他の返り点を用いてはならない。
2 連続した二字の上下を転倒させる以外の場合は、レ点を用いてはならない(古田島洋介、これならわかる返り点、2009年、60頁)。
といふ「分かりにくい、ルール」に基づいて、
① 四 三 二 一
② 三 二 一
③ 丁 丙 二 一 乙 甲
④ 下 中 二 一 上
⑤ 四 三 二 一
⑥ 下 三 二 一 上
⑦ 下 四 三 二 一 上
⑧ 三 二 一、五 四 三 二 一
⑨ 六 五 四 三 二 一
⑩ 人 丙 下 二 一 中 上 乙 甲 二 一 地 天
⑪ 三 二 一
⑫ 三 二- 一
といふ「(レ点を用ひない)返り点」を、
① レ レ レ
② 二 一レ
③ レ 二 レ 一レ
④ レ 下 二 一 上
⑤ レ 三 二 一
⑥ レ 二 レ レ 一
⑦ 下 レ レ 二 一 上
⑧ レ レ 二 一レ 二 一レ
⑨ レ レ 二 一レ レ
⑩ 乙 下 二 レ 一レ 上レ レ 甲レ
⑪ レ レ
⑫ レ 二‐ 一
といふ「(レ点を用ひる)返り点」に、「書き直せる」ように、すべきである。
平成30年12月25日、毛利太。
「前置(倒置)」と「強調形」と「Wh移動」。
(a)『返り点と括弧』については、『「返り点」と「括弧」(略8)(https://kannbunn.blogspot.com/2018/09/blog-post_17.html)』他もお読み下さい。
(b)『返り点』については、『「返り点」の「付け方」を教へます(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post_3.html)』他をお読み下さい。
―「前回の記事(12月19日)」の「続き」を書きます。―
然るに、
(29)
① 誰加 (誰をか加ふる)。
② 誰加衣(誰か衣を加ふる)。
③ 誰敬 (誰をか敬せん)。
に於いて、
① 誰 は「目的語」であって、
② 誰 は 「主語」 である。
③ 誰 は「目的語」である。
(30)
その意味では、
① 誰加 (誰をか加ふる)。
② 誰加衣(誰か衣を加ふる)。
③ 誰敬 (誰をか敬せん)。
であるならば、「誰」が「主語」であるか「目的語」であるか区別できないではないか(太田辰夫、中国語通史考、1988年、28頁改)。
といふ、ことになる。
然るに、
(31)
③ You respect him(あなたは彼を尊敬します).
③ Who respect him(誰が、彼を尊敬しますか).
といふ「語順」からすれば、
③ Do you respect whom(あなたは誰を尊敬しますか)?
ではなく、
③ Whom do you respect(あなたは誰を尊敬しますか)?
であるのは、ヲカシイ。
然るに、
(32)
③ Do you respect whom(あなたは誰を尊敬しますか)?
③ Whom do you respect(あなたは誰を尊敬しますか)?
に於ける、
③ Whom の「位置」への「移動」を、「Wh移動」といふ。
従って、
(30)(32)により、
(33)
③ 誰敬(誰をか敬せん)。
③ Whom do you respect(あなたは誰を尊敬しますか)?
に於ける、
③ 誰
④ Whom
は、両方とも、「Wh移動」である。
然るに、
(34)
賓語(目的語)が疑問代名詞の場合、上古漢語では倒置して、動詞の前に置く(太田辰夫、中国語通史考、1988年、28頁改)。
(35)
倒置(前置)とは、言語において通常の語順を変更させることである。表現上の効果を狙ってなされる修辞技法の1つで、強調的修辞技法の一つである(ウィキペディア改)。
(36)
前置による強調
動詞についての目的語は、その動詞の後に置かれるのが、漢語における基本構造としての単語の配列のしかたである。また、漢語における介詞は、ほとんど、動詞から発達したものであって、その目的語も、その介詞の後に置かれるのが、通則であるということができる。しかし、古代漢語においては、それらの目的語が疑問詞である場合には、いずれも、その動詞・介詞の前におかれている。このように、漢語としての通常の語順を変えて、目的語の疑問詞を前置することは、疑問文において、その疑問の中心になっている疑問詞を、特に強調したものにちがいない(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、334・5頁)。
従って、
(30)(34)(35)(36)により、
(37)
例へば、
③ 誰敬(孟子、告子上)。
の場合も、「誰」が「倒置(前置)」されるのは、「目的語としての、誰を、強調したいがためである。」といふことが、「了解」されてゐる限りは、
③ 誰敬(誰をうやまふか)。
といふ「意味」になり、
④ 誰敬(誰がうやまふか)。
といふ「意味」にはならない。
従って、
(38)
逆に言へば、「誰」が「倒置(前置)」されるのは、「目的語としての、誰を、強調したいがためである。」といふことが、「了解」されてゐないのであれば、
④ 誰敬(誰がうやまふか)。
といふ「意味」になり、
③ 誰敬(誰をうやまふか)。
といふ「意味」には、ならない。
然るに、
(39)
『孟子』の原文と趙岐の注を比較すると上古の語順は後漢時代に、すでに変化して現代語式なっていたことがわかる。すなわち『孟子』では「誰敬」「誰先」と賓語の誰が動詞の前に来ている(太田辰夫、中国語通史考、1988年、28頁)。
従って、
(38)(39)により、
(40)
後漢時代には、「誰」が「倒置(前置)」されるのは、「目的語としての、誰を、強調したいがためである。」といふことが、「了解」されなくなってしまったが故に、
『孟子』の原文では、「誰敬(誰をうやまふか)。」といふ「語順」であるにも拘はらず、
『趙岐』の注釈では、「敬誰(誰をうやまふか)。」といふ「現代式の語順」になってゐる。
然るに、
(41)
② 小学而大遺(小をば学んで、大をば忘る:韓愈、師説)。
の場合も、
② 学小而遺大(小を学んで、大を忘る)。
の、「倒置(前置)」である。
従って、
(40)(41)により、
(42)
② 小学而大遺(小をば学んで、大をば忘る:韓愈、師説)。
の場合も、「小と大」が「倒置(前置)」されるのは、「目的語としての、小・大を、強調したいがためである。」といふことが、「了解」されてゐるが故に、
② 小学而大遺(小は学んで、大は忘れる)。
といふ「意味」には、ならない。
然るに、
(43)
もし濁音を発音するときの物理的・身体的な口腔の膨張によって「濁音=大きい」とイメージがつくられているのだとしたら、面白いですね。この仮説が正しいとすると、なぜ英語話者や中国語話者も濁音に対して「大きい」というイメージを持っているか説明がつきます(川原繁人、音とことばの不思議な世界、2015年、13頁)。
然るに、
(44)
を-ば 格助詞「を」強調し、動作・作用の対象を強く示す意を表す(旺文社、全訳学習古語辞典、2006年、934頁)。
従って、
(41)~(44)等により、
(45)
① 誰が(濁音)好きか。
② 大をば(濁音)遺る。
に於いて、
① は、「濁音による強調形」であって、
② も、「濁音による強調形」である。
平成30年12月24日、毛利太。
(b)『返り点』については、『「返り点」の「付け方」を教へます(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post_3.html)』他をお読み下さい。
―「前回の記事(12月19日)」の「続き」を書きます。―
然るに、
(29)
① 誰加 (誰をか加ふる)。
② 誰加衣(誰か衣を加ふる)。
③ 誰敬 (誰をか敬せん)。
に於いて、
① 誰 は「目的語」であって、
② 誰 は 「主語」 である。
③ 誰 は「目的語」である。
(30)
その意味では、
① 誰加 (誰をか加ふる)。
② 誰加衣(誰か衣を加ふる)。
③ 誰敬 (誰をか敬せん)。
であるならば、「誰」が「主語」であるか「目的語」であるか区別できないではないか(太田辰夫、中国語通史考、1988年、28頁改)。
といふ、ことになる。
然るに、
(31)
③ You respect him(あなたは彼を尊敬します).
③ Who respect him(誰が、彼を尊敬しますか).
といふ「語順」からすれば、
③ Do you respect whom(あなたは誰を尊敬しますか)?
ではなく、
③ Whom do you respect(あなたは誰を尊敬しますか)?
であるのは、ヲカシイ。
然るに、
(32)
③ Do you respect whom(あなたは誰を尊敬しますか)?
③ Whom do you respect(あなたは誰を尊敬しますか)?
に於ける、
③ Whom の「位置」への「移動」を、「Wh移動」といふ。
従って、
(30)(32)により、
(33)
③ 誰敬(誰をか敬せん)。
③ Whom do you respect(あなたは誰を尊敬しますか)?
に於ける、
③ 誰
④ Whom
は、両方とも、「Wh移動」である。
然るに、
(34)
賓語(目的語)が疑問代名詞の場合、上古漢語では倒置して、動詞の前に置く(太田辰夫、中国語通史考、1988年、28頁改)。
(35)
倒置(前置)とは、言語において通常の語順を変更させることである。表現上の効果を狙ってなされる修辞技法の1つで、強調的修辞技法の一つである(ウィキペディア改)。
(36)
前置による強調
動詞についての目的語は、その動詞の後に置かれるのが、漢語における基本構造としての単語の配列のしかたである。また、漢語における介詞は、ほとんど、動詞から発達したものであって、その目的語も、その介詞の後に置かれるのが、通則であるということができる。しかし、古代漢語においては、それらの目的語が疑問詞である場合には、いずれも、その動詞・介詞の前におかれている。このように、漢語としての通常の語順を変えて、目的語の疑問詞を前置することは、疑問文において、その疑問の中心になっている疑問詞を、特に強調したものにちがいない(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、334・5頁)。
従って、
(30)(34)(35)(36)により、
(37)
例へば、
③ 誰敬(孟子、告子上)。
の場合も、「誰」が「倒置(前置)」されるのは、「目的語としての、誰を、強調したいがためである。」といふことが、「了解」されてゐる限りは、
③ 誰敬(誰をうやまふか)。
といふ「意味」になり、
④ 誰敬(誰がうやまふか)。
といふ「意味」にはならない。
従って、
(38)
逆に言へば、「誰」が「倒置(前置)」されるのは、「目的語としての、誰を、強調したいがためである。」といふことが、「了解」されてゐないのであれば、
④ 誰敬(誰がうやまふか)。
といふ「意味」になり、
③ 誰敬(誰をうやまふか)。
といふ「意味」には、ならない。
然るに、
(39)
『孟子』の原文と趙岐の注を比較すると上古の語順は後漢時代に、すでに変化して現代語式なっていたことがわかる。すなわち『孟子』では「誰敬」「誰先」と賓語の誰が動詞の前に来ている(太田辰夫、中国語通史考、1988年、28頁)。
従って、
(38)(39)により、
(40)
後漢時代には、「誰」が「倒置(前置)」されるのは、「目的語としての、誰を、強調したいがためである。」といふことが、「了解」されなくなってしまったが故に、
『孟子』の原文では、「誰敬(誰をうやまふか)。」といふ「語順」であるにも拘はらず、
『趙岐』の注釈では、「敬誰(誰をうやまふか)。」といふ「現代式の語順」になってゐる。
然るに、
(41)
② 小学而大遺(小をば学んで、大をば忘る:韓愈、師説)。
の場合も、
② 学小而遺大(小を学んで、大を忘る)。
の、「倒置(前置)」である。
従って、
(40)(41)により、
(42)
② 小学而大遺(小をば学んで、大をば忘る:韓愈、師説)。
の場合も、「小と大」が「倒置(前置)」されるのは、「目的語としての、小・大を、強調したいがためである。」といふことが、「了解」されてゐるが故に、
② 小学而大遺(小は学んで、大は忘れる)。
といふ「意味」には、ならない。
然るに、
(43)
もし濁音を発音するときの物理的・身体的な口腔の膨張によって「濁音=大きい」とイメージがつくられているのだとしたら、面白いですね。この仮説が正しいとすると、なぜ英語話者や中国語話者も濁音に対して「大きい」というイメージを持っているか説明がつきます(川原繁人、音とことばの不思議な世界、2015年、13頁)。
然るに、
(44)
を-ば 格助詞「を」強調し、動作・作用の対象を強く示す意を表す(旺文社、全訳学習古語辞典、2006年、934頁)。
従って、
(41)~(44)等により、
(45)
① 誰が(濁音)好きか。
② 大をば(濁音)遺る。
に於いて、
① は、「濁音による強調形」であって、
② も、「濁音による強調形」である。
平成30年12月24日、毛利太。
2018年12月19日水曜日
「Aが犯人だ。犯人はAだ。誰が犯人か。」の「が」について。
(a)『返り点と括弧』については、『「返り点」と「括弧」(略8)(https://kannbunn.blogspot.com/2018/09/blog-post_17.html)』他もお読み下さい。
(b)『返り点』については、『「返り点」の「付け方」を教へます(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post_3.html)』他をお読み下さい。
(01)
(a)
1 (1) P∨ Q A
2 (2) ~P&~Q A
3 (3) P A
2 (4) ~P 2&E
23 (5) P&~P 34&I
3 (6)~(~P&~Q) 25RAA
7 (7) Q A
2 (8) ~Q 2&E
2 7 (9) Q&~Q 78&I
7 (ア)~(~P&~Q) 29RAA
1 (イ)~(~P&~Q) 1367ア∨E
ウ (ウ) ~P A
エ(エ) ~Q A
ウエ(オ) ~P&~Q ウエ&I
1 ウエ(カ)~(~P&~Q)&
~P&~Q イオ&I
1 ウ (キ) ~~Q エカRAA
1 ウ (ク) Q キDN
1 (ケ) ~P→ Q ウクCP
(b)
1 (1)~P→ Q A
2(2)~P&~Q A
2(3)~P 2&E
12(4) Q 13MPP
2(5) ~Q 2&E
12(6) Q&~Q 45&I
1 (7) ~~Q 57RAA
1 (8) Q 7DN
1 (9) P∨ Q 8∨I
従って、
(01)により、
(02)
① P∨Q
② ~P→Q
に於いて、
①=② である。
然るに、
(03)
(b)
1 (1) ~P→ Q A
2 (2) ~P A
3(3) ~Q A
12 (4) Q 12MPP
123(5) ~Q&Q 34&I
1 3(6)~~P 2RAA
1 3(7) P 6DN
1 (8) ~Q→ P 37CP
(c)
1 (1)
1 (1) ~Q→ P A
2 (2) ~Q A
3(3) ~P A
12 (4) P 12MPP
123(5) ~P&P 34&I
1 3(6)~~Q 2RAA
1 3(7) Q 6DN
1 (8) ~P→ Q 37CP
従って、
(03)により、
(04)
② ~P→Q
③ ~Q→P
に於いて、
②=③ である。
従って、
(02)(04)により、
(05)
① P∨Q=PかQである。
② ~P→Q=PでないならばQである。
③ ~Q→P=QでないならばPである。
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(05)により、
(06)
①&②=PかQである。然るに、Pでない。故に、Qである。
①&③=PかQである。然るに、Qでない。故に、Pである。
といふ「推論」、すなはち、「選言三段論法」は、「妥当(Valid)」である。
cf.
選言三段論法(せんげんさんだんろんぽう、英: Disjunctive syllogism)とは、論理学において、「大前提」を選言命題(選択肢を持った命題)にし、「小前提」でその選択肢に対する肯定・否定を行なうことで、「結論」を導く形式の三段論法のこと[1]。選言的三段論法ともいう(ウィキペディア)。
然るに、
(07)
1(1)∀x{犯人x→(x=A)∨(x=B)} A
1(〃)すべてのxについて{xが犯人であるならば、xはAか、xはBである}。 A
従って、
(05)(06)(07)により、
(08)
① すべてのxについて、xが犯人であるならば、xはAか、xはBである。
② すべてのxについて、xが犯人であるならば、xがAでないならば、xはBである。
③ すべてのxについて、xが犯人であるならば、xがBでないならば、xはAである。
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(09)
③ すべてのxについて、xが犯人であるならば、xがBでないならば、xはAである。
として、
③ xはAである。
とすれば、
③ A以外は、犯人ではない。
然るに、
(10)
③ A以外は犯人ではない。
といふ場合は、
③ Aが犯人である。
といふ風に、言ふのであって、
③ Aは犯人である。
とは、言はない。
従って、
(08)(09)(10)により、
(11)
③ Aが犯人である。
といふことは、
③ A以外は犯人ではない。
といふことに、他ならない。
然るに、
(12)
(a)
1 (1)A以外は犯人ではない。 A
1 (〃)∀x{~(x=A)→~犯人x} A
1 (〃)すべてのxについて{xがAでなければ、xは犯人ではない}。 A
1 (2) ~(a=A)→~犯人a 1UE
3 (3) ~(a=A) A
4(4) 犯人a A
13 (5) ~犯人a 23MPP
134(6) 犯人a&~犯人a 45&I
1 4(7) ~~(a=A) 36RAA
1 4(8) (a=A) 7DN
1 (9) 犯人a→(a=A) 48CP
1 (ア)∀x{犯人x→(x=A)} 9UI
1 (〃)すべてのxについて{xが犯人であるならば、xはAである}。 9UI
1 (〃)犯人はAである。 9UI
(b)
1 (1)犯人はAである。 A
1 (〃)∀x{犯人x→(x=A)} A
1 (〃)すべてのxについて{xが犯人であるならば、xはAである}。 A
1 (2) 犯人a→(a=A) 1UE
3 (3) 犯人a A
4(4) ~(a=A) A
13 (5) (a=A) 23MPP
134(6)~(a=A)&(a=A) 45&I
1 4(7) ~犯人a 36RAA
1 (8) ~(a=A)→~犯人a 47CP
1 (9)∀x{~(x=A)→~犯人x} 8UI
1 (〃)すべてのxについて{xがAでなければ、xは犯人ではない}。 8UI
従って、
(12)により、
(13)
③ A以外は犯人ではない。
といふことは、
③ 犯人はAである。
といふことに、他ならない。
従って、
(11)(13)により、
(14)
① Aが犯人である。
② A以外は犯人ではない。
③ 犯人はAである。
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(15)
① A is the 犯人。
といふ「英語」に於いて、
② A以外は犯人ではない。
③ 犯人はAである。
といふことを、「確認」したいのであれば、
① A is the 犯人。
に於ける、
① A は、
① 強調(強く発音)される。
はずである。
然るに、
(16)
そこで「長谷川」を題目にして、
「長谷川は私です。」
としたいところだ。この「長谷川」と「私」の位置を交換すると、「は」が「が」になって、
「私が長谷川です。」
となる。だから、この場合の「が」は、普通の「雨が降ってきた」「牡丹の花が濡れている」の「が」とちょっとちがい、強く発音される「が」だ。
(金田一春彦、日本語 新版(下)、1988年、93頁)
然るに、
(17)
清音と濁音
日本語の子音で重要なことは、カ行・サ行・・・・・・のちがいよりも清音と濁音の違いで効果が違うことである。清音の方は、小さくきれいで速い感じで、コロコロと言うと、ハスの上を水玉がころがるような時の形容である。ゴロゴロと言うと、大きく荒い感じで、力士が土俵でころがる感じである。
(金田一春彦、日本語 新版(上)、1988年、131頁)
従って、
(17)により、
(18)
「が」といふ「濁音」は、普通に「発音」したとしても、「は」といふ「清音」より、「(心理的な)音量」が「大きい」。
従って、
(15)(18)により、
(19)
① A is the 犯人。
といふ「英語」に於いて、
② A以外は犯人ではない。
③ 犯人はAである。
といふことを、「確認」したいのであれば、
① A is the 犯人。
に於ける、
① A は、
① 強調(強く発音)される。
はずであり、尚且つ、
① Aが(濁音) の「(心理的な)音量」は、
① Aは(清音) の「(心理的な)音量」よりも、「大きい」。
従って、
(19)により、
(20)
① A_犯人である。
といふ「日本語」を用ひて、
② A以外は犯人ではない。
③ 犯人はAである。
といふことを、「確認」したいのであれば、
④ Aは(清音)犯人である。
と言はずに、
① Aが(濁音)犯人である。
といふ風に、言ふことは、「自然」である。
従って、
(21)
② A以外はBではない。
③ BはAである。
といふ場合に、
④ AはBである。
とは言はずに、
① AがBである。
といふ「習慣」が、「生じる」ことは、「自然」である。
然るに、
(22)
(a)
1 (1)私でないならば長谷川でない。 仮定
2 (2)私でない。 仮定
3(3) 長谷川である。 仮定
12 (4) 長谷川でない。 12前件肯定
123(5)長谷川であるが長谷川でない。 34&導入
1 3(6)私でないでない。 25背理法
1 3(7)私である。 6二重否定
1 (8)長谷川であるならば私である。 37条件法
(b)
1 (1)長谷川であるならば私である。 仮定
2 (2)長谷川である。 仮定
3(3) 私でない。 仮定
12 (4) 私である。 12前件肯定
123(5)私でないのに私である。 34&導入
1 3(6)長谷川でない。 25背理法
1 (7)私でないならば長谷川でない。 36条件法
従って、
(16)(21)(22)により、
(23)
① 私が長谷川です。
② 私以外は長谷川ではない。
③ 長谷川は私です。
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(24)
一方、長谷川先生は思った。相手は自分の名前を知っていて、それをたよりにやってきた。長谷川先生というのはどの人だろうと思っているはずだ。そこで「長谷川」を題目にして、
「長谷川は私です。」
としたいところだ。この「長谷川」と「私」の位置を交換すると、「は」が「が」になって、
「私が長谷川です。」
となる。からと言って、ワザワザ、「題目」といふ「語」を用ひて、説明するには、及ばない。
然るに、
(25)
① Aが犯人である。
② A以外は犯人ではない。
③ 犯人はAである。
に於いて、
①=②=③ である。
といふことからすれば、
① 誰が犯人か。
という「疑問文」は、
① Aが犯人である。
② A以外は犯人ではない。
③ 犯人はAである。
といふ「答へ」を、「期待」してゐ。
然るに、
(26)
① Aが犯人である。
といふ「答へ」を、「期待」してゐるのであれば、
① 誰が犯人か。
ではなく、
④ 誰は犯人か。
といふ風に、「質問」することは、「不自然」である。
従って、
(27)
① 誰が犯人か。
に対して、
④ 誰は犯人か。
といふ「日本語」は、存在しない。
然るに、
(28)
① 誰(未知)が犯人か。
といふことにだけ、「注目」すると、
① が の上には、
① 未知 が有る。
といふ「誤解」を、生むことになる。
平成30年12月19日、毛利太。
(b)『返り点』については、『「返り点」の「付け方」を教へます(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post_3.html)』他をお読み下さい。
(01)
(a)
1 (1) P∨ Q A
2 (2) ~P&~Q A
3 (3) P A
2 (4) ~P 2&E
23 (5) P&~P 34&I
3 (6)~(~P&~Q) 25RAA
7 (7) Q A
2 (8) ~Q 2&E
2 7 (9) Q&~Q 78&I
7 (ア)~(~P&~Q) 29RAA
1 (イ)~(~P&~Q) 1367ア∨E
ウ (ウ) ~P A
エ(エ) ~Q A
ウエ(オ) ~P&~Q ウエ&I
1 ウエ(カ)~(~P&~Q)&
~P&~Q イオ&I
1 ウ (キ) ~~Q エカRAA
1 ウ (ク) Q キDN
1 (ケ) ~P→ Q ウクCP
(b)
1 (1)~P→ Q A
2(2)~P&~Q A
2(3)~P 2&E
12(4) Q 13MPP
2(5) ~Q 2&E
12(6) Q&~Q 45&I
1 (7) ~~Q 57RAA
1 (8) Q 7DN
1 (9) P∨ Q 8∨I
従って、
(01)により、
(02)
① P∨Q
② ~P→Q
に於いて、
①=② である。
然るに、
(03)
(b)
1 (1) ~P→ Q A
2 (2) ~P A
3(3) ~Q A
12 (4) Q 12MPP
123(5) ~Q&Q 34&I
1 3(6)~~P 2RAA
1 3(7) P 6DN
1 (8) ~Q→ P 37CP
(c)
1 (1)
1 (1) ~Q→ P A
2 (2) ~Q A
3(3) ~P A
12 (4) P 12MPP
123(5) ~P&P 34&I
1 3(6)~~Q 2RAA
1 3(7) Q 6DN
1 (8) ~P→ Q 37CP
従って、
(03)により、
(04)
② ~P→Q
③ ~Q→P
に於いて、
②=③ である。
従って、
(02)(04)により、
(05)
① P∨Q=PかQである。
② ~P→Q=PでないならばQである。
③ ~Q→P=QでないならばPである。
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(05)により、
(06)
①&②=PかQである。然るに、Pでない。故に、Qである。
①&③=PかQである。然るに、Qでない。故に、Pである。
といふ「推論」、すなはち、「選言三段論法」は、「妥当(Valid)」である。
cf.
