2020年7月1日水曜日

同一性の「が」('が' of identity)。

(01)
問題5:ラッセルの「確定記述の理論」を用いて、つぎの論証の健全性を確立せよ。
(a)マイン・カンプの著者は1945年に死んだ。ヒトラーはマイン・カンプを書いた。故にヒトラーは1945年に死んだ。
Exercise 5: Using Russell's theory of definite description, establish the soundness of the following argument.
(a)The author of the Mein Kampf died in 1945; Histler wrote Mein Kampf; therefore Histler died in 1945.
(E.J.レモン 著、武生治一郎・浅野楢英 訳、論理学初歩、1973年、215頁と原文)。
(02)
1   (1)∃x(我が闘争x&45年死x)               A
  2  (2)   我が闘争a&45年死a                A
   3 (3)∃y{ヒトラーy&我が闘争y&∀x(我が闘争x→x=y)} A
    4(4)   ヒトラーb&我が闘争b&∀x(我が闘争x→x=b)  A
    4(5)               ∀x(我が闘争x→x=b)  4&E
    4(6)                  我が闘争a→a=b   5UE
  2  (7)                  我が闘争a       2&E
  2 4(8)                        a=b   67MPP
    4(9)   ヒトラーb                      4&E
  2 4(ア)   ヒトラーa                      89=E
  2  (イ)         45年死a                2&E
  2 4(ウ)   ヒトラーa&45年死a                アイ&I
  2 4(エ)∃x(ヒトラーx&45年死x)               ウEI
  23 (オ)∃x(ヒトラーx&45年死x)               34エEE
1 3 (カ)∃x(ヒトラーx&45年死x)               12オEE
1 3 (〃)あるxはヒトラーであって1945年に死んだ。        12オEE
(03)
問題□:ラッセルの「確定記述の理論」を用いて、つぎの論証の健全性を確立せよ。
(b)マイン・カンプの著者は1945年には死んでいない。ヒトラーマイン・カンプを書いた。故にヒトラーは1945年に死ななかった。
Exercise 5: Using Russell's theory of definite description, establish the soundness of the following argument.
(b)The author of the Mein Kampf did not die in 1945; Hitler wrote Mein Kampf; therefore Hisler did not die in 1945.
(04)
1   (1)∃x(我が闘争x&~45年死x)               A
  2  (2)   我が闘争a&~45年死a                A
   3 (4)∃y{ヒトラーy&我が闘争y&~∃x(我が闘争x&x≠y)} A
   4(4)   ヒトラーb&我が闘争b&~∃x(我が闘争x&x≠b)  A
   4(5)               ~∃x(我が闘争x&x≠b)  4&E
   4(6)               ∀x~(我が闘争x&x≠b)  5量化子の関係
   4(7)                 ~(我が闘争a&a≠b)  6UE
   4(8)                  ~我が闘争a∨a=b   7ド・モルガンの法則
   4(9)                   我が闘争a→a=b   8含意の定義
 2   (ア)   我が闘争a                       2&E
 2  4(イ)                         a=b   9アMPP
    4(ウ)   ヒトラーb                       4&E
 2  4(エ)   ヒトラーa                       イウ=E
 2   (オ)         ~45年死a                2&E
 2  4(カ)   ヒトラーa&~45年死a                エオ&I
 2  4(キ)∃x(ヒトラーx&~45年死x)               カEI
 23 (ク)∃x(ヒトラーx&~45年死x)               34キEE
1 3 (ケ)∃x(ヒトラーx&~45年死x)               129EE
1 3 (コ)あるxはヒトラーであって1945年には死ななかった。     129EE
従って、
(01)~(04)により、
(05)
「ラッセルの確定記述の理論」は、
「マイン・カンプの著者」が「ヒトラー」と「同一人物」であるならば、
「マイン・カンプの著者」に対して「起こったこと」は、「ヒトラー」にも「起こったこと」であり、
「マイン・カンプの著者」に対して「起こったらなかったこと」は、「ヒトラー」にも「起こらなかったこと」である。
といふことを、示してゐる。
然るに、
(06)
いづれにせよ、
「マイン・カンプの著者(The author of the Mein Kampf)」は、「一人しかゐない」。
従って、
(06)により、
(07)
① ヒトラーは「マイン・カンプの著者」であって、
② 「マイン・カンプの著者」はヒトラーである。
然るに、
(08)
② 「マイン・カンプの著者」はヒトラーである。
③ ヒトラー以外は「マイン・カンプの著者」ではない
に於いて、
②=③ は「対偶(Contraposition)」である。
然るに、
(04)により、
(09)
