2017年11月2日木曜日

「与其得小人」の「其の」について(Ⅱb)。

(01)
hitomi_taylorさん2013/10/321:19:40
漢文の質問です!
得小人 で
其の小人を得んよりは、となるみたいなのですが。なぜその語順になるのか理解出来なくて
与得小人 ではなぜダメなのでしょうか??教えてください<(_ _)>
ベストアンサーに選ばれた回答
(02)
カテゴリマスター
ohagitodaihukuさん 編集あり2013/10/322:13:31
与其…不如…というのが、~~better than~~ と同じようなイディオムとして使われるのです。だから、この語順と覚えてください。
然るに、
(03)
① 或得其小人=ある人がその(the)小人を得る。
② 或得其小人=ある人がその人の(his)小人を得る。
に於いて、
① ではなく、普通は、② であると、思はれる。
従って、
(03)により、
(04)
① 得小人=その小人(the)を得る。
② 得小人=その人の(his)小人を得る。
に於いて、
① であるか、② である。
然るに、
(05)
」といふ「漢字(多義語)」には、「くみする(親しくなる)、関係する、賛成する、と、ともにする、あたへる、ゆるす、認める、より」等の、「意味」がある。
従って、
(05)により、
(06)
③ 其人鋭其去人必速=
③ 其与(人)鋭其去(人)必速⇒
③ 其(人)与鋭其(人)去必速=
③ 其の(人に)与すること鋭ければ其の(人を)去ること必ず速やかならん(蘇武、亡妻王氏墓誌銘)=
③ ある人が人と親しくなることに性急であるならば、その人が人から離れることもきっと速いことでしょう(天野成之、漢文基本語辞典、1999年、76頁)。
といふ、「意味」になる。
従って、
(05)(06)により、
(07)
③ 其与人=
③ 其親人=その人が他の人と親しくなる。
である。
従って、
(07)により、
(08)
親_人=その人(主語)が他の人(補語)と親しくなる。
得小人=その人(主語)が小人(目的語)を得る。
である。
従って、
(08)により、
(09)
④ 与得小人寧不若得愚人=
④ 与〔其得(小人)〕寧不[若〔得(愚人)〕]⇒
④ 〔其(小人)得〕与寧[〔(愚人)得〕若]不=
④ 〔其の(小人を)得る〕与りは寧ろ[〔(愚人を)得るに〕しか]ず(資治通鑑、周紀)=
その人が小人を得ることは、(その人が)愚人を得ることに、及ばない。
といふ、「意味」になる。
従って、
(04)(09)により、
(10)
② 与得小人、
④ 与得小人、
に於いて、
② その人の(所有格)小人を得るよりは、
② その(連体詞)人の小人を得るよりは、
④ その人が(主語)小人を得るよりは、
である。
然るに、
(11)
② その人の(所有格)小人を得るよりは、
② その(連体詞)人の小人を得るよりは、
④ その人が(主語)小人を得るよりは、
に於いて、
②=④ ではない。
従って、
(01)(10)(11)により、
(12)
得小人 で
其の小人を得んよりは、となるみたいなのですが。なぜその語順になるのか理解出来なくて
与得小人 ではなぜダメなのでしょうか??教えてください<(_ _)>
に対する「答へ」は、
② その人の(所有格)小人を得るよりは、
② その(連体詞)人の小人を得るよりは、
④ その人が(主語)小人を得るよりは、
に於いて、
②=④ ではない。からである。
然るに、
(13)
④ 与其得小人寧不若得愚人=
④ 徳のないこざかしい小人を得るよりも、むしろ愚かでも徳のある愚人を得る方が良い(教学者、風呂で覚える漢文、1998年、50頁)。
といふのは、飽く迄も、「一般論」である。
従って、
(09)(13)により、
(14)
① 与其得小人寧不若得愚人=
③ その人が小人を得ることは、(その人が)愚人を得ることに、及ばない。
とは言っても、「一般論」である以上、
① 其=その人
といふのは、
① 其=特定の人
といふことには、ならない
従って、
(06)(14)により、
(15)
④ 与其得小人寧不若得愚人=
④(ある人)小人を得ることは、(その人が)愚人を得ることに、及ばない。
といふ、「意味」になる。
然るに、
(09)により、
(16)
④ 与得小人=
其の小人を得るよりは=
その人が小人を得ることは、
である。
従って、
(16)により、
(17)

といふ「漢字」は、

といふ風に「訓読」され、
その人
といふ「意味」になる。
従って、
(17)により、
(18)
④ 其=その人
④ そ=その人
である。
然るに、
(19)
・夫】〔代名(指示・人称)〕
① それ。そこ。その人。そのこと。前にある人や事物をさす。[例]が言ひけらく[その人が言ったことには]〈土佐日記〉
(大修館書店、古語林、1997年、766頁)
(20)
〔ポイント〕現代語では一語の連体詞とするが、古語では「)」が独立した代名詞として用いられるので、代名詞に格助詞「」がついた連語として扱う。
(大修館書店、古語林、1997年、778頁)
従って、
(18)(19)(20)により、
(21)
 =その人
の=+の(が)=その人+の(が)
である。
従って、
(21)により、
(22)
現代語の「この」は連体詞として扱いますが、古文では代名詞「こ」に格助詞「の」がついたものとして扱います。「あの・の」なども同様で、古文と現代文とではこうした違いがあるので注意しましょう(武藤元昭、0からわかる古文、1997年、48頁)。
といふ、ことになる。
従って、
(01)(19)~(20)により、
(23)
「現代文」とは異なり、「古文や漢文」の場合は、「の=+の(が)=その人+の(が)」である。といふことを、知ってゐたならば、hitomi_taylorさんは、
得小人 で
其の小人を得んよりは、となるみたいなのですが。なぜその語順になるのか理解出来なくて
与得小人 ではなぜダメなのでしょうか??教えてください<(_ _)>
といふ「疑問」を持たなかったものと、思はれる。
平成29年11月02日、毛利太。

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