選言三段論法(せんげんさんだんろんぽう、英: Disjunctive syllogism)とは、論理学において、「大前提」を選言命題(選択肢を持った命題)にし、「小前提」でその選択肢に対する肯定・否定を行なうことで、「結論」を導く形式の三段論法のこと[1]。選言的三段論法ともいう(ウィキペディア)。
然るに、
(07)
1(1)∀x{犯人x→(x=A)∨(x=B)} A
1(〃)すべてのxについて{xが犯人であるならば、xはAか、xはBである}。 A
従って、
(05)(06)(07)により、
(08)
① すべてのxについて、xが犯人であるならば、xはAか、xはBである。
② すべてのxについて、xが犯人であるならば、xがAでないならば、xはBである。
③ すべてのxについて、xが犯人であるならば、xがBでないならば、xはAである。
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(09)
③ すべてのxについて、xが犯人であるならば、xがBでないならば、xはAである。
として、
③ xはAである。
とすれば、
③ A以外は、犯人ではない。
然るに、
(10)
③ A以外は犯人ではない。
といふ場合は、
③ Aが犯人である。
といふ風に、言ふのであって、
③ Aは犯人である。
とは、言はない。
従って、
(08)(09)(10)により、
(11)
③ Aが犯人である。
といふことは、
③ A以外は犯人ではない。
といふことに、他ならない。
然るに、
(12)
(a)
1 (1)A以外は犯人ではない。 A
1 (〃)∀x{~(x=A)→~犯人x} A
1 (〃)すべてのxについて{xがAでなければ、xは犯人ではない}。 A
1 (2) ~(a=A)→~犯人a 1UE
3 (3) ~(a=A) A
4(4) 犯人a A
13 (5) ~犯人a 23MPP
134(6) 犯人a&~犯人a 45&I
1 4(7) ~~(a=A) 36RAA
1 4(8) (a=A) 7DN
1 (9) 犯人a→(a=A) 48CP
1 (ア)∀x{犯人x→(x=A)} 9UI
1 (〃)すべてのxについて{xが犯人であるならば、xはAである}。 9UI
1 (〃)犯人はAである。 9UI
(b)
1 (1)犯人はAである。 A
1 (〃)∀x{犯人x→(x=A)} A
1 (〃)すべてのxについて{xが犯人であるならば、xはAである}。 A
1 (2) 犯人a→(a=A) 1UE
3 (3) 犯人a A
4(4) ~(a=A) A
13 (5) (a=A) 23MPP
134(6)~(a=A)&(a=A) 45&I
1 4(7) ~犯人a 36RAA
1 (8) ~(a=A)→~犯人a 47CP
1 (9)∀x{~(x=A)→~犯人x} 8UI
1 (〃)すべてのxについて{xがAでなければ、xは犯人ではない}。 8UI
従って、
(12)により、
(13)
③ A以外は犯人ではない。
といふことは、
③ 犯人はAである。
といふことに、他ならない。
従って、
(11)(13)により、
(14)
① Aが犯人である。
② A以外は犯人ではない。
③ 犯人はAである。
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(15)
① A is the 犯人。
といふ「英語」に於いて、
② A以外は犯人ではない。
③ 犯人はAである。
といふことを、「確認」したいのであれば、
① A is the 犯人。
に於ける、
① A は、
① 強調(強く発音)される。
はずである。
然るに、
(16)
そこで「長谷川」を題目にして、
「長谷川は私です。」
としたいところだ。この「長谷川」と「私」の位置を交換すると、「は」が「が」になって、
「私が長谷川です。」
となる。だから、この場合の「が」は、普通の「雨が降ってきた」「牡丹の花が濡れている」の「が」とちょっとちがい、強く発音される「が」だ。
(金田一春彦、日本語 新版(下)、1988年、93頁)
然るに、
(17)
清音と濁音
日本語の子音で重要なことは、カ行・サ行・・・・・・のちがいよりも清音と濁音の違いで効果が違うことである。清音の方は、小さくきれいで速い感じで、コロコロと言うと、ハスの上を水玉がころがるような時の形容である。ゴロゴロと言うと、大きく荒い感じで、力士が土俵でころがる感じである。
(金田一春彦、日本語 新版(上)、1988年、131頁)
従って、
(17)により、
(18)
「が」といふ「濁音」は、普通に「発音」したとしても、「は」といふ「清音」より、「(心理的な)音量」が「大きい」。
従って、
(15)(18)により、
(19)
① A is the 犯人。
といふ「英語」に於いて、
② A以外は犯人ではない。
③ 犯人はAである。
といふことを、「確認」したいのであれば、
① A is the 犯人。
に於ける、
① A は、
① 強調(強く発音)される。
はずであり、尚且つ、
① Aが(濁音) の「(心理的な)音量」は、
① Aは(清音) の「(心理的な)音量」よりも、「大きい」。
従って、
(19)により、
(20)
① A_犯人である。
といふ「日本語」を用ひて、
② A以外は犯人ではない。
③ 犯人はAである。
といふことを、「確認」したいのであれば、
④ Aは(清音)犯人である。
と言はずに、
① Aが(濁音)犯人である。
といふ風に、言ふことは、「自然」である。
従って、
(21)
② A以外はBではない。
③ BはAである。
といふ場合に、
④ AはBである。
とは言はずに、
① AがBである。
といふ「習慣」が、「生じる」ことは、「自然」である。
然るに、
(22)
(a)
1 (1)私でないならば長谷川でない。 仮定
2 (2)私でない。 仮定
3(3) 長谷川である。 仮定
12 (4) 長谷川でない。 12前件肯定
123(5)長谷川であるが長谷川でない。 34&導入
1 3(6)私でないでない。 25背理法
1 3(7)私である。 6二重否定
1 (8)長谷川であるならば私である。 37条件法
(b)
1 (1)長谷川であるならば私である。 仮定
2 (2)長谷川である。 仮定
3(3) 私でない。 仮定
12 (4) 私である。 12前件肯定
123(5)私でないのに私である。 34&導入
1 3(6)長谷川でない。 25背理法
1 (7)私でないならば長谷川でない。 36条件法
従って、
(16)(21)(22)により、
(23)
① 私が長谷川です。
② 私以外は長谷川ではない。
③ 長谷川は私です。
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(24)
一方、長谷川先生は思った。相手は自分の名前を知っていて、それをたよりにやってきた。長谷川先生というのはどの人だろうと思っているはずだ。そこで「長谷川」を題目にして、
「長谷川は私です。」
としたいところだ。この「長谷川」と「私」の位置を交換すると、「は」が「が」になって、
「私が長谷川です。」
となる。からと言って、ワザワザ、「題目」といふ「語」を用ひて、説明するには、及ばない。
然るに、
(25)
① Aが犯人である。
② A以外は犯人ではない。
③ 犯人はAである。
に於いて、
①=②=③ である。
といふことからすれば、
① 誰が犯人か。
という「疑問文」は、
① Aが犯人である。
② A以外は犯人ではない。
③ 犯人はAである。
といふ「答へ」を、「期待」してゐ。
然るに、
(26)
① Aが犯人である。
といふ「答へ」を、「期待」してゐるのであれば、
① 誰が犯人か。
ではなく、
④ 誰は犯人か。
といふ風に、「質問」することは、「不自然」である。
従って、
(27)
① 誰が犯人か。
に対して、
④ 誰は犯人か。
といふ「日本語」は、存在しない。
然るに、
(28)
① 誰(未知)が犯人か。
といふことにだけ、「注目」すると、
① が の上には、
① 未知 が有る。
といふ「誤解」を、生むことになる。
平成30年12月19日、毛利太。
2018年12月15日土曜日
「象は鼻が長い」と「述語論理」(其の弐)。
(a)『返り点と括弧』については、『「返り点」と「括弧」(略8)(https://kannbunn.blogspot.com/2018/09/blog-post_17.html)』他もお読み下さい。
(b)『返り点』については、『「返り点」の「付け方」を教へます(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post_3.html)』他をお読み下さい。
(01)
(a)
1 (1) P→ Q A
2 (2) P A
3(3) ~Q A
12 (4) Q 12MPP
123(5) ~Q&Q 34&I
1 3(6)~P 25RAA
1 (7)~Q→~P 36CP
(b)
1 (1) ~Q→~P A
2 (2) ~Q A
3(3) P A
12 (4) ~P 12MPP
123(5) P&~P 34&I
1 3(6)~~Q 25RAA
1 3(7) Q 6DN
1 (8) P→ Q 37CP
従って、
(01)により、
(02)
① P→ Q
② ~Q→~P
然るに、
(03)
① P→ Q
② ~Q→~P
に於いて、
Q=Q&R
といふ「代入(Replacement)」を行ふと、
③ P→ (Q&R)
④ ~(Q&R)→~P
従って、
(02)(03)により、
(04)
① P→ (Q&R)
② ~(Q&R)→~P
といふ「対偶(Contraposition)」に於いて、
①=③ である。
然るに、
(05)
(a)
1 (1)~(Q&R) A
2 (2) Q A
3(3) R A
23(4) Q&R 23&I
123(5)~(Q&R)
(Q&R) 14&I
12 (6) ~R 35RAA
1 (7) Q→~R 26CP
(b)
1 (1) Q→~R A
2(2) Q& R A
2(3) Q 2&E
2(4) R 2&E
12(5) ~R 13MPP
12(6) R&~R 45&I
1 (7)~(Q& R) 26RAA
従って、
(06)
③ ~(Q& R)
④ Q→~R
といふ「含意の定義」に於いて、
③=④ である。
従って、
(04)(06)により、
(07)
① P→(Q&R)
② ~(Q&R)→~P
③ ~(Q& R)
④ Q→~R
に於いて、
①=② であって、
③=④ である。
従って、
(07)により、
(08)
① P→(Q&R)
② ~(Q&R)→~P
③ (Q→~R)→~P
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(08)により、
(09)
① P→[Q&R]
② ~[Q& R]→~P
③ [Q→~R]→~P
に於いて、
P=象x
Q=∃y(鼻yx&長y)
R=∀z(~鼻zx→~長z)
といふ「代入(Replacement)」を行ふと、
① 象x→[∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)]
② ~[∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)]→~象x
③ [∃y(鼻yx&長y)→~∀z(~鼻zx→~長z)]→~象x
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(10)
(a)
1 (1)~∀z( ~鼻zx→~長z) A
1 (2)∃z~( ~鼻zx→~長z) 1量化子の関係
3(3) ~( ~鼻cx→~長c) A
3(4) ~(~~鼻cx∨~長c) 3含意の定義
3(5) ~( 鼻cx∨~長c) 4DN
3(6) ~鼻cx&~~長c 5ド・モルガンの法則
3(7) ~鼻cx& 長c 6DN
3(8) ∃z(~鼻zx& 長z) 7EI
1 (9) ∃z(~鼻zx& 長z) 138EE
(b)
1 (1) ∃z(~鼻zx& 長z) A
2 (2) ~鼻cx& 長c A
3 (3) ∀z( ~鼻zx→~長z) A
3 (4) ~鼻cx→~長c 3UE
5 (5) 長c A
5 (6) ~~長c 5DN
35 (7) ~~鼻cx 46MTT
35 (8) 鼻cx 7DN
3 (9) 長c→ 鼻cx 58CP
2 (ア) 長c 2&E
23 (イ) 鼻cx 9アMPP
2 (ウ) ~鼻cx 2&E
23 (エ) ~鼻cx&鼻cx イウ&I
2 (オ)~∀z( ~鼻zx→~長z) 3エRAA
1 (カ)~∀z( ~鼻zx→~長z) 12オEE
從って、
(10)により、
(11)
③ ~∀z(~鼻zx→~長z)
④ ∃z(~鼻zx& 長z)
において、
③=④ である。
従って、
(09)(11)により、
(12)
① 象x → [∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)]
② ~[∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)]→~ 象x
③ [∃y(鼻yx&長y)→~∀z(~鼻zx→~長z)]→~ 象x
に於いて、
①=②=③ であって、尚且つ、
③ ~∀z(~鼻zx→~長z)
④ ∃z(~鼻zx& 長z)
に於いて、
③=④ である。
従って、
(12)により、
(13)
① 象x → [∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)]
② ~[∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)]→~ 象x
③ [∃y(鼻yx&長y)→~∀z(~鼻zx→~長z)]→~ 象x
④ [∃y(鼻yx&長y)→ ∃z(~鼻zx& 長z)]→~ 象x
に於いて、
①=②=③=④ である。
従って、
(13)により、
(14)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
④ ∀x{[∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&長z)]→~象x}。
に於いて、
①=④ である。
従って、
(14)により、
(15)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
④ ∀x{[∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&長z)]→~象x}。
に於いて、すなはち、
① すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、すべてのzについてzがxの鼻でないならば、zは長くない}。
④ すべてのxについて{[あるyがxの鼻であって、yが長いとしても、あるzがxの鼻ではなくて、長いならば]xは象ではない}。
に於いて、
①=④ である。
従って、
(15)により、
(16)
1 (1)∀x{[ ∃y(鼻yx&長y)→ ∃z(~鼻zx& 長z)]→~象x} A
1 (〃)すべてのxについて{[あるyがxの鼻であって、yが長いとしても、あるzがxの鼻ではなくて、長いならば]xは象ではない}。 A
1 (〃)鼻が長くとも、鼻以外も長いならば、象ではない。 A
1 (2) [ ∃y(鼻ya&長y)→ ∃z(~鼻za& 長z)]→~象a 1UE
1 (3) [~∃y(鼻ya&長y)∨ ∃z(~鼻za& 長z)]→~象a 2含意の定義
4 (4) 象a A
4 (5) ~~象a 4DN
14 (6) ~[~∃y(鼻ya&長y)∨ ∃z(~鼻za& 長z)] 34MTT
14 (7) ~~∃y(鼻ya&長y)&~∃z(~鼻za& 長z) 6ド・モルガンの法則
14 (8) ∃y(鼻ya&長y)&~∃z(~鼻za& 長z) 7DN
14 (9) ~∃z(~鼻za& 長z) 8&E
14 (ア) ∀z~(~鼻za& 長z) 9量化子の関係
14 (イ) ~(~鼻ba& 長b) アUE
14 (ウ) ~~鼻ba∨~長b イ、ド・モルガンの法則
14 (エ) ~鼻ba→~長b ウ含意の定義
14 (オ) ∀z(~鼻zx→~長z) エUI
14 (カ) ∃y(鼻ya&長y) 8&E
14 (キ) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻zx→~長z) オカ&I
1 (ク) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻zx→~長z) 4キCP
1 (ケ)∀x{象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻zx→~長z) クUI
1 (〃)すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、すべてのzについてzがxの鼻でないならば、zは長くない}。 A
1 (〃)象は鼻は長く、鼻以外は長くない。
コ (コ)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
コ (〃)すべてのxについて{xが兎であるならば、あるyはxの耳であって、yは長いものの、すべてのzについて、zがxの耳ならば、zはxの耳ではない}。 A
コ (〃)兎の耳は長いものの、兎の耳は、鼻ではない。
サ (サ)∃x(兎x&象x) A
サ (〃)あるxは兎であって象である。 A
サ (〃)ある兎は象である。 A
然るに、
(17)
サ (〃)ある兎は象である。 A
の「続き」は、これ迄に、何度も示した通り、
1 (4) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
2 (5) 兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 1UE
6 (6) 兎a&象a A
6 (7) 兎a 6&E
6 (8) 象a 6&E
1 6 (9) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 47MPP
2 6 (ア) ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 58MPP
1 6 (イ) ∃y(鼻ya&長y) 9&E
2 6 (ウ) ∃y(耳ya&長y) ア&E
エ (エ) 鼻ba&長b A
オ(オ) 耳ba&長b A
1 6 (カ) ∀z(~鼻za→~長z) 9&E
1 6 (キ) ~鼻ba→~長b カUE
2 6 (ク) ∀z(耳za→~鼻za) ア&E
2 6 (ケ) 耳ba→~鼻ba クUE
オ (コ) 耳ba オ&E
2 6オ (サ) ~鼻ba ケコMPP
12 6オ (シ) ~長b キサコMPP
オ (ス) 長b オ&E
12 6オ (セ) 長b&~長b シス&I
12 6 (ソ) 長b&~長b ウオセEE
123 (タ) 長b&~長b 36ソEE
12 (チ)~∃x(兎x&象x) 3タRAA
12 (ツ)∀x~(兎x&象x) チ量化子の関係
12 (テ) ~(兎a&象a) ツUE
12 (ト) ~兎a∨~象a テ、ド・モルガンの法則
12 (ナ) 兎a→~象a ト含意の定義
12 (ニ)∀x(兎x→~象x) ナUI
12 (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。 ナUI
12 (〃)兎は象ではない。 ナUI
従って、
(15)(16)(17)により、
(18)
(Ⅰ)∀x{[∃y(鼻yx&長y)→ ∃z(~鼻zx& 長z)]→~象x}。然るに、
(Ⅱ)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}。故に、
(Ⅲ)∀x(兎x→~象x)。
といふ「三段論法」、すなはち、
(Ⅰ)「鼻が長くとも、鼻以外も長いならば、象ではない。」然るに、
(Ⅱ)「兎は耳が長いが、兎の耳は鼻ではない。」故に、
(Ⅲ)「兎は象ではない。」
といふ「三段論法(推論)」は、「妥当(Valid)」である。
然るに、
(19)
(Ⅰ)「鼻が長くとも、鼻以外も長いならば、象ではない。」と言ふのであれば、
(〃)「象は、鼻以外は長くない。」といふことであって、
(〃)「象は、鼻以外は長くない。」と、言ふのであれば、
(〃)「象は、鼻は長い。」とは、言はずに、
(〃)「象は、鼻が長い。」といふ風に、言ふはずである。
従って、
(15)~(19)により、
(20)
① 象は鼻が長い。
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
③ ∀x{[∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&長z)]→~象x}。
に於いて、
① といふ「日本語」は、
② といふ「論理構造」をしてゐて、尚つ、
② といふ「論理構造」は、
③ といふ「論理構造」に、「等しい」。
といふ、ことになる。
然るに、
(21)
伝統的論理学を清水滉『論理学』(1916年)で代表させよう。わたしのもっているのが四十三年の第十九冊の一冊で、なお引き続き刊行だろうから、前後かなり多くの読者をもつ論理学書と考えられる。新興の記号論理学は、沢田允茂『現代論理学入門』(1962年)を参照することにする(三上章、日本語の論理、1963年、4頁)。
然るに、
(22)
「伝統的論理学」は、「文の、内部の構造」を「分析」できず、それ故、「伝統的論理学」は、例へば、
(Ⅰ)「鼻が長くとも、鼻以外も長いならば、象ではない。」然るに、
(Ⅱ)「兎は耳が長いが、兎の耳は鼻ではない。」故に、
(Ⅲ)「兎は象ではない。」
といふ「推論」の「妥当性(Validity)」を、「証明」できない。
従って、
(23)
① 象は鼻が長い。
といふ「日本語」を「分析」する際に、「伝統的論理学」は、役に立たない。
然るに、
(24)
沢田允茂『現代論理学入門』(1962年)は、言はば、「現代論理学」の「解説書」であって、「練習問題」も、一切、載っていない。
従って、
(25)
『沢田允茂、現代論理学入門、1962年』を読んだとしても、例へば、
1 (1)吾輩は猫であるが、吾輩に、名前はない。 A
1 (〃) ∃x{吾輩x&猫x& ~∃y(名前yx)} A
2 (2) 吾輩a&猫a& ~∃y(名前ya) A
2 (3) 吾輩a 2&E
2 (4) 猫a 2&E
2 (5) ~∃y(名前ya) 2&E
6 (6) ∃x{タマx& ∃y(名前yx)} A
7(7) タマa& ∃y(名前ya) A
7(8) タマa& 7&E
7(9) ∃y(名前ya) 7&E
2 7(ア) ~∃y(名前ya)&∃y(名前ya) 59&I
26 (イ) ~∃y(名前ya)&∃y(名前ya) 67アEE
2 (ウ)~∃x{タマx& ∃y(名前yx)} 6イRAA
2 (エ)∀x~{タマx& ∃y(名前yx)} ウ量化子の関係
2 (オ) ~{タマa& ∃y(名前ya)} エUE
2 (カ) ~タマa∨ ~∃y(名前ya) オ、ドモルガンの法則
2 (キ) ~∃y(名前ya)∨~タマa カ交換法則
2 (ク) ∃y(名前ya)→~タマa キ含意の定義
2 7(ケ) ~タマa 9クMPP
2 7(コ) 吾輩a&~タマa 3ケ&I
2 7(サ) 吾輩a&~タマa&猫a 4コ&I
2 7(シ) ∃x(吾輩x&~タマx&猫x) サEI
26 (ス) ∃x(吾輩x&~タマx&猫x) 67シEE
1 6 (セ) ∃x(吾輩x&~タマx&猫x) 12スEE
1 6 (〃)あるxは、吾輩であって、タマではなく、猫である。 セ翻訳
1 6 (〃)吾輩は、タマではないが、猫である。 ソ翻訳
といふ「述語計算」を、自分でもやってみよう、といふ気に、なるわけではない。
然るに、
(26)
Primary an exercise book ― with exersises ranging from the simple to challenging(簡単なそれから、さうでないものまでを含む、練習帳)。
とあるやうに、『論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年』の方は、「練習問題帳」である。
然るに、
(27)
日常言語の文から述語計算の文への翻訳のためには、一般にあたまが柔軟なことが必要である。なんら確定的な規則があるわけではなく、量記号に十分に馴れるまでは、練習を積むことが必要である(E.J.レモン 著、竹尾治一郎・浅野楢英、1973年、130頁)。Flexibility of mind is generally required for translating from ordinary speech into sentences of the predicate calculs. No firm rules can be given, and practice is needed before full familiarity with quantifires is reached(E.J.Lemmon, Beginning Logic).
従って、
(22)~(27)により、
(28)
『沢田允茂、現代論理学入門1963年』といふ「それ(解説書)」をいくら、丁寧に読んでみたとしても、「量記号」に十分に馴れるまで、「十分な練習」を積まなければ、
(Ⅰ)∀x{[∃y(鼻yx&長y)→ ∃z(~鼻zx& 長z)]→~象x}。然るに、
(Ⅱ)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}。故に、
(Ⅲ)∀x(兎x→~象x)。
といふ「述語計算(Predicate calculus)」が出来るやうにならないのは、「練習」を積まなければ、
例題1
(x2+xy+y2+2x-y+3)(xy+x-2y+2)(x2+y2+x+y+1)
の展開式における2次の項と、3次の項を計算せよ。
答え 2次:17x2-xy+2y2、3次:12x3-3x3-3x2y+9xy2-6y2
(科学振興社、モノグラフ 1、式の計算、1990年、9頁改)
といふ「計算」ができないことと、「同じ」である。
従って、
(21)~(28)により、
(29)
『三上章、日本語の論理、1963年』の中で、記号論理学は、沢田允茂『現代論理学入門』(1962年)を参照することにすると、書いた時点に於ける、三上先生は、
(x2+xy+y2+2x-y+3)(xy+x-2y+2)(x2+y2+x+y+1)
の展開式における2次の項と、3次の項を計算せよ。
といふ「計算」は、「得意」であったとしても、
(Ⅰ)∀x{[∃y(鼻yx&長y)→ ∃z(~鼻zx& 長z)]→~象x}。然るに、
(Ⅱ)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}。故に、
(Ⅲ)∀x(兎x→~象x)。
といふ「計算」は、やってはゐないもののと、思はれます。
仮に、
(30)
55年前の、三上章先生が、
(Ⅰ)「鼻が長くとも、鼻以外も長いならば、象ではない。」然るに、
(Ⅱ)「兎は耳が長いが、兎の耳は鼻ではない。」故に、
(Ⅲ)「兎は象ではない。」
といふ「推論(三段論法)」を、自分自身で、「述語論理」に「翻訳」しようとして、『述語論理(現代論理学)』を学ばれたとすれば、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
④ ∀x{[∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&長z)]→~象x}。
から、「論理式」から、
① ∀z(~鼻zx→~長z)
④ ∃z(~鼻zx& 長z)
を「除去(elimate)」してまへば、
(Ⅰ)「鼻が長くとも、鼻以外も長いならば、象ではない。」然るに、
(Ⅱ)「兎は耳が長いが、兎の耳は鼻ではない。」故に、
(Ⅲ)「兎は象ではない。」
といふ「推論(三段論法)」は、成り立たない。といふことに、気付かれたはずである。
然るに、
(31)
55年前の、三上章先生ほどの大先生が、『三上章、日本語の論理、1963年』の中で、仮に、
(Ⅰ)∀x{[∃y(鼻yx&長y)→ ∃z(~鼻zx& 長z)]→~象x}。然るに、
(Ⅱ)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}。故に、
(Ⅲ)∀x(兎x→~象x)。
といふ「論理式」に、言及してゐたのであれば、
① 象は鼻が長い。
といふ「日本語」は、少なくとも、「述語論理的」には、
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。⇔
③ ∀x{[∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&長z)]→~象x}。
といふ「論理構造」をしてゐる。といふことが、知れ渡ってゐたと、思はれます。
然るに、
(32)
1 (1)鼻は象が長い。 A
1 (〃)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x} A
1 (〃)いかなるxであっても{xが、ある象ではないyの鼻であるならば、xは長くない}。 A
2 (2)∀y{兎y→~象y} A
3 (3)∃y(兎y&鼻ay) A
1 (4) ∃y(~象y&鼻ay)→~長a 1UE
2 (5) 兎b→~象b 2UE
6(6) 兎b&鼻ab A
6(7) 兎b 6&E
12 6(8) ~象b 57MPP
6(9) 鼻ab 6&E
12 6(ア) ~象b&鼻ab 89&I
12 6(イ) ∃y(~象y&鼻ay) アEI
123 (ウ) ∃y(~象y&鼻ay) 36イEE
123 (エ) ~長a 4ウMPP
12 (オ) ∃y( 兎y&鼻ay)→~長a 3エCP
12 (3)∀x{∃y( 兎y&鼻xy)→~長x} オUI
12 (〃)いかなるxであっても{あるyが兎であって、xがyの鼻であるならば、xは長くない}。 オUI
12 (〃)兎の鼻は長くない。 オUI
従って、
(32)により、
(33)
(Ⅰ)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x}。
(Ⅱ)∀y{兎y→~象y}。
(Ⅲ)∀x{∃y( 兎y&鼻xy)→~長x}。
といふ「推論(三段論法)」、すなはち、
(Ⅰ)鼻は象が長い。然るに、
(Ⅱ)兎は象ではない。故に、
(Ⅲ)兎の鼻は長くない。
といふ「推論(三段論法)」が、成立する。
然るに、
(34)
1 (1)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x} A
1 (〃)いかなるxであっても{xが、ある象ではないyの鼻であるならば、xは長くない}。 A
といふことは、
1 (1)象以外の鼻は、長くはない。
といふことに、他ならない。
然るに、
(35)
1 (1)象以外の鼻は、長くはない。
といふことは、「念頭」には、
1 (1)象以外の鼻も、無ければ、ならない。
然るに、
(36)
{兎、象、麒麟}を{変域(domain)}とするならば、
① 耳は、兎が長い。
② 鼻は、象が長い。
③ 首は、麒麟が長い。
と言ふか、さうでなければ、
① 耳が、兎が長い。
② 鼻が、象が長い。
③ 首が、麒麟が長い。
と言ふのであって、
① 耳は、兎は長い。
② 鼻は、象は長い。
③ 首は、麒麟は長い。
といふ風には、言はない。
従って、
(31)~(36)により、
(37)
「が」は複数の主語候補を同時に意識させ、「集合」としての主語を提示する。
*「集合構造」:主語は集合で、他の主語候補を義務的に意識させる(淺山友貴、現代日本語における「は」と「が」の意味と機能、2004年、154頁)。
に於ける、「集合」といふのは、
① 耳は、兎が長い。
② 鼻は、象が長い。
③ 首は、麒麟が長い。
であれば、
①{兎と、兎以外(象と麒麟)} の「集合」であって、
②{象と、象以外(兎と麒麟)} の「集合」であって、
③{麒麟と、麒麟以外(兎と象)}の「集合」である。
平成30年、12月15日、毛利太。
(b)『返り点』については、『「返り点」の「付け方」を教へます(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post_3.html)』他をお読み下さい。
(01)
(a)
1 (1) P→ Q A
2 (2) P A
3(3) ~Q A
12 (4) Q 12MPP
123(5) ~Q&Q 34&I
1 3(6)~P 25RAA
1 (7)~Q→~P 36CP
(b)
1 (1) ~Q→~P A
2 (2) ~Q A
3(3) P A
12 (4) ~P 12MPP
123(5) P&~P 34&I
1 3(6)~~Q 25RAA
1 3(7) Q 6DN
1 (8) P→ Q 37CP
従って、
(01)により、
(02)
① P→ Q
② ~Q→~P
然るに、
(03)
① P→ Q
② ~Q→~P
に於いて、
Q=Q&R
といふ「代入(Replacement)」を行ふと、
③ P→ (Q&R)
④ ~(Q&R)→~P
従って、
(02)(03)により、
(04)
① P→ (Q&R)
② ~(Q&R)→~P
といふ「対偶(Contraposition)」に於いて、
①=③ である。
然るに、
(05)
(a)
1 (1)~(Q&R) A
2 (2) Q A
3(3) R A
23(4) Q&R 23&I
123(5)~(Q&R)
(Q&R) 14&I
12 (6) ~R 35RAA
1 (7) Q→~R 26CP
(b)
1 (1) Q→~R A
2(2) Q& R A
2(3) Q 2&E
2(4) R 2&E
12(5) ~R 13MPP
12(6) R&~R 45&I
1 (7)~(Q& R) 26RAA
従って、
(06)
③ ~(Q& R)
④ Q→~R
といふ「含意の定義」に於いて、
③=④ である。
従って、
(04)(06)により、
(07)
① P→(Q&R)
② ~(Q&R)→~P
③ ~(Q& R)
④ Q→~R
に於いて、
①=② であって、
③=④ である。
従って、
(07)により、
(08)
① P→(Q&R)
② ~(Q&R)→~P
③ (Q→~R)→~P
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(08)により、
(09)
① P→[Q&R]
② ~[Q& R]→~P
③ [Q→~R]→~P
に於いて、
P=象x
Q=∃y(鼻yx&長y)
R=∀z(~鼻zx→~長z)
といふ「代入(Replacement)」を行ふと、
① 象x→[∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)]
② ~[∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)]→~象x
③ [∃y(鼻yx&長y)→~∀z(~鼻zx→~長z)]→~象x
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(10)
(a)
1 (1)~∀z( ~鼻zx→~長z) A
1 (2)∃z~( ~鼻zx→~長z) 1量化子の関係
3(3) ~( ~鼻cx→~長c) A
3(4) ~(~~鼻cx∨~長c) 3含意の定義
3(5) ~( 鼻cx∨~長c) 4DN
3(6) ~鼻cx&~~長c 5ド・モルガンの法則
3(7) ~鼻cx& 長c 6DN
3(8) ∃z(~鼻zx& 長z) 7EI
1 (9) ∃z(~鼻zx& 長z) 138EE
(b)
1 (1) ∃z(~鼻zx& 長z) A
2 (2) ~鼻cx& 長c A
3 (3) ∀z( ~鼻zx→~長z) A
3 (4) ~鼻cx→~長c 3UE
5 (5) 長c A
5 (6) ~~長c 5DN
35 (7) ~~鼻cx 46MTT
35 (8) 鼻cx 7DN
3 (9) 長c→ 鼻cx 58CP
2 (ア) 長c 2&E
23 (イ) 鼻cx 9アMPP
2 (ウ) ~鼻cx 2&E
23 (エ) ~鼻cx&鼻cx イウ&I
2 (オ)~∀z( ~鼻zx→~長z) 3エRAA
1 (カ)~∀z( ~鼻zx→~長z) 12オEE
從って、
(10)により、
(11)
③ ~∀z(~鼻zx→~長z)
④ ∃z(~鼻zx& 長z)
において、
③=④ である。
従って、
(09)(11)により、
(12)
① 象x → [∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)]
② ~[∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)]→~ 象x
③ [∃y(鼻yx&長y)→~∀z(~鼻zx→~長z)]→~ 象x
に於いて、
①=②=③ であって、尚且つ、
③ ~∀z(~鼻zx→~長z)
④ ∃z(~鼻zx& 長z)
に於いて、
③=④ である。
従って、
(12)により、
(13)
① 象x → [∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)]
