2021年4月9日金曜日

「パースの法則」と「演繹定理」。

―「昨日(令和03年04月09日)の記事」を補足します。―
(01)
命題計算では、パースの法則((P→Q)→P)→P のことを言う。この意味するところを書き出すと、命題Pについて、命題Qが存在して、「PならばQ」からPが真であることが従うときには、Pは真でなければならないとなる。とりわけ、Qとして偽を選んだ場合には、Pから偽が従うときは常にPが真であるならば、Pは真であるとなる。
パースの法則は直観論理や中間命題論理では成立せず、演繹定理だけからでは導くことができない(ウィキペディア)。
然るに、
(02)
1   (1)  (P→Q)→P   A
 2  (2)  ~P∨Q      A
 2  (3)   P→Q      2含意の定義
12  (4)        P   13MPP
1   (5) (~P∨Q)→P   24CP演繹定理
1   (6)~(~P∨Q)∨P   2含意の定義
  7 (7)~(~P∨Q)     A
  7 (8)  P&~Q      7ド・モルガンの法則
  7 (9)  P         8&E
   ア(ア)        P   A
1   (イ)  P         679アア∨E
    (ウ)((P→Q)→P)→P 1イCP(演繹定理
従って、
(02)により、
(03)
Γ├((P→Q)→P)→P
といふ「連式(Sequent)」に於ける、
Γ は、空 である。
然るに、
(04)
演繹定理(Deduction theorem)は次のように表現される。
 Γ,A├ B
ならば、
 Γ├ A→B
であるが、
 Γ が空のときは当然、
  ├ A→B
である。
(長尾真・淵一博、論理と意味、1983年、39・40頁改)
然るに、
従って、
(02)(03)(04)により、
(05)
「証明(02)」は、紛れもなく、
(Γ,A├ B)⇔(Γ├ A→B)
である所の、「演繹定理」による「証明」である。
然るに、
(06)
「証明(02)」の際に、
「定理(含意の定義・ド・モルガンの法則)」を用ひない場合は、
「やむを得ず、その分長くなる」のであって、「次の証明」がそれである。
1             (1)    (P→Q)→ P   A
 2            (2)    ~P∨Q       A
  3           (3)    P&~Q       A
   4          (4)    ~P         A
  3           (5)    P          3&E
  34          (6)    P&~P       45&I
   4          (7)  ~(P&~Q)      36RAA
    8         (8)       Q       A
  3           (9)      ~Q       3&E
  3 8         (ア)    Q&~Q       89&I
    8         (イ)  ~(P&~Q)      3アRAA
 2            (ウ)  ~(P&~Q)      2478イ∨E
     エ        (エ)    P          A
      オ       (オ)      ~Q       A
     エオ       (カ)    P&~Q       エオ&I
 2   エオ       (キ)  ~(P&~Q)&
                    (P&~Q)      ウカ&I
 2   エ        (ク)     ~~Q       オキRAA
 2   エ        (ケ)       Q       クDN
 2            (コ)     P→Q       エケCP(演繹定理
12            (サ)           P   1コMPP
1             (シ)   (~P∨Q)→ P   2サCP(演繹定理
       ス      (ス)   (~P∨Q)&~P   A
       ス      (セ)   (~P∨Q)      ス&E
1      ス      (ソ)           P   シセMPP
       ス      (タ)          ~P   ス&E
1      ス      (チ)        P&~P   ソタ&I
1             (ツ) ~{(~P∨Q)&~P}  スチRAA
        テ     (テ)~{~(~P∨Q)∨ P}  A
         ト    (ト)  ~(~P∨Q)      A
         ト    (ナ)  ~(~P∨Q)∨ P   ト∨I
        テト    (ニ)~{~(~P∨Q)∨ P}&
