2025年12月16日火曜日

「(久々に、)漢文訓読と括弧と返り点」について(Ⅱ)。

(01)
① 欲〔読(書)〕。
に於いて、
欲〔 〕⇒〔 〕欲
読( )⇒( )読
といふ「移動」を行ふと、
② 〔(書)読〕欲。
然るに、
(01)により、
(02)
②〔読〕欲。
に対して、「平仮名」を加へると、
③〔書を読まんと〕欲す。
然るに、
(03)
⑪ 読(欲〔書)〕。
に於いて、
欲〔 〕⇒〔 〕欲
読( )⇒( )読
といふ「移動」を行ふと、
⑫(〔書)読〕欲。
然るに、
(03)により、
(04)
⑫(書)読欲。
に対して、「平仮名」を加へると、
⑬(書を)読まんと欲す。
然るに、
(02)(04)により、
(05)
②〔( )
⑫( )
に於いて、
② は、「括弧」として「普通」であるが、
⑫ は、「括弧」として「異常」である。
然るに、
(06)
「1から9迄の1桁の数を、ランダムに、10通りに並べて下さい。」
といふ風に、AIに頼んだところ。
① 4,2,8,1,9,5,3,7,6
② 9,1,5,3,7,2,6,4,8
③ 7,3,6,8,2,4,9,5,1
④ 2,5,9,4,1,8,7,6,3
⑤ 8,6,1,7,3,9,4,2,5
⑥ 3,9,2,5,6,1,8,4,7
⑦ 5,7,4,6,8,3,1,9,2
⑧ 1,8,3,9,4,7,2,5,6
⑨ 6,4,7,2,5,1,3,8,9
⑩ 9,5,8,3,1,6,2,7,4
然るに、
(07)
① 4,2,8,1,9,5,3,7,6
② 9,1,5,3,7,2,6,4,8
③ 7,3,6,8,2,4,9,5,1
④ 2,5,9,4,1,8,7,6,3
⑤ 8,6,1,7,3,9,4,2,5
⑥ 3,9,2,5,6,1,8,4,7
⑦ 5,7,4,6,8,3,1,9,2
⑧ 1,8,3,9,4,7,2,5,6
⑩ 9,5,8,3,1,6,2,7,4
であれば、
① 4〔2(8{1)9〈5[3〕]7(6)]}〉
② 9〈1,5〔3(7{2)6[4〕]}8〉
③ 7《3〔6〈8「2(4[9『5{1)〕]}〉》」』
④ 2(5[9「4〔1)8《7〈6{3〕]}〉》」
⑤ 8《6{17〈3(9「4〔2)〕5}〉》」
⑥ 3〔9《2(5[6{1)8〈〕4]}7〉》
⑦ 5[7〈4〔6{8《3(19「2)〕]}〉》」
⑧ 18{3(9〈4〔7[2)〕56]}〉
⑨ 6{4〔7〈2(5[1)3〕]}〉89
⑩ 9《5〔8〈3(1,6[,2)7{4〕]}〉》
といふ「順番」に対して、
#( )⇒( )#
#〔 〕⇒〔 〕#
#[ ]⇒[ ]#
#{ }⇒{ }#
#〈 〉⇒〈 〉#
#《 》⇒《 》#
#「 」⇒「 」#
#『 』⇒『 』#
といふ「移動」を行ふと、
① 〔({1)2〈[3〕4]5(6)7]}8〉9
② 〈1〔({2)3[4〕5]6}78〉9
③ 《〔〈「([『{1)2〕3]4}5〉6》7」8』9
④ ([「〔1)2《〈{3〕4]5}6〉7》8」9
⑤ 《{1〈(「〔2)3〕45}6〉7》8」9
⑥ 〔《([{1)2〈〕34]5}67〉8》9
⑦ 5[7〈4〔6{8《3(19「2)〕]}〉》」
⑧ 1{(〈〔[2)3〕456]7}8〉9
