2018年8月17日金曜日

象は鼻が長い(ので、耳が長い兎は象ではない)。

(a)『返り点と括弧』については、『「括弧」の「順番」(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post.html)』他をお読み下さい。
(b)『返り点』については、『「返り点」の「付け方」を教へます(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post_3.html)』他をお読み下さい。
(01)
1     (1)象は鼻が長い。 A
1     (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
1     (〃)すべてのxについて、xが象であるならば、有るyはxの鼻であって長く、すべてのzについてzがxの鼻でないならば、zは長くない。 A
 2    (2)兎は耳が長い。 A
 2    (〃)∃x{兎x&∃z(耳zx&長z&~鼻zx)}         A
 2    (〃)有るxは兎であって、有るzはxの耳であって長く、zはxの鼻ではない。 A
1     (3)   象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)  1UE
  4   (4)   兎a&∃z(耳za&長z&~鼻za)          A
  4   (5)      ∃z(耳za&長z&~鼻za)          4&E
   6  (6)         耳ca&長c&~鼻ca           A
    7 (7)∃x(兎x&象x)                      A
     8(8)   兎a&象a                       A
     8(9)      象a                       8&E
1    8(ア)      ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)  39MPP
1    8(イ)                 ∀z(~鼻za→~長z)  ア&E
1    8(ウ)                    ~鼻ca→~長c   イUE
   6  (エ)                ~鼻ca           6&E
1  6 8(オ)                         ~長c   ウエMPP
   6  (カ)             長c                6&E
1  6 8(キ)                      長c&~長c   オカ&I
1  67 (ク)                      長c&~長c   78キEE
1 4 7 (ケ)                      長c&~長c   56クEE
12  7 (コ)                      長c&~長c   24ケEE
12    (サ)~∃x(兎x& 象x)                    7コRAA
12    (シ)∀x~(兎x& 象x)                    サ量化子の関係
12    (ス)  ~(兎a& 象a)                    シUE
12    (セ)   ~兎a∨~象a                     ス、ド・モルガンの法則
12    (ソ)    兎a→~象a                     セ含意の定義
12    (タ) ∀x(兎x→~象x)                    ソUI
12    (〃)すべてのxについて、xが兎ならば、xは象ではない。      ソUI
  4   (チ)    兎a                         4&I
124   (ツ)       ~象a                     ソチMPP
124   (テ)    兎a&~象a                     チツ&I
124   (ト) ∃x(兎x&~象x)                    テEI
12    (ナ) ∃x(兎x&~象x)                    24トEE
12    (〃)有るxは兎であって象ではない。                24トEE
12    (〃)兎は象ではない。                       24トEE
従って、
(01)により、
(02)
① 象は鼻が長い。
といふ「前提」から、
② 兎は象ではない。
といふ「結論」を得るためには、
① 象は鼻が長い。
といふ「命題」は、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
といふ風に、書かなければ、ならない。
従って、
(02)により、
(03)
『論理学』といふ「観点」から、
① 象は鼻が長い。
といふ「日本語」を論じるのであれば、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
といふ「述語論理」を、避けて通るべきではない。
然るに、
(04)
伝統論理学を速水滉『論理学』(016)で代表させよう。わたしのもっているのが四十三年の第十九冊一万部中の一冊で、なお引続き刊行だろうから、前後かなり多くの読者をもつ論理学書と考えられる。新興の記号論理学の方は、沢田充茂『現代論理学入門』(062)を参照することとする(三上章、日本語の論理、1963年、4頁)。
(05)
「象は鼻が長い」はどれが主辞がわからないから、このままでは非論理的な構造の文である、と言う人がもしあった(沢田『入門』二九ペ)とすれば、その人は旧『論理学』を知らない人であろう、これはこのままで、
 象は 鼻が長い。 
 主辞 賓辞
とはっきりしている。速水式に簡単明リョウである。意味も、主辞賓辞の関係も小学生にもわかるはずの文である。これに文句をつけたり、それを取り次いだりするのは、人々が西洋文法に巻かれていることを語る以外の何物でもない。このまま定理扱いしてもよろしい。そしてこの定理の逆は真でないとして、鼻の長いもの例に、鞍馬山の天狗だの、池の尾の禅珍内供だのを上げるのも一興だろう。それでおしまいである。
(三上章、日本語の論理、1963年、13・14頁)。
従って、
(03)(04)(05)により、
(06)
三上章先生は、「新興の記号論理学の方は、沢田充茂『現代論理学入門』(062)を参照することとする」一方で、
① 象は鼻が長い=
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「論理式」に関しては、それを、論じることが無い。
平成30年08月17日、毛利太。

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