                  {~(~P∨Q)∨ P}  テナ&I
        テ     (ヌ) ~~(~P∨Q)      トニRAA
        テ     (ネ)   (~P∨Q)      ヌDN
          ノ   (ノ)           P   A
          ノ   (ハ)  ~(~P∨Q)∨ P   ノ∨I
        テ ノ   (ヒ)~{~(~P∨Q)∨ P}&
                  {~(~P∨Q)∨ P}  テハ&I
        テ     (フ)          ~P   ノヒRAA
        テ     (ヘ)   (~P∨Q)&~P   ネフ&I
1       テ     (ホ) ~{(~P∨Q)&~P}&
                   {(~P∨Q)&~P}  ツヘ&I
1             (マ)~~{~(~P∨Q)∨P}  テホRAA
1             (ミ)   ~(~P∨Q)∨P   マDN
           ム  (ム)   ~(~P∨Q)     A
            メ (メ)     ~P        A
            メ (モ)     ~P∨Q      メ∨I
           ムメ (ヤ)   ~(~P∨Q)&
                     (~P∨Q)     ムモ&I
           ム  (ユ)    ~~P        メヤRAA
           ム  (ヨ)      P        ユDN
             ラ(ラ)           P   A
1             (リ)      P        ミムヨララ∨E
              (ル) ((P→Q)→P)→P   1リCP(演繹定理
従って、
(02)(06)により、
(07)
((P→Q)→P)→P である所の、「パースの法則」は、
「E.J.レモンの、自然演繹の規則」である所の、「原子規則(10 primitive rules)」である所の、
「A、MPP、DN、CP、&I、&E、∨I、∨E、RAA」によって、「証明」出来る。
然るに、
(08)
命題計算の規則は、本質的にゲンツェン(G.Gentzen)に由来するものである。
(E.J.レモン 著、論理学初歩、竹尾治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、序ⅲ)
従って、
(07)(08)により、
(09)
((P→Q)→P)→P である所の、「パースの法則」は、
「E.J.レモンの、自然演繹の規則(ゲンツェンの自然演繹に由来する)」によって、「証明」出来る。
従って、
(01)(09)により、
(10)
((P→Q)→P)→P である所の、「パースの法則」は、「演繹定理」だけでは導くことができない(ウィキペディア)。」
とは言ふものの、「パースの法則」は、「ゲンツェンの自然演繹」だけで、導くことができる。
然るに、
(11)
1(1)     P  A
1(2)  ~Q∨P  1∨I
1(3)   Q→P  2含意の定義
 (4)P→(Q→P) 13CP(演繹定理
従って、
(07)(11)により、
(12)
 P→(Q→P) である所の、「ルカジェヴィッツの公理(Ⅰ)」も、
「E.J.レモンの、自然演繹の規則(ゲンツェンの自然演繹に由来する)」によって、「証明」出来る。
従って、
(02)(09)(11)(12)により、
(13)
①((P→Q)→P)→P
②  P→(Q→P)
である所の、
①「パースの法則」と、
②「ルカジェヴィッツの公理(Ⅰ)」等は、 (ⅰ)
1   (1)  (P→Q)→P   A
 2  (2)  ~P∨Q      A
 2  (3)   P→Q      2含意の定義
12  (4)        P   13MPP
1   (5) (~P∨Q)→P   24CP(演繹定理
1   (6)~(~P∨Q)∨P   2含意の定義
  7 (7)~(~P∨Q)     A
  7 (8)  P&~Q      7ド・モルガンの法則
  7 (9)  P         8&E
   ア(ア)        P   A
1   (イ)  P         679アア∨E
    (ウ)((P→Q)→P)→P 1イCP(演繹定理
(ⅱ)
   1(1)     P  A
   1(2)  ~Q∨P  1∨I
   1(3)   Q→P  2含意の定義
    (4)P→(Q→P) 13CP(演繹定理)
といふ「自然演繹」で「導出可能(derivable)」な、「普通の、恒真式(トートロジー)」である。
令和03年04月09日、毛利太。

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