③ ∃y{ヒトラーy&我が闘争y&~∃x(我が闘争x&x≠y)}⇔
③ あるyはヒトラーであって、我が闘争の著者であり、あるxが我が闘争の著者であって、xがy以外である、といふことはない
然るに、
(10)
② 「マイン・カンプの著者」はヒトラーである。
③ ~∃x(我が闘争x&x≠y)⇔
③ あるxが我が闘争の著者であって、xがy以外である、といふことはない
に於いて、
②=③ は「対偶(Contraposition)」である。
(01)~(10)により、
(11)
① Histler is the author of the Mein Kampf.
といふ「英語」は、
② ヒトラーは「マイン・カンプの著者」であって、ヒトラー以外は「マイン・カンプの著者」ではない
といふ「日本語」に相当し、
② ヒトラーは「マイン・カンプの著者」であって、ヒトラー以外は「マイン・カンプの著者」ではない
といふ「日本語」は、
③ ∃y{ヒトラーy&我が闘争y&~∃x(我が闘争x&x≠y)}⇔
③ あるyはヒトラーであって、我が闘争の著者であり、あるxが我が闘争の著者であって、xがy以外である、といふことはない
といふ「述語論理式」に相当する。
然るに、
(07)により、
(12)
① Hitler is the author of the Mein Kampf.
The author of the Mein Kampf is Hitler.
に於いて、
①=② である。
然るに、
(13)
(b)「である(is)」の両側にならぶ語句は、近似値的に同じ意味をたもちつつ入れ換えることができるか―もしできるならば、その「である(is)」は同一性の「である」('is' of identity)である。
(E.J.レモン 著、武生治一郎・浅野楢英 訳、論理学初歩、1973年、205頁改)
従って、
(13)により、
(14)
「A is B.」であって、
「B is A.」ならば、「A=B」であって、その場合の、「is」は、同一性の「である」('is' of identity)である。
cf.
交換法則(commutative law)」。
然るに、
(15)
(1)Socrates is a philosopher.
(2)Paris is a city.
(3)Courage is a virtue.
(4)Socrates is the philosopher who taught Plato.
(5)Paris is the capital of France.
(6)Courage is the virtue I most admire.
Sentences(1)-(3)are simple subjects-predicate sentences; a particular objects(Socrates,Paris,courage)is said to have a certain property(being a philosopher,being a city,being a virtue). We accordingly call the 'is' in(1)-(3)the 'is' of predication. This use of 'is' must be contrasted with the 'is' in(4)-(6), where rather the sense is 'is' the same object as(with 'object' used in some broad neutral sense). This 'is' we distinguish as the 'is' of identity.
(E.J.Lemmon, Beginning Logic,1978/6/1,p160)
(1)―(3)の文は単純な主語・述語の文である。特定の対象が(ソクラテス、パリ、勇気)がある性質(哲学者であること、都市であること、徳であること)をもつ、と言われるのである。従って、(1)―(3)における「である」のことを、述語の作用する「である」('is' of predication)とよぶ。この「である」の用法は(4)―(6)における「である」と比較対照される必要がある。ここでは、その意味はむしろ、「同じ対象である」(「対象:という語をある広い、中立的な意味に用いて)である。この「である」をわれわれは同一性の「である」('is' of identity)として区別する。
(E.J.レモン 著、武生治一郎・浅野楢英 訳、論理学初歩、1973年、205頁)
従って、
(14)(15)により、
(16)
(4)Socrates is the philosopher who taught Plato.
(5)Paris is the capital of France.
(6)Courage is the virtue I most admire.
であれば、
(4)Socrates is the philosopher who taught Plato.
(5)Paris is the capital of France.
(6)Courage is the virtue I most admire.
(4)The philosopher who taught Plato is Socrates
(5)The capital of France is Paris.
(6)The virtue I most admire is Courage.
に於ける「is」が、同一性の「である('is' of identity)」である。
従って、
(16)により、
(17)
(4)ソクラテスプラトンを教えた哲学者である。
(5)パりフランスの首都である。
(6)勇気私が最も賛美する徳である。
に於ける「」は、同一性の「」('' of identity)である。
然るに、
(18)
(6)私最も賛美する徳。
に於ける「」は、
(6)我家。
(6)博士愛した数式。
に於ける「」と同じく、「連体助詞」の「」であるため、同一性の「」('' of identity)ではない
令和02年07月01日、毛利太。

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