② ~[∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)]→~ 象x
③ [∃y(鼻yx&長y)→~∀z(~鼻zx→~長z)]→~ 象x
④ [∃y(鼻yx&長y)→ ∃z(~鼻zx& 長z)]→~ 象x
に於いて、
①=②=③=④ である。
従って、
(13)により、
(14)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
④ ∀x{[∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&長z)]→~象x}。
に於いて、
①=④ である。
従って、
(14)により、
(15)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
④ ∀x{[∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&長z)]→~象x}。
に於いて、すなはち、
① すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、すべてのzについてzがxの鼻でないならば、zは長くない}。
④ すべてのxについて{[あるyがxの鼻であって、yが長いとしても、あるzがxの鼻ではなくて、長いならば]xは象ではない}。
に於いて、
①=④ である。
従って、
(15)により、
(16)
1 (1)∀x{[ ∃y(鼻yx&長y)→ ∃z(~鼻zx& 長z)]→~象x} A
1 (〃)すべてのxについて{[あるyがxの鼻であって、yが長いとしても、あるzがxの鼻ではなくて、長いならば]xは象ではない}。 A
1 (〃)鼻が長くとも、鼻以外も長いならば、象ではない。 A
1 (2) [ ∃y(鼻ya&長y)→ ∃z(~鼻za& 長z)]→~象a 1UE
1 (3) [~∃y(鼻ya&長y)∨ ∃z(~鼻za& 長z)]→~象a 2含意の定義
4 (4) 象a A
4 (5) ~~象a 4DN
14 (6) ~[~∃y(鼻ya&長y)∨ ∃z(~鼻za& 長z)] 34MTT
14 (7) ~~∃y(鼻ya&長y)&~∃z(~鼻za& 長z) 6ド・モルガンの法則
14 (8) ∃y(鼻ya&長y)&~∃z(~鼻za& 長z) 7DN
14 (9) ~∃z(~鼻za& 長z) 8&E
14 (ア) ∀z~(~鼻za& 長z) 9量化子の関係
14 (イ) ~(~鼻ba& 長b) アUE
14 (ウ) ~~鼻ba∨~長b イ、ド・モルガンの法則
14 (エ) ~鼻ba→~長b ウ含意の定義
14 (オ) ∀z(~鼻zx→~長z) エUI
14 (カ) ∃y(鼻ya&長y) 8&E
14 (キ) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻zx→~長z) オカ&I
1 (ク) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻zx→~長z) 4キCP
1 (ケ)∀x{象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻zx→~長z) クUI
1 (〃)すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、すべてのzについてzがxの鼻でないならば、zは長くない}。 A
1 (〃)象は鼻は長く、鼻以外は長くない。
コ (コ)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
コ (〃)すべてのxについて{xが兎であるならば、あるyはxの耳であって、yは長いものの、すべてのzについて、zがxの耳ならば、zはxの耳ではない}。 A
コ (〃)兎の耳は長いものの、兎の耳は、鼻ではない。
サ (サ)∃x(兎x&象x) A
サ (〃)あるxは兎であって象である。 A
サ (〃)ある兎は象である。 A
然るに、
(17)
サ (〃)ある兎は象である。 A
の「続き」は、これ迄に、何度も示した通り、
1 (4) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
2 (5) 兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 1UE
6 (6) 兎a&象a A
6 (7) 兎a 6&E
6 (8) 象a 6&E
1 6 (9) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 47MPP
2 6 (ア) ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 58MPP
1 6 (イ) ∃y(鼻ya&長y) 9&E
2 6 (ウ) ∃y(耳ya&長y) ア&E
エ (エ) 鼻ba&長b A
オ(オ) 耳ba&長b A
1 6 (カ) ∀z(~鼻za→~長z) 9&E
1 6 (キ) ~鼻ba→~長b カUE
2 6 (ク) ∀z(耳za→~鼻za) ア&E
2 6 (ケ) 耳ba→~鼻ba クUE
オ (コ) 耳ba オ&E
2 6オ (サ) ~鼻ba ケコMPP
12 6オ (シ) ~長b キサコMPP
オ (ス) 長b オ&E
12 6オ (セ) 長b&~長b シス&I
12 6 (ソ) 長b&~長b ウオセEE
123 (タ) 長b&~長b 36ソEE
12 (チ)~∃x(兎x&象x) 3タRAA
12 (ツ)∀x~(兎x&象x) チ量化子の関係
12 (テ) ~(兎a&象a) ツUE
12 (ト) ~兎a∨~象a テ、ド・モルガンの法則
12 (ナ) 兎a→~象a ト含意の定義
12 (ニ)∀x(兎x→~象x) ナUI
12 (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。 ナUI
12 (〃)兎は象ではない。 ナUI
従って、
(15)(16)(17)により、
(18)
(Ⅰ)∀x{[∃y(鼻yx&長y)→ ∃z(~鼻zx& 長z)]→~象x}。然るに、
(Ⅱ)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}。故に、
(Ⅲ)∀x(兎x→~象x)。
といふ「三段論法」、すなはち、
(Ⅰ)「鼻が長くとも、鼻以外も長いならば、象ではない。」然るに、
(Ⅱ)「兎は耳が長いが、兎の耳は鼻ではない。」故に、
(Ⅲ)「兎は象ではない。」
といふ「三段論法(推論)」は、「妥当(Valid)」である。
然るに、
(19)
(Ⅰ)「鼻が長くとも、鼻以外も長いならば、象ではない。」と言ふのであれば、
(〃)「象は、鼻以外は長くない。」といふことであって、
(〃)「象は、鼻以外は長くない。」と、言ふのであれば、
(〃)「象は、鼻は長い。」とは、言はずに、
(〃)「象は、鼻が長い。」といふ風に、言ふはずである。
従って、
(15)~(19)により、
(20)
① 象は鼻が長い。
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
③ ∀x{[∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&長z)]→~象x}。
に於いて、
① といふ「日本語」は、
② といふ「論理構造」をしてゐて、尚つ、
② といふ「論理構造」は、
③ といふ「論理構造」に、「等しい」。
といふ、ことになる。
然るに、
(21)
伝統的論理学を清水滉『論理学』(1916年)で代表させよう。わたしのもっているのが四十三年の第十九冊の一冊で、なお引き続き刊行だろうから、前後かなり多くの読者をもつ論理学書と考えられる。新興の記号論理学は、沢田允茂『現代論理学入門』(1962年)を参照することにする(三上章、日本語の論理、1963年、4頁)。
然るに、
(22)
「伝統的論理学」は、「文の、内部の構造」を「分析」できず、それ故、「伝統的論理学」は、例へば、
(Ⅰ)「鼻が長くとも、鼻以外も長いならば、象ではない。」然るに、
(Ⅱ)「兎は耳が長いが、兎の耳は鼻ではない。」故に、
(Ⅲ)「兎は象ではない。」
といふ「推論」の「妥当性(Validity)」を、「証明」できない。
従って、
(23)
① 象は鼻が長い。
といふ「日本語」を「分析」する際に、「伝統的論理学」は、役に立たない。
然るに、
(24)
沢田允茂『現代論理学入門』(1962年)は、言はば、「現代論理学」の「解説書」であって、「練習問題」も、一切、載っていない。
従って、
(25)
『沢田允茂、現代論理学入門、1962年』を読んだとしても、例へば、
1 (1)吾輩は猫であるが、吾輩に、名前はない。 A
1 (〃) ∃x{吾輩x&猫x& ~∃y(名前yx)} A
2 (2) 吾輩a&猫a& ~∃y(名前ya) A
2 (3) 吾輩a 2&E
2 (4) 猫a 2&E
2 (5) ~∃y(名前ya) 2&E
6 (6) ∃x{タマx& ∃y(名前yx)} A
7(7) タマa& ∃y(名前ya) A
7(8) タマa& 7&E
7(9) ∃y(名前ya) 7&E
2 7(ア) ~∃y(名前ya)&∃y(名前ya) 59&I
26 (イ) ~∃y(名前ya)&∃y(名前ya) 67アEE
2 (ウ)~∃x{タマx& ∃y(名前yx)} 6イRAA
2 (エ)∀x~{タマx& ∃y(名前yx)} ウ量化子の関係
2 (オ) ~{タマa& ∃y(名前ya)} エUE
2 (カ) ~タマa∨ ~∃y(名前ya) オ、ドモルガンの法則
2 (キ) ~∃y(名前ya)∨~タマa カ交換法則
2 (ク) ∃y(名前ya)→~タマa キ含意の定義
2 7(ケ) ~タマa 9クMPP
2 7(コ) 吾輩a&~タマa 3ケ&I
2 7(サ) 吾輩a&~タマa&猫a 4コ&I
2 7(シ) ∃x(吾輩x&~タマx&猫x) サEI
26 (ス) ∃x(吾輩x&~タマx&猫x) 67シEE
1 6 (セ) ∃x(吾輩x&~タマx&猫x) 12スEE
1 6 (〃)あるxは、吾輩であって、タマではなく、猫である。 セ翻訳
1 6 (〃)吾輩は、タマではないが、猫である。 ソ翻訳
といふ「述語計算」を、自分でもやってみよう、といふ気に、なるわけではない。
然るに、
(26)
Primary an exercise book ― with exersises ranging from the simple to challenging(簡単なそれから、さうでないものまでを含む、練習帳)。
とあるやうに、『論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年』の方は、「練習問題帳」である。
然るに、
(27)
日常言語の文から述語計算の文への翻訳のためには、一般にあたまが柔軟なことが必要である。なんら確定的な規則があるわけではなく、量記号に十分に馴れるまでは、練習を積むことが必要である(E.J.レモン 著、竹尾治一郎・浅野楢英、1973年、130頁)。Flexibility of mind is generally required for translating from ordinary speech into sentences of the predicate calculs. No firm rules can be given, and practice is needed before full familiarity with quantifires is reached(E.J.Lemmon, Beginning Logic).
従って、
(22)~(27)により、
(28)
『沢田允茂、現代論理学入門1963年』といふ「それ(解説書)」をいくら、丁寧に読んでみたとしても、「量記号」に十分に馴れるまで、「十分な練習」を積まなければ、
(Ⅰ)∀x{[∃y(鼻yx&長y)→ ∃z(~鼻zx& 長z)]→~象x}。然るに、
(Ⅱ)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}。故に、
(Ⅲ)∀x(兎x→~象x)。
といふ「述語計算(Predicate calculus)」が出来るやうにならないのは、「練習」を積まなければ、
例題1
(x2+xy+y2+2x-y+3)(xy+x-2y+2)(x2+y2+x+y+1)
の展開式における2次の項と、3次の項を計算せよ。
答え 2次:17x2-xy+2y2、3次:12x3-3x3-3x2y+9xy2-6y2
(科学振興社、モノグラフ 1、式の計算、1990年、9頁改)
といふ「計算」ができないことと、「同じ」である。
従って、
(21)~(28)により、
(29)
『三上章、日本語の論理、1963年』の中で、記号論理学は、沢田允茂『現代論理学入門』(1962年)を参照することにすると、書いた時点に於ける、三上先生は、
(x2+xy+y2+2x-y+3)(xy+x-2y+2)(x2+y2+x+y+1)
の展開式における2次の項と、3次の項を計算せよ。
といふ「計算」は、「得意」であったとしても、
(Ⅰ)∀x{[∃y(鼻yx&長y)→ ∃z(~鼻zx& 長z)]→~象x}。然るに、
(Ⅱ)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}。故に、
(Ⅲ)∀x(兎x→~象x)。
といふ「計算」は、やってはゐないもののと、思はれます。
仮に、
(30)
55年前の、三上章先生が、
(Ⅰ)「鼻が長くとも、鼻以外も長いならば、象ではない。」然るに、
(Ⅱ)「兎は耳が長いが、兎の耳は鼻ではない。」故に、
(Ⅲ)「兎は象ではない。」
といふ「推論(三段論法)」を、自分自身で、「述語論理」に「翻訳」しようとして、『述語論理(現代論理学)』を学ばれたとすれば、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
④ ∀x{[∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&長z)]→~象x}。
から、「論理式」から、
① ∀z(~鼻zx→~長z)
④ ∃z(~鼻zx& 長z)
を「除去(elimate)」してまへば、
(Ⅰ)「鼻が長くとも、鼻以外も長いならば、象ではない。」然るに、
(Ⅱ)「兎は耳が長いが、兎の耳は鼻ではない。」故に、
(Ⅲ)「兎は象ではない。」
といふ「推論(三段論法)」は、成り立たない。といふことに、気付かれたはずである。
然るに、
(31)
55年前の、三上章先生ほどの大先生が、『三上章、日本語の論理、1963年』の中で、仮に、
(Ⅰ)∀x{[∃y(鼻yx&長y)→ ∃z(~鼻zx& 長z)]→~象x}。然るに、
(Ⅱ)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}。故に、
(Ⅲ)∀x(兎x→~象x)。
といふ「論理式」に、言及してゐたのであれば、
① 象は鼻が長い。
といふ「日本語」は、少なくとも、「述語論理的」には、
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。⇔
③ ∀x{[∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&長z)]→~象x}。
といふ「論理構造」をしてゐる。といふことが、知れ渡ってゐたと、思はれます。
然るに、
(32)
1 (1)鼻は象が長い。 A
1 (〃)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x} A
1 (〃)いかなるxであっても{xが、ある象ではないyの鼻であるならば、xは長くない}。 A
2 (2)∀y{兎y→~象y} A
3 (3)∃y(兎y&鼻ay) A
1 (4) ∃y(~象y&鼻ay)→~長a 1UE
2 (5) 兎b→~象b 2UE
6(6) 兎b&鼻ab A
6(7) 兎b 6&E
12 6(8) ~象b 57MPP
6(9) 鼻ab 6&E
12 6(ア) ~象b&鼻ab 89&I
12 6(イ) ∃y(~象y&鼻ay) アEI
123 (ウ) ∃y(~象y&鼻ay) 36イEE
123 (エ) ~長a 4ウMPP
12 (オ) ∃y( 兎y&鼻ay)→~長a 3エCP
12 (3)∀x{∃y( 兎y&鼻xy)→~長x} オUI
12 (〃)いかなるxであっても{あるyが兎であって、xがyの鼻であるならば、xは長くない}。 オUI
12 (〃)兎の鼻は長くない。 オUI
従って、
(32)により、
(33)
(Ⅰ)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x}。
(Ⅱ)∀y{兎y→~象y}。
(Ⅲ)∀x{∃y( 兎y&鼻xy)→~長x}。
といふ「推論(三段論法)」、すなはち、
(Ⅰ)鼻は象が長い。然るに、
(Ⅱ)兎は象ではない。故に、
(Ⅲ)兎の鼻は長くない。
といふ「推論(三段論法)」が、成立する。
然るに、
(34)
1 (1)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x} A
1 (〃)いかなるxであっても{xが、ある象ではないyの鼻であるならば、xは長くない}。 A
といふことは、
1 (1)象以外の鼻は、長くはない。
といふことに、他ならない。
然るに、
(35)
1 (1)象以外の鼻は、長くはない。
といふことは、「念頭」には、
1 (1)象以外の鼻も、無ければ、ならない。
然るに、
(36)
{兎、象、麒麟}を{変域(domain)}とするならば、
① 耳は、兎が長い。
② 鼻は、象が長い。
③ 首は、麒麟が長い。
と言ふか、さうでなければ、
① 耳が、兎が長い。
② 鼻が、象が長い。
③ 首が、麒麟が長い。
と言ふのであって、
① 耳は、兎は長い。
② 鼻は、象は長い。
③ 首は、麒麟は長い。
といふ風には、言はない。
従って、
(31)~(36)により、
(37)
「が」は複数の主語候補を同時に意識させ、「集合」としての主語を提示する。
*「集合構造」:主語は集合で、他の主語候補を義務的に意識させる(淺山友貴、現代日本語における「は」と「が」の意味と機能、2004年、154頁)。
に於ける、「集合」といふのは、
① 耳は、兎が長い。
② 鼻は、象が長い。
③ 首は、麒麟が長い。
であれば、
①{兎と、兎以外(象と麒麟)} の「集合」であって、
②{象と、象以外(兎と麒麟)} の「集合」であって、
③{麒麟と、麒麟以外(兎と象)}の「集合」である。
平成30年、12月15日、毛利太。
2018年12月12日水曜日
「象は鼻が長い(述語論理)」と「総主語(草野淸民)」。
(a)『返り点と括弧』については、『「返り点」と「括弧」(略8)(https://kannbunn.blogspot.com/2018/09/blog-post_17.html)』他もお読み下さい。
(b)『返り点』については、『「返り点」の「付け方」を教へます(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post_3.html)』他をお読み下さい。
(01)
1 (1)∃xFx A
2(2) Fa A
1 (3) Fa 122EE
1 (4)∀xFx 3UI
に於いて、
1 (4)∀xFx 3UI
は、「正しい」。 何故なら、
1 (1)∃xFx A
は a を含まないからである。
1 (3) Fa 122EE
は、「正しくない」。何故なら、
1 (3) Fa 122EE
といふ「結論」はa を含んでゐるからである(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、147頁改)。
従って、
(01)により、
(02)
1 (1)∃xFx A
2(2) Fa A
1 (3) Fa 122EE
までは、「正しい」ものの、
1 (4)∀xFx 3UI
が加はった「結果」として、「1つ前の行」に戻って、
1 (3) Fa 122EE
が、「マチガイ」になる。
然るに、
(03)
1 (1)∀x∃yFxy A
1 (2) ∃yFay 1UE
2(3) Fab A
1 (4) Fab 233EE
1 (5) ∀xFxb 4UI
に於いて、
1 (5) ∀xFxb 4UI
の行は、
1 (4) Fab 233EE
の行の、 a に対する、UIであって、
bに対する、UIではない。
然るに、
(04)
1 (1)∀x∃yFxy A
1 (2) ∃yFay 1UE
2(3) Faa A
1 (4) Faa 233EE
1 (5) ∀xFxx 4UI
に於いて、
1 (5) ∀xFxx 4UI
の行は、
1 (4) Faa 233EE
の行の、 aa に対する、UIである。
従って、
(01)~(04)により、
(05)
例へば、
1 (1)∀x∃yFxy A
1 (〃)すべての母親には子供がゐる。 A
1 (2) ∃yFay 1UE
2(3) Faa A
1 (4) Faa 233EE
1 (5) ∀xFxx 4UI
1 (〃)すべての母親はすべての母の母である。 4UI
といふ「述語計算」は、「マチガイ」であって、その一方で、
1 (1)∀x∃yFxy A
1 (〃)すべての母親には子供がゐる。 A
1 (2) ∃yFay 1UE
2(3) Fab A
1 (4) Fab 233EE
1 (5) ∀xFxb 4UI
1 (〃)すべての母親は任意の子供の母である。 4UI
といふ「述語計算」は、「正しい」。
cf.
「すべての母親はすべての母の母である。」ならば、
「任意の母親は、自分自身から生まれた。」ことになる。
然るに、
(06)
これ迄に、何度も書いた通り、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
3 (3)ある兎は象である。 A
3 (〃)∃x(兎x&象x) A
3 (〃)あるxは兎であって象である。 A
1 (4) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
2 (5) 兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 1UE
6 (6) 兎a&象a A
6 (7) 兎a 6&E
6 (8) 象a 6&E
1 6 (9) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 47MPP
2 6 (ア) ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 58MPP
1 6 (イ) ∃y(鼻ya&長y) 9&E
2 6 (ウ) ∃y(耳ya&長y) ア&E
エ (エ) 鼻ba&長b A
オ(オ) 耳ba&長b A
1 6 (カ) ∀z(~鼻za→~長z) 9&E
1 6 (キ) ~鼻ba→~長b カUE
2 6 (ク) ∀z(耳za→~鼻za) ア&E
2 6 (ケ) 耳ba→~鼻ba クUE
オ (コ) 耳ba オ&E
2 6オ (サ) ~鼻ba ケコMPP
12 6オ (シ) ~長b キサコMPP
オ (ス) 長b オ&E
12 6オ (セ) 長b&~長b シス&I
12 6 (ソ) 長b&~長b ウオセEE
123 (タ) 長b&~長b 36ソEE
12 (チ)~∃x(兎x&象x) 3タRAA
12 (ツ)∀x~(兎x&象x) チ量化子の関係
12 (テ) ~(兎a&象a) ツUE
12 (ト) ~兎a∨~象a テ、ド・モルガンの法則
12 (ナ) 兎a→~象a ト含意の定義
12 (ニ)∀x(兎x→~象x) ナUI
12 (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。 ナUI
12 (〃)兎は象ではない。
従って、
(06)により、
(07)
12 (ナ) 兎a→~象a ト含意の定義
12 (ニ)∀x(兎x→~象x) ナUI
に於ける「UI(普遍量記号導入の規則)」の「対象」は、飽くまでも「a」であり、その一方で、
12 6 (ソ) 長b&~長b ウオセEE
123 (タ) 長b&~長b 36ソEE
に於ける「EE(存在量記号除去の規則)」の「対象」は、「b」はあって、「a」ではない。
従って、
(02)(05)(07)により、
(08)
12 (ナ) 兎a→~象a ト含意の定義
12 (ニ)∀x(兎x→~象x) ナUI
が加はったとしても、
12 6 (ソ) 長b&~長b ウオセEE
123 (タ) 長b&~長b 36ソEE
に於ける「EE(存在量記号除去の規則)」は、「正しい」ままであって、「マチガイ」には、ならない。
従って、
(01)~(08)により、
(09)
要するに、
(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。然るに、
(2)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}。故に、
(3)∀x(兎x→~象x)。
といふ「推論(三段論法)」、すなはち、「日本語」で言へば、
(1)象は鼻が長い。然るに、
(2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。故に、
(3)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当(valid)」である。
然るに、
(10)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「論理式」は、すなはち、
① すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長い}。
② すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふ「意味」である。
従って、
(10)により、
(11)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
の場合は、
① 象の、鼻以外のパーツに関しては、長いとも、長くない。
とも、言ってゐない。
然るに、
(10)により、
(12)
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふことは、
② 象は鼻は長いが、鼻以外は長くない。
といふことである。
然るに、
(13)
② 象は鼻は長いが、鼻以外は長くない。
といふのであれば、
② 象は鼻が長い。
のであって、
① 象は鼻は長い。
ではない。
従って、
(09)(12)(13)により、
(14)
② 象は鼻が長い。
といふ「日本語」は、
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふ「述語論理」に、対応する。
然るに、
(15)
② ∃y(鼻yx&長y)
は、「命題関数(Proposition function)」であって、
② ∀z(~鼻zx→~長z)
も、「命題関数(Proposition function)」であって、
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
は、「論理式(well-formed-formula)」である。
然るに、
(16)
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
に於いて、「変数x」は、
① ∀x の中にも、
②{ }の中にも、
③( )の中にも、
④( )の中にも、現れる。
然るに、
(17)
(1)鼻は長い。
(〃)∃y(鼻yx&長y)
(〃)あるyはxの鼻であって、yは長い。
に於いて、「変数y」は、
① ∃y の中と、
②( )の中にしか、現れない。
然るに、
(18)
(ⅰ)論理式または命題関数において、量記号が現れる任意の箇所の作用範囲は、問題になっている変数が現れる少なくとも2つの箇所を含むであろう(その1つの箇所は量記号そのもののなかにある);
(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、183頁)
従って、
(14)~(18)により、
(19)
(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「論理式」に於ける、「変数x」の「作用範囲(スコープ)」は、
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふ「文」の「全体(総体)」である。
(20)
(1) ∃y(鼻yx&長y)
といふ「命題関数」に於ける、「変数x」の「作用範囲(スコープ)」は、
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふ「文」の「全体(総体)」ではなく、
(1) ∃y(鼻yx&長y)
(〃) あるyはxの鼻であって、yは長く、
といふ「一部分」である。
従って、
(19)(20)により、
(21)
「象(x)」=「主語(x)」 であって、
「鼻(y)」=「主語(y)」 であるならば、
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
に於いて、「象(x)」は、「文の全体(総体)の主語」であって、「鼻(y)」は、「文の一部の主語」である。
然るに、
(22)
動詞、形容詞ニ對シテ其主語アルト同ジク、主語ト説語(動詞或ハ形容詞)トヨリ成レル一ノ説話(即チ文)ニ對シテモ更ニソノ主語アルコト國語ニハ屡々アリ。例ヘバ「象は體大なり」ノ「象」、「熊は力強し」ノ「熊」、「鳥獸蟲魚皆性あり」ノ「鳥獸蟲魚」、「仁者は命長し」ノ「仁者」、「賣藥は效能薄し」ノ「賣藥」、「慾は限無し」ノ「慾」、「酒は養生に害あり」ノ「酒」、「支那は人口多し」ノ「支那」ノ如キハ、皆、「體大なり」「力強し」等ノ一説話ニ對シテ更ニソノ主語タル性格ヲ有ス。何トナレバ「象は體大なり」「熊は力強し」等ヨリ「象」「熊」等ノ再度ノ主語ヲ取去ル時ハ、殘餘ハ「體大なり」「力強し」等トナリテ、文法上ノ文ノ形ハ完全ニ之ヲ具フルニモ拘ラズ、意義ニ不足ヲ生ジ、其事ノ主トアルベキ「象」「熊」等ノ名詞ヲ竢ッテ始メテ意義ノ完全ナル一圓ノ説話ヲ成サントスル傾アルコト、ナホ普通ノ動詞、形容詞ノ名詞ヲ竢ッテ始メテ一ノ完全ナル説話ヲ成サントスル傾アルト同趣味ノモノアレバナリ。殊ニ「性有り」「限無し」等ノ一種ノ説話ニ對シテハ、實用ノ際ニ再度ノ主語ノ必要アル事ハ頗ル顯著ナルニアラズヤ。コレハ「うら(心)やまし(疚)」「て(質)がたし(堅)」ナドノ一説話ノ轉シテ一ノ形容詞トナリ、然ル上ハ實用ノ際ニ更ニソノ主語ヲ取ルト一般ナリ。サレバ「富貴は羨し」ノ「うらやまし」ニ對シテ「富貴」ヲ主語トイフヲ至當トセバ、「體大なり」「力強し」ニ對シテ「象」「熊」ヲソノ主語トイフモ亦不當ニハアラジ。斯カレバコノ類ノ再度ノ主ヲ予ハ別ニ「總主」ト名ヅケントス。
總主ハ斯ク頗ル簡單ニ説明セラルベク、亦容易ニ會得セラルベキ者ナリ。學者ノ潛思苦慮ヲモ要セズ、考古引證ヲモ須タズシテ、小學ノ兒童モ、口頭ニ、文章ニ、此語法ヲ用ヰ、歌人文士モ之ヲ用ヰテ毫モ疑フ事ナシ。コノ語法ハ本ヨリ我國ニ有リシナランガ、漢學ノ流行ニ連レテ益廣ク行ハレ、今日トナリテハ最早之ヲ目シテ國語ノ法則ニ非ズトイフヲ得ザルニ至レリ。然ルニ國語ノ法則トシテ日本ノ文法ニ之ヲ編入スル者ナキハ何故ゾ。西洋ノ言語ニ類似ノ語法ナク、西洋ノ文典ニ類似ノ記載ナキガ故ニハ非ザルカ。
(草野淸民、國語の特有セル語法 ― 總主、『帝國文學』五卷五號、明治三十二年:大修館書店、日本の言語学 第3巻 文法Ⅰ、1978年、533頁)
従って、
(21)(22)により、
(23)
(1)象は體大なり。
だけでなく、
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
に於ける、「象(x)」を、「總主」と呼ぶのであれば、草野淸民先生の言ふ、「總主」は、「(述語論理的な)總主」である、といふことになる。
従って、
(22)(23)により、
(24)
「總主」は、「西洋の言語に類似の語法はなく」とも、「述語論理といふ言語には類似の語法」があることになる。
(25)
(06)の「述語計算」を説明すると、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
3 (3)ある兎は象である。 A
3 (〃)∃x(兎x&象x) A
といふ「3つの仮定」を行ふと、「矛盾」が生じるため、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
といふ「2つの仮定」を、「否定」しないのであれば、
3 (3)ある兎は象である。 A
3 (〃)∃x(兎x&象x) A
といふ「1つの仮定」を、「否定」せざるを得ない。
といふのが、「証明(背理法)」の「あらすじ」です。
然るに、
(26)
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
ではなく、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)} A
2 (2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
とするならば、「矛盾」は生じないため、
(1)象は鼻が長い。然るに、
(2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。故に、
(3)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」が、「妥当(valid)」であるためには、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
といふ風に、「仮定」せざるを得ない。
従って、
(27)
① 象は鼻が長い。
といふ「日本語」は、「述語論理」としては、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ風に、「翻訳」せざるを得ない。
然るに、
(22)により、
(28)
① 象は鼻が長い。
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
に於ける、
① 象は
① ∀x{象x
といふ「それ」は、草野淸民先生が、所謂、「總主」である。
平成30年12月10日、毛利太。
(b)『返り点』については、『「返り点」の「付け方」を教へます(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post_3.html)』他をお読み下さい。
(01)
1 (1)∃xFx A
2(2) Fa A
1 (3) Fa 122EE
1 (4)∀xFx 3UI
に於いて、
1 (4)∀xFx 3UI
は、「正しい」。 何故なら、
1 (1)∃xFx A
は a を含まないからである。
1 (3) Fa 122EE
は、「正しくない」。何故なら、
1 (3) Fa 122EE
といふ「結論」はa を含んでゐるからである(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、147頁改)。
従って、
(01)により、
(02)
1 (1)∃xFx A
2(2) Fa A
1 (3) Fa 122EE
までは、「正しい」ものの、
1 (4)∀xFx 3UI
が加はった「結果」として、「1つ前の行」に戻って、
1 (3) Fa 122EE
が、「マチガイ」になる。
然るに、
(03)
1 (1)∀x∃yFxy A
1 (2) ∃yFay 1UE
2(3) Fab A
1 (4) Fab 233EE
1 (5) ∀xFxb 4UI
に於いて、
1 (5) ∀xFxb 4UI
の行は、
1 (4) Fab 233EE
の行の、 a に対する、UIであって、
bに対する、UIではない。
然るに、
(04)
1 (1)∀x∃yFxy A
1 (2) ∃yFay 1UE
2(3) Faa A
1 (4) Faa 233EE
1 (5) ∀xFxx 4UI
に於いて、
1 (5) ∀xFxx 4UI
の行は、
1 (4) Faa 233EE
の行の、 aa に対する、UIである。
従って、
(01)~(04)により、
(05)
例へば、
1 (1)∀x∃yFxy A
1 (〃)すべての母親には子供がゐる。 A
1 (2) ∃yFay 1UE
2(3) Faa A
1 (4) Faa 233EE
1 (5) ∀xFxx 4UI
1 (〃)すべての母親はすべての母の母である。 4UI
といふ「述語計算」は、「マチガイ」であって、その一方で、
1 (1)∀x∃yFxy A
1 (〃)すべての母親には子供がゐる。 A
1 (2) ∃yFay 1UE
2(3) Fab A
1 (4) Fab 233EE
1 (5) ∀xFxb 4UI
1 (〃)すべての母親は任意の子供の母である。 4UI
といふ「述語計算」は、「正しい」。
cf.