⑨ {〔〈([1)23〕4]5}6〉789
⑩ 《〔〈(1[2)3{4〕5]6}7〉8》9
となって、
① 1<2<3<4<5<6<7<8<9
② 1<2<3<4<5<6<7<8<9
③ 1<2<3<4<5<6<7<8<9
④ 1<2<3<4<5<6<7<8<9
⑤ 1<2<3<4<5<6<7<8<9
⑥ 1<2<3<4<5<6<7<8<9
⑦ 1<2<3<4<5<6<7<8<9
⑧ 1<2<3<4<5<6<7<8<9
⑨ 1<2<3<4<5<6<7<8<9
⑩ 1<2<3<4<5<6<7<8<9
といふ「順番」に、「(無理やりに)並び替へること」は出来る。
然るに、
(07)により、
(08)
② 〈1〔({2)3[4〕5]6}78〉9
③ 《〔〈「([『{1)2〕3]4}5〉6》7」8』9
④ ([「〔1)2《〈{3〕4]5}6〉7》8」9
⑤ 《{1〈(「〔2)3〕45}6〉7》8」9
⑥ 〔《([{1)2〈〕34]5}67〉8》9
⑦ 5[7〈4〔6{8《3(19「2)〕]}〉》」
⑧ 1{(〈〔[2)3〕456]7}8〉9
⑨ {〔〈([1)23〕4]5}6〉789
⑩ 《〔〈(1[2)3{4〕5]6}7〉8》9
に於ける、
① 〔({ )〈[ 〕]( )]}〉
② 〈〔({ )[ 〕]}〉
③ 《〔〈「([『{ )〕]}〉》」』
④ ([「〔 )《〈{ 〕]}〉》」
⑤ 《{〈(「〔 )〕}〉》」
⑥ 〔《([{ )〈 〕]}〉》
⑦ [〈〔{《(「 )〕]}〉》」
⑧ {(〈〔[ )〕]}〉
⑨ {〔〈([ )〕]}〉
⑩ 《〔〈([ ){ 〕]}〉》
といふ「これら」は、「括弧」として「異常」である。
従って、
(05)~(08)により、
(09)
>2>1
ではなく、
② 2<>1
のやうな「順番」を、「括弧」を用ひて、
③ 1<2<
といふ「順番」に「並び替へる」ことは、「出来ない」。
然るに、
(10)
① F〈E{D[4〔13(2)〕B〔58(67)A(9)〕C]}〉。
に於いて、
#( )⇒( )#
#〔 〕⇒〔 〕#
#[ ]⇒[ ]#
#{ }⇒{ }#
#〈 〉⇒〈 〉#
といふ「移動」を行ふと、
① 〈{[〔1(2)3〕4〔5(67)8(9)A〕BC]D}E〉F。
② 1<2<3<4<5<6<7<8<9<A<B<C<D<E<F。
然るに、
(11)
① 不聞有冀復得兎使宋人釋其耒守株者。⇔
② 不〈聞{有[冀〔復得(兎)〕使〔宋人釋(其耒)守(株)〕者]}〉⇒
③〈{[〔復(兎)得〕冀〔宋人(其耒)釋(株)守〕使者]有}聞〉不⇒
④〈{[〔復た(兎を)得んことを〕冀ひ〔宋人をして(其の耒を)釋て(株を)守ら〕使むる者の]有るを}聞か〉不⇔
⑤ もう一度、兎を得ることを願って、宋人に対して、その鋤を捨てて、株を守らせる者がゐる、といふことを聞かない。
cf.
⑤ 我从没听说过有人会为了再抓到一只兔子而弃置锄头,守在树桩旁(グーグル翻訳)。
⑤ I have never heard of anyone abandoning their plow and guarding their stumps in the hope of getting another rabbit(グーグル翻訳).
