(01)
① ( )
② ( ))
に於いては、
② ( ))
の場合は、
② ) の「個数」が、「一つだけ、余分」であるため、
② ( の「個数」が、「一つだけ、不足」してゐる。
然るに、
(02)
③ (((( )( ))( ))( )( ))
④ (((( )( ))( ))( )( )))
に於いて、
④ (((( )( ))( ))( )( )))
の場合も、
④ ) の「個数」が、「一つだけ、余分」であるため、
④ ( の「個数」が、「一つだけ、不足」してゐる。
従って、
(01)(02)により、
(03)
① ( )
② ( ))
③ (((( )( ))( ))( )( ))
④ (((( )( ))( ))( )( )))
に於いて、
② は、「括弧として、間違ひ」であって、
④ も、「括弧として、間違ひ」である。
然るに、
(04)
② ( ))
であれば、「一目瞭然」であるが、
④ (((( )( ))( ))( )( )))
であれば、「一目瞭然」ではないし、
④ (((( )( ))( ))(( )( )))))
であれば、なおさら、「一目瞭然」ではない。
然るに、
(05)
④ (((( )( ))( ))( )( )))
に対して、
④ {[〔( )( )〕( )]( )( )})
であれば、
④ { }) を見れば、
④ ) の「個数」が、「一つだけ、余分」である。
といふことが、「一目瞭然」である。
従って、
(05)により、
(06)
① {[〔( )( )〕( )]( )( )}
の方が、
② (((( )( ))( ))( )( ))
よりも、「読みやすい」。
従って、
(06)により、
(07)
① 使{籍誠不[以〔畜(妻子)憂(飢寒)〕乱(良心)]有(銭財)以済(医薬)}。
② 使(籍誠不(以(畜(妻子)憂(飢寒))乱(良心))有(銭財)以済(医薬))。
に於いて、
② (((( )( ))( ))( )( ))
よりも、
① {[〔( )( )〕( )]( )( )}
の方が、はるかに、「読みやすい」。
従って、
(08)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。すなわち、その補足構造における語順は、国語とは全く反対である(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、二九六頁)。
といふことから、
① 使{籍誠不[以〔畜(妻子)憂(飢寒)〕乱(良心)]有(銭財)以済(医薬)}。
といふ「漢文の補足構造」に於いて、
使{ }⇒{ }使
不[ ]⇒[ ]不
以〔 〕⇒〔 〕以
畜( )⇒( )畜
憂( )⇒( )憂
乱( )⇒( )乱
有( )⇒( )有
済( )⇒( )済
といふ「移動」を行ふことにより、
① 使{籍誠不[以〔畜(妻子)憂(飢寒)〕乱(良心)]有(銭財)以済(医薬)}⇒
① {籍誠[〔(妻子)畜(飢寒)憂〕以(良心)乱]不(銭財)有以(医薬)済}使=
① {籍をして誠に[〔(妻子を)畜ひ(飢寒を)憂ふるを〕以て(良心を)乱さ]不(銭財)有りて以て(医薬を)済さ}使む。
といふ「漢文訓読」を行ふ際に、
① {[〔( )( )〕( )]( )( )}
ではない所の、
② (((( )( ))( ))( )( ))
といふ「括弧」は、「役に立たない」。
すなはち、
(09)
① 使{[〔( )( )〕( )]( )( )}。
であれば、
使{ }⇒{ }使
といふ「移動の結果」が、
① {[〔( )( )〕( )]( )( )}使。
であることが、「一目瞭然」であるのに対して、
② (((( )( ))( ))( )( ))
の場合は、
使( )⇒( )使
といふ「移動の結果」が、
② (((( )( ))( ))使( )( ))。
であるのか、
② (((( )( ))( ))( )( ))使。
であるのか、といふことが、「すぐには、見えて来ない」。
従って、
(10)
使{ }⇒{ }使
不[ ]⇒[ ]不
以〔 〕⇒〔 〕以
ではなく、
使( )⇒( )使
不( )⇒( )不
以( )⇒( )以
である場合に、「移動の先」を「見極めよう」とするならば、「時間が係り過ぎる」ため、
① {[〔( )( )〕( )]( )( )}
ではなく、
② (((( )( ))( ))( )( ))
の場合は、「訓読」には、「全く以て、適してゐない」。
加へて、
(11)
① 使籍誠不以畜妻子憂飢寒乱良心有銭財以済医薬。
① 人 丙下二 一中 上乙 甲二 一 地 天
① 籍をして誠に妻子を畜ひ飢寒を憂ふるを以て良心を乱さず銭財有りて以て医薬を済さ使む。
のやうに、