「すべての母親はすべての母の母である。」ならば、
「任意の母親は、自分自身から生まれた。」ことになる。
然るに、
(06)
これ迄に、何度も書いた通り、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
3 (3)ある兎は象である。 A
3 (〃)∃x(兎x&象x) A
3 (〃)あるxは兎であって象である。 A
1 (4) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
2 (5) 兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 1UE
6 (6) 兎a&象a A
6 (7) 兎a 6&E
6 (8) 象a 6&E
1 6 (9) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 47MPP
2 6 (ア) ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 58MPP
1 6 (イ) ∃y(鼻ya&長y) 9&E
2 6 (ウ) ∃y(耳ya&長y) ア&E
エ (エ) 鼻ba&長b A
オ(オ) 耳ba&長b A
1 6 (カ) ∀z(~鼻za→~長z) 9&E
1 6 (キ) ~鼻ba→~長b カUE
2 6 (ク) ∀z(耳za→~鼻za) ア&E
2 6 (ケ) 耳ba→~鼻ba クUE
オ (コ) 耳ba オ&E
2 6オ (サ) ~鼻ba ケコMPP
12 6オ (シ) ~長b キサコMPP
オ (ス) 長b オ&E
12 6オ (セ) 長b&~長b シス&I
12 6 (ソ) 長b&~長b ウオセEE
123 (タ) 長b&~長b 36ソEE
12 (チ)~∃x(兎x&象x) 3タRAA
12 (ツ)∀x~(兎x&象x) チ量化子の関係
12 (テ) ~(兎a&象a) ツUE
12 (ト) ~兎a∨~象a テ、ド・モルガンの法則
12 (ナ) 兎a→~象a ト含意の定義
12 (ニ)∀x(兎x→~象x) ナUI
12 (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。 ナUI
12 (〃)兎は象ではない。
従って、
(06)により、
(07)
12 (ナ) 兎a→~象a ト含意の定義
12 (ニ)∀x(兎x→~象x) ナUI
に於ける「UI(普遍量記号導入の規則)」の「対象」は、飽くまでも「a」であり、その一方で、
12 6 (ソ) 長b&~長b ウオセEE
123 (タ) 長b&~長b 36ソEE
に於ける「EE(存在量記号除去の規則)」の「対象」は、「b」はあって、「a」ではない。
従って、
(02)(05)(07)により、
(08)
12 (ナ) 兎a→~象a ト含意の定義
12 (ニ)∀x(兎x→~象x) ナUI
が加はったとしても、
12 6 (ソ) 長b&~長b ウオセEE
123 (タ) 長b&~長b 36ソEE
に於ける「EE(存在量記号除去の規則)」は、「正しい」ままであって、「マチガイ」には、ならない。
従って、
(01)~(08)により、
(09)
要するに、
(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。然るに、
(2)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}。故に、
(3)∀x(兎x→~象x)。
といふ「推論(三段論法)」、すなはち、「日本語」で言へば、
(1)象は鼻が長い。然るに、
(2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。故に、
(3)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当(valid)」である。
然るに、
(10)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「論理式」は、すなはち、
① すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長い}。
② すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふ「意味」である。
従って、
(10)により、
(11)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
の場合は、
① 象の、鼻以外のパーツに関しては、長いとも、長くない。
とも、言ってゐない。
然るに、
(10)により、
(12)
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふことは、
② 象は鼻は長いが、鼻以外は長くない。
といふことである。
然るに、
(13)
② 象は鼻は長いが、鼻以外は長くない。
といふのであれば、
② 象は鼻が長い。
のであって、
① 象は鼻は長い。
ではない。
従って、
(09)(12)(13)により、
(14)
② 象は鼻が長い。
といふ「日本語」は、
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふ「述語論理」に、対応する。
然るに、
(15)
② ∃y(鼻yx&長y)
は、「命題関数(Proposition function)」であって、
② ∀z(~鼻zx→~長z)
も、「命題関数(Proposition function)」であって、
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
は、「論理式(well-formed-formula)」である。
然るに、
(16)
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
に於いて、「変数x」は、
① ∀x の中にも、
②{ }の中にも、
③( )の中にも、
④( )の中にも、現れる。
然るに、
(17)
(1)鼻は長い。
(〃)∃y(鼻yx&長y)
(〃)あるyはxの鼻であって、yは長い。
に於いて、「変数y」は、
① ∃y の中と、
②( )の中にしか、現れない。
然るに、
(18)
(ⅰ)論理式または命題関数において、量記号が現れる任意の箇所の作用範囲は、問題になっている変数が現れる少なくとも2つの箇所を含むであろう(その1つの箇所は量記号そのもののなかにある);
(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、183頁)
従って、
(14)~(18)により、
(19)
(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「論理式」に於ける、「変数x」の「作用範囲(スコープ)」は、
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふ「文」の「全体(総体)」である。
(20)
(1) ∃y(鼻yx&長y)
といふ「命題関数」に於ける、「変数x」の「作用範囲(スコープ)」は、
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふ「文」の「全体(総体)」ではなく、
(1) ∃y(鼻yx&長y)
(〃) あるyはxの鼻であって、yは長く、
といふ「一部分」である。
従って、
(19)(20)により、
(21)
「象(x)」=「主語(x)」 であって、
「鼻(y)」=「主語(y)」 であるならば、
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
に於いて、「象(x)」は、「文の全体(総体)の主語」であって、「鼻(y)」は、「文の一部の主語」である。
然るに、
(22)
動詞、形容詞ニ對シテ其主語アルト同ジク、主語ト説語(動詞或ハ形容詞)トヨリ成レル一ノ説話(即チ文)ニ對シテモ更ニソノ主語アルコト國語ニハ屡々アリ。例ヘバ「象は體大なり」ノ「象」、「熊は力強し」ノ「熊」、「鳥獸蟲魚皆性あり」ノ「鳥獸蟲魚」、「仁者は命長し」ノ「仁者」、「賣藥は效能薄し」ノ「賣藥」、「慾は限無し」ノ「慾」、「酒は養生に害あり」ノ「酒」、「支那は人口多し」ノ「支那」ノ如キハ、皆、「體大なり」「力強し」等ノ一説話ニ對シテ更ニソノ主語タル性格ヲ有ス。何トナレバ「象は體大なり」「熊は力強し」等ヨリ「象」「熊」等ノ再度ノ主語ヲ取去ル時ハ、殘餘ハ「體大なり」「力強し」等トナリテ、文法上ノ文ノ形ハ完全ニ之ヲ具フルニモ拘ラズ、意義ニ不足ヲ生ジ、其事ノ主トアルベキ「象」「熊」等ノ名詞ヲ竢ッテ始メテ意義ノ完全ナル一圓ノ説話ヲ成サントスル傾アルコト、ナホ普通ノ動詞、形容詞ノ名詞ヲ竢ッテ始メテ一ノ完全ナル説話ヲ成サントスル傾アルト同趣味ノモノアレバナリ。殊ニ「性有り」「限無し」等ノ一種ノ説話ニ對シテハ、實用ノ際ニ再度ノ主語ノ必要アル事ハ頗ル顯著ナルニアラズヤ。コレハ「うら(心)やまし(疚)」「て(質)がたし(堅)」ナドノ一説話ノ轉シテ一ノ形容詞トナリ、然ル上ハ實用ノ際ニ更ニソノ主語ヲ取ルト一般ナリ。サレバ「富貴は羨し」ノ「うらやまし」ニ對シテ「富貴」ヲ主語トイフヲ至當トセバ、「體大なり」「力強し」ニ對シテ「象」「熊」ヲソノ主語トイフモ亦不當ニハアラジ。斯カレバコノ類ノ再度ノ主ヲ予ハ別ニ「總主」ト名ヅケントス。
總主ハ斯ク頗ル簡單ニ説明セラルベク、亦容易ニ會得セラルベキ者ナリ。學者ノ潛思苦慮ヲモ要セズ、考古引證ヲモ須タズシテ、小學ノ兒童モ、口頭ニ、文章ニ、此語法ヲ用ヰ、歌人文士モ之ヲ用ヰテ毫モ疑フ事ナシ。コノ語法ハ本ヨリ我國ニ有リシナランガ、漢學ノ流行ニ連レテ益廣ク行ハレ、今日トナリテハ最早之ヲ目シテ國語ノ法則ニ非ズトイフヲ得ザルニ至レリ。然ルニ國語ノ法則トシテ日本ノ文法ニ之ヲ編入スル者ナキハ何故ゾ。西洋ノ言語ニ類似ノ語法ナク、西洋ノ文典ニ類似ノ記載ナキガ故ニハ非ザルカ。
(草野淸民、國語の特有セル語法 ― 總主、『帝國文學』五卷五號、明治三十二年:大修館書店、日本の言語学 第3巻 文法Ⅰ、1978年、533頁)
従って、
(21)(22)により、
(23)
(1)象は體大なり。
だけでなく、
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
に於ける、「象(x)」を、「總主」と呼ぶのであれば、草野淸民先生の言ふ、「總主」は、「(述語論理的な)總主」である、といふことになる。
従って、
(22)(23)により、
(24)
「總主」は、「西洋の言語に類似の語法はなく」とも、「述語論理といふ言語には類似の語法」があることになる。
(25)
(06)の「述語計算」を説明すると、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
3 (3)ある兎は象である。 A
3 (〃)∃x(兎x&象x) A
といふ「3つの仮定」を行ふと、「矛盾」が生じるため、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
といふ「2つの仮定」を、「否定」しないのであれば、
3 (3)ある兎は象である。 A
3 (〃)∃x(兎x&象x) A
といふ「1つの仮定」を、「否定」せざるを得ない。
といふのが、「証明(背理法)」の「あらすじ」です。
然るに、
(26)
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
ではなく、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)} A
2 (2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
とするならば、「矛盾」は生じないため、
(1)象は鼻が長い。然るに、
(2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。故に、
(3)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」が、「妥当(valid)」であるためには、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
といふ風に、「仮定」せざるを得ない。
従って、
(27)
① 象は鼻が長い。
といふ「日本語」は、「述語論理」としては、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ風に、「翻訳」せざるを得ない。
然るに、
(22)により、
(28)
① 象は鼻が長い。
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
に於ける、
① 象は
① ∀x{象x
といふ「それ」は、草野淸民先生が、所謂、「總主」である。
平成30年12月10日、毛利太。
2018年12月8日土曜日
「象は鼻が長い。」と「述語論理」と「主題」と「強調形」。
(a)『返り点と括弧』については、『「返り点」と「括弧」(略8)(https://kannbunn.blogspot.com/2018/09/blog-post_17.html)』他もお読み下さい。
(b)『返り点』については、『「返り点」の「付け方」を教へます(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post_3.html)』他をお読み下さい。
(01)
もう一度、書くものの、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
3 (3)ある兎は象である。 A
3 (〃)∃x(兎x&象x) A
3 (〃)あるxは兎であって象である。 A
1 (4) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
2 (5) 兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 1UE
6 (6) 兎a&象a A
6 (7) 兎a 6&E
6 (8) 象a 6&E
1 6 (9) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 47MPP
2 6 (ア) ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 58MPP
1 6 (イ) ∃y(鼻ya&長y) 9&E
2 6 (ウ) ∃y(耳ya&長y) ア&E
エ (エ) 鼻ba&長b A
オ(オ) 耳ba&長b A
1 6 (カ) ∀z(~鼻za→~長z) 9&E
1 6 (キ) ~鼻ba→~長b カUE
2 6 (ク) ∀z(耳za→~鼻za) ア&E
2 6 (ケ) 耳ba→~鼻ba クUE
オ (コ) 耳ba オ&E
2 6オ (サ) ~鼻ba ケコMPP
12 6オ (シ) ~長b キサコMPP
オ (ス) 長b オ&E
12 6オ (セ) 長b&~長b シス&I
12 6 (ソ) 長b&~長b ウオセEE
123 (タ) 長b&~長b 36ソEE
12 (チ)~∃x(兎x&象x) 3タRAA
12 (ツ)∀x~(兎x&象x) チ量化子の関係
12 (テ) ~(兎a&象a) ツUE
12 (ト) ~兎a∨~象a テ、ド・モルガンの法則
12 (ナ) 兎a→~象a ト含意の定義
12 (ニ)∀x(兎x→~象x) ナUI
12 (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。 ナUI
12 (〃)兎は象ではない。 ナUI
従って、
(01)により、
(02)
(1)象は鼻が長い。
(2)兎は耳が長いが、兎の耳は鼻ではない。
(3)ある兎は象である。
といふ風に「仮定」すると、
(タ)の行で、「矛盾」が生じるため、
(1)と(2)を、「否定」しないならば、「背理法」により、
(3)ある兎は象である。
といふ「仮定」が「否定」され、その「結果」として、
(3)兎は象ではない。
といふ「結論」を得ることになる。
従って、
(02)により、
(03)
(1)象は鼻が長い。然るに、
(2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。故に、
(3)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」を行ひたいのであれば、
(1)象は鼻が長い。
といふ「日本語」は、
(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ風に、「翻訳」することになる。
然るに、
(04)
1 (1)象以外の鼻は長くない。 A
1 (〃)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)} A
2 (2)∀x( 兎x→~象x) A
2 (〃)兎は象ではない。 A
1 (3) ~象a→~∃y(鼻ya&長y) 1UE
2 (4) 兎a→~象a 2UE
5(5) 兎a A
25(6) ~象a 45
125(7) ~∃y(鼻ya&長y) 36MPP
125(8) ∀y~(鼻ya&長y) 7量化子の関係
125(9) ~(鼻ba&長b) 8UE
125(ア) ~鼻ba∨~長b ド・モルガンの法則
125(イ) 鼻ba→~長b ア含意の定義
125(ウ) ∀y(鼻ya→~長y) イUI
12 (エ) 兎a→∀y(鼻ya→~長y) 5ウCP
12 (オ)∀x{ 兎x→∀y(鼻yx→~長y)} エUI
12 (〃)すべてのxについて{xが兎であるならば、すべてのyについて(yがxの鼻であるならば、yは長くない)}。 エUI
12 (〃)xが兎であって、yがxの鼻であるならば、yは長くない。 エUI
12 (〃)兎の鼻は長くない。 エUI
従って、
(04)により、
(05)
(1)象以外の鼻は長くない。
(2)兎は象ではない。
といふ風に、「仮定」すると、当然ではあるが、
(3)兎の鼻は長くない。
といふ「結論」を得ることになる。
然るに、
(06)
{象、兎、猫、犬、馬}を、「変域」とするならば、事実として、
{象}以外の鼻は長くない。
然るに、
(07)
{象}以外の鼻は長くない。
といふことは、
{象が}鼻は長い。
といふことである。
従って、
(04)(07)により、
(08)
1 (1)象が鼻は長い。 A
1 (〃)象以外の鼻は長くない。 A
1 (〃)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)} A
である。
従って、
(05)~(08)により、
(09)
(1)象が鼻は長い。然るに、
(2)兎は象ではない。故に、
(3)兎の鼻は長くない。
といふ「推論(三段論法)」を行ひたいのであれば、
(1)象が鼻は長い。
といふ「日本語」は、
(1)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)}。
といふ風に、「翻訳」することになる。
然るに、
(10)
(a)
1 (1)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)} A
1 (2) ~象a→~∃y(鼻ya&長y) UE
3 (3) ~象a A
4(4) ∃y(鼻yx&長y) A
13 (5) ~∃y(鼻ya&長y) 23MPP
134(6) ∃y(鼻ya&長y)&
~∃y(鼻ya&長y) 45&I
1 4(7) ~~象a 36RAA
1 4(8) 象a 7DN
1 (9) ∃y(鼻yx&長y)→象a 48CP
1 (ア)∀x{ ∃y(鼻yx&長y)→象x} 9UI
(b)
1 (1)∀x{ ∃y(鼻yx&長y)→象x} A
1 (2) ∃y(鼻ya&長y)→象a 1UE
3 (3) ∃y(鼻ya&長y) A
4(4) ~象a A
13 (5) 象a 23MPP
134(6) ~象a&象a 45&I
1 4(7) ~∃y(鼻ya&長y) 36RAA
1 (8) ~象a→~∃y(鼻ya&長y) 47CP
1 (9)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)} 8UI
従って、
(10)により、
(11)
(a)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)}。
(b)∀x{ ∃y(鼻yx&長y)→ 象x}。
といふ「対偶」に於いて、
(a)=(b) である。
従って、
(09)(10)(11)により、
(12)
(1)象が鼻は長い。然るに、
(2)兎は象ではない。故に、
(3)兎の鼻は長くない。
といふ「推論(三段論法)」を行ひたいのであれば、
(1)象が鼻は長い。
といふ「日本語」は、
(1)∀x{∃y(鼻yx&長y)→象x}。
(〃)すべてのxについて{あるyがxの鼻であって、yが長いのであれば、xは象である}。
といふ風に、「翻訳」することになる。
然るに、
(13)
(a)
1(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}&∀x{∃y(鼻yx&長y)→象x} A
1(2)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)} 1&E
1(3) 象a→∃y(鼻ya&長y) 2UE
1(4) ∀x{∃y(鼻yx&長y)→象x} 1&E
1(5) ∃y(鼻ya&長y)→象a 4UE
1(6) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∃y(鼻ya&長y)→象a 35&I
1(7)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃y(鼻yx&長y)→象x} 6UI
(b)
1(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃y(鼻yx&長y)→象x} A
1(2) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∃y(鼻ya&長y)→象a 1UE
1(3) 象a→∃y(鼻ya&長y) 2&E
1(4)∀x{象a→∃y(鼻ya&長y)} 3UI
1(5) ∃y(鼻yx&長y)→象x 2&E
1(6) ∀x{∃y(鼻yx&長y)→象x} 5UI
1(7)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}&∀x{∃y(鼻yx&長y)→象x} 46&I
従って、
(13)により、
(14)
(a)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}&∀x{∃y(鼻yx&長y)→象x}
(b)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y) & ∃y(鼻yx&長y)→象x}
に於いて、
(a)=(b) である。
然るに、
(15)
Pであるときまたそのときに限ってQ(Q if and only if P)を主張することは、PならばQと、QならばPを主張することにほかならない。
すなわち記号で書けば、
(P→Q)&(Q→P)
である。しかしこの複合的表現を用ゐるよりは、
P⇔Q
と書くのが便利であろう(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、38頁)。
従って、
(14)(15)により、
(16)
P⇔Q は、
(P→Q)&(Q→P) の、「代はり」であるため、
(a)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}&∀x{∃y(鼻yx&長y)→象x}
(b)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y) & ∃y(鼻yx&長y)→象x}
(c)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)}
に於いて、
(a)=(b)=(c) である。
従って、
(16)により、
(17)
1 (1) 象が鼻は長い。 A
1 (〃) ∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)} A
1 (2) 象a⇔∃y(鼻ya&長y) 1UE
1 (3) 象a→∃y(鼻ya&長y)&
∃y(鼻ya&長y)→ 象a 4Df.⇔
1 (4) ∃y(鼻ya&長y)→ 象a 4&E
5 (5) ~象a A
15 (6) ~∃y(鼻ya&長y) 45MTT
1 (7) ~象a→~∃y(鼻ya&長y) 56CP
1 (8)∀x{~象a→~∃y(鼻ya&長y)} 7UI
従って、
(04)(17)により、
(18)
1 (1)象が鼻は長い。 A
1 (〃)象以外の鼻は長くない。 A
1 (〃)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)} A
2 (2)∀x( 兎x→~象x) A
2 (〃)兎は象ではない。 A
1 (3) ~象a→~∃y(鼻ya&長y) 1UE
2 (4) 兎a→~象a 2UE
5(5) 兎a A
25(6) ~象a 45
125(7) ~∃y(鼻ya&長y) 36MPP
125(8) ∀y~(鼻ya&長y) 7量化子の関係
125(9) ~(鼻ba&長b) 8UE
125(ア) ~鼻ba∨~長b ド・モルガンの法則
125(イ) 鼻ba→~長b ア含意の定義
125(ウ) ∀y(鼻ya→~長y) イUI
12 (エ) 兎a→∀y(鼻ya→~長y) 5ウCP
12 (オ)∀x{ 兎x→∀y(鼻yx→~長y)} エUI
12 (〃)すべてのxについて{xが兎であるならば、すべてのyについて(yがxの鼻であるならば、yは長くない)}。 エUI
12 (〃)xが兎であって、yがxの鼻であるならば、yは長くない。 エUI
といふ「計算」の、
1 (1)象が鼻は長い。 A
1 (〃)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)} A
といふ「仮定」を、
1 (1) 象が鼻は長い。 A
1 (〃) ∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)} A
といふ「仮定」に、「差し替へ」たとしても、「結論」は「同じ」である。
従って、
(12)(18)により、
(19)
(1)象が鼻は長い。然るに、
(2)兎は象ではない。故に、
(3)兎の鼻は長くない。
といふ「推論(三段論法)」を行ひたいのであれば、
(1)象が鼻は長い。
といふ「日本語」は、
(1)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)}
(〃)すべてのxについて{xが象であるならば、そのときに限って、あるyはxの鼻であって、yは長い}。
といふ風に、「翻訳」することになる。
然るに、
(01)(16)により、
(20)
1 (1)象が鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
1 (2) 象a⇔∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
1 (3) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∃y(鼻ya&長y)→象a&∀z(~鼻za→~長z) 2Df.⇔
1 (4) 象a→∃y(鼻ya&長y) 3&E
1 (5) 象a&∀z(~鼻za→~長z) 3&E
1 (6) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 45&I
1 (7)∀x{象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 6UI
従って、
(01)(20)により、
(21)
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)兎の耳は長くいが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
3 (3)ある兎は象である。 A
3 (〃)∃x(兎x&象x) A
3 (〃)あるxは兎であって象である。 A
1 (4) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
2 (5) 兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 1UE
6 (6) 兎a&象a A
6 (7) 兎a 6&E
6 (8) 象a 6&E
1 6 (9) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 47MPP
2 6 (ア) ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 58MPP
1 6 (イ) ∃y(鼻ya&長y) 9&E
2 6 (ウ) ∃y(耳ya&長y) ア&E
エ (エ) 鼻ba&長b A
オ(オ) 耳ba&長b A
1 6 (カ) ∀z(~鼻za→~長z) 9&E
1 6 (キ) ~鼻ba→~長b カUE
2 6 (ク) ∀z(耳za→~鼻za) ア&E
2 6 (ケ) 耳ba→~鼻ba クUE
オ (コ) 耳ba オ&E
2 6オ (サ) ~鼻ba ケコMPP
12 6オ (シ) ~長b キサコMPP
オ (ス) 長b オ&E
12 6オ (セ) 長b&~長b シス&I
12 6 (ソ) 長b&~長b ウオセEE
123 (タ) 長b&~長b 36ソEE
12 (チ)~∃x(兎x&象x) 3タRAA
12 (ツ)∀x~(兎x&象x) チ量化子の関係
12 (テ) ~(兎a&象a) ツUE
12 (ト) ~兎a∨~象a テ、ド・モルガンの法則
12 (ナ) 兎a→~象a ト含意の定義
12 (ニ)∀x(兎x→~象x) ナUI
12 (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。 ナUI
12 (〃)兎は象ではない。 ナUI
といふ「計算」の、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
といふ「仮定」を、
1 (1)象が鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
といふ「仮定」に、「差し替へ」たとしても、「結論」は「同じ」である。
従って、
(03)(21)により、
(22)
(1)象が鼻が長い。然るに、
(2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。故に、
(3)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」を行ひたいのであれば、
(1)象が鼻が長い。
といふ「日本語」は、
(1)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ風に、「翻訳」することになる。
然るに、
(23)
(1)象が鼻は長い。然るに、
(2)兎は象ではない。故に、
(3)兎の鼻は長くない。
といふ「推論(三段論法)」や、
(1)象が鼻が長い。然るに、
(2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。故に、
(3)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」は、明らかに、「妥当(Valid)」である。
然るに、
(24)
(1)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)}。然るに、
(2)∀x(兎x→~象x)。故に、
(3)∀x{兎x→∀y(鼻yx→~長y)}。
といふ「推論(三段論法)」や、
(1)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。然るに、
(2)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}。故に、
(3)∀x(兎x→~象x)。
といふ「推論(三段論法)」も、「妥当(Valid)」である。
従って、
(18)(20)(23)(24)により、
(25)
(1)象が鼻は長い。
(2)兎は象ではない。
(3)兎の鼻は長くない。
といふ「日本語」が、
(1)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)}。
(2)∀x(兎x→~象x)。
(3)∀x{兎x→∀y(鼻yx→~長y)}。
といふ「述語論理」に、対応せず、
(1)象は鼻が長い。
(2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。
(3)兎は象ではない。
といふ「日本語」が、、
(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(2)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}。
(3)∀x(兎x→~象x)。
といふ「述語論理」に、対応しない。
といふことは、有り得ない。と、言ふべきである。
然るに、
(01)により、
(26)
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、そのyは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
従って、
(26)により、
(27)
(1)∀x{象x→
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、
といふ風に、最初に、言明してゐるため、
(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、そのyは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふ「文」は、「最初に、その文の内容の範囲を、象に、限定してゐる」。
然るに、
(28)
(Ⅰ)象が鼻が長い。
(〃)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y&)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyがxの鼻であって、yが長く、xが象でないならば、あるyはxの鼻であって、そのyは長くなく、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
従って、
(28)により、
(29)
(Ⅰ)∀x{象x⇔
(〃)∀x{象x→ & ~象x→
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、& xが象でないならば、
といふ風に、最初に、言明してゐるため、
(Ⅰ)象が鼻が長い。
(〃)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y&)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyがxの鼻であって、yが長く、xが象でないならば、あるyはxの鼻であって、そのyは長くなく、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふ「文」は、「最初に、その文の内容の範囲を、象に、限定してゐる」とは、言へない。
然るに、
(30)
「は」の基本的な性質は、主題を表すことです。主題というのは文の最初にあって、その文で述べる内容の範囲を限定するものです。
(白川博之 監修、中上級を教える人のための、日本語文法ハンドブック、2001年、314頁)
従って、
(26)~(30)により、
(31)
主題というのは文の最初にあって、その文で述べる内容の範囲を限定するものです。
といふ「定義」からすれば、
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、そのyは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふ「日本語」に於いて、「象は」は、「主題は」であるが、
(Ⅰ)象が鼻が長い。
(〃)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y&)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyがxの鼻であって、yが長く、xが象でないならば、あるyはxの鼻であって、そのyは長くなく、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことは
といふ「日本語」に於いて、「象が」は、「主題が」ではない。
然るに、
(32)
主題というのは文の最初にあって、その文で述べる内容の範囲を限定するものです。
といふのであれば、
① 象は鼻は長い。
② Elephants have long noses.
