2017年10月31日火曜日

「其与A寧不若B。」は分りにくい(Ⅱ)。

(01)
① むしろ、愚人を得るとしても、小人を得てはならない
②(その、)小人を得るよりは、むしろ愚人を得る方が良い
③ 小人を得ることは、愚人を得ることに及ばない(愚人を得る方が上である)。
④(徳のないこざかしい)小人を得るよりも、(むしろ愚かでも徳のある)愚人を得る方が良い
に於いて、
①=②=③=④ である。
然るに、
(02)
① 寧得愚人無得小人=
① 寧得(愚人)無〔得(小人)〕⇒
① 寧(愚人)得〔(小人)得〕無=
① 寧ろ(愚人を)得るも〔(小人を)得ること〕無かれ=
① むしろ、愚人を得るとしても、小人を得てはならない(作例)。
(03)
② 与其得小人寧得愚人=
② 与〔其得(小人)〕寧得(愚人)⇒
② 〔其(小人)得〕与寧(愚人)得=
② 〔其の(小人を)得る〕与りは寧ろ(愚人を)得よ=
②(その、)小人を得るよりは、むしろ愚人を得る方が良い(作例)。
cf.
 ② 其得牛後=S+V+O。
 であるため、
 ②「其の」は、「the(その)」ではない。
(04)
③ 得小人不若得愚人=
③ 得(小人)不[若〔得(愚人)〕]⇒
③ (小人)得[〔(愚人)得〕若]不=
③ (小人を)得るは[〔(愚人を)得るに〕若か]不=
③ 小人を得ることは、愚人を得ることに及ばない(作例)。
(05)
④ 与其得小人寧不若得愚人=
④ 与〔其得(小人)〕寧不[若〔得(愚人)〕]⇒
④ 〔其(小人)得〕与寧[〔(愚人)得〕若]不=
④ 〔其の(小人を)得る〕与りは寧ろ[〔(愚人を)得るに〕しか]ず(資治通鑑-周紀)=
④ 徳のないこざかしい小人を得るよりも、むしろ愚かでも徳のある愚人を得る方が良い(教学者、風呂で覚える漢文、1998年、50頁)。
従って、
(01)~(05)により、
(06)
① 寧得愚人無得小人。
② 与其得小人寧得愚人。
③ 得小人不若得愚人。
④ 与其得小人寧不若得愚人。
に於いて、
①=②=③=④ である。
然るに、
(07)
④ ご懸念には及びません=心配する必要はありません
といふ「例文」が、さうであるやうに、
④ 及ばない=必要はない
従って、
(05)(07)により、
(08)
② 小人を得るよりは、むしろ、愚人を得る方が良い。
④ 小人を得るよりは、むしろ、愚人を得る必要はない
に於いて、
②=④ である。
然るに、
(09)
② 小人を得るよりは、むしろ、愚人を得る方が良い。
④ 小人を得るよりは、むしろ、愚人を得る必要はない
に於いて、明らかに、
②=④ ではないし、固より、
④ 小人を得るよりは、むしろ、愚人を得る必要はない
といふ「日本語」は、「意味不明」である。
従って、
(04)(09)により、
(10)
④ 与其得小人寧不若得愚人=
④ 与〔其得(小人)〕寧不[若〔得(愚人)〕]⇒
④ 〔其(小人)得〕与寧[〔(愚人)得〕若]不=
④ 〔其の(小人を)得る〕与りは寧ろ[〔(愚人を)得るに〕しか]ず=
④ 小人を得るよりも、愚人を得る方が良い。
といふ「訓読」は、
④ 小人を得るよりは、むしろ、愚人を得る必要はない。
といふ「誤解」を与へる「余地」が有るが故に、「分りにくい」。
然るに、
(11)
与其得小人得愚人。
③ 得小人不若得愚人。
に於いて、
②と③を「合はせる」と、
②+③=
与其得小人不若得愚人。
然るに、
(06)(11)により、
(12)
③ __得小人_不若得愚人。
④ 与其得小人寧不若得愚人。
に於いて、
③=④ である。
従って、
(13)
④ 与其得小人寧不若得愚人=
④ 其の小人を得る与りは、寧ろ愚人を得るにしかず。
であるならば、
④ 与其得小人寧不若得愚人=
④(その、)小人を得るよりは、むしろ、愚人を得る必要はない。
となって、「意味不明」である。
と思はれ方が、ゐるのであるあれば、その場合は、
④ 与其得小人寧不若得愚人=
③ __得小人_不若得愚人。
であることを、思ひ出す、必要がある。
(14)
③ 得小人不若得愚人=
③ 得(小人)不[若〔得(愚人)〕]⇒
③ (小人)得[〔(愚人)得〕若]不=
③ (小人を)得るは[〔(愚人を)得るに〕若か]不=
③ 小人を得ることは、愚人を得ることに及ばない
のであれば、
③ 小人を得ることよりも、愚人を得ることの方が上である
といふことになり、
③ 小人を得ることよりも、愚人を得ることの方が上である
であるならば、
④ 徳のないこざかしい小人を得るよりも、むしろ愚かでも徳のある愚人を得る方が良い(教学者、風呂で覚える漢文、1998年、50頁)。
(15)
⑤ 或不若弟子     (ある人、弟子にしかず)。
⑥ 弟子不必不若師   (弟子は、必ずしも、師にしかずんばあらず)。
⑦ 師而不若其弟子者有之(師にして、その弟子にしかざる者、これ有り)。
に於いて、「命題」としては、
⑤=⑥=⑦ である。
然るに、
(16)
⑤ 或不若弟子     (ある人、弟子にしかず)。
⑥ 弟子不必不若師   (弟子は、必ずしも、師にしかずんばあらず)。
⑦ 師而不若其弟子者有之(師にして、その弟子にしかざる者、これ有り)。
に於ける、「それぞれの印象」は、「同じ」ではない。
然るに、
(06)により、
(17)
① 寧得愚人無得小人   (むしろ、愚人を得るも小人を得ること無かれ)。
② 与其得小人寧得愚人  (その小人を得るよりは、むしろ愚人を得よ)。
③ 得小人不若得愚人   (小人を得るは愚人を得るにしかず)。
④ 与其得小人寧不若得愚人(その小人を得るよりは、むしろ愚人を得るにしかず)。
に於いて、「命題」としては、
①=②=③=④ である。
然るに、
(18)
① 寧得愚人無得小人   (むしろ、愚人を得るも小人を得ること無かれ)。
② 与其得小人寧得愚人  (その小人を得るよりは、むしろ愚人を得よ)。
③ 得小人不若得愚人   (小人を得るは愚人を得るにしかず)。
④ 与其得小人寧不若得愚人(その小人を得るよりは、むしろ愚人を得るにしかず)。
に於ける、「それぞれの印象」も、「同じ」ではない。
平成29年10月31日、毛利太。

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