① 人 丙 下 二 一 中 上 乙 甲 二 一 地 天
であれば、
(Ⅰ)二 一
(Ⅱ)下 中 上
(Ⅲ)丙 乙 甲
(Ⅳ)人 地 天
といふ「各々の、返り点」は、
二 下 丙 二 人
↑ ↑ ↑ ↑ ↑
一 中 乙 一 地
↑ ↑ ↑
上 甲 天
といふ具合に、「下から上へ返る」だけである。
然るに、
(12)
① 使籍誠不以畜妻子憂飢寒乱良心有銭財以済医薬。
① 人 丙下二 一中 上乙 甲二 一 地 天
に対して、
② 使 籍誠不以畜妻子憂飢寒乱良心有銭財以済 医薬。
② 十三 八五二 一四 三七 六十 九 十二十一
のやうに、
② 十三 十 五 二 一 四 三 九 八 七 六 十二 十一
の場合は、
十三
十 十 ↑
五 五 ↑ ↓ ↑
↑ ↓ ↑ ↓ ↑
二 二 四 ↓ ↑ ↓ ↑
↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑
一 ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑
三 三 ↓ 九 ↓ ↑
↓ ↑ ↓ ↑
↓ 八 ↓ ↑
↓ ↑ ↓ ↑
↓ 七 ↓ ↑
↓ ↑ ↓ ↑
六 六 ↓ ↑
↓ 十二 十二
↓ ↑
十一 十一
といふ「具合」に、「下から上に返り、上から下へ降りる」ことになる。
従って、
(11)(12)により、
(13)
① 人 丙 下 二 一 中 上 乙 甲 二 一 地 天
といふ「返り点」に対して、
② 十三 十 五 二 一 四 三 九 八 七 六 十二 十一
といふ「一二点」の場合は、「上と下と」を「確認」しない限り、「その次に、上に行くのか・下へ降りるのか」が「定まらない」ため、「極めて、読みにくい」。
従って、
(10)(13)により、
(14)
② (((( )( ))( ))( )( ))
② 十三 十 五 二 一 四 三 九 八 七 六 十二 十一
よりも、
① {[〔( )( )〕( )]( )( )}
① 人 丙 下 二 一 中 上 乙 甲 二 一 地 天
の方が、「格段に、読みやすい」。
従って、
(14)により、
(15)
実際、一二点しか施していないものも過去にはあった(はてなブログ:固窮庵日乗)。
かどうかは、知らないものの、(16)のやうな「言ひ分」は、「正しく」はない。
(16)
すべて一二点に変換すればいいのである。一二点は無限にあるから、どんなに複雑な構文が出現しても対応できる。実際、一二点しか施してい
ないものも過去にはあった。一二点で返ったものを含めて返る必要がある時に上中下点を用いるのは、数学で( )の次に{ }を用いるのと似て
いる。数式は必ずしも{( )}の形にしなくてもよい。( ( ) )の形であってもその機能は同じである。そして{ }の次に用いる括弧がないか
ら、数学の式を危機管理能力のない非論理的な体系だとは誰も言わない。高等数学ではどのようになっているのか私は詳しいことはわからない
が、{ }を用いるのは数式が人間にとって認識しやすく便利だからという理由に過ぎないのではないか。パソコンに計算させるのなら( )を
いくら重ねても問題ないのだから(はてなブログ:固窮庵日乗)。
(17)
① 使籍誠不以畜妻子憂飢寒乱良心有銭財以済医薬。
① 人 丙下二 一中 上乙 甲二 一 地 天
① 使{籍誠不[以〔畜(妻子)憂(飢寒)〕乱(良心)]有(銭財)以済(医薬)}。
① 籍をして誠に妻子を畜ひ飢寒を憂ふるを以て良心を乱さず銭財有りて以て医薬を済さ使む。
といふ「漢文訓読」を行ふのは、「人間」であって、「パソコン」ではないため、
パソコンに計算させるのなら( )をいくら重ねても問題ない(はてなブログ:固窮庵日乗)。
といふことは、この場合、「関係」が無い。
(18)
例へば、「多久弘一、多久の漢文公式110、1988年」の場合であれば、
(Ⅰ)レ
(Ⅱ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
(Ⅲ)上 中 下
(Ⅳ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(Ⅴ)天 地 人
に於いて、
(Ⅳ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(Ⅴ)天 地 人
は、「一度も、使はれていない」。
従って、
(18)により、
(19)
(Ⅳ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
といふ「10個」が「不足」する「可能性」は、「ほとんど、皆無」である。
然るに、
(20)
tmtdpapaさん2014/5/615:32:27
返り点について教えてください!