従って、
(09)(10)(11)により、
(12)
① 不聞有冀復得兎使宋人釋其耒守株者。
といふ「漢文(作例)」は、
①〈{[〔( )〕〔( )( )〕]}〉。
といふ「括弧」を用ひて、
④〈{[〔復た(兎を)得んことを〕冀ひ〔宋人をして(其の耒て)釋て(株を)守ら〕使むる者の]有るを}聞か〉不。
といふ「語順」に「並び替へる」ことが「出来る」。
然るに、
(13)
① 不聞有冀復得兎使宋人釋其耒守株者。
に対して、「返り点」は、
① 不復得一レ兎使宋人釋其耒上レ株者
従って、
(12)(13)により、
(14)
①〈{[〔( )〕〔( )( )〕]}〉
といふ「括弧」は、
① レ レ 乙 二 一レ 下 二 一 上レ 甲
といふ「返り点」に「相当」する。
然るに、
(15)
仮に、
〈 〉=間 人
{ }=地 天
[ ]=乙 甲
〔 〕=下 上
( )=二 一
であるとして、
① 〈 { [ 〔 ( ) 〕〔 ( )( ) 〕 ] } 〉
といふ「括弧」は、
① 間 地 乙 下 二一 上 下 二一 二一 上 甲 天 人
といふ「返り点」に「相当」する。
従って、
(14)(15)により、
(16)
① レ レ 乙 二 一レ 下 二 一 上レ 甲
といふ「返り点」は、
① 間 地 乙 下 二一 上 下 二一 二一 上 甲 天 人
といふ「返り点」に「置き換へ可能」であって、
① 間 地 乙 下 二一 上 下 二一 二一 上 甲 天 人
といふ「返り点」は、
① 〈 { [ 〔 ( ) 〕〔 ( )( ) 〕 ] } 〉
といふ「括弧」に「相当」する。
然るに、
(17)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。すなわち、その補足構造における語順は、国語とは全く反対である。しかし、訓読は、国語の語順に置きかえて読むことが、その大きな原則となっている。それでその補足構造によっている文も、返り点によって、国語としての語順が示されている(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、296頁)
従って、
(11)~(17)により、
(18)
① 不復得一レ兎使宋人釋其耒上レ株者
といふ「返り点」と、
② 不〈聞{有[冀〔復得(兎)〕使〔宋人釋(其耒)守(株)〕者]}〉。
といふ「括弧」は、
① 不聞有冀復得兎使宋人釋其耒守株者。
といふ「漢文補足構造」と同時に、
② 復た兎を得んことを冀ひ、宋人をして其の耒を釋て株を守ら使むる者の有るを聞かず。
といふ「国語補足構造」を示してゐる。
然るに、
(19)
① 不聞有冀復得兎使宋人釋其耒守株者。
といふ「漢文」を、
① フツ ブン イウ キ フク トク ト シ ソウ ジン シャ キ ライ シュ シャ。
① Bù wén yǒu jì fù dé tù shǐ sòng rén shì qí lěi shǒuzhū zhě.
といふ風に、「音読出来たとしても、
① 不聞有冀復得兎使宋人釋其耒守株者。
といふ「漢文」の、
② 不〈聞{有[冀〔復得(兎)〕使〔宋人釋(其耒)守(株)〕者]}〉。
といふ「補足構造(管到)」を、「把握出来るわけではない
従って、
(18)(19)により、
(20)
数年前、ある言語学教育関連の新聞の連載のコラムに、西洋文化研究者の発言が載せられていた。誰もが知る、孟浩然の『春眠』「春眠暁を覚えず・・・・・・」の引用から始まるそのコラムでは、なぜ高校の教科書にいまだに漢文訓読があるのかと疑問を呈し、「返り点」をたよりに「上がったり下がったりしながら、シラミつぶしに漢字にたどる」読み方はすでに時代遅れの代物であって、早くこうした状況から脱するべきだと主張する。「どこの国に外国語を母国語の語順で読む国があろう」かと嘆く筆者は、かつては漢文訓読が中国の歴史や文学を学ぶ唯一の手段であり「必要から編み出された苦肉の知恵であった」かもしれないが、いまや中国語を日本にいても学べる時代であり「漢文訓読を卒業するとき」だと主張するのである(「訓読」論 東アジア漢文世界と日本語、中村春作・市來津由彦・田尻祐一郎・前田勉 共編、2008年、1頁)。
といふ「主張」は、「必ずしも、当たらない」。

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