(01)
返読文字とは、そのような「他動詞」や「助動詞」以外に、日本語と逆の語順になる漢字のことです。
入試で頻出となる返読文字は以下です。
① 有無を表す表現 …「有」「無」「多」「少」
(ViCOLLA Magazine)
然るに、
(02)
「有」は「もつ」が原義だから「・・・・がある」にあたり、「・・・・である」ではない。
(中沢希男、同訓異字辞典、1980年、21頁)
従って、
(01)(02)により、
(03)
「有(返読文字)」は、「他動詞」ではないと、言ふものの、
① 我有父母。
② I have parents.
に於いて、
①=② であるため、
「有(have)」は、「他動詞」である。
然るに、
(04)
① 有父母。
② have parents.
に於いて、
①=② であるが、
① は、「漢文」として、「正しい」が、
② は、「英文」として、「正しく」はない。
従って、
(04)により、
(05)
① 有父母(父母あり)。
② 父母有(父母あり)。
といふ「語順」に於いて、
① は、「漢文」として、「正しい」が、
② は、「漢文」として、「正しく」はない。
従って、
(05)により、
(06)
① 世有伯楽 (世に伯楽有り)。
② 千里馬常有 (千里の馬は常に有り)。
③ 千里馬常有之(千里の馬は常に、之れ有り)。
といふ「語順」に於いて、
② の「語順」は、「漢文」としては、「破格」である。
然るに、
(07)
② 常識、常備、常駐、常在
等がさうであるやうに、
② 常有
が、「名詞」であるならば、
② 千里馬(主語)+常有(述語)。
であるため、
② 千里馬常有(千里の馬は常に有り)。
であっても、「破格」ではない。
然るに、
(08)
(ⅰ)
1 (1) ~∀x(Fx) A
2 (2) ~∃x(~Fx) A
3(3) ~Fa A
3(4) ∃x(~Fx) 3EI
23(5) ~∃x(~Fx)&
∃x(~Fx) 24&I
2 (6) ~~Fa 3RAA
2 (7) Fa 6DN
2 (8) ∀x(Fx) 7UI
12 (9) ~∀x(Fx)&
∀x(Fx) 18&I
1 (ア)~~∃x(~Fx) 29RAA
1 (イ) ∃x(~Fx) アDN
(ⅱ)
1 (1) ∃x(~Fx) A
2 (2) ∀x(Fx) A
3(3) ~Fa A
2 (4) Fa 2UE
23(5) ~Fa&Fa 34&I
3(6) ~∀x(Fx) 25RAA
1 (7) ~∀x(Fx) 136EE
従って、
(08)により、
(09)
① ~∀x(Fx)
② ∃x(~Fx)
に於いて、すなはち、
① すべてのxが、Fである。といふわけではない。
② あるxは、Fでない。
に於いて、
①=② である(量化子の関係)。
従って、
(09)により、
(10)
① ~∀x{千里馬x→∃y(伯楽yx)}
② ∃x~{千里馬x→∃y(伯楽yx)}
に於いて、
①=② である(量化子の関係)。
然るに、
(11)
(ⅰ)
1 (1)~∀x{千里馬x→∃y(伯楽yx)} A
1 (2)∃x~{千里馬x→∃y(伯楽yx)} 1量化子の関係
3(3) ~{千里馬a→∃y(伯楽ya)} A
3(4) ~{~千里馬a∨∃y(伯楽ya)} 3含意の定義
3(5) 千里馬a&~∃y(伯楽ya) 4ド・モルガンの法則
3(6)∃x{千里馬x&~∃y(伯楽yx)} 5EI
1 (7)∃x{千里馬x&~∃y(伯楽yx)} 136EE
(ⅱ)
1 (1)∃x{千里馬x&~∃y(伯楽yx)} A
2(2) 千里馬a&~∃y(伯楽ya) A
2(3) ~{~千里馬a∨∃y(伯楽ya)} 2ド・モルガンの法則
2(4) ~{千里馬a→∃y(伯楽ya)} 3含意の定義
2(5)∃x~{千里馬x→∃y(伯楽yx)} 4EI
1 (6)∃x~{千里馬x→∃y(伯楽yx)} 125EE
1 (7)~∀x{千里馬x→∃y(伯楽yx)} 6量化子の関係
従って、
(11)により、
(12)
① ~∀x{千里馬x→∃y(伯楽yx)}
② ∃x{千里馬x&~∃y(伯楽yx)}
に於いて、すなはち、
① すべてのxについて、xが千里馬であるならば、あるyがxの伯楽である。といふわけではない。
② あるxは、千里馬であって、xの伯楽であるyは、存在しない。
に於いて、すなはち、
① すべての千里馬に対して、伯楽がゐる。といふわけではない。
② 伯楽がゐない所の、千里の馬がゐる。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(13)
千里馬常有、而伯楽不二常有一。
千里の馬は常有れども、伯楽は常には有らず。
一日に千里走る名馬はいつもいるのであるが、(これを見わける)伯楽はいつもいるとはかぎらないのである。
◇ 千里馬常有、而伯楽不二常有一。
「不二常~一」は「常ニハ~ず」と読み、「いつも~とはかぎらない」の意を示す一部否定の形。
全部否定は「常不二~一」の形で「常に~ず」と読み、「いつもかならず~ない」の意味をあらわす。
(旺文社、漢文の基礎、1973年、153・4・5頁)
従って、
(12)(13)により、
(14)
① 千里馬常有、而伯楽不二常有一。
といふ「漢文(部分否定)」は、
① ~∀x{千里馬x→∃y(伯楽yx)}
といふ「述語論理式」に、「相当」する。
令和03年10月27日、毛利太。
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