2017年10月19日木曜日

主語は・目的語は・トピックは

(01)
 馬 引きて、童  帰りぬ。
 馬を引いて、少年が帰った。
 馬を引いて、少年は帰った。
のやうに、「古文」の場合は、「を・は・が」を、「省略」することがある。
(中村菊一、基礎からわかる古典文法、1978年、5頁を参照)
然るに、
(02)
「古文」ではなく、

「訓読」であれば、
「馬引きて」であって、
「馬 引きて」ではない。
(03)
① 玉琢か_ざれば=玉を琢かなければ
であれば、
① 玉=玉
であるが、
① 玉琢かざれば=玉は琢かなければ
であれば、
① 玉=玉
である。
(04)
② 吾道   =私の道。
② 吾欲する所=私が好きなもの。
② 有子曰く =有子が言ふこと。
に於いて、
②「~」は、「名詞」を「修飾」し、
② 火の滅する如し    =火が消えるときのやうである。
② 日月の食する如し   =日食や月食のやうである。
② 嵩山の五獄に於ける如し=五獄に於ける嵩山のやうである。
に於いて、
②「~」は、「如し」の前に在る。
然るに、
(05)
②「~が」が、「名詞」を「修飾」し、
②「~が」が、「如し」の前に在る場合以外に、
②「~が」といふ「言ひ方」は、「訓読」には無い(はずである)。
然るに、
(06)
【1】[][
② 連体修飾語を作る。〈・・・・・
【20】[ごとし]
接続「体言+」に付く。また活用語の「連体形+」に付く。
(中村菊一、基礎からわかる古典文法、1978年、143・154頁改)
従って、
(04)(05)(06)により、
(07)
「古文や訓読」に於ける「~」は、「~」と同じく、「My」のやうな「所有格」であって、「I」のやうな「主格」ではない
(08)
③ 孔子、楚より帰る。
に対して、
③ 孔子楚より帰る。
③ 孔子楚より帰る。
といふ「言ひ方」は、「訓読」には無い
(09)
④ 孔子聖人なり。
に対して、
④ 孔子聖人なり。
④ 孔子、聖人なり。
といふ「訓読」は、「訓読」には無い
cf.
④ 孔子聖人なり=聖人は孔子なり=孔子以外は聖人ではない
(10)
⑤ 君子不器=
⑤ 君子不(器)⇒
⑤ 君子(器)不=
⑤ 君子は(器なら)ず=
⑤ 君子は、器とは異なり、その働きは自由である。
に於いて、
⑤「君子」は、「主語」である。
(11)
⑥ 君子不以其所以養人者害人=
⑥ 君子不{以[其所‐以〔養(人)〕者]害(人)}⇒
⑥ 君子{[其〔(人)養〕所‐以者]以(人)害}不=
⑥ 君子は{[其〔(人を)養ふ〕所‐以の者を]以て(人を)害せ}不=
⑥ 君子は、彼自身、人々を養ふための手段とするモノ(土地)のために、人々を害さない。
に於いて、
⑥「其の人を養ふ所以の者を以て」は、「副詞句」である。
従って、
(12)
⑥ 君子不害人=
⑥ 君子不〔害(人)〕⇒
⑥ 君子〔(人)害〕不=
⑥ 君子は〔(人を)害せ〕不=
⑥ 君子は、人々を害さない。
に於いて、
⑥「君子」は、「主語」である。
(13)
⑦ 軍旅之事吾不学之=
⑦ 軍旅之事吾不(之学)〕⇒
⑦ 軍旅之事吾(之学)不=
⑦ 軍旅之事は吾(これを学ば)ず=
⑦ 軍隊のことは、私は学ばない。
に於いて、
⑦ 軍旅之事=これ
である。
従って、
(13)により、
(14)
⑦ 軍旅之事は、吾これを学ばず。
に於いて、
⑦「吾」が、「主語」であって、
⑦「軍旅之事」は、「目的語」である。
(15)
⑧ 父母之年不可不知=
⑧ 父母之年不[可〔不(知)〕]⇒
⑧ 父母之年[〔(知)不〕可]不=
⑧ 父母之年は[〔(知ら)不る〕可から]不=
⑧ (子たる者は)父母の年知らないわけにいかない。
に於いて、
⑧「父母の年」は、「目的語」である。
従って、
(10)(12)(14)(15)に於いて、
(16)
⑤ 君子は、器ならず。
⑥ 君子は、人を養ふ所以の者を以て人を害せず。
⑦ 軍旅の事は、これを学ばず。
⑧ 父母の年は、知らざるべからず。
に於いて、
⑤「君子」は、「主語」である。
⑥「君子」は、「主語」である。
⑦「軍旅の事」は、「目的語」である。
⑧「父母の年」は、「目的語」である。
従って、
(16)により、
(17)
「~」自体は、「主語」そのものでも、「目的語」そのものでもない。
然るに、
(18)
Roughly speaking, "wa" is a topic marker, and "ga" is a subject marker(by Namiko AbeUpdated August 23, 2017).
(19)
トピック【topic】の意味
出典:デジタル大辞泉(小学館)
論題。題目。「トピック別に分類する」
2 話題になる事柄・出来事。また、話題。トピックス。「トピックニュース」
従って、
(17)(18)(19)により、
(20)
⑤ 君子は、器ならず。
⑥ 君子は、人を養ふ所以の者を以て人を害せず。
⑦ 軍旅の事は、これを学ばず。
⑧ 父母の年は、知らざるべからず。
に於いて、
⑤「君子は」は、「話題」である。
⑥「君子は」は、「話題」である。
⑦「軍旅の事は」は、「話題」である。
⑧「父母の年は」は、「話題」である。
との、ことである。
然るに、
(21)
「 主語 」であることと、「話題」であることは、「矛盾」せず、
「目的語」であることと、「話題」であることは、「矛盾」しない。
従って、
(16)(20)(21)により、
(22)
⑤「君子は」は、「話題」であって「主語」である。
⑥「君子は」は、「話題」であって「主語」である。
⑦「軍旅の事は」は、「話題」であって「目的語」である。
⑧「父母の年は」は、「話題」であって「目的語」である。
然るに、
(18)により、
(23)
"ga" is a subject marker(主語の目印である)。
然るに、
(08)(09)により、
(24)
③ 孔子、楚より帰る。
④ 孔子聖人なり。
に対して、
③ 孔子楚より帰る。
③ 孔子楚より帰る。
④ 孔子聖人なり。
といふ「訓読」は無い

従って、
(23)(24)により、
(25)
"ga" is a subject marker(は主語の目印である)。
といふことは、「漢文」の場合には、成立しない。
平成29年10月19日、毛利太。

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