2022年6月8日水曜日

「両立的選言」と「排他的論理和」と「実質含意のパラドクス」。

(01)
① 真&真=真
② 真&偽=偽
③ 偽&真=偽
④ 偽&偽=偽
に於いて、
真=1
偽=0
&=×
とすると、
① 1×1=1
② 1×0=0
③ 0×1=0
④ 0×0=0
といふ「掛け算」になる。
従って、
(01)により、
(02)
① 真&真=真
② 真&偽=偽
③ 偽&真=偽
④ 偽&偽=偽
といふ「結果」は、
① 1×1=1
② 1×0=0
③ 0×1=0
④ 0×0=0
といふ「掛け算」に喩へることが出来るため、
「P&Q(連言)」を、「論理」といふ。
然るに、
(03)
① 真∨真=真
② 真∨偽=偽
③ 偽∨真=真
④ 偽∨偽=真
に於いて、
真=1
偽=0
∨=+
とすると、
① 1+1=2
② 1+0=1
③ 0+1=1
④ 0+0=0
といふ「足し算」になるものの、
① 1+1=2
に関しては、
1+1=
とする。
従って、
(03)により、
(04)
① 真∨真=真
② 真∨偽=真
③ 偽∨真=真
④ 偽∨偽=偽
といふ「結果」も、「足し算」に喩へることによって、
「P∨Q(選言)」を、「両立的論理(弱選言)」といふ。
といふ。
然るに、
(05)
① 1+1=
② 1+0=1
③ 0+1=1
④ 0+0=0
ではなく、
① 1+1=
② 1+0=1
③ 0+1=1
④ 0+0=0
といふ「結果」になるものとして、
この場合は、「排他的論理(強選言)」といふ。
然るに、
(06)
「太郎かあるいは次郎が辞書をもっている」と言われるとき、「太郎が辞書をもっている」と「次郎が辞書をもっている」の二つの命題は同時に真になることが可能である。
このような選言は「両立的選言と」呼ばれる。
「太郎は3階か5階にいる」と言われるとき、「太郎は3階にいる」と「太郎は5階にいる」の二つの命題が同時に真になることはありえない。
このような選言は「排他的選言」である。
論理学の「・・・あるいは・・・」は両立的選言に決めてある。それは論理学の体系がよりシンプルなものになるからである。
とりわけ、∨を両立的選言の方に決めておけば、排他的選言の方は∨と&と~によって簡単に表現できる ―(P∨Q)&~(P&Q)―。
(昭和堂入門選書、論理学の基礎、1994年、11頁)
然るに、
(07)
(ⅰ)
1    (1)(P∨Q)&~(P&Q)  A
1    (2) P∨Q          1&E
1    (3)      ~(P&Q)  1&E
 4   (4)        P     A
  5  (5)          Q   A
 45  (6)        P&Q   45&I
145  (7)~(P&Q)&(P&Q)  26&I
14   (8)         ~Q   57RAA
1    (9)       P→~Q   48CP
   ア (ア) P            A
1  ア (イ)         ~Q   9アMPP
1  ア (ウ) P&~Q         アイ&I
1  ア (エ)(P&~Q)∨(Q&~P) ウ∨I
    オ(オ)    Q         A
    オ(カ)  ~~Q         オDN
1   オ(キ)~P            9カMTT
1   オ(ク) Q&~P         オキ&I
1   オ(ケ)(P&~Q)∨(Q&~P) ク∨I
1    (コ)(P&~Q)∨(Q&~P) 2アエオケ∨E
(ⅱ)
1  (1)(P&~Q)∨(Q&~P) A
 2 (2)(P&~Q)        A
 2 (3) P            2&E
 2 (4) P∨ Q         3∨I
 2 (5)   ~Q         2&E
 2 (6)~P∨~Q         5∨I
 2 (7)~(P&Q)        6ド・モルガンの法則
 2 (8)(P∨Q)&~(P&Q)  47&I
  9(9)        Q&~P  A
  9(ア)        Q     9&E
  9(イ)      P∨Q     ア∨I
  9(ウ)          ~P  9&E
  9(エ)       ~P∨~Q  ウ∨I
  9(オ)      ~(P&Q)  エ、ド・モルガンの法則
  9(カ)(P∨Q)&~(P&Q)  イオ&I
1  (キ)(P∨Q)&~(P&Q)  1289カ∨E
従って、
(07)により、
(08)
(P∨ Q)&~(P&Q)
②(P&~Q)∨(Q&~P)
に於いて、すなはち、
①(Pまたは、 Qである)が、(Pであって、Qである)といふことはない。
②(Pであって、Qでない)か、または(Qであって、Pでない)。
に於いて、
①=② である。
従って、
(06)(08)により、
(09)
排他的選言」といふ「選言」は、
①(Pまたは、 Qである)が、(Pであって、Qである)といふことはない。
②(Pであって、Qでない)か、または(Qであって、Pでない)。
といふ「選言(disjunction)」を言ふ。
然るに、
(04)により、
(10)
① 真∨真=真
② 真∨偽=真
③ 偽∨真=真
④ 偽∨偽=偽
といふことは、
① 真∨=真
② 真∨=真
である。
然るに、
(10)により、
(11)
① 真∨真=
② 真∨偽=
といふことは、
③ 真
であれば、それだけで、
③ 真∨□
は、そのまま、
③ 真∨□=
である。
然るに、
(12)
1(1)P A
であれば、それだけで、
1(1)真 A
である。
従って、
(11)(12)により、
(13)
1(1)P A
であれば、それだけで、
1(1)真 A
であるが故に、
 (2)P∨Q 1∨I
は、Qの「真・偽」に拘はらず、「恒に真」である。
然るに、
(14)
① P∨Q
② P▽Q
に於いて、
① が「(PとQによる)両立的選言」であるに対して、
② は「(PとQによる)排他的選言」であるとする。
