(01)
誤謬の最も直接的な形は、次の「証明」に見られる。
1(1) Fa A
1(2)∀xFx 1UI
たとえば、F を奇数であると解釈し、数の世界において、任意に奇数、たとえば3を選ぶとしよう。その結果は Fa は真となる。しかしここから、すべての数は奇数であるということ―これは偽であるが―明らかに帰結しない。(1)から(2)への進みは、制限によってはばまれる。なぜなら、(1)はそれ自身に依存し、そしてそのなかには「a」が現われるからである。
(E.J.レモン 著、武生治一郎・浅野楢英 訳、論理学初歩、1973年、140頁)
然るに、
(02)
F=奇数
{すべての数}={1,2,3}
であるとして、
① ∀xFx
②{F1&F2&F3}
③{すべての整数は、奇数である。}
④{1は奇数であって、2は奇数であって、3は奇数である。}
に於いて、
①=②=③=④である。
然るに、
(03)
④{1は奇数であって、2は奇数であって、3は奇数である。}
⑤{1は奇数であるが、2は偶数であって、3は奇数である。}
に於いて、
④ は「偽(ウソ)」であって、
⑤ は「真(本当)」である。
従って、
(01)(02)(03)により、
(04)
1(1) Fa A
1(2)∀xFx 1UI
といふ「計算」は、確かに、「誤謬(fallacy)」である。
然るに、
(05)
1 (1) ~(Fa∨~Fa) A
2(2) Fa A
2(3) Fa∨~Fa 2∨I
12(4) ~(Fa∨~Fa)&
(Fa∨~Fa) 12&I
1 (5) ~Fa 24RAA
1 (6) Fa∨~Fa 5∨I
1 (7) ~(Fa∨~Fa)&
(Fa∨~Fa) 16&I
(8)~~(Fa∨~Fa) 17RAA
(9) (Fa∨~Fa) 8DN
(ア)∀x(Fx∨~Fx) 9UI
然るに、
(06)
F=奇数
{すべての数}={1,2,3}
であるとして、
① ∀x(Fx∨~Fx)
②{すべての整数は、奇数か、偶数である。}
③{(F1∨~F1)&(F2∨~F2)&(F3∨~F3)}
④{(1は奇数か、偶数であり)、(2は奇数か、偶数であり)、(3は奇数か、偶数である)。}
に於いて、
①=②=③=④である。
然るに、
(07)
③(1は奇数か、または、偶数である。)は「真(本当)」であって、
③(2は奇数か、または、偶数である。)は「真(本当)」であって、
③(3は奇数か、または、偶数である。)は「真(本当)」である。
従って、
(05)(06)(07)により、
(08)
1 (1) ~(Fa∨~Fa) A
2(2) Fa A
2(3) Fa∨~Fa 2∨I
12(4) ~(Fa∨~Fa)&
(Fa∨~Fa) 12&I
1 (5) ~Fa 24RAA
1 (6) Fa∨~Fa 5∨I
1 (7) ~(Fa∨~Fa)&
(Fa∨~Fa) 16&I
(8)~~(Fa∨~Fa) 17RAA
(9) (Fa∨~Fa) 8DN
(ア)∀x(Fx∨~Fx) 9UI
といふ「計算」は、「正しい」。
然るに、
(09)
1(1) Fa A
1(2)∀xFx 1UI
の場合は、
(1)の「左」には、1があり、(1)には、Faがあるため、(1)にはaがある。
(2)の「左」には、1があり、(1)には、Faがあるため、(1)にはaがある。
ものの、これに対して、
(9) (Fa∨~Fa) 8DN
(ア)∀x(Fx∨~Fx) 9UI
の場合は、
(9)の「左」には、「何も無い」し、
(ア)の「左」にも、「何も無い」。
従って、
(01)(09)により、
(10)
1(1) Fa A
1(2)∀xFx 1UI
は「反則」であるが、
(9) (Fa∨~Fa) 8DN
(ア)∀x(Fx∨~Fx) 9UI
は「反則」ではない。
然るに、
(11)
因みに言ふと、
(ⅰ)
1(1) Fa A
1(2)∃xFx 1EI
(ⅱ)
1 (1)∃xFx A
2(2) Fa A
(ⅲ)
1(1)∃xFx A
1(2) Fa A
(ⅳ)
1 (1) Fa A
2 (2) ∃xGx A
3(3) Ga A
1 3(4) Fa&Ga 13&I
1 3(5)∃x(Fx&Gx) 3EI
12 (6)∃x(Fx&Gx) 235EE
に於いて、
(ⅰ)は「正しい」。
(ⅱ)も「正しい」。
(ⅲ)は「正しくない」。
(ⅳ)も「正しくない」。
令和02年07月03日、毛利太。
0 件のコメント:
コメントを投稿