問題を解いていたら、上下点がないのに、甲乙丙丁点の4つが使われていました。それは、上下点は最大上中下の3つしかないからでしょうか?
ベストアンサーに選ばれた回答
aran03_555さん 2014/5/617:08:01
あなたの言うとおりです。返り点は一二点→上下点→甲乙点→天地点の順番で使用します。しかし、一二点を使った後、上中下点でも対応できない場合は、上中下点を使わずに、甲乙丙丁点を使います。
従って、
(19)(20)により、
(21)
(Ⅳ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
といふ「10個」が「不足」する「可能性」は、「ほとんど、皆無」であるものの、その一方で、
(Ⅲ)上 中 下
は、「実際に、不足」する。
従って、
(22)
仮に、「返り点」を「プロデュース」した「特定の人物」が、ゐたとしたら、
(Ⅲ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(Ⅳ)上 中 下
といふ「順番」にせず、
(Ⅲ)上 中 下
(Ⅳ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
といふ「順番」にした、その「人物」は、「迂闊」である。
(23)
漢文訓読の返り点の、一二点、上中下点、甲乙点、天地人点という順に「論理的な必然性」(33頁)はないという(はてなブログ:固窮庵日乗)。
といふ風に、古田島先生が述べてゐるのは、
(Ⅲ)上 中 下
(Ⅳ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
といふ「順番」にしたことが「迂闊」である。といふ、ことである。
(24)
{( )}ではなく、
【( )】であっても、
[( )]であっても、構はない。
といふことは、もちろん、さうである。
然るに、
(25)
「括弧」の場合、
(Ⅲ)( ) は、「1種類」。
(Ⅳ){ } も、「1種類」。
である。
従って、
(26)
「順番」を「換へた」としても、
(Ⅳ) は、「1種類」。
(Ⅲ) も、「1種類」。
のままである。
然るに、
(27)
「返り点」の場合は、
(Ⅲ)上 中 下 は「3種類」。
(Ⅳ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸 は「10種類」。
従って、
(28)
「順番」を「換へた」場合は、
(Ⅲ) は、「 3種類 」。
(Ⅳ) は、「10種類」。
から、
(Ⅳ) は、「10種類」。
(Ⅲ) は、「 3種類 」。
に、変はらざるを得ない。
然るに、
(29)
③ 下〔二(一)中(上)〕⇒
③ 〔(一)二(上)中〕下=
③ 一 二 上 中 下。
従って、
(30)
④ 囗[下〔二(一)中(上)〕]⇒
④ [〔(一)二(上)中〕下]囗=
④ 一 二 上 中 下 囗。
然るに、
(31)
⑤ 丁(丙〔二[一]乙[甲]〕)⇒
⑤ (〔[一]二[甲]乙〕丙)丁=
⑤ 一 二 甲 乙 丙 丁。
従って、
(30)(31)により、
(32)
④ [〔( )( )〕]
④ (〔[ ][ ]〕)
に対して、
④ 囗 下 二 一 中 上
⑤ 丁 丙 二 一 乙 甲
である。
従って、
(32)により、
(33)
⑤ 丁 丙 二 一 乙 甲 ではなく、
④ 囗 下 二 一 中 上 であれば、
④ 囗 が「不足」する。一方で、
⑤ (〔[ ][ ]〕)
④ [〔( )( )〕]
の場合は、どちらであっても、「不足」しない。
従って、
(34)
「 括弧 」の場合、「順番」は「どうでも良い」ものの、
「返り点」の場合、「順番」は「どうでも良い」とは、言へない。
従って、
(35)
漢文訓読の返り点の、一二点、上中下点、甲乙点、天地人点という順に「論理的な必然性」(33頁)はないという。しかし、数学でも( )の次に{ }を使うことに論理的な必然性はない。( )の次に【 】でも[ ]でもかまわないのである。そしてそのことで数学を論理的でないと考える人は誰もいない。
といふ「言ひ分」は、「誤り」である。
平成28年12月02日、毛利太。
―「関連記事」―
(a)「レ点」に付いて(http://kannbunn.blogspot.com/2016/12/blog-post.html)。
(b)「返り点(特にレ点)」が苦手な人へ(http://kannbunn.blogspot.com/2016/11/blog-post_30.html)。
(c)「括弧」と『返り点』(http://kannbunn.blogspot.com/2016/11/blog-post.html)。
(d)「漢文の補足構造」としての「括弧」の付け方(http://kannbunn.blogspot.com/2016/09/blog-post_22.html)。
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