に於いて、
① だけでなく、
② であっても、
② Elephants は、文の最初にあって、その文で述べる内容の範囲を、「Elephants」に限定してゐる。
はずである。
従って、
(33)
① 象は鼻は長い。
① Elephants have long noses.
に於いて、
①「象は」が主題であるならば、
①「Elephants」も、主題である。
然るに、
(34)
① Elephants have long noses. の、
① Elephants を、「強く発音する(強調)」する場合を、
② ELEPHANTS have long noses.
といふ風に、書くことにする。
然るに、
(35)
〔63〕a.TOM sent Mary flowers.
b.Tom SENT Mary flowers.
c.Tom sent MARY flowers.
d.Tom sent Mary FLOWERS.
"Tom sent Mary flowers.”(トムはメアリーに花を送った)という文は、四つの単語からできていますが、どの単語を強調して発音するかによって少しずつ意味が違ってきます。
〔63〕では、強調して発音される単語は全部大文字で示してあります。
Tom を強調して発音すれば、「他の誰でもないトムがメアリーに花を送った」という意味になります。つまり、主語として、
「トム」という人間が他の人間と対比されているということです(町田健、チョムスキー入門、2006年、150頁)。
従って、
(34)(35)により、
(36)
① Elephants have long noses.
とはせずに、
② ELEPHANTS have long noses.
といふ風に、
② ELEPHANTS
を「強調(強く発音)」するならば、
② ELEPHANTS は鼻が長いが、
② ELEPHANTS 以外(の、兎や、犬や、馬)の鼻は長くない。
といふ、ことになる。
従って、
(34)(35)(36)により、
(37)
① Elephants have long noses.
② ELEPHANTS have long noses.
とはせずに、
③ ELEPHANTS have long NOSES.
といふ風に、
③ ELEPHANTS と NOSES
を「強調(強く発音)」するならば、
③ ELEPHANTS は鼻が長いが、
③ ELEPHANTS 以外(の、兎や、犬や、馬)の鼻は長くなく、
③ ELEPHANTS の鼻以外(の、耳や、目や、口)は長くない。
といふ、ことになる。
従って、
(01)~(37)により、
(38)
① 象は鼻は長い。
① Elephants have long noses.
② 象が鼻は長い。
② ELEPHANTS have long noses.
③ 象が鼻が長い。
③ ELEPHANTS have long NOSES.
といふ「日本語と英語」は、それぞれ、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y&)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)}。
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y&)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「述語論理」に、対応する。
従って、
(38)により、
(39)
①「象は・鼻は」は、「Elephants・noses」に対応し、
②「象が・鼻は」は、「ELEPHANTS・noses」に対応し、
③「象が・鼻が」は、「ELEPHANTS・NOSES」に対応する。
従って、
(34)(35)(39)により、
(40)
「_は」に対する、
「_が」は、「強調形」である。
然るに、
(41)
「_は」は、「清音」であって、
「_が」は、「濁音」である。
従って、
(40)(41)により、
(42)
「_は(清音)」に対する、
「_が(濁音)」が、「強調形」である。
然るに、
(43))
清音の方は、小さくきれいで速い感じで、コロコロと言うと、ハスの上を水玉がころがるような時の形容である。ゴロゴロと言うと、大きく荒い感じで、力士が土俵でころがる感じである(金田一春彦、日本語(上)、1988年、131頁)。
(44)
もし濁音を発音するときの物理的・身体的な口腔の膨張によって「濁音=大きい」とイメージがつくられているのだとしたら、面白いですね。この仮説が正しいとすると、なぜ英語話者や中国語話者も濁音に対して「大きい」というイメージを持っているか説明がつきます(川原繁人、音とことばの不思議な世界、2015年、13頁)。
従って、
(42)(43)(44)により、
(45)
推測ではなく、事実として、
「_は(清音)」に対する、
「_が(濁音)」が、「強調形」である。
従って、
(34)~(45)により、
(46)
① 象は鼻は長い。
① Elephants have long noses.
② 象が鼻は長い。
② ELEPHANTS have long noses.
③ 象が鼻が長い。
③ ELEPHANTS have long NOSES.
といふ「日本語と英語」は、それぞれ、必然的に、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y&)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)}。
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y&)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「述語論理」に、対応する。
平成30年12月08日、毛利太。
(b)『返り点』については、『「返り点」の「付け方」を教へます(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post_3.html)』他をお読み下さい。
(01)
もう一度、書くものの、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
3 (3)ある兎は象である。 A
3 (〃)∃x(兎x&象x) A
3 (〃)あるxは兎であって象である。 A
1 (4) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
2 (5) 兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 1UE
6 (6) 兎a&象a A
6 (7) 兎a 6&E
6 (8) 象a 6&E
1 6 (9) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 47MPP
2 6 (ア) ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 58MPP
1 6 (イ) ∃y(鼻ya&長y) 9&E
2 6 (ウ) ∃y(耳ya&長y) ア&E
エ (エ) 鼻ba&長b A
オ(オ) 耳ba&長b A
1 6 (カ) ∀z(~鼻za→~長z) 9&E
1 6 (キ) ~鼻ba→~長b カUE
2 6 (ク) ∀z(耳za→~鼻za) ア&E
2 6 (ケ) 耳ba→~鼻ba クUE
オ (コ) 耳ba オ&E
2 6オ (サ) ~鼻ba ケコMPP
12 6オ (シ) ~長b キサコMPP
オ (ス) 長b オ&E
12 6オ (セ) 長b&~長b シス&I
12 6 (ソ) 長b&~長b ウオセEE
123 (タ) 長b&~長b 36ソEE
12 (チ)~∃x(兎x&象x) 3タRAA
12 (ツ)∀x~(兎x&象x) チ量化子の関係
12 (テ) ~(兎a&象a) ツUE
12 (ト) ~兎a∨~象a テ、ド・モルガンの法則
12 (ナ) 兎a→~象a ト含意の定義
12 (ニ)∀x(兎x→~象x) ナUI
12 (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。 ナUI
12 (〃)兎は象ではない。 ナUI
従って、
(01)により、
(02)
(1)象は鼻が長い。
(2)兎は耳が長いが、兎の耳は鼻ではない。
(3)ある兎は象である。
といふ風に「仮定」すると、
(タ)の行で、「矛盾」が生じるため、
(1)と(2)を、「否定」しないならば、「背理法」により、
(3)ある兎は象である。
といふ「仮定」が「否定」され、その「結果」として、
(3)兎は象ではない。
といふ「結論」を得ることになる。
従って、
(02)により、
(03)
(1)象は鼻が長い。然るに、
(2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。故に、
(3)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」を行ひたいのであれば、
(1)象は鼻が長い。
といふ「日本語」は、
(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ風に、「翻訳」することになる。
然るに、
(04)
1 (1)象以外の鼻は長くない。 A
1 (〃)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)} A
2 (2)∀x( 兎x→~象x) A
2 (〃)兎は象ではない。 A
1 (3) ~象a→~∃y(鼻ya&長y) 1UE
2 (4) 兎a→~象a 2UE
5(5) 兎a A
25(6) ~象a 45
125(7) ~∃y(鼻ya&長y) 36MPP
125(8) ∀y~(鼻ya&長y) 7量化子の関係
125(9) ~(鼻ba&長b) 8UE
125(ア) ~鼻ba∨~長b ド・モルガンの法則
125(イ) 鼻ba→~長b ア含意の定義
125(ウ) ∀y(鼻ya→~長y) イUI
12 (エ) 兎a→∀y(鼻ya→~長y) 5ウCP
12 (オ)∀x{ 兎x→∀y(鼻yx→~長y)} エUI
12 (〃)すべてのxについて{xが兎であるならば、すべてのyについて(yがxの鼻であるならば、yは長くない)}。 エUI
12 (〃)xが兎であって、yがxの鼻であるならば、yは長くない。 エUI
12 (〃)兎の鼻は長くない。 エUI
従って、
(04)により、
(05)
(1)象以外の鼻は長くない。
(2)兎は象ではない。
といふ風に、「仮定」すると、当然ではあるが、
(3)兎の鼻は長くない。
といふ「結論」を得ることになる。
然るに、
(06)
{象、兎、猫、犬、馬}を、「変域」とするならば、事実として、
{象}以外の鼻は長くない。
然るに、
(07)
{象}以外の鼻は長くない。
といふことは、
{象が}鼻は長い。
といふことである。
従って、
(04)(07)により、
(08)
1 (1)象が鼻は長い。 A
1 (〃)象以外の鼻は長くない。 A
1 (〃)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)} A
である。
従って、
(05)~(08)により、
(09)
(1)象が鼻は長い。然るに、
(2)兎は象ではない。故に、
(3)兎の鼻は長くない。
といふ「推論(三段論法)」を行ひたいのであれば、
(1)象が鼻は長い。
といふ「日本語」は、
(1)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)}。
といふ風に、「翻訳」することになる。
然るに、
(10)
(a)
1 (1)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)} A
1 (2) ~象a→~∃y(鼻ya&長y) UE
3 (3) ~象a A
4(4) ∃y(鼻yx&長y) A
13 (5) ~∃y(鼻ya&長y) 23MPP
134(6) ∃y(鼻ya&長y)&
~∃y(鼻ya&長y) 45&I
1 4(7) ~~象a 36RAA
1 4(8) 象a 7DN
1 (9) ∃y(鼻yx&長y)→象a 48CP
1 (ア)∀x{ ∃y(鼻yx&長y)→象x} 9UI
(b)
1 (1)∀x{ ∃y(鼻yx&長y)→象x} A
1 (2) ∃y(鼻ya&長y)→象a 1UE
3 (3) ∃y(鼻ya&長y) A
4(4) ~象a A
13 (5) 象a 23MPP
134(6) ~象a&象a 45&I
1 4(7) ~∃y(鼻ya&長y) 36RAA
1 (8) ~象a→~∃y(鼻ya&長y) 47CP
1 (9)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)} 8UI
従って、
(10)により、
(11)
(a)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)}。
(b)∀x{ ∃y(鼻yx&長y)→ 象x}。
といふ「対偶」に於いて、
(a)=(b) である。
従って、
(09)(10)(11)により、
(12)
(1)象が鼻は長い。然るに、
(2)兎は象ではない。故に、
(3)兎の鼻は長くない。
といふ「推論(三段論法)」を行ひたいのであれば、
(1)象が鼻は長い。
といふ「日本語」は、
(1)∀x{∃y(鼻yx&長y)→象x}。
(〃)すべてのxについて{あるyがxの鼻であって、yが長いのであれば、xは象である}。
といふ風に、「翻訳」することになる。
然るに、
(13)
(a)
1(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}&∀x{∃y(鼻yx&長y)→象x} A
1(2)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)} 1&E
1(3) 象a→∃y(鼻ya&長y) 2UE
1(4) ∀x{∃y(鼻yx&長y)→象x} 1&E
1(5) ∃y(鼻ya&長y)→象a 4UE
1(6) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∃y(鼻ya&長y)→象a 35&I
1(7)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃y(鼻yx&長y)→象x} 6UI
(b)
1(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃y(鼻yx&長y)→象x} A
1(2) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∃y(鼻ya&長y)→象a 1UE
1(3) 象a→∃y(鼻ya&長y) 2&E
1(4)∀x{象a→∃y(鼻ya&長y)} 3UI
1(5) ∃y(鼻yx&長y)→象x 2&E
1(6) ∀x{∃y(鼻yx&長y)→象x} 5UI
1(7)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}&∀x{∃y(鼻yx&長y)→象x} 46&I
従って、
(13)により、
(14)
(a)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}&∀x{∃y(鼻yx&長y)→象x}
(b)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y) & ∃y(鼻yx&長y)→象x}
に於いて、
(a)=(b) である。
然るに、
(15)
Pであるときまたそのときに限ってQ(Q if and only if P)を主張することは、PならばQと、QならばPを主張することにほかならない。
すなわち記号で書けば、
(P→Q)&(Q→P)
である。しかしこの複合的表現を用ゐるよりは、
P⇔Q
と書くのが便利であろう(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、38頁)。
従って、
(14)(15)により、
(16)
P⇔Q は、
(P→Q)&(Q→P) の、「代はり」であるため、
(a)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}&∀x{∃y(鼻yx&長y)→象x}
(b)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y) & ∃y(鼻yx&長y)→象x}
(c)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)}
に於いて、
(a)=(b)=(c) である。
従って、
(16)により、
(17)
1 (1) 象が鼻は長い。 A
1 (〃) ∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)} A
1 (2) 象a⇔∃y(鼻ya&長y) 1UE
1 (3) 象a→∃y(鼻ya&長y)&
∃y(鼻ya&長y)→ 象a 4Df.⇔
1 (4) ∃y(鼻ya&長y)→ 象a 4&E
5 (5) ~象a A
15 (6) ~∃y(鼻ya&長y) 45MTT
1 (7) ~象a→~∃y(鼻ya&長y) 56CP
1 (8)∀x{~象a→~∃y(鼻ya&長y)} 7UI
従って、
(04)(17)により、
(18)
1 (1)象が鼻は長い。 A
1 (〃)象以外の鼻は長くない。 A
1 (〃)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)} A
2 (2)∀x( 兎x→~象x) A
2 (〃)兎は象ではない。 A
1 (3) ~象a→~∃y(鼻ya&長y) 1UE
2 (4) 兎a→~象a 2UE
5(5) 兎a A
25(6) ~象a 45
125(7) ~∃y(鼻ya&長y) 36MPP
125(8) ∀y~(鼻ya&長y) 7量化子の関係
125(9) ~(鼻ba&長b) 8UE
125(ア) ~鼻ba∨~長b ド・モルガンの法則
125(イ) 鼻ba→~長b ア含意の定義
125(ウ) ∀y(鼻ya→~長y) イUI
12 (エ) 兎a→∀y(鼻ya→~長y) 5ウCP
12 (オ)∀x{ 兎x→∀y(鼻yx→~長y)} エUI
12 (〃)すべてのxについて{xが兎であるならば、すべてのyについて(yがxの鼻であるならば、yは長くない)}。 エUI
12 (〃)xが兎であって、yがxの鼻であるならば、yは長くない。 エUI
といふ「計算」の、
1 (1)象が鼻は長い。 A
1 (〃)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)} A
といふ「仮定」を、
1 (1) 象が鼻は長い。 A
1 (〃) ∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)} A
といふ「仮定」に、「差し替へ」たとしても、「結論」は「同じ」である。
従って、
(12)(18)により、
(19)
(1)象が鼻は長い。然るに、
(2)兎は象ではない。故に、
(3)兎の鼻は長くない。
といふ「推論(三段論法)」を行ひたいのであれば、
(1)象が鼻は長い。
といふ「日本語」は、
(1)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)}
(〃)すべてのxについて{xが象であるならば、そのときに限って、あるyはxの鼻であって、yは長い}。
といふ風に、「翻訳」することになる。
然るに、
(01)(16)により、
(20)
1 (1)象が鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
1 (2) 象a⇔∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
1 (3) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∃y(鼻ya&長y)→象a&∀z(~鼻za→~長z) 2Df.⇔
1 (4) 象a→∃y(鼻ya&長y) 3&E
1 (5) 象a&∀z(~鼻za→~長z) 3&E
1 (6) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 45&I
1 (7)∀x{象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 6UI
従って、
(01)(20)により、
(21)
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)兎の耳は長くいが、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
3 (3)ある兎は象である。 A
3 (〃)∃x(兎x&象x) A
3 (〃)あるxは兎であって象である。 A
1 (4) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
2 (5) 兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 1UE
6 (6) 兎a&象a A
6 (7) 兎a 6&E
6 (8) 象a 6&E
1 6 (9) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 47MPP
2 6 (ア) ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 58MPP
1 6 (イ) ∃y(鼻ya&長y) 9&E
2 6 (ウ) ∃y(耳ya&長y) ア&E
エ (エ) 鼻ba&長b A
オ(オ) 耳ba&長b A
1 6 (カ) ∀z(~鼻za→~長z) 9&E
1 6 (キ) ~鼻ba→~長b カUE
2 6 (ク) ∀z(耳za→~鼻za) ア&E
2 6 (ケ) 耳ba→~鼻ba クUE
オ (コ) 耳ba オ&E
2 6オ (サ) ~鼻ba ケコMPP
12 6オ (シ) ~長b キサコMPP
オ (ス) 長b オ&E
12 6オ (セ) 長b&~長b シス&I
12 6 (ソ) 長b&~長b ウオセEE
123 (タ) 長b&~長b 36ソEE
12 (チ)~∃x(兎x&象x) 3タRAA
12 (ツ)∀x~(兎x&象x) チ量化子の関係
12 (テ) ~(兎a&象a) ツUE
12 (ト) ~兎a∨~象a テ、ド・モルガンの法則
12 (ナ) 兎a→~象a ト含意の定義
12 (ニ)∀x(兎x→~象x) ナUI
12 (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。 ナUI
12 (〃)兎は象ではない。 ナUI
といふ「計算」の、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
といふ「仮定」を、
1 (1)象が鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
といふ「仮定」に、「差し替へ」たとしても、「結論」は「同じ」である。
従って、
(03)(21)により、
(22)
(1)象が鼻が長い。然るに、
(2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。故に、
(3)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」を行ひたいのであれば、
(1)象が鼻が長い。
といふ「日本語」は、
(1)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ風に、「翻訳」することになる。
然るに、
(23)
(1)象が鼻は長い。然るに、
(2)兎は象ではない。故に、
(3)兎の鼻は長くない。
といふ「推論(三段論法)」や、
(1)象が鼻が長い。然るに、
(2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。故に、
(3)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」は、明らかに、「妥当(Valid)」である。
然るに、
(24)
(1)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)}。然るに、
(2)∀x(兎x→~象x)。故に、
(3)∀x{兎x→∀y(鼻yx→~長y)}。
といふ「推論(三段論法)」や、
(1)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。然るに、
(2)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}。故に、
(3)∀x(兎x→~象x)。
といふ「推論(三段論法)」も、「妥当(Valid)」である。
従って、
(18)(20)(23)(24)により、
(25)
(1)象が鼻は長い。
(2)兎は象ではない。
(3)兎の鼻は長くない。
といふ「日本語」が、
(1)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)}。
(2)∀x(兎x→~象x)。
(3)∀x{兎x→∀y(鼻yx→~長y)}。
といふ「述語論理」に、対応せず、
(1)象は鼻が長い。
(2)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。
(3)兎は象ではない。
といふ「日本語」が、、
(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(2)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}。
(3)∀x(兎x→~象x)。
といふ「述語論理」に、対応しない。
といふことは、有り得ない。と、言ふべきである。
然るに、
(01)により、
(26)
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、そのyは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
従って、
(26)により、
(27)
(1)∀x{象x→
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、
といふ風に、最初に、言明してゐるため、
(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、そのyは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふ「文」は、「最初に、その文の内容の範囲を、象に、限定してゐる」。
然るに、
(28)
(Ⅰ)象が鼻が長い。
(〃)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y&)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyがxの鼻であって、yが長く、xが象でないならば、あるyはxの鼻であって、そのyは長くなく、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
従って、
(28)により、
(29)
(Ⅰ)∀x{象x⇔
(〃)∀x{象x→ & ~象x→
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、& xが象でないならば、
といふ風に、最初に、言明してゐるため、
(Ⅰ)象が鼻が長い。
(〃)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y&)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyがxの鼻であって、yが長く、xが象でないならば、あるyはxの鼻であって、そのyは長くなく、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふ「文」は、「最初に、その文の内容の範囲を、象に、限定してゐる」とは、言へない。
然るに、
(30)
「は」の基本的な性質は、主題を表すことです。主題というのは文の最初にあって、その文で述べる内容の範囲を限定するものです。
(白川博之 監修、中上級を教える人のための、日本語文法ハンドブック、2001年、314頁)
従って、
(26)~(30)により、
(31)
主題というのは文の最初にあって、その文で述べる内容の範囲を限定するものです。
といふ「定義」からすれば、
(1)象は鼻が長い。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、そのyは長く、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことはない}。
といふ「日本語」に於いて、「象は」は、「主題は」であるが、
(Ⅰ)象が鼻が長い。
(〃)∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y&)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、あるyがxの鼻であって、yが長く、xが象でないならば、あるyはxの鼻であって、そのyは長くなく、あるzがxの鼻でなく、尚且つ、長い。といふことは
といふ「日本語」に於いて、「象が」は、「主題が」ではない。
然るに、
(32)
主題というのは文の最初にあって、その文で述べる内容の範囲を限定するものです。
といふのであれば、
① 象は鼻は長い。
② Elephants have long noses.
に於いて、
① だけでなく、
② であっても、
② Elephants は、文の最初にあって、その文で述べる内容の範囲を、「Elephants」に限定してゐる。
はずである。
従って、
(33)
① 象は鼻は長い。
① Elephants have long noses.
に於いて、
①「象は」が主題であるならば、
①「Elephants」も、主題である。
然るに、
(34)
① Elephants have long noses. の、
① Elephants を、「強く発音する(強調)」する場合を、
② ELEPHANTS have long noses.
といふ風に、書くことにする。
然るに、
(35)
〔63〕a.TOM sent Mary flowers.
b.Tom SENT Mary flowers.
c.Tom sent MARY flowers.
d.Tom sent Mary FLOWERS.
"Tom sent Mary flowers.”(トムはメアリーに花を送った)という文は、四つの単語からできていますが、どの単語を強調して発音するかによって少しずつ意味が違ってきます。
〔63〕では、強調して発音される単語は全部大文字で示してあります。
Tom を強調して発音すれば、「他の誰でもないトムがメアリーに花を送った」という意味になります。つまり、主語として、
「トム」という人間が他の人間と対比されているということです(町田健、チョムスキー入門、2006年、150頁)。
従って、
(34)(35)により、
(36)
① Elephants have long noses.
とはせずに、
② ELEPHANTS have long noses.
といふ風に、
② ELEPHANTS
を「強調(強く発音)」するならば、
② ELEPHANTS は鼻が長いが、
② ELEPHANTS 以外(の、兎や、犬や、馬)の鼻は長くない。
といふ、ことになる。
従って、
(34)(35)(36)により、
(37)
① Elephants have long noses.
② ELEPHANTS have long noses.
とはせずに、
③ ELEPHANTS have long NOSES.
