2017年10月5日木曜日

願はくば、もう一度得ん、兎を。

(01)
対格(たいかく、英: accusative case 、羅: casus accusativus 。略号ACC)は、名詞がもつ格のひとつで、主格対格型言語の場合、他動詞の直接目的語を標識する場合に用いられる。目的格・業格と呼ばれることもある。ドイツ語では4格(der vierte Fall)ということもある。日本語の場合、「」が該当する(ウィキペディア)。
従って、
(01)により、
(02)
① 兎、得る。
② 得る、兎
に於いて、
① 兎 は「対格」である。
② 兎 は「対格」である。
従って、
(02)により、
(03)
① 冀はくば、復た、兎得ん。
といふ「日本語」は、
① 冀はくば、復た得ん、兎
といふ風に、書くことが、出来る。
然るに、
(04)
はくば、ん、を。
といふ「それ」から、「平仮名」を除き、
冀復得兎
といふ風に、書くことにする。
然るに、
(05)
宋人有耕田者。 田中有株。兔走 觸株、折頸而死。 因釈其耒而守株、冀復得兔
宋の国の人で、畑を耕作しているものがあった。(その)畑の中に木の切り株があった。(ちょうどそこへ)兎が走ってきてその切り株にぶつかり、くびの骨を折って死んでしまった。(これはしめたと彼は)そこで手にしていたすきを捨てて(耕作の仕事をやめ、いつまでも)切り株を見まもり、もう一兎を手に入れたいものだと願った
(赤塚忠・遠藤哲夫、漢文の基礎、1973年、35頁)
従って、
(04)(05)により、
(06)
① 冀復得兎。
といふ「漢文(韓非子)」は、
① 冀はくば、復た得ん、兎を。
① 願はくば、もう一度得ん、兎を。
といふ「意味」である。
従って、
(06)により、
(07)
② 復冀得兎。
といふ「漢文」は、
もう一度、願はくば、得ん、兎を。
といふ「意味」である。
従って、
(03)(07)により、
(08)
① 冀得兎。
冀得兎。
といふ「漢文」は、それぞれ、
① 願はくば、もう一度、兎を得ん。
もう一度、願はくば、兎を得ん。
といふ「意味」である。
然るに、
(09)
◆ 冀復得一レ
この句は「復た兎を得んことを冀ふ」と読むが、いまかりに原文の「冀」と「復」とを入れかえて「復冀兎」としても読み方はかわらない。しかし意味内容のうえでは大きな違いがあるので注意を要する。「冀復得一レ兎」の場合は「冀ふ」の内容が下の「復得兎」となる形であるから、「ふたたび兎を手に入れる」ということを「ねがう」の意で、まえにも兎を入れたが、さらにもう一度兎を手に入れたいと望むことになる。ところが「復冀兎」の場合は「復」が「冀」の上にあるので、「復」が「冀」を修飾する形であり、「冀ふ」の内容は「得兎」だけになる。つまり「兎を手に入れること」を「もう一度ねがう」の意である。
(赤塚忠・遠藤哲夫、漢文の基礎、1973年、36頁)
従って、
(08)(09)により、
(10)
① 冀〔得(兎)〕。
冀〔得(兎)〕。
に於いて、それぞれ、
① 願はくば、もう一度、兎を得ん。
もう一度、願はくば、兎を得ん。
といふ「意味」であるものの、「訓読」に関しては、両方とも、
① 復た兎を得んことを冀ふ。
② 復た兎を得んことを冀ふ。
である。
然るに、
(11)
(A)不常得一レ油(常に、油を得ず)
(B)常不油 (常には油を得ず)
この例は次のように下から返読してその意味をはっきりさせることができる。
(A)不油(油を得ること常ならず)
(B)常油(油を得ざること常なり)
(原田種成、私の漢文講義、1995年、156頁改)
従って、
(11)により、
(12)
③ 不[常〔得(兎)〕]。
④ 常[不〔得(兎)〕]。
であれば、それぞれ、
③ [〔(兎を)得ること〕常なら]ず。
④ [〔(兎を)得〕ざること]常なり。
といふ風に、「返読」することが、出来る。
従って、
(12)により、
(13)
① 冀[復〔得(兎)〕]。
② 復[冀〔得(兎)〕]。
であれば、それぞれ、
① [〔(兎を)得ることの〕復びならんことを]冀ふ。
② [〔(兎を)得んと〕冀ふこと]復びなり。
といふ風に、「返読」することが、出来る。
平成29年10月05日、毛利太。

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