従って、
(06)(08)(13)(14)により、
(15)
① 真∨真=
② 真∨偽=真
ではなく、
① 真▽真=
② 真▽偽=真
であるならば、
1(2)P▽Q 1∨I
の「偽・真」は、「Qの真・偽」に従って、「」にも、「」にもなる。
従って、
(10)~(15)により、
(16)
1(1)P   A
1(2)P∨Q 1∨I(両立的選言導入)
といふ「推論」は「妥当(valid)」であるが、
1(1)P   A
1(2)P▽Q 1∨I(排他的選言導入)
といふ「推論」は「妥当(invalid)」である。
然るに、
(17)
(ⅰ)
1   (1)   P∨ Q  A
 2  (2)  ~P&~Q  A
  3 (3)   P     A
 2  (4)  ~P     2&E
 23 (5)   P&~P  34&I
  3 (6)~(~P&~Q) 25RAA
   7(7)      Q  A
 2  (8)     ~Q  2&E
 2 7(9)   Q&~Q  78&I
   7(ア)~(~P&~Q) 29RAA
1   (イ)~(~P&~Q) 1367ア∨E
(ⅱ)
1   (1)~(~P&~Q)  A
 2  (2) ~(P∨ Q)  A
  3 (3)   P      A
  3 (4)   P∨ Q   3∨I
 23 (5) ~(P∨ Q)&
         (P∨ Q)  24&I
 2  (6)  ~P      35RAA
   7(7)      Q   A
   7(8)   P∨ Q   7∨I
 2 7(9) ~(P∨ Q)&
         (P∨ Q)  28&I
 2  (ア)     ~Q   79RAA
 2  (イ)  ~P&~Q   6ア&I
12  (ウ)~(~P&~Q)&
        (~P&~Q)  1イ&I
1   (エ)~~(P∨ Q)  2ウRAA
1   (オ)   P∨ Q   エDN
従って、
(17)により、
(18)
①       P∨ Q
② ~(~P&~Q)
に於いて、すなはち、
① PかQの、すくなくとも、一方は、本当である。
② PとQの、両方が、同時にウソである。といふことはない。
に於いて、
①=② である(ド・モルガンの法則)。
然るに、
(16)(17)により、
(19)
(ⅱ)
1   (1)~(~P&~Q)  A
 2  (2) ~(P▽ Q)  A
  3 (3)   P      A
  3 (4)   P▽ Q   3▽I
 23 (5) ~(P▽ Q)&
         (P▽ Q)  24&I
 2  (6)  ~P      35RAA
   7(7)      Q   A
   7(8)   P▽ Q   7▽I
 2 7(9) ~(P▽ Q)&
         (P▽ Q)  28&I
 2  (ア)     ~Q   79RAA
 2  (イ)  ~P&~Q   6ア&I
12  (ウ)~(~P&~Q)&
        (~P&~Q)  1イ&I
1   (エ)~~(P▽ Q)  2ウRAA
1   (オ)   P▽ Q   エDN
に於ける、
  3 (4)   P▽ Q   3▽I
   7(8)   P▽ Q   7▽I
に関しては、「妥当(invalid)」である。
従って、
(19)により、
(20)
①       P Q
② ~(~P&~Q)
に於いて、すなはち、
① PかQの、どちらか、一方だけが、本当である。
② PとQの、両方が、同時にウソである。といふことはない。
に於いて、
①⇒② であったとしても、
①=② ではない
従って、
(14)(18)(20)により、
(21)
ド・モルガンの法則」といふのは、
両立的選言()」と、「連言(&)」の間で成り立つ「法則」であって、
排他的選言(▽)」と、「連言(&)」の間で成り立つ「法則」ではない
然るに、
(22)
従って、
(22)により、
(23)
① ¬A├ A→B
②   B├ A→B
すなはち、
① ~P├ P→Q
②   Q├ P→Q
は、「実質含意のパラドクス」である。
然るに、
(24)
(ⅰ)
1  (1) ~P      A
1  (2) ~P∨ Q   1∨I
1  (3)~(P&~Q)  2ド・モルガンの法則
 4 (4)  P      A
  5(5)    ~Q   A
 45(6)  P&~Q   45&I
145(7)~(P&~Q)&
       (P&~Q)  36&I
14 (8)   ~~Q   57RAA
14 (9)     Q   8DN
1  (ア)  P→ Q   49CP
(ⅱ)
1  (1)     Q   A
1  (2) ~P∨ Q   1∨I
1  (3)~(P&~Q)  2ド・モルガンの法則
 4 (4)  P      A
  5(5)    ~Q   A
 45(6)  P&~Q   45&I
145(7)~(P&~Q)&
       (P&~Q)  36&I
14 (8)   ~~Q   57RAA
14 (9)     Q   8DN
1  (ア)  P→ Q   49CP
従って、
(16)(21)~(24)により、
(25)
① ~P├ P→Q
②   Q├ P→Q
といふ「連式」は、「同じ計算」によって、「妥当(Valid)」であるが、「この計算」には、「排他的選言」では、「不可」である所の、
1  (2) ~P∨ Q   1∨I
1  (3)~(P&~Q)  2ド・モルガンの法則
といふ「計算」がなされてゐる。
従って、
(25)により、
(26)
① ~P├ P→Q
②   Q├ P→Q
である所の「実質含意のパラドクス」は、
排他的選言(∨)のパラドクス」ではなく
両立的選言(∨)のパラドクス」である。
令和04年06月08日、毛利太。

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