(01)
「何々の」というものを重視したいものである。
すべての馬が動物であれば、馬の頭は動物の頭である。(ド・モルガンの例)
というようなものに備えて、「何々の」に対して敏感でることが望ましい。以上のように、条件文で道理を表わすことわざで了解事項となるものは、ガノニヲの範囲である。
(三上章、日本語の論理、1963年、38頁)
然るに、
(02)
① すべての馬が動物であれば、 馬の頭は動物の頭である。
② すべての馬は動物である。故に、馬の頭は動物の頭である。
② All horses are animals; therefore all horses' heads are animals' heads.
に於いて、
①=② であるが、(ド・モルガンの例)といふのであれば、
① ではなく、
② である。
(03)
ド・モルガンが、明らかに健全であるにもかかわらず、伝統的な論理学のわくぐみのなかでは取り扱うことができなかった論証として挙げた、有名な、また簡単な論証がある。
(1)すべての馬は動物である。故にすべての馬の頭は動物の頭である。
― 中略 ―
あるものが馬の頭であるためには、それがその馬の頭であるようなある馬が存在しなかければならない。記号で書くと、
aは、∃y(馬y&頭ay)であるとき、またそのときに限って、「動物」の頭である。同様に、
aは、∃y(馬y&頭ay)であるとき、またそのときに限って、 「馬」 の頭である。従って、
われわれが(1)の論証を正当化するために必要のある連式はつぎの通りである。
(1)∀x(馬x→動x)├ ∀x{∃y(馬y&頭xy)→∃y(動y&頭xy)}
1 (1) ∀x(馬x→動x) A
2 (2) ∃y(馬y&頭ay) A
3(3) 馬b&頭ab A
3(4) 馬b 3&E
3(5) 頭ab 3&E
1 (6) 馬b→動b 1UE
1 3(7) 動b 46MPP
1 3(8) 動b&頭ab 57&I
1 3(9) ∃y(動y&頭ay) 8EI
12 (ア) ∃y(動y&頭ay) 239EE
1 (イ) ∃y(馬y&頭ay)→∃y(動y&頭ay) 2アCP
1 (ウ)∀x{∃y(馬y&頭xy)→∃y(動y&頭xy)} イUI
(論理学初歩、E.J.レモン 著、 竹尾治一郎・浅野楢英 訳、1973年、166・7頁改)
然るに、
(04)
(2)∀x(馬x→動x)├ ∀x(馬x→∃y(頭yx)}→∀x{馬x→∃y(頭yx&動x)}
1 (1)∀x(馬x→動x) A
2 (2)∀x{馬x→∃y(頭yx)} A
1 (3) 馬a→動a 1UE
2 (4) 馬a→∃y(頭ya) 2UE
5 (5) 馬a A
1 5 (6) 動a 35MPP
25 (7) ∃y(頭ya) A
8(8) 頭ba A
1 58(9) 頭ba&動a 68&I
1 58(ア) ∃y(頭ya&動a) 9EI
125 (イ) ∃y(頭ya&動a) 78アEE
12 (ウ) 馬a→∃y(頭ya&動a) 5イCP
12 (エ)∀x{馬x→∃y(頭yx&動x)} ウUI
1 (オ)∀x(馬x→∃y(頭yx)}→
∀x{馬x→∃y(頭yx&動x)} 2エCP
然るに、
(05)
馬には動物の頭がある。⇔
∀x{馬x→∃y(頭yx&動x)}⇔
すべてのxについて{xが馬であるならば、あるyはxの頭であって、xは動物である}。
従って、
(03)(04)(05)により、
(06)
(1)∀x(馬x→動x)├ ∀x{∃y(馬y&頭xy)→∃y(動y&頭xy)}
(2)∀x(馬x→動x)├ ∀x{馬x→∃y(頭yx)}→∀x{馬x→∃y(頭yx&動x)}
といふ「論証」、すなはち、
(1)すべての馬は動物である。故に、すべての馬の頭は、動物の頭である。
(2)すべての馬は動物である。故に、すべての馬に頭が有るならば、すべての馬には動物の頭が有る。
といふ「論証」は、両方とも、「妥当」である。
令和02年07月04日、毛利太。
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