といふ風に、
③ ELEPHANTS と NOSES
を「強調(強く発音)」するならば、
③ ELEPHANTS は鼻が長いが、
③ ELEPHANTS 以外(の、兎や、犬や、馬)の鼻は長くなく、
③ ELEPHANTS の鼻以外(の、耳や、目や、口)は長くない。
といふ、ことになる。
従って、
(01)~(37)により、
(38)
① 象は鼻は長い。
① Elephants have long noses.
② 象が鼻は長い。
② ELEPHANTS have long noses.
③ 象が鼻が長い。
③ ELEPHANTS have long NOSES.
といふ「日本語と英語」は、それぞれ、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y&)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)}。
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y&)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「述語論理」に、対応する。
従って、
(38)により、
(39)
①「象は・鼻は」は、「Elephants・noses」に対応し、
②「象が・鼻は」は、「ELEPHANTS・noses」に対応し、
③「象が・鼻が」は、「ELEPHANTS・NOSES」に対応する。
従って、
(34)(35)(39)により、
(40)
「_は」に対する、
「_が」は、「強調形」である。
然るに、
(41)
「_は」は、「清音」であって、
「_が」は、「濁音」である。
従って、
(40)(41)により、
(42)
「_は(清音)」に対する、
「_が(濁音)」が、「強調形」である。
然るに、
(43))
清音の方は、小さくきれいで速い感じで、コロコロと言うと、ハスの上を水玉がころがるような時の形容である。ゴロゴロと言うと、大きく荒い感じで、力士が土俵でころがる感じである(金田一春彦、日本語(上)、1988年、131頁)。
(44)
もし濁音を発音するときの物理的・身体的な口腔の膨張によって「濁音=大きい」とイメージがつくられているのだとしたら、面白いですね。この仮説が正しいとすると、なぜ英語話者や中国語話者も濁音に対して「大きい」というイメージを持っているか説明がつきます(川原繁人、音とことばの不思議な世界、2015年、13頁)。
従って、
(42)(43)(44)により、
(45)
推測ではなく、事実として、
「_は(清音)」に対する、
「_が(濁音)」が、「強調形」である。
従って、
(34)~(45)により、
(46)
① 象は鼻は長い。
① Elephants have long noses.
② 象が鼻は長い。
② ELEPHANTS have long noses.
③ 象が鼻が長い。
③ ELEPHANTS have long NOSES.
といふ「日本語と英語」は、それぞれ、必然的に、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y&)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)}。
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y&)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「述語論理」に、対応する。
平成30年12月08日、毛利太。
2018年12月5日水曜日
「象の鼻」と「馬の頭」と「述語論理」。
(a)『返り点と括弧』については、『「返り点」と「括弧」(略8)(https://kannbunn.blogspot.com/2018/09/blog-post_17.html)』他もお読み下さい。
(b)『返り点』については、『「返り点」の「付け方」を教へます(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post_3.html)』他をお読み下さい。
(01)
① ∀x(馬x→動x)。
② ∀x{∃y(馬y&頭xy)→∃y(動y&頭xy)}。
といふ「述語論理」は、それぞれ、
① すべてのxについて{xが馬であるならが、xは動物である}。
② すべてのxについて{xが馬である所のあるyの頭であるならば、xは動物である所のあるyの頭である}。
といふ「日本語」に、対応する。
然るに、
(02)
① すべての馬は動物である。
② すべての馬の頭は動物の頭である。
といふことは、
① いかなるxであっても{xが馬であるならが、xは動物である}。
② いかなるxであっても{xが馬である所のあるyの頭であるならば、xは動物である所のあるyの頭である}。
といふことである。
従って、
(01)(02)により、
(03)
① ∀x(馬x→動x)。
② ∀x{∃y(馬y&頭xy)→∃y(動y&頭xy)}。
といふ「述語論理」は、それぞれ、
① いかなるxであっても{xが馬であるならが、xは動物である}。
② いかなるxであっても{xが馬である所のあるyの頭であるならば、xは動物である所のあるyの頭である}。
といふ「日本語」に、対応する。
然るに、
(04)
ド・モルガンが明らかに健全であるにもかかわらず、伝統的論理学のなかでは取り扱うことができなかった論証として挙げた、有名な、また簡単な論証がある。
(1)すべての馬は動物である。故にすべての馬の頭は動物の頭である。
― 10行、中略、―
123 ∀x(馬x→動x)├ ∀x{∃y(馬y&頭xy)→∃y(動y&頭xy)}
1 (1) ∀x(馬x→動x) A
2 (2) ∃y(馬y&頭ay) A
3(3) 馬b&頭ab A
3(4) 馬b 3&E
3(5) 頭ab 3&E
1 (6) 馬b→動b 1UE
1 3(7) 動b 46MPP
1 3(8) 動b&頭ab 57&I
1 3(9) ∃y(動y&頭ay) 8EI
12 (ア) ∃y(動y&頭ay) 239EE
1 (イ) ∃y(馬y&頭ay)→∃y(動y&頭ay) 2アCP
1 (ウ)∀x{∃y(馬y&頭xy)→∃y(動y&頭xy)} イUI
(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、167頁改)
従って、
(01)~(04)により、
(05)
(1)All horses are animals; therefore all horses' heads are animals' heads.
(〃)すべての馬は動物である。故にすべての馬の頭は動物の頭である。
といふ「論証」は、「英語」としても、「日本語」としても、「述語論理」としても、「妥当(Valid)」である。
(06)
① ∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x}。
② ∀y{兎y→~象y}。
③ ∀x{∃y( 兎y&鼻xy)→~長x}。
といふ「述語論理」は、
① いかなるxであっても{xが、ある象ではない(動物)である所のyの鼻であるならば、xは長くない}。
② いかなるyであっても{yが兎であるならば、yは象ではない}。
③ いかなるxであっても{xが、ある兎である所のyの鼻であるならば、xは長くない}。
といふ「日本語」に、対応する。
然るに、
(06)
① いかなるxであっても{xが、ある象ではない所のyの鼻であるならば、xは長くない}。
② いかなるyであっても{yが兎であるならば、yは象ではない}。
③ いかなるxであっても{xが、ある兎である所のyの鼻であるならば、xは長くない}。
といふことは、要するに、
① 鼻は象が長い。
② すべての兎は象ではない。
③ すべての兎の鼻は長くない。
といふことである。
cf.
① サンマは目黒が美味い(サンマは目黒に限る)。⇔
① ∀x{∃y(~目黒y&サンマxy)→~美味x}。⇔
① いかなるxであっても{xが、目黒ではない所のyのサンマであるならば、xは美味くない}。
然るに、
(08)
1 (1)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x} A
2 (2)∀y{兎y→~象y} A
3 (3)∃y(兎y&鼻ay) A
1 (4) ∃y(~象y&鼻ay)→~長a 1UE
2 (5) 兎b→~象b 2UE
6(6) 兎b&鼻ab A
6(7) 兎b 6&E
12 6(8) ~象b 57MPP
6(9) 鼻ab 7&E
12 6(ア) ~象b&鼻ab 89&I
12 6(イ) ∃y(~象y&鼻ay) アEI
123 (ウ) ∃y(~象y&鼻ay) 36イEE
123 (エ) ~長a 4ウMPP
12 (オ) ∃y( 兎y&鼻ay)→~長a 3エCP
12 (カ)∀x{∃y( 兎y&鼻xy)→~長x} オUI
然るに、
(09)
(ウ)の行において、EEが正しく使われていることを知るためには、
(イ)の行をしらべてみる。そこにおいてえられている結論は「b」を含んでいない。もちろん、
(イ)が依存している三つの仮定のうち、代表的選言項である(6)は「b」を含んでいるが、
(1)と(2)は、両方とも、「b」を含んでいない。こうして制限はまもられているのである。
(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、148頁改)
cf.
UIの適用の際に、「注意」をすれば、良いだけなので、実際には、
12 6(ア) ~象b&鼻ab 89&I
123 (イ) ~象b&鼻ab 36ア
123 (ウ) ∃y(~象y&鼻ay) 36イEE
であっても、「問題」は、生じない。
従って、
(01)~(09)により、
(10)
(a)
1 (1) ∀x(馬x→動x) A
2 (2) ∃y(馬y&頭ay) A
3(3) 馬b&頭ab A
3(4) 馬b 3&E
3(5) 頭ab 3&E
1 (6) 馬b→動b 1UE
1 3(7) 動b 46MPP
1 3(8) 動b&頭ab 57&I
1 3(9) ∃y(動y&頭ay) 8EI
12 (ア) ∃y(動y&頭ay) 239EE
1 (イ) ∃y(馬y&頭ay)→∃y(動y&頭ay) 2アCP
1 (ウ)∀x{∃y(馬y&頭xy)→∃y(動y&頭xy)} イUI
といふ、E.J.レモンが行った「計算」を、「手本」にして、私が行った、
(b)
1 (1)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x} A
2 (2)∀y{兎y→~象y} A
3 (3)∃y(兎y&鼻ay) A
1 (4) ∃y(~象y&鼻ay)→~長a 1UE
2 (5) 兎b→~象b 2UE
6(6) 兎b&鼻ab A
6(7) 兎b 6&E
12 6(8) ~象b 57MPP
6(9) 鼻ab 7&E
12 6(ア) ~象b&鼻ab 89&I
12 6(イ) ∃y(~象y&鼻ay) アEI
123 (ウ) ∃y(~象y&鼻ay) 36イEE
123 (エ) ~長a 4ウMPP
12 (オ) ∃y( 兎y&鼻ay)→~長a 3エCP
12 (カ)∀x{∃y( 兎y&鼻xy)→~長x} オUI
といふ「計算」に、「マチガイ」が無いため、
(1)すべての馬は動物である。故にすべての馬の頭は動物の頭である。
(2)鼻は象が長い。然るに、すべての兎は象ではない。故に、すべての兎の鼻は長くない。
といふ「論証」は、「日本語」としても、「述語論理」としても、「妥当(Valid)」である。
仮に、
(12)
さうではなく、
(a)の「計算」を、「手本」にして行った、
(b)の「計算」に、「マチガイ」があるならば、
(2)鼻は象が長い。然るに、すべての兎は象ではない。故に、すべての兎の鼻は長くない。
といふ「論証」は、「日本語」としては、「妥当(Valid)」であるが、「述語論理」としては「妥当(Valid)」ではない。
といふことになり、それ故、残念なことに、「鼻は象が長い。」といふ「日本語」は、「非論理的な表現」である。といふ風に、言はざるを得ない。
平成30年12月01日、毛利太。
(b)『返り点』については、『「返り点」の「付け方」を教へます(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post_3.html)』他をお読み下さい。
(01)
① ∀x(馬x→動x)。
② ∀x{∃y(馬y&頭xy)→∃y(動y&頭xy)}。
といふ「述語論理」は、それぞれ、
① すべてのxについて{xが馬であるならが、xは動物である}。
② すべてのxについて{xが馬である所のあるyの頭であるならば、xは動物である所のあるyの頭である}。
といふ「日本語」に、対応する。
然るに、
(02)
① すべての馬は動物である。
② すべての馬の頭は動物の頭である。
といふことは、
① いかなるxであっても{xが馬であるならが、xは動物である}。
② いかなるxであっても{xが馬である所のあるyの頭であるならば、xは動物である所のあるyの頭である}。
といふことである。
従って、
(01)(02)により、
(03)
① ∀x(馬x→動x)。
② ∀x{∃y(馬y&頭xy)→∃y(動y&頭xy)}。
といふ「述語論理」は、それぞれ、
① いかなるxであっても{xが馬であるならが、xは動物である}。
② いかなるxであっても{xが馬である所のあるyの頭であるならば、xは動物である所のあるyの頭である}。
といふ「日本語」に、対応する。
然るに、
(04)
ド・モルガンが明らかに健全であるにもかかわらず、伝統的論理学のなかでは取り扱うことができなかった論証として挙げた、有名な、また簡単な論証がある。
(1)すべての馬は動物である。故にすべての馬の頭は動物の頭である。
― 10行、中略、―
123 ∀x(馬x→動x)├ ∀x{∃y(馬y&頭xy)→∃y(動y&頭xy)}
1 (1) ∀x(馬x→動x) A
2 (2) ∃y(馬y&頭ay) A
3(3) 馬b&頭ab A
3(4) 馬b 3&E
3(5) 頭ab 3&E
1 (6) 馬b→動b 1UE
1 3(7) 動b 46MPP
1 3(8) 動b&頭ab 57&I
1 3(9) ∃y(動y&頭ay) 8EI
12 (ア) ∃y(動y&頭ay) 239EE
1 (イ) ∃y(馬y&頭ay)→∃y(動y&頭ay) 2アCP
1 (ウ)∀x{∃y(馬y&頭xy)→∃y(動y&頭xy)} イUI
(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、167頁改)
従って、
(01)~(04)により、
(05)
(1)All horses are animals; therefore all horses' heads are animals' heads.
(〃)すべての馬は動物である。故にすべての馬の頭は動物の頭である。
といふ「論証」は、「英語」としても、「日本語」としても、「述語論理」としても、「妥当(Valid)」である。
(06)
① ∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x}。
② ∀y{兎y→~象y}。
③ ∀x{∃y( 兎y&鼻xy)→~長x}。
といふ「述語論理」は、
① いかなるxであっても{xが、ある象ではない(動物)である所のyの鼻であるならば、xは長くない}。
② いかなるyであっても{yが兎であるならば、yは象ではない}。
③ いかなるxであっても{xが、ある兎である所のyの鼻であるならば、xは長くない}。
といふ「日本語」に、対応する。
然るに、
(06)
① いかなるxであっても{xが、ある象ではない所のyの鼻であるならば、xは長くない}。
② いかなるyであっても{yが兎であるならば、yは象ではない}。
③ いかなるxであっても{xが、ある兎である所のyの鼻であるならば、xは長くない}。
といふことは、要するに、
① 鼻は象が長い。
② すべての兎は象ではない。
③ すべての兎の鼻は長くない。
といふことである。
cf.
① サンマは目黒が美味い(サンマは目黒に限る)。⇔
① ∀x{∃y(~目黒y&サンマxy)→~美味x}。⇔
① いかなるxであっても{xが、目黒ではない所のyのサンマであるならば、xは美味くない}。
然るに、
(08)
1 (1)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x} A
2 (2)∀y{兎y→~象y} A
3 (3)∃y(兎y&鼻ay) A
1 (4) ∃y(~象y&鼻ay)→~長a 1UE
2 (5) 兎b→~象b 2UE
6(6) 兎b&鼻ab A
6(7) 兎b 6&E
12 6(8) ~象b 57MPP
6(9) 鼻ab 7&E
12 6(ア) ~象b&鼻ab 89&I
12 6(イ) ∃y(~象y&鼻ay) アEI
123 (ウ) ∃y(~象y&鼻ay) 36イEE
123 (エ) ~長a 4ウMPP
12 (オ) ∃y( 兎y&鼻ay)→~長a 3エCP
12 (カ)∀x{∃y( 兎y&鼻xy)→~長x} オUI
然るに、
(09)
(ウ)の行において、EEが正しく使われていることを知るためには、
(イ)の行をしらべてみる。そこにおいてえられている結論は「b」を含んでいない。もちろん、
(イ)が依存している三つの仮定のうち、代表的選言項である(6)は「b」を含んでいるが、
(1)と(2)は、両方とも、「b」を含んでいない。こうして制限はまもられているのである。
(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、148頁改)
cf.
UIの適用の際に、「注意」をすれば、良いだけなので、実際には、
12 6(ア) ~象b&鼻ab 89&I
123 (イ) ~象b&鼻ab 36ア
123 (ウ) ∃y(~象y&鼻ay) 36イEE
であっても、「問題」は、生じない。
従って、
(01)~(09)により、
(10)
(a)
1 (1) ∀x(馬x→動x) A
2 (2) ∃y(馬y&頭ay) A
3(3) 馬b&頭ab A
3(4) 馬b 3&E
3(5) 頭ab 3&E
1 (6) 馬b→動b 1UE
1 3(7) 動b 46MPP
1 3(8) 動b&頭ab 57&I
1 3(9) ∃y(動y&頭ay) 8EI
12 (ア) ∃y(動y&頭ay) 239EE
1 (イ) ∃y(馬y&頭ay)→∃y(動y&頭ay) 2アCP
1 (ウ)∀x{∃y(馬y&頭xy)→∃y(動y&頭xy)} イUI
といふ、E.J.レモンが行った「計算」を、「手本」にして、私が行った、
(b)
1 (1)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x} A
2 (2)∀y{兎y→~象y} A
3 (3)∃y(兎y&鼻ay) A
1 (4) ∃y(~象y&鼻ay)→~長a 1UE
2 (5) 兎b→~象b 2UE
6(6) 兎b&鼻ab A
6(7) 兎b 6&E
12 6(8) ~象b 57MPP
6(9) 鼻ab 7&E
12 6(ア) ~象b&鼻ab 89&I
12 6(イ) ∃y(~象y&鼻ay) アEI
123 (ウ) ∃y(~象y&鼻ay) 36イEE
123 (エ) ~長a 4ウMPP
12 (オ) ∃y( 兎y&鼻ay)→~長a 3エCP
12 (カ)∀x{∃y( 兎y&鼻xy)→~長x} オUI
といふ「計算」に、「マチガイ」が無いため、
(1)すべての馬は動物である。故にすべての馬の頭は動物の頭である。
(2)鼻は象が長い。然るに、すべての兎は象ではない。故に、すべての兎の鼻は長くない。
といふ「論証」は、「日本語」としても、「述語論理」としても、「妥当(Valid)」である。
仮に、
(12)
さうではなく、
(a)の「計算」を、「手本」にして行った、
(b)の「計算」に、「マチガイ」があるならば、
(2)鼻は象が長い。然るに、すべての兎は象ではない。故に、すべての兎の鼻は長くない。
といふ「論証」は、「日本語」としては、「妥当(Valid)」であるが、「述語論理」としては「妥当(Valid)」ではない。
といふことになり、それ故、残念なことに、「鼻は象が長い。」といふ「日本語」は、「非論理的な表現」である。といふ風に、言はざるを得ない。
平成30年12月01日、毛利太。
2018年12月1日土曜日
「象が鼻は長い。」と「鼻は象が長い。」と「述語論理」。
(a)『返り点と括弧』については、『「返り点」と「括弧」(略8)(https://kannbunn.blogspot.com/2018/09/blog-post_17.html)』他もお読み下さい。
(b)『返り点』については、『「返り点」の「付け方」を教へます(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post_3.html)』他をお読み下さい。
(01)
(a)
1 (1)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x} A
1 (2) ∃y(~象y&鼻ay)→~長a 1UE
3 (3) ~象b&鼻ab →~長a A
4 (4) ∃y( 鼻ay&長a) A
5 (5) 鼻ab&長a A
5 (6) 長a 5&E
5 (7) ~~長a 6DN
3 5 (8) ~(~象b&鼻ab) 37MTT
3 5 (9) ~~象b∨~鼻ab 8ド・モルガンの法則
3 5 (ア) ~象b→~鼻ab 9含意の定義
イ(イ) ~象b A
3 5イ(ウ) ~鼻ab アイMPP
5 (エ) 鼻ab 5&E
3 5イ(オ) ~鼻ab&鼻ab ウエ&I
34 イ(カ) ~鼻ab&鼻ab 45オEE
3 イ(キ) ~∃y( 鼻ay&長a) 4カRAA
3 (ク) ~∃x( 鼻bx&長b) キ(変数は前後参照のための方便に過ぎないため。)
然るに、
(02)
3 (ク) ~∃x( 鼻bx&長b) キ(変数は前後参照のための方便に過ぎないため。)
といふ「結果」を受けての「計算」は、おそらくは、「無理」である。
然るに、
(03)
(b)
1 (1)∀x{~象x→~∃y(鼻yx& 長y)} A
1 (2) ~象a→~∃y(鼻ya& 長y) A
3 (3)∃x(~象x&鼻bx) A
4(4) ~象a&鼻ba A
4(5) ~象a 4&E
1 4(6) ~∃y(鼻ya& 長y) 25MPP
1 4(7) ∀y~(鼻ya& 長y) 6量化子の関係
1 4(8) ~(鼻ba& 長b) 7UE
1 4(9) ~鼻ba∨~長b 8ド・モルガンの法則
1 4(ア) 鼻ba→~長b 9含意の定義
4(イ) 鼻ba 4&E
1 4(ウ) ~長b アイMPP
13 (エ) ~長b 34ウEE
1 (オ) ∃x(~象x&鼻bx)→~長b 3エCP
1 (カ)∀y{∃x(~象x&鼻yx)→~長y} オUI
1 (〃)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x} オUI(変数は前後参照のための方便に過ぎないため。)
cf.
1 (1)∀x∃yFxy A
1 (2) ∃yFay 1UE
3(3) Fab A
3(4) ∃xFxb 3EI
1 (5) ∃xFxb 234EE
1 (6)∀y∃xFxy 5UI(変数は前後参照のための方便に過ぎないため。)
といふ「計算」自体は、セーフです。
従って、
(01)(02)(03)により、
(04)
(a)鼻は象が長い=∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x}。
(b)象が鼻は長い=∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)}。
に於いて、すなはち、
(a)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x}=いかなるxであっても{xがある象ではないyの鼻ならば、xは長くない}。
(b)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)}=いかなるxであっても{xが象でないならば、あるyがxの鼻であって、そのyが長い、といふことはない}。
に於いて、
(a)=(b) であることを「証明」することは、「ムズカシイ」か、「ムリ」である。
しかしながら、
(05)
次の「二つの推論」自体は、「妥当(Valid)」です。
(a)
Ⅰ (Ⅰ)鼻は象が長い。 A
Ⅰ (〃)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x} A
Ⅰ (〃)いかなるxであっても{xが、ある象ではないyの鼻であるならば、xは長くない}。 A
Ⅱ (Ⅱ)∀y{兎y→~象y} A
3 (3)∃y(兎y&鼻ay) A
Ⅰ (4) ∃y(~象y&鼻ay)→~長a ⅠUE
Ⅱ (5) 兎b→~象b ⅡUE
6(6) 兎b&鼻ab A
6(7) 兎b 6&E
ⅠⅡ 6(8) ~象b 57MPP
6(9) 鼻ab 7&E
ⅠⅡ 6(ア) ~象b&鼻ab 89&I
ⅠⅡ 6(イ) ∃y(~象y&鼻ay) アEI
ⅠⅡ3 (ウ) ∃y(~象y&鼻ay) 36イEE
ⅠⅡ3 (エ) ~長a 4ウMPP
ⅠⅡ (オ) ∃y( 兎y&鼻ay)→~長a 3エCP
ⅠⅡ (Ⅲ)∀x{∃y( 兎y&鼻xy)→~長x} オUI
ⅠⅡ (〃)いかなるxであっても{あるyが兎であって、xがyの鼻であるならば、xは長くない}。
ⅠⅡ (〃)兎の鼻は長くない。
(b)
Ⅰ (Ⅰ)象が鼻は長い。 A
Ⅰ (〃)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)} A
Ⅰ (〃)すべてのxについて{xが象でないならば、あるyがxの鼻であって、長い、といふことはない}。 A
Ⅱ (Ⅱ)∀x{兎x→~象x} A
3 (3)∃x(兎x&鼻bx) A
Ⅰ (4) ~象a→~∃y(鼻ya&長y) ⅠUE
Ⅱ (5) 兎a→~象a ⅡUE
6(6) 兎a&鼻ba A
6(7) 兎a 6&E
Ⅱ 6(8) ~象a 57MPP
ⅠⅡ 6(9) ~∃y(鼻ya&長y) 48MPP
ⅠⅡ 6(ア) ∀y~(鼻ya&長y) 9量化子の関係
ⅠⅡ 6(イ) ~(鼻ba&長b) アUE
ⅠⅡ 6(ウ) ~鼻ba∨~長b イ、ド・モルガンの法則
ⅠⅡ 6(エ) 鼻ba→~長b ウ含意の定義
6(オ) 鼻ba 6&E
ⅠⅡ 6(カ) ~長b エオMPP
ⅠⅡ3 (キ) ~長b 36カEE
ⅠⅡ (ク) ∃x(兎x&鼻bx)→~長b 3キCP
ⅠⅡ (Ⅲ)∀y{∃x(兎x&鼻yx)→~長y クUI
ⅠⅡ (〃)いかなるyであっても{あるxが兎であって、yがxの鼻であるならば、yは長くない}。
ⅠⅡ (〃)兎の鼻は長くない。
従って、
(05)により、
(06)
(Ⅰ)鼻は象が長い。然るに、
(Ⅱ)兎は象ではない。故に、
(Ⅲ)兎の鼻は長くない。
といふ「推論(三段論法)」が、成立し、尚且つ、
(07)
(Ⅰ)象が鼻は長い。然るに、
(Ⅱ)兎は象ではない。故に、
(Ⅲ)兎の鼻は長くない。
といふ「推論(三段論法)」が、成立します。
従って、
(06)(07)により、
(08)
{象の鼻、兎の鼻、麒麟の鼻}
{象の耳、兎の耳、麒麟の耳}
{象の首、兎の首、麒麟の首}
といふ「変域」に於いて、
「鼻は象が長い。」と言へることと、
「象が鼻は長い。」と言へることは、
「兎の鼻は長くない。」といふことが言へるための、「十分条件」です。
然るに、
(09)
(b)
1(1)~∃y(鼻yx&長y) A
1(2)∀y~(鼻yx&長y) 1量化子の関係
1(3) ~(鼻bx&長b) 2UE
1(4) ~鼻bx∨~鼻b 3ド・モルガンの法則
1(5) 鼻bx→~鼻b 含意の定義
1(6)∀y(鼻yx→~鼻y) 5UI
(c)
1 (1) ∀y(鼻yx→ ~長y) A
1 (2) 鼻bx→ ~長b 1UE
1 (3) ~鼻bx∨ ~長b 2含意の定義
1 (4)~~(~鼻bx∨ ~長b) 3DN
1 (5)~(~~鼻bx&~~長b) 4ドモルガンの法則
1 (6) ~(鼻bx& 長b) 5DN
7(7) ∃y(鼻yx& 長y) A
7(8) 鼻bx& 長b 7EI
17(9) ~(鼻bx&長b)&
(鼻bx&長b) 68&I
1 (ア)~∃y(鼻yx& 長y) 79RAA
従って、
(09)により、
(10)
(b)~∃y(鼻yx&長y)
(c)∀y(鼻yx→~長y)
に於いて、
(b)=(c) である。
従って、
(10)
(Ⅰ)鼻は象が長い。然るに、
(〃)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)}。然るに、
(Ⅱ)兎は象ではない。故に、
(Ⅲ)兎の鼻は長くない。
に於ける、
(〃)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)}。 は、
(〃)∀x{~象x→∀y(鼻yx→~長y)}。 と、「同じ」です。
従って、
(05)(10)により、
(11)
次の「推論」も、「妥当(Valid)」です。
Ⅰ (Ⅰ)象の鼻が長い。 A
Ⅰ (〃)∀x{~象x→∀y(鼻yx→~長y)} A
Ⅰ (〃)すべてのxについて{xが象でないならば、すべてのyについて(yがxの鼻であるならば、yは長くない)}。
Ⅱ (Ⅱ)∀x{兎x→~象x} A
3 (3)∃x(兎x&鼻bx) A
Ⅰ (4) ~象a→∀y(鼻ya→~長y) A
Ⅱ (5) 兎a→~象a ⅡUE
6(6) 兎a&鼻ba A
6(7) 兎a 6&E
Ⅱ 6(8) ~象a 57MPP
ⅠⅡ 6(9) ∀y(鼻ya→~長y) 48MPP
ⅠⅡ 6(ア) 鼻ba→~長b 9UE
6(イ) 鼻ba 6&E
ⅠⅡ 6(ウ) ~長b アイMPP
ⅠⅡ3 (エ) ~長b 36ウEE
ⅠⅡ (オ) ∃x(兎x&鼻bx)→~長b 3エCP
ⅠⅡ (カ)∀y{∃x(兎x&鼻yx)→~長y オUI
ⅠⅡ (〃)いかなるyであっても{あるxが兎であって、yがxの鼻であるならば、yは長くない}。
ⅠⅡ (〃)兎の鼻は長くない。
従って、
(11)により、
(12)
Ⅰ (Ⅰ)象の鼻が長い。 A
Ⅰ (〃)∀x{~象x→∀y(鼻yx→~長y)} A
Ⅰ (〃)すべてのxについて{xが象でないならば、すべてのyについて(yがxの鼻であるならば、yは長くない)}。
であるとして、
(Ⅰ)象の鼻が長い。然るに、
(Ⅱ)兎は象ではない。故に、
(Ⅲ)兎の鼻は長くない。
といふ「推論(三段論法)」が、成立します。
従って、
(08)(12)により、
(13)
「兎は象ではない。」といふことは、
「常識(当然の仮定)」であるため、
{象の鼻、兎の鼻、麒麟の鼻}
{象の耳、兎の耳、麒麟の耳}
{象の首、兎の首、麒麟の首}
といふ「変域」に於いて、
「鼻は象が長い。」と言へることと、
「象が鼻は長い。」と言へることと、
「象の鼻が長い。」と言へることは、
「兎の鼻は長くない。」といふことが言へるための、「十分条件」です。
平成30」年12月01日、毛利太。
(b)『返り点』については、『「返り点」の「付け方」を教へます(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post_3.html)』他をお読み下さい。
(01)
(a)
1 (1)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x} A
1 (2) ∃y(~象y&鼻ay)→~長a 1UE
3 (3) ~象b&鼻ab →~長a A
4 (4) ∃y( 鼻ay&長a) A
5 (5) 鼻ab&長a A
5 (6) 長a 5&E
5 (7) ~~長a 6DN
3 5 (8) ~(~象b&鼻ab) 37MTT
3 5 (9) ~~象b∨~鼻ab 8ド・モルガンの法則
3 5 (ア) ~象b→~鼻ab 9含意の定義
イ(イ) ~象b A
3 5イ(ウ) ~鼻ab アイMPP
5 (エ) 鼻ab 5&E
3 5イ(オ) ~鼻ab&鼻ab ウエ&I
34 イ(カ) ~鼻ab&鼻ab 45オEE
3 イ(キ) ~∃y( 鼻ay&長a) 4カRAA
3 (ク) ~∃x( 鼻bx&長b) キ(変数は前後参照のための方便に過ぎないため。)
然るに、
(02)
3 (ク) ~∃x( 鼻bx&長b) キ(変数は前後参照のための方便に過ぎないため。)
といふ「結果」を受けての「計算」は、おそらくは、「無理」である。
然るに、
(03)
(b)
1 (1)∀x{~象x→~∃y(鼻yx& 長y)} A
1 (2) ~象a→~∃y(鼻ya& 長y) A
3 (3)∃x(~象x&鼻bx) A
4(4) ~象a&鼻ba A
4(5) ~象a 4&E
1 4(6) ~∃y(鼻ya& 長y) 25MPP
1 4(7) ∀y~(鼻ya& 長y) 6量化子の関係
1 4(8) ~(鼻ba& 長b) 7UE
1 4(9) ~鼻ba∨~長b 8ド・モルガンの法則
1 4(ア) 鼻ba→~長b 9含意の定義
4(イ) 鼻ba 4&E
1 4(ウ) ~長b アイMPP
13 (エ) ~長b 34ウEE
1 (オ) ∃x(~象x&鼻bx)→~長b 3エCP
1 (カ)∀y{∃x(~象x&鼻yx)→~長y} オUI
1 (〃)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x} オUI(変数は前後参照のための方便に過ぎないため。)
cf.
1 (1)∀x∃yFxy A
1 (2) ∃yFay 1UE
3(3) Fab A
3(4) ∃xFxb 3EI
1 (5) ∃xFxb 234EE
1 (6)∀y∃xFxy 5UI(変数は前後参照のための方便に過ぎないため。)
といふ「計算」自体は、セーフです。
従って、
(01)(02)(03)により、
(04)
(a)鼻は象が長い=∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x}。
(b)象が鼻は長い=∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)}。
に於いて、すなはち、
(a)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x}=いかなるxであっても{xがある象ではないyの鼻ならば、xは長くない}。
(b)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)}=いかなるxであっても{xが象でないならば、あるyがxの鼻であって、そのyが長い、といふことはない}。
に於いて、
(a)=(b) であることを「証明」することは、「ムズカシイ」か、「ムリ」である。
しかしながら、
(05)
次の「二つの推論」自体は、「妥当(Valid)」です。
(a)
Ⅰ (Ⅰ)鼻は象が長い。 A
Ⅰ (〃)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x} A
Ⅰ (〃)いかなるxであっても{xが、ある象ではないyの鼻であるならば、xは長くない}。 A
Ⅱ (Ⅱ)∀y{兎y→~象y} A
3 (3)∃y(兎y&鼻ay) A
Ⅰ (4) ∃y(~象y&鼻ay)→~長a ⅠUE
Ⅱ (5) 兎b→~象b ⅡUE
6(6) 兎b&鼻ab A
6(7) 兎b 6&E
ⅠⅡ 6(8) ~象b 57MPP
6(9) 鼻ab 7&E
ⅠⅡ 6(ア) ~象b&鼻ab 89&I
ⅠⅡ 6(イ) ∃y(~象y&鼻ay) アEI
ⅠⅡ3 (ウ) ∃y(~象y&鼻ay) 36イEE
ⅠⅡ3 (エ) ~長a 4ウMPP
ⅠⅡ (オ) ∃y( 兎y&鼻ay)→~長a 3エCP
ⅠⅡ (Ⅲ)∀x{∃y( 兎y&鼻xy)→~長x} オUI
ⅠⅡ (〃)いかなるxであっても{あるyが兎であって、xがyの鼻であるならば、xは長くない}。
ⅠⅡ (〃)兎の鼻は長くない。
(b)
Ⅰ (Ⅰ)象が鼻は長い。 A
Ⅰ (〃)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)} A
Ⅰ (〃)すべてのxについて{xが象でないならば、あるyがxの鼻であって、長い、といふことはない}。 A
Ⅱ (Ⅱ)∀x{兎x→~象x} A
3 (3)∃x(兎x&鼻bx) A
Ⅰ (4) ~象a→~∃y(鼻ya&長y) ⅠUE
Ⅱ (5) 兎a→~象a ⅡUE
6(6) 兎a&鼻ba A
6(7) 兎a 6&E
Ⅱ 6(8) ~象a 57MPP
ⅠⅡ 6(9) ~∃y(鼻ya&長y) 48MPP
ⅠⅡ 6(ア) ∀y~(鼻ya&長y) 9量化子の関係
ⅠⅡ 6(イ) ~(鼻ba&長b) アUE
ⅠⅡ 6(ウ) ~鼻ba∨~長b イ、ド・モルガンの法則
ⅠⅡ 6(エ) 鼻ba→~長b ウ含意の定義
6(オ) 鼻ba 6&E
ⅠⅡ 6(カ) ~長b エオMPP
ⅠⅡ3 (キ) ~長b 36カEE
ⅠⅡ (ク) ∃x(兎x&鼻bx)→~長b 3キCP
ⅠⅡ (Ⅲ)∀y{∃x(兎x&鼻yx)→~長y クUI
ⅠⅡ (〃)いかなるyであっても{あるxが兎であって、yがxの鼻であるならば、yは長くない}。
ⅠⅡ (〃)兎の鼻は長くない。
従って、
(05)により、
(06)
(Ⅰ)鼻は象が長い。然るに、
(Ⅱ)兎は象ではない。故に、
(Ⅲ)兎の鼻は長くない。
といふ「推論(三段論法)」が、成立し、尚且つ、
(07)
(Ⅰ)象が鼻は長い。然るに、
(Ⅱ)兎は象ではない。故に、
(Ⅲ)兎の鼻は長くない。
といふ「推論(三段論法)」が、成立します。
従って、
(06)(07)により、
(08)
{象の鼻、兎の鼻、麒麟の鼻}
{象の耳、兎の耳、麒麟の耳}
{象の首、兎の首、麒麟の首}
といふ「変域」に於いて、
「鼻は象が長い。」と言へることと、
「象が鼻は長い。」と言へることは、
「兎の鼻は長くない。」といふことが言へるための、「十分条件」です。
然るに、
(09)
(b)
1(1)~∃y(鼻yx&長y) A
1(2)∀y~(鼻yx&長y) 1量化子の関係
1(3) ~(鼻bx&長b) 2UE
1(4) ~鼻bx∨~鼻b 3ド・モルガンの法則
1(5) 鼻bx→~鼻b 含意の定義
1(6)∀y(鼻yx→~鼻y) 5UI
(c)
1 (1) ∀y(鼻yx→ ~長y) A
1 (2) 鼻bx→ ~長b 1UE
1 (3) ~鼻bx∨ ~長b 2含意の定義
1 (4)~~(~鼻bx∨ ~長b) 3DN
1 (5)~(~~鼻bx&~~長b) 4ドモルガンの法則
1 (6) ~(鼻bx& 長b) 5DN
7(7) ∃y(鼻yx& 長y) A
7(8) 鼻bx& 長b 7EI
17(9) ~(鼻bx&長b)&
(鼻bx&長b) 68&I
1 (ア)~∃y(鼻yx& 長y) 79RAA
従って、
(09)により、
(10)
(b)~∃y(鼻yx&長y)
(c)∀y(鼻yx→~長y)
に於いて、
(b)=(c) である。
従って、
(10)
(Ⅰ)鼻は象が長い。然るに、
(〃)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)}。然るに、
(Ⅱ)兎は象ではない。故に、
(Ⅲ)兎の鼻は長くない。
に於ける、
(〃)∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)}。 は、
(〃)∀x{~象x→∀y(鼻yx→~長y)}。 と、「同じ」です。
従って、
(05)(10)により、
(11)
次の「推論」も、「妥当(Valid)」です。
Ⅰ (Ⅰ)象の鼻が長い。 A
Ⅰ (〃)∀x{~象x→∀y(鼻yx→~長y)} A
Ⅰ (〃)すべてのxについて{xが象でないならば、すべてのyについて(yがxの鼻であるならば、yは長くない)}。
Ⅱ (Ⅱ)∀x{兎x→~象x} A
3 (3)∃x(兎x&鼻bx) A
Ⅰ (4) ~象a→∀y(鼻ya→~長y) A
Ⅱ (5) 兎a→~象a ⅡUE
6(6) 兎a&鼻ba A
6(7) 兎a 6&E
Ⅱ 6(8) ~象a 57MPP
ⅠⅡ 6(9) ∀y(鼻ya→~長y) 48MPP
ⅠⅡ 6(ア) 鼻ba→~長b 9UE
6(イ) 鼻ba 6&E
ⅠⅡ 6(ウ) ~長b アイMPP
ⅠⅡ3 (エ) ~長b 36ウEE
ⅠⅡ (オ) ∃x(兎x&鼻bx)→~長b 3エCP
ⅠⅡ (カ)∀y{∃x(兎x&鼻yx)→~長y オUI
ⅠⅡ (〃)いかなるyであっても{あるxが兎であって、yがxの鼻であるならば、yは長くない}。
ⅠⅡ (〃)兎の鼻は長くない。
従って、
(11)により、
(12)
Ⅰ (Ⅰ)象の鼻が長い。 A
Ⅰ (〃)∀x{~象x→∀y(鼻yx→~長y)} A
Ⅰ (〃)すべてのxについて{xが象でないならば、すべてのyについて(yがxの鼻であるならば、yは長くない)}。
であるとして、
(Ⅰ)象の鼻が長い。然るに、
(Ⅱ)兎は象ではない。故に、
(Ⅲ)兎の鼻は長くない。
といふ「推論(三段論法)」が、成立します。
従って、
(08)(12)により、
(13)
「兎は象ではない。」といふことは、
「常識(当然の仮定)」であるため、
{象の鼻、兎の鼻、麒麟の鼻}
{象の耳、兎の耳、麒麟の耳}
{象の首、兎の首、麒麟の首}
といふ「変域」に於いて、
「鼻は象が長い。」と言へることと、
「象が鼻は長い。」と言へることと、
「象の鼻が長い。」と言へることは、
「兎の鼻は長くない。」といふことが言へるための、「十分条件」です。
平成30」年12月01日、毛利太。
2018年11月25日日曜日
「鼻は象が長い。」と「述語論理」。
(a)『返り点と括弧』については、『「返り点」と「括弧」(略8)(https://kannbunn.blogspot.com/2018/09/blog-post_17.html)』他もお読み下さい。
(b)『返り点』については、『「返り点」の「付け方」を教へます(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post_3.html)』他をお読み下さい。
(01)
{象、兎、麒麟}であれば、
{鼻は象が長い。}
{耳は兎が長い。}
{首は麒麟が長い。}
然るに、
(02)
{鼻は象が長く、耳は兎が長く、首は麒麟が長い。}のであれば、
{鼻は象が長い(象以外の鼻は長くない)。}
{耳は兎が長い(兎以外の耳は長くない)。}
{首は麒麟が長い(麒麟以外の首は長くない)。}
従って、
(01)(02)により、
(03)
(Ⅰ)鼻は象が長い。
(〃)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x}。
(〃)すべてのxについて{あるyが象ではなく、xがyの鼻であるならば、xは長くない}。
といふ風に、解することが出来る。
然るに、
(04)
(Ⅱ)兎は象ではない。
(〃)∀y{兎y→~象y}。
(〃)すべてのyについて、yが兎であるならば、yは象ではない。
然るに、
(05)
For something to to be a head of a horse there must be some horse of which it is the head;
in symbols,ais a head of a horse if and only if ∃y(Fy&Hay)
(Beginning Logic by E.J. Lemmon,1965年、131頁).
従って、
(05)により、
(06)
あるものが馬の頭であるためには、それがその馬の頭であるような馬が存在しなければならない。
記号で書くと、aは∃y(馬y&頭ay)であるときまたそのときに限って、馬の頭である。
(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、1973年、Ⅰ67頁改)
従って、
(05)(06)により、
(07)
馬の頭に限らず、
兎の鼻であっても、
あるものが兎の鼻であるためには、それがその兎の鼻であるような兎が存在しなければならない。
記号で書くと、aは∃y(兎y&鼻ay)であるときまたそのときに限って、兎の鼻である。
従って、
(07)により、
(08)
(Ⅲ)∃y(兎y&鼻ay)。
(〃)あるyは兎であって、aはyの鼻である。
であるときまたそのときに限って、aは兎の鼻である。
従って、
(03)(04)(08)により、
(09)
(Ⅰ)鼻は象が長い。
(Ⅱ)兎は象ではない。
(Ⅲ)あるyは兎であって、aはyの鼻である。
といふ「仮定」は、
(Ⅰ)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x}。
(Ⅱ)∀y{兎y→~象y}。
(Ⅲ)∃y(兎y&鼻ay)。
といふ「述語論理」に、対応する。
然るに、
(10)
Ⅰ (Ⅰ)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x} A
Ⅱ (Ⅱ)∀y{兎y→~象y} A
Ⅲ (Ⅲ)∃y(兎y&鼻ay) A
Ⅰ (4) ∃y(~象y&鼻ay)→~長a ⅠUE
Ⅱ (5) 兎b→~象b ⅡUE
6(6) 兎b&鼻ab A
6(7) 兎b 6&E
ⅠⅡ 6(8) ~象b 57MPP
6(9) 鼻ab 7&E
ⅠⅡ 6(ア) ~象b&鼻αb 89&I
ⅠⅡ 6(イ) ∃y(~象y&鼻ay) アEI
ⅠⅡⅢ (ウ) ∃y(~象y&鼻ay) Ⅲ6イEE
ⅠⅡⅢ (エ) ~長a 4ウMPP
ⅠⅡ (オ) ∃y( 兎y&鼻ay)→~長a ⅢエCP
ⅠⅡ (カ)∀x{∃y( 兎y&鼻xy)→~長x} オUI
ⅠⅡ (〃)すべてのxについて、あるyが兎であって、xがyの鼻であるならば、xは長くない。
ⅠⅡ (〃)兎の鼻は長くない。
従って、
(09)(10)により、
(11)
(Ⅰ)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x}。然るに、
(Ⅱ)∀y{兎y→~象y}。故に、
(Ⅲ)∀x{∃y( 兎y&鼻xy)→~長x}。
といふ「推論(三段論法)」が、すなはち、
(Ⅰ)鼻は象が長い。然るに、
(Ⅱ)兎は象ではない。故に、
(Ⅲ)兎の鼻は長くない。
といふ「推論(三段論法)」が、成立する。
従って、
(11)により、
(12)
(Ⅰ)鼻は象が長い。然るに、
(Ⅱ)兎は象ではない。故に、
(Ⅲ)兎の鼻は長くない。
といふ、「日本語」による「推論(三段論法)」が、「妥当(valid)」である以上、
(Ⅰ)鼻は象が長い=∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x}。
(Ⅰ)鼻は象が長い=すべてのxについて{あるyが象ではなく、xがyの鼻であるならば、xは長くない}。
といふ「等式」を、「否定」することは、出来ない。
然るに、
(13)
(Ⅰ)鼻は象が長い=∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x}。
(Ⅰ)鼻は象が長い=すべてのxについて{あるyが象ではなく、xがyの鼻であるならば、xは長くない}。
といふことは、
(Ⅰ)鼻は象が長い=象以外の鼻は長くはない。
といふことに、他ならない。
然るに、
(14)
{象、兎、麒麟}であれば、確かに、
{象の鼻は長く、兎の鼻は長くなく、麒麟の鼻は長くない。}
従って、
(13)(14)により、
(15)
(Ⅰ)鼻は象が長い=象以外の鼻は長くはない。
(〃)鼻は象が長い=∀x{∃y(~象y&鼻xy)∀x→~長x}。
(〃)鼻は象が長い=すべてのxについて{あるyが象ではなく、xがyの鼻であるならば、xは長くない}。
といふ「等式」が、成立する。
従って、
(15)により、
(16)
(Ⅰ)鼻は象が長い=象以外の鼻は長くはない。
(〃)鼻は象が長い=∀x{∃y(鼻xy&~象y)→~長x}。
(〃)鼻は象が長い=すべてのxについて{xが、象ではないあるyの鼻であるならば、xは長くない}。
然るに、
(17)
これまでに、何度も説明した通り。
(Ⅱ)象は鼻が長い=象は、鼻は長く、鼻以外は長くない。
(〃)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)象は鼻が長い=すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、そのyは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならばzは長くない}。
といふ「等式」が、成立する。
従って、
(17)により、
(18)
(Ⅱ)象は
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、
であり、それ故、
(Ⅱ)象は
(〃)象である所のすべてのxについて、
である。
従って、
(19)
(Ⅱ)象は・・・・・・・。
(〃)象である所のすべてのxについて、・・・・・・・。
である。
従って、
(20)
(Ⅱ)象である所のすべてのxについて、・・・・・・・。
に於いて、
(Ⅱ)象が「主題」であるならば、
(〃)象は・・・・・・・。
に於いても、
(Ⅱ)象が「主題」であるに、違ひない。
然るに、
(21)
三上章は『象は鼻が長い』という本を書いて、日本語には主語がないと主張しました。「象は鼻が長い」という文の「象は」というのは主語ではなく、主題なのだという主張でした。助詞「は」がつく語は主題になります。「は」は文の区切りになるようです。「象は鼻が長い」の「象は」という主題は、「象についていうと」という意味になります。「象は」のあとに主題についての解説が続くというのが、この文の構造のようです(投稿日: 2017年2月8日 作成者: 丸山有彦)。
従って、
(20)(21)により、
(22)
「象は鼻が長い」の「象は」という「主題」は、「象についていうと」という意味になります。
といふのであれば、
「象は鼻が長い」の「象は」という「主題」である。
といふ「言ひ方」も、分からないでもない。
しかしながら、
(23)
「主題」であることと、「主語」であることが、「矛盾」する。
といふことを、示さない限り、
(Ⅱ)象は鼻が長い=象は鼻以外は長くない。
(〃)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)象は鼻が長い=すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、そのyは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならばzは長くない}。
に於ける、
(Ⅱ)象は
が、「主語」でない。といふことには、ならない。
然るに、
(24)
そのためには、「主語」とは「何か」といふことを、「定義」しなければ、ならない。
然るに、
(25)
ラテン語には、「英語のやうな、主語」はない。
従って、
(26)
「英語のやうな、言語」に於ける、「主語」だけを「主語」とするならば、「ラテン語のやうな、言語」には、「主語」がない。
然るに、
(27)
日本語にも、「英語のやうな、主語」はない。
従って、
(28)
「英語のやうな、言語」に於ける、「主語」だけを「主語」とするならば、「ラテン語や、日本語のやうな、言語」には、「主語」がない。
といふ、ことになる。
平成30年11月23日、毛利太。
(b)『返り点』については、『「返り点」の「付け方」を教へます(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post_3.html)』他をお読み下さい。
(01)
{象、兎、麒麟}であれば、
{鼻は象が長い。}
{耳は兎が長い。}
{首は麒麟が長い。}
然るに、
(02)
{鼻は象が長く、耳は兎が長く、首は麒麟が長い。}のであれば、
{鼻は象が長い(象以外の鼻は長くない)。}
{耳は兎が長い(兎以外の耳は長くない)。}
{首は麒麟が長い(麒麟以外の首は長くない)。}
従って、
(01)(02)により、
(03)
(Ⅰ)鼻は象が長い。
(〃)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x}。
(〃)すべてのxについて{あるyが象ではなく、xがyの鼻であるならば、xは長くない}。
といふ風に、解することが出来る。
然るに、
(04)
(Ⅱ)兎は象ではない。
(〃)∀y{兎y→~象y}。
(〃)すべてのyについて、yが兎であるならば、yは象ではない。
然るに、
(05)
For something to to be a head of a horse there must be some horse of which it is the head;
in symbols,ais a head of a horse if and only if ∃y(Fy&Hay)
(Beginning Logic by E.J. Lemmon,1965年、131頁).
従って、
(05)により、
(06)
あるものが馬の頭であるためには、それがその馬の頭であるような馬が存在しなければならない。
記号で書くと、aは∃y(馬y&頭ay)であるときまたそのときに限って、馬の頭である。
(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、1973年、Ⅰ67頁改)
従って、
(05)(06)により、
(07)
馬の頭に限らず、
兎の鼻であっても、
あるものが兎の鼻であるためには、それがその兎の鼻であるような兎が存在しなければならない。
記号で書くと、aは∃y(兎y&鼻ay)であるときまたそのときに限って、兎の鼻である。
従って、
(07)により、
(08)
(Ⅲ)∃y(兎y&鼻ay)。
(〃)あるyは兎であって、aはyの鼻である。
であるときまたそのときに限って、aは兎の鼻である。
従って、
(03)(04)(08)により、
(09)
(Ⅰ)鼻は象が長い。
(Ⅱ)兎は象ではない。
(Ⅲ)あるyは兎であって、aはyの鼻である。
といふ「仮定」は、
(Ⅰ)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x}。
(Ⅱ)∀y{兎y→~象y}。
(Ⅲ)∃y(兎y&鼻ay)。
といふ「述語論理」に、対応する。
然るに、
(10)
Ⅰ (Ⅰ)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x} A
Ⅱ (Ⅱ)∀y{兎y→~象y} A
Ⅲ (Ⅲ)∃y(兎y&鼻ay) A
Ⅰ (4) ∃y(~象y&鼻ay)→~長a ⅠUE
Ⅱ (5) 兎b→~象b ⅡUE
6(6) 兎b&鼻ab A
6(7) 兎b 6&E
ⅠⅡ 6(8) ~象b 57MPP
6(9) 鼻ab 7&E
ⅠⅡ 6(ア) ~象b&鼻αb 89&I
ⅠⅡ 6(イ) ∃y(~象y&鼻ay) アEI
ⅠⅡⅢ (ウ) ∃y(~象y&鼻ay) Ⅲ6イEE
ⅠⅡⅢ (エ) ~長a 4ウMPP
ⅠⅡ (オ) ∃y( 兎y&鼻ay)→~長a ⅢエCP
ⅠⅡ (カ)∀x{∃y( 兎y&鼻xy)→~長x} オUI
ⅠⅡ (〃)すべてのxについて、あるyが兎であって、xがyの鼻であるならば、xは長くない。
ⅠⅡ (〃)兎の鼻は長くない。
従って、
(09)(10)により、
(11)
(Ⅰ)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x}。然るに、
(Ⅱ)∀y{兎y→~象y}。故に、
(Ⅲ)∀x{∃y( 兎y&鼻xy)→~長x}。
といふ「推論(三段論法)」が、すなはち、
(Ⅰ)鼻は象が長い。然るに、
(Ⅱ)兎は象ではない。故に、
(Ⅲ)兎の鼻は長くない。
といふ「推論(三段論法)」が、成立する。
従って、
(11)により、
(12)
(Ⅰ)鼻は象が長い。然るに、
(Ⅱ)兎は象ではない。故に、
(Ⅲ)兎の鼻は長くない。
といふ、「日本語」による「推論(三段論法)」が、「妥当(valid)」である以上、
(Ⅰ)鼻は象が長い=∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x}。
(Ⅰ)鼻は象が長い=すべてのxについて{あるyが象ではなく、xがyの鼻であるならば、xは長くない}。
といふ「等式」を、「否定」することは、出来ない。
然るに、
(13)
(Ⅰ)鼻は象が長い=∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x}。
(Ⅰ)鼻は象が長い=すべてのxについて{あるyが象ではなく、xがyの鼻であるならば、xは長くない}。
といふことは、
(Ⅰ)鼻は象が長い=象以外の鼻は長くはない。
といふことに、他ならない。
然るに、
(14)
{象、兎、麒麟}であれば、確かに、
{象の鼻は長く、兎の鼻は長くなく、麒麟の鼻は長くない。}
従って、
(13)(14)により、
(15)
(Ⅰ)鼻は象が長い=象以外の鼻は長くはない。
(〃)鼻は象が長い=∀x{∃y(~象y&鼻xy)∀x→~長x}。
(〃)鼻は象が長い=すべてのxについて{あるyが象ではなく、xがyの鼻であるならば、xは長くない}。
といふ「等式」が、成立する。
従って、
(15)により、
(16)
(Ⅰ)鼻は象が長い=象以外の鼻は長くはない。
(〃)鼻は象が長い=∀x{∃y(鼻xy&~象y)→~長x}。
(〃)鼻は象が長い=すべてのxについて{xが、象ではないあるyの鼻であるならば、xは長くない}。
然るに、
(17)
これまでに、何度も説明した通り。
(Ⅱ)象は鼻が長い=象は、鼻は長く、鼻以外は長くない。
(〃)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)象は鼻が長い=すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、そのyは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならばzは長くない}。
といふ「等式」が、成立する。
従って、
(17)により、
(18)
(Ⅱ)象は
(〃)すべてxについて{xが象であるならば、
であり、それ故、
(Ⅱ)象は
(〃)象である所のすべてのxについて、
である。
従って、
(19)
(Ⅱ)象は・・・・・・・。
(〃)象である所のすべてのxについて、・・・・・・・。
である。
従って、
(20)
(Ⅱ)象である所のすべてのxについて、・・・・・・・。
に於いて、
(Ⅱ)象が「主題」であるならば、
(〃)象は・・・・・・・。
に於いても、
(Ⅱ)象が「主題」であるに、違ひない。
然るに、
(21)
三上章は『象は鼻が長い』という本を書いて、日本語には主語がないと主張しました。「象は鼻が長い」という文の「象は」というのは主語ではなく、主題なのだという主張でした。助詞「は」がつく語は主題になります。「は」は文の区切りになるようです。「象は鼻が長い」の「象は」という主題は、「象についていうと」という意味になります。「象は」のあとに主題についての解説が続くというのが、この文の構造のようです(投稿日: 2017年2月8日 作成者: 丸山有彦)。
従って、
(20)(21)により、
(22)
「象は鼻が長い」の「象は」という「主題」は、「象についていうと」という意味になります。
といふのであれば、
「象は鼻が長い」の「象は」という「主題」である。
といふ「言ひ方」も、分からないでもない。
しかしながら、
(23)
「主題」であることと、「主語」であることが、「矛盾」する。
といふことを、示さない限り、
(Ⅱ)象は鼻が長い=象は鼻以外は長くない。
(〃)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(〃)象は鼻が長い=すべてxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、そのyは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならばzは長くない}。
に於ける、
(Ⅱ)象は
が、「主語」でない。といふことには、ならない。
然るに、
(24)
そのためには、「主語」とは「何か」といふことを、「定義」しなければ、ならない。
然るに、
(25)
ラテン語には、「英語のやうな、主語」はない。
従って、
(26)
「英語のやうな、言語」に於ける、「主語」だけを「主語」とするならば、「ラテン語のやうな、言語」には、「主語」がない。
然るに、
(27)
日本語にも、「英語のやうな、主語」はない。
従って、
(28)
「英語のやうな、言語」に於ける、「主語」だけを「主語」とするならば、「ラテン語や、日本語のやうな、言語」には、「主語」がない。
といふ、ことになる。
平成30年11月23日、毛利太。
「象は鼻も長い。」と「述語論理」。
(a)『返り点と括弧』については、『「返り点」と「括弧」(略8)(https://kannbunn.blogspot.com/2018/09/blog-post_17.html)』他もお読み下さい。
(b)『返り点』については、『「返り点」の「付け方」を教へます(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post_3.html)』他をお読み下さい。
(01)
「前回(20日)の記事」等で、確認した通り、
(a)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(b)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)}。
に於いて、
(a)=(b) である。
然るに、
(02)
(c)
1 (1)~∀z(~鼻zx→ ~長z) A
1 (2)∃x~(~鼻zx→ ~長z) 1量化子の関係
3 (3) ~(~鼻cx→ ~長c) A
3 (4) ~(~~鼻cx∨ ~長c) 3含意の定義
3 (5) ~(鼻cx∨ ~長c) 4DN
3 (6) ~鼻cx&~~長c 5ド・モルガンの法則
3 (7) ~鼻cx&長c 6DN
3 (8) ∃z(~鼻zx&長z) 7EI
1 (9) ∃z(~鼻zx&長z) 138EE
(d)
1 (1) ∃z(~鼻zx& 長z) A
2(2) ~鼻cx& 長c A
2(3) ~~(~鼻cx& 長c) 2DN
2(4) ~(~~鼻cx∨~長c) 3ド・モルガンの法則
2(5) ~(~鼻cx→~長c) 4含意の定義
2(6) ∃z~(~鼻zx→~長z) 5EI
1 (7) ∃z~(~鼻zx→~長z) 126EE
1 (8)~∀z(~鼻zx→ ~長z) 量化子の関係
従って、
(02)により、
(03)
(a)~∀z(~鼻zx→~長z)
(b) ∃z(~鼻zx& 長z)
に於いて、
(a)ならば(b)であり、
(b)ならば(a)である。
従って、
(03)により、
(04)
(c)~∀z(~鼻zx→~長z)
(d) ∃z(~鼻zx& 長z)
に於いて、
(c)=(d)である。
従って、
(01)(04)により、
(05)
(a)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(b)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)}。
に於いて、
(a)=(b) である。が故に、
(c)象は鼻_長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}。
(d)象は鼻_長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx& 長z)}。
に於いて、
(c)=(d)である。
従って、
(05)により、
(06)
(c)象は鼻_長い=すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、そのyは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならばzは長くない、といふわけではない}。
(d)象は鼻_長い=すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、そのyは長く、尚且つ、あるzは、xの鼻ではないが、長い}。
に於いて、
(c)=(d)である。
然るに、
(06)により、
(07)
(d)すべてのxについて{xが象であるならば、・・・・・・・・}。
であるため、
(d)あるyはxの鼻であって、
(d)あるzは、xの鼻ではないが、長い。
に於ける、xとは、「象」である。
従って、
(06)(07)により、
(08)
(d)象は鼻_長い=すべてのxについて{xが象であるならば、あるyは象の鼻であって、そのyは長く、尚且つ、あるzは、象の鼻ではないが、長い}。
といふことになる。
然るに、
(09)
(d)象は鼻_長い=すべてのxについて{xが象であるならば、あるyは象の鼻であって、そのyは長く、尚且つ、あるzは、象の鼻ではないが、長い}。
といふことは、
(d)象は、鼻(y)の他に、鼻以外(z)も「長い」。
といふことに、他ならない。
従って、
(05)~(09)により、
(10)
(c)象は鼻も長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}。
(d)象は鼻も長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx& 長z)}。
でなければ、ならない。
従って、
(01)(10)により、
(11)
(a)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(b)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)}。
(c)象は鼻も長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}。
(d)象は鼻も長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx& 長z)}。
然るに、
(12)
(e)象は鼻_長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
(e)象は鼻_長い=すべてのxについて{xが象であるならば、あるyは象の鼻であって、そのyは長い}。
と言ふのであれば、
(e)象の鼻は長い。としても、
(e)象の鼻以外については、「長いとも、短いとも、言ってゐない」。
然るに、
(13)
(e)象は鼻は長い。
と言ふのであれば、
(e)象の鼻は長い。としても、
(e)象の鼻以外については、「長いとも、短いとも、言ってゐない」。
従って、
(12)(13)により、
(14)
(e)象は鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
(e)象は鼻は長い=すべてのxについて{xが象であるならば、あるyは象の鼻であって、そのyは長い}。
でなければ、ならない。
従って、
(11)(14)により、
(15)
(Ⅰ)象は鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
(Ⅱ)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(Ⅲ)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)}。
(Ⅳ)象は鼻も長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}。
(ⅴ)象は鼻も長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx& 長z)}。
といふ「等式」が、成立する。
cf.
(Ⅱ) ∀z(~鼻zx→~長z)
(Ⅲ) ~∃z(~鼻zx& 長z)
に対する「否定」が、それぞれ、
(Ⅳ) ~∀z(~鼻zx→~長z)
(ⅴ)~~∃z(~鼻zx& 長z)=∃z(~鼻zx&長z)は、「二重否定」。
であることに、「注意」せよ。
然るに、
(16)
沢田充茂の『現代論理学入門』(一九六ニ年)には楽しい解説が載っています。
・・・・・・たとえば「象は鼻が長い」というような表現は、象が主語なのか、鼻が主語なのかはっきりしないから、このままではその論理的構造が明示されていない。いわば非論理的な文章である、というひともある。しかしこの文の論理的な構造をはっきりと文章にあらわして「すべてのxについて、もしそのxが象であるならば、yなるものが存在し、そのyは鼻であり、xはyを所有しており、このyは長い」といえば・・・・・・たとえば動物園で象をはじめて見た小学生が、父親にむかってこのような文章で話しかけたとすれば、その子供は論理的であるといって感心されるまえに社会人としての常識をうたがわれるにきまっている。常識(すなはち共通にもっている情報)でわかっているものはいちいち言明の中にいれないで、いわば暗黙の了解事項として、省略し、できるだけ短い記号の組み合せで、できるだけ多くの情報を伝えることが日常言語の合理性の一つである。・・・・・・
(山崎紀美子、日本語基礎講座―三上文法入門、2003年、214頁)
然るに、
(17)
「 yなるものが存在し、そのyは鼻であり、xはyを所有している」といふことは、
「あるyは xの鼻である。 」といふことに、他ならない。
従って、
(17)により、
(18)
「すべてのxについて、もしそのxが象であるならば、yなるものが存在し、そのyは鼻であり、xはyを所有しており、このyは長い。」といふことは、
「すべてのxについて、 xが象であるならば、あるyは xの鼻であって、 そのyは長い。」といふことに、他ならない。
従って、
(14)(18)により、
(19)
「すべてのxについて、もしそのxが象であるならば、yなるものが存在し、そのyは鼻であり、xはyを所有しており、このyは長い。」といふことは、
(e)象は鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
(e)象は鼻は長い=すべてのxについて{xが象であるならば、あるyは象の鼻であって、そのyは長い}。
といふことに、他ならない。
従って、
(16)(19)により、
(20)
沢田充茂の『現代論理学入門』(一九六ニ年)には楽しい解説が載っています。
・・・・・・たとえば「象は鼻が長い」というような表現は、象が主語なのか、鼻が主語なのかはっきりしないから、このままではその論理的構造が明示されていない。いわば非論理的な文章である、というひともある。
に於ける、「象は鼻が長い。」は、
実際には、「象は鼻が長い。」ではなく、
「象は鼻は長い。」である。
従って、
(20)により、
(21)
沢田充茂先生の、「象は鼻が長い。」は、
(Ⅰ)象は鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
であって、
(Ⅱ)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(Ⅲ)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)}。
ではない。
然るに、
(22)
つまり沢田氏によれば、「象は鼻が長い」というのは合理的省略を行った言語表現であり、そこには明確な論理構造がある、ということです。三上はこれを文型として登録すべきであると主張しています。象をFに、鼻をGに、長いをHに変え、文型の公式として、
Fは、GがHだ。
を作っておきます。すると、この公式に当てはまる文はたいてい機械的にパラフレーズできます。
(山崎紀美子、日本語基礎講座―三上文法入門、2003年、214・5頁改)
従って、
(20)
『現代論理学入門(一九六ニ年)』の中で、
沢田充茂先生の、「象は鼻が長い。」を、
(Ⅱ)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(Ⅲ)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)}。
といふ風に、「翻訳」してゐたならば、
(Ⅱ)FはGがHだ=∀x{Fx→∃y(Gyx&Hy)& ∀z(~Gzx→~Hz)}。
(Ⅲ)FはGがHだ=∀x{Fx→∃y(Gyx&Hy)&~∃z(~Gzx& Hz)}。
といふ公式を、三上章先生は、文型として登録すべきであると主張した。
といふことになる。
然るに、
(21)
これまでに、何度も、示した通り、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
1 (〃)すべてのxについて、xが象であるならば、有るyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。 A
2 (2)兎の耳は長く、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
2 (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、有るyはxの耳であって長く、すべてのzについて、zがxの耳ならば、zはxの鼻ではない。 A
3 (3)有る兎は象である。 A
3 (〃)∃x(兎x&象x) A
3 (〃)あるxは兎であって象である。 A
1 (4) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
2 (5) 兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 1UE
6 (6) 兎a&象a A
6 (7) 兎a 6&E
6 (8) 象a 6&E
1 6 (9) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 47MPP
2 6 (ア) ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 58MPP
1 6 (イ) ∃y(鼻ya&長y) 9&E
2 6 (ウ) ∃y(耳ya&長y) ア&E
エ (エ) 鼻ba&長b A
オ(オ) 耳ba&長b A
1 6 (カ) ∀z(~鼻za→~長z) 9&E
1 6 (キ) ~鼻ba→~長b カUE
2 6 (ク) ∀z(耳za→~鼻za) ア&E
2 6 (ケ) 耳ba→~鼻ba クUE
オ (コ) 耳ba オ&E
2 6オ (サ) ~鼻ba ケコMPP
12 6オ (シ) ~長b キサコMPP
オ (ス) 長b オ&E
12 6オ (セ) 長b&~長b シス&I
12 6オ (ソ) ∃y(長y&~長y) セEI
12 6 (タ) ∃y(長b&~長b) ウオソEE
123 (チ) ∃y(長b&~長b) 36タEE
12 (ツ)~∃x(兎x&象x) 3チRAA
12 (テ)∀x~(兎x&象x) ツ量化子の関係
12 (ト) ~(兎a&象a) テUE
12 (ナ) ~兎a∨~象a ト、ド・モルガンの法則
12 (ニ) 兎a→~象a ナ含意の定義
12 (ヌ)∀x(兎x→~象x) ニUI
12 (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。 ニUI
12 (〃)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当(Valid)」である。
従って、
(20)(21)により、
(22)
一九六ニ年の、沢田充茂先生が、
(α)象は鼻が長い。然るに、
(β)兎の耳は長く、兎の耳は鼻ではない。故に、
(γ)兎は象でない。
といふ「推論(三段論法)」の「妥当性(Validity)」を証明せよ。
といふ「問題」を、考へて、自分自身で、解いてゐたとするならば、
(Ⅱ)FはGがHだ=∀x{Fx→∃y(Gyx&Hy)& ∀z(~Gzx→~Hz)}。
(Ⅲ)FはGがHだ=∀x{Fx→∃y(Gyx&Hy)&~∃z(~Gzx& Hz)}。
といふ公式を、三上章先生は、文型として登録すべきであると、主張してゐた、ことになる。
然るに、
(23)
現代日本語の研究の中で最も精力的に行われてきた分野の一つは「は」と「が」の違いに関するものがあります。両者の違いは日本語を学ぶ学習者にとって最も困難な学習項目であります。
(庵功雄、新しい日本語学入門、254頁)
然るに、
(24)
∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}
∴ ∀x(兎x→~象x)
といふ「推論(三段論法)」が、「妥当(Validi)」であるか「否」か。
といふ「問題」は、
∀x{Fx→∃y(Gyx&Hy)&∀z(~Gzx→~Hz)}
∀x{Lx→∃y(Myx&Hy)&∀z(Mzx→~Gzx)}
∴ ∀x(Lx→~Fx)
といふ「推論(三段論法)」が、「妥当(Validi)」であるか「否」か。
といふ「問題」であるため、「日本語」を知ってゐようと、ゐまいと、「関係」が無い。
従って、
(21)~(24)により、
(25)
「日本語」は初心者であるが、「論理学」ならば知ってゐるといふ、日本語学習者の方が、ゐるのであれば、取り敢へず、
∀x{Fx→∃y(Gyx&Hy)&∀z(~Gzx→~Hz)}
∀x{Lx→∃y(Myx&Hy)&∀z(Mzx→~Gzx)}
∴ ∀x(Lx→~Fx)
といふ「推論(三段論法)」の、「妥当性(Validity)」の「検証」を、勧めたい。
(b)『返り点』については、『「返り点」の「付け方」を教へます(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post_3.html)』他をお読み下さい。
(01)
「前回(20日)の記事」等で、確認した通り、
(a)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(b)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)}。
に於いて、
(a)=(b) である。
然るに、
(02)
(c)
1 (1)~∀z(~鼻zx→ ~長z) A
1 (2)∃x~(~鼻zx→ ~長z) 1量化子の関係
3 (3) ~(~鼻cx→ ~長c) A
3 (4) ~(~~鼻cx∨ ~長c) 3含意の定義
3 (5) ~(鼻cx∨ ~長c) 4DN
3 (6) ~鼻cx&~~長c 5ド・モルガンの法則
3 (7) ~鼻cx&長c 6DN
3 (8) ∃z(~鼻zx&長z) 7EI
1 (9) ∃z(~鼻zx&長z) 138EE
(d)
1 (1) ∃z(~鼻zx& 長z) A
2(2) ~鼻cx& 長c A
2(3) ~~(~鼻cx& 長c) 2DN
2(4) ~(~~鼻cx∨~長c) 3ド・モルガンの法則
2(5) ~(~鼻cx→~長c) 4含意の定義
2(6) ∃z~(~鼻zx→~長z) 5EI
1 (7) ∃z~(~鼻zx→~長z) 126EE
1 (8)~∀z(~鼻zx→ ~長z) 量化子の関係
従って、
(02)により、
(03)
(a)~∀z(~鼻zx→~長z)
(b) ∃z(~鼻zx& 長z)
に於いて、
(a)ならば(b)であり、
(b)ならば(a)である。
従って、
(03)により、
(04)
(c)~∀z(~鼻zx→~長z)
(d) ∃z(~鼻zx& 長z)
に於いて、
(c)=(d)である。
従って、
(01)(04)により、
(05)
(a)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(b)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)}。
に於いて、
(a)=(b) である。が故に、
(c)象は鼻_長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}。
(d)象は鼻_長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx& 長z)}。
に於いて、
(c)=(d)である。
従って、
(05)により、
(06)
(c)象は鼻_長い=すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、そのyは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならばzは長くない、といふわけではない}。
(d)象は鼻_長い=すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、そのyは長く、尚且つ、あるzは、xの鼻ではないが、長い}。
に於いて、
(c)=(d)である。
然るに、
(06)により、
(07)
(d)すべてのxについて{xが象であるならば、・・・・・・・・}。
であるため、
(d)あるyはxの鼻であって、
(d)あるzは、xの鼻ではないが、長い。
に於ける、xとは、「象」である。
従って、
(06)(07)により、
(08)
(d)象は鼻_長い=すべてのxについて{xが象であるならば、あるyは象の鼻であって、そのyは長く、尚且つ、あるzは、象の鼻ではないが、長い}。
といふことになる。
然るに、
(09)
(d)象は鼻_長い=すべてのxについて{xが象であるならば、あるyは象の鼻であって、そのyは長く、尚且つ、あるzは、象の鼻ではないが、長い}。
といふことは、
(d)象は、鼻(y)の他に、鼻以外(z)も「長い」。
といふことに、他ならない。
従って、
(05)~(09)により、
(10)
(c)象は鼻も長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}。
(d)象は鼻も長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx& 長z)}。
でなければ、ならない。
従って、
(01)(10)により、
(11)
(a)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(b)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)}。
(c)象は鼻も長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}。
(d)象は鼻も長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx& 長z)}。
然るに、
(12)
(e)象は鼻_長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
(e)象は鼻_長い=すべてのxについて{xが象であるならば、あるyは象の鼻であって、そのyは長い}。
と言ふのであれば、
(e)象の鼻は長い。としても、
(e)象の鼻以外については、「長いとも、短いとも、言ってゐない」。
然るに、
(13)
(e)象は鼻は長い。
と言ふのであれば、
(e)象の鼻は長い。としても、
(e)象の鼻以外については、「長いとも、短いとも、言ってゐない」。
従って、
(12)(13)により、
(14)
(e)象は鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
(e)象は鼻は長い=すべてのxについて{xが象であるならば、あるyは象の鼻であって、そのyは長い}。
でなければ、ならない。
従って、
(11)(14)により、
(15)
(Ⅰ)象は鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
(Ⅱ)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(Ⅲ)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)}。
(Ⅳ)象は鼻も長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}。
(ⅴ)象は鼻も長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx& 長z)}。
といふ「等式」が、成立する。
cf.
(Ⅱ) ∀z(~鼻zx→~長z)
(Ⅲ) ~∃z(~鼻zx& 長z)
に対する「否定」が、それぞれ、
(Ⅳ) ~∀z(~鼻zx→~長z)
(ⅴ)~~∃z(~鼻zx& 長z)=∃z(~鼻zx&長z)は、「二重否定」。
であることに、「注意」せよ。
然るに、
(16)
沢田充茂の『現代論理学入門』(一九六ニ年)には楽しい解説が載っています。
・・・・・・たとえば「象は鼻が長い」というような表現は、象が主語なのか、鼻が主語なのかはっきりしないから、このままではその論理的構造が明示されていない。いわば非論理的な文章である、というひともある。しかしこの文の論理的な構造をはっきりと文章にあらわして「すべてのxについて、もしそのxが象であるならば、yなるものが存在し、そのyは鼻であり、xはyを所有しており、このyは長い」といえば・・・・・・たとえば動物園で象をはじめて見た小学生が、父親にむかってこのような文章で話しかけたとすれば、その子供は論理的であるといって感心されるまえに社会人としての常識をうたがわれるにきまっている。常識(すなはち共通にもっている情報)でわかっているものはいちいち言明の中にいれないで、いわば暗黙の了解事項として、省略し、できるだけ短い記号の組み合せで、できるだけ多くの情報を伝えることが日常言語の合理性の一つである。・・・・・・
(山崎紀美子、日本語基礎講座―三上文法入門、2003年、214頁)
然るに、
(17)
「 yなるものが存在し、そのyは鼻であり、xはyを所有している」といふことは、
「あるyは xの鼻である。 」といふことに、他ならない。
従って、
(17)により、
(18)
「すべてのxについて、もしそのxが象であるならば、yなるものが存在し、そのyは鼻であり、xはyを所有しており、このyは長い。」といふことは、
「すべてのxについて、 xが象であるならば、あるyは xの鼻であって、 そのyは長い。」といふことに、他ならない。
従って、
(14)(18)により、
(19)
「すべてのxについて、もしそのxが象であるならば、yなるものが存在し、そのyは鼻であり、xはyを所有しており、このyは長い。」といふことは、
(e)象は鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
(e)象は鼻は長い=すべてのxについて{xが象であるならば、あるyは象の鼻であって、そのyは長い}。
といふことに、他ならない。
従って、
(16)(19)により、
(20)
沢田充茂の『現代論理学入門』(一九六ニ年)には楽しい解説が載っています。
・・・・・・たとえば「象は鼻が長い」というような表現は、象が主語なのか、鼻が主語なのかはっきりしないから、このままではその論理的構造が明示されていない。いわば非論理的な文章である、というひともある。
に於ける、「象は鼻が長い。」は、
実際には、「象は鼻が長い。」ではなく、
「象は鼻は長い。」である。
従って、
(20)により、
(21)
沢田充茂先生の、「象は鼻が長い。」は、
(Ⅰ)象は鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
であって、
(Ⅱ)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(Ⅲ)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)}。
ではない。
然るに、
(22)
つまり沢田氏によれば、「象は鼻が長い」というのは合理的省略を行った言語表現であり、そこには明確な論理構造がある、ということです。三上はこれを文型として登録すべきであると主張しています。象をFに、鼻をGに、長いをHに変え、文型の公式として、
Fは、GがHだ。
を作っておきます。すると、この公式に当てはまる文はたいてい機械的にパラフレーズできます。
(山崎紀美子、日本語基礎講座―三上文法入門、2003年、214・5頁改)
従って、
(20)
『現代論理学入門(一九六ニ年)』の中で、
沢田充茂先生の、「象は鼻が長い。」を、
(Ⅱ)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
(Ⅲ)象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)}。
といふ風に、「翻訳」してゐたならば、
(Ⅱ)FはGがHだ=∀x{Fx→∃y(Gyx&Hy)& ∀z(~Gzx→~Hz)}。
(Ⅲ)FはGがHだ=∀x{Fx→∃y(Gyx&Hy)&~∃z(~Gzx& Hz)}。
といふ公式を、三上章先生は、文型として登録すべきであると主張した。
といふことになる。
然るに、
(21)
これまでに、何度も、示した通り、
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
1 (〃)すべてのxについて、xが象であるならば、有るyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。 A
2 (2)兎の耳は長く、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
2 (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、有るyはxの耳であって長く、すべてのzについて、zがxの耳ならば、zはxの鼻ではない。 A
3 (3)有る兎は象である。 A
3 (〃)∃x(兎x&象x) A
3 (〃)あるxは兎であって象である。 A
1 (4) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
2 (5) 兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 1UE
6 (6) 兎a&象a A
6 (7) 兎a 6&E
6 (8) 象a 6&E
1 6 (9) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 47MPP
2 6 (ア) ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 58MPP
1 6 (イ) ∃y(鼻ya&長y) 9&E
2 6 (ウ) ∃y(耳ya&長y) ア&E
エ (エ) 鼻ba&長b A
オ(オ) 耳ba&長b A
1 6 (カ) ∀z(~鼻za→~長z) 9&E
1 6 (キ) ~鼻ba→~長b カUE
2 6 (ク) ∀z(耳za→~鼻za) ア&E
2 6 (ケ) 耳ba→~鼻ba クUE
オ (コ) 耳ba オ&E
2 6オ (サ) ~鼻ba ケコMPP
12 6オ (シ) ~長b キサコMPP
オ (ス) 長b オ&E
12 6オ (セ) 長b&~長b シス&I
12 6オ (ソ) ∃y(長y&~長y) セEI
12 6 (タ) ∃y(長b&~長b) ウオソEE
123 (チ) ∃y(長b&~長b) 36タEE
12 (ツ)~∃x(兎x&象x) 3チRAA
12 (テ)∀x~(兎x&象x) ツ量化子の関係
12 (ト) ~(兎a&象a) テUE
12 (ナ) ~兎a∨~象a ト、ド・モルガンの法則
12 (ニ) 兎a→~象a ナ含意の定義
12 (ヌ)∀x(兎x→~象x) ニUI
12 (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。 ニUI
12 (〃)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当(Valid)」である。
従って、
(20)(21)により、
(22)
一九六ニ年の、沢田充茂先生が、
(α)象は鼻が長い。然るに、
(β)兎の耳は長く、兎の耳は鼻ではない。故に、
(γ)兎は象でない。
といふ「推論(三段論法)」の「妥当性(Validity)」を証明せよ。
といふ「問題」を、考へて、自分自身で、解いてゐたとするならば、
(Ⅱ)FはGがHだ=∀x{Fx→∃y(Gyx&Hy)& ∀z(~Gzx→~Hz)}。
(Ⅲ)FはGがHだ=∀x{Fx→∃y(Gyx&Hy)&~∃z(~Gzx& Hz)}。
といふ公式を、三上章先生は、文型として登録すべきであると、主張してゐた、ことになる。
然るに、
(23)
現代日本語の研究の中で最も精力的に行われてきた分野の一つは「は」と「が」の違いに関するものがあります。両者の違いは日本語を学ぶ学習者にとって最も困難な学習項目であります。
(庵功雄、新しい日本語学入門、254頁)
然るに、
(24)
∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}
∴ ∀x(兎x→~象x)
といふ「推論(三段論法)」が、「妥当(Validi)」であるか「否」か。
といふ「問題」は、
∀x{Fx→∃y(Gyx&Hy)&∀z(~Gzx→~Hz)}
∀x{Lx→∃y(Myx&Hy)&∀z(Mzx→~Gzx)}
∴ ∀x(Lx→~Fx)
といふ「推論(三段論法)」が、「妥当(Validi)」であるか「否」か。
といふ「問題」であるため、「日本語」を知ってゐようと、ゐまいと、「関係」が無い。
従って、
(21)~(24)により、
(25)
「日本語」は初心者であるが、「論理学」ならば知ってゐるといふ、日本語学習者の方が、ゐるのであれば、取り敢へず、
∀x{Fx→∃y(Gyx&Hy)&∀z(~Gzx→~Hz)}
∀x{Lx→∃y(Myx&Hy)&∀z(Mzx→~Gzx)}
∴ ∀x(Lx→~Fx)
といふ「推論(三段論法)」の、「妥当性(Validity)」の「検証」を、勧めたい。
平成30年11月24日、毛利太。
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