(01)
① 人有喜与不如己者為友之心。
といふ「漢文の補足構造」が、
① 人有〈喜{与[不〔如(己)〕者]為(友)}之心〉。
といふ「括弧」によって、表はされてゐる、とする。
然るに、
(02)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。
すなわち、その補足構造における語順は、国語とは全く反対である。
(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、二九六頁)
従って、
(01)(02)により、
(03)
① 人有〈喜{与[不〔如(己)〕者]為(友)}之心〉。
② 人に〈{[〔(己に)如か〕不る者]与(友と)為るを}喜ぶ之心〉有り。
に於いて、
① は、「漢文の補足構造」であって、
② は、「訓読の補足構造」である。
従って、
(03)により、
(04)
③ 人有〈喜{与[不〔如(自分)〕者]為(友人)}之心〉。
④ 人に〈{[〔(自分に)如か〕不る者]与(友人と)為るを}喜ぶ之心〉有り。
に於いて、
③ は、「漢文の補足構造」であって、
④ は、「訓読の補足構造」である。
然るに、
(05)
① 人有喜与不如己者為友之心=
① 人
有地
喜丙
与下
不三
如二
己一
者上
為乙
友甲
之 心天⇒
② 人
己一
如二
不三
者上
与下
友甲
為乙
喜丙
之 心天
有地=
② 人に己一
に如二
か不三
る者上
与下
友甲
に為乙
るを喜丙
ぶ之 心天
有地り=
② 人には、己よりも劣った者と友となることを喜ぶ心が有る。
(06)
③ 人有喜与不如自分者為友人之心=
③ 人
有地
喜丙
与下
不三
如二
自分一
者上
為乙
友人甲
之 心天⇒
④ 人
自分一
如二
不三
者上
与下
友人甲
為乙
喜丙
之 心天
有地=
④ 人に自分一
に如二
か不三
る者上
与下
友人甲
に為乙
るを喜丙
ぶ之 心天
有地り=
④ 人には、自分よりも劣った者と友人となることを喜ぶ心が有る。
従って、
(03)~(06)により、
(07)
① 人有〈喜{与[不〔如( 己)〕者]為( 友)}之心〉。
③ 人有〈喜{与[不〔如(自分)〕者]為(友人)}之心〉。
といふ「括弧」と、
① 人
有地
喜丙
与下
不三
如二
己一
者上
為乙
友甲
之 心天。
③ 人
有地
喜丙
与下
不三
如二
自分一
者上
為乙
友人甲
之 心天。
といふ「返り点」は、
① 人有喜与不如己者為友之心。
③ 人有喜与不如自分者為友人之心。
といふ「漢文の、補足構造」を、表してゐる。
然るに、
(08)
「学校で習ふ、返り点」としては、
① 人
有地
喜丙
与下
不三
如二
己一
者上
為乙
友甲
之 心天。
といふ「返り点」は、「マチガイ」であって、
① 人
有乙
喜下
与二
不レ
如レ
己
者一
為上レ
友
之 心甲。
といふ「返り点」だけが、「正しい」。
然るに、
(10)
① 人
有乙
喜下
与二
不レ
如レ
己
者一
為上レ
友
之 心甲。
③ 人
有地
喜丙
与下
不三
如二
自分一
者上
為乙
友人甲
之 心天。
であれば、
① の「返り点」と、
③ の「返り点」は、「同じ」ではない。
従って、
(11)
① 人
有地
喜丙
与下
不三
如二
己一
者上
為乙
友甲
之 心天。
③ 人
有地
喜丙
与下
不三
如二
自分一
者上
為乙
友人甲
之 心天。
ではなく、
① 人
有乙
喜下
与二
不レ
如レ
己
者一
為上レ
友
之 心甲。
③ 人
有地
喜丙
与下
不三
如二
自分一
者上
為乙
友人甲
之 心天。
であるならば、その場合の「返り点」は、
① 人有〈喜{与[不〔如( 己)〕者]為( 友)}之心〉。
③ 人有〈喜{与[不〔如(自分)〕者]為(友人)}之心〉。
といふ「補足構造」を表してゐるとは、言へない。
(12)
⑤ 読二 書一。
⑥ 読二 漢文一。
ではなく、
⑤ 読レ 書。
⑥ 読二 漢文一。
であるならば、その場合の「返り点」は、
⑤ 読(書)。
⑥ 読(漢文)。
といふ「補足構造」を表してゐるとは、言へない。
(13)
⑦ レ 下 中 二 一 上レ
に於いて、
⑦ レ レ
を除いた場合、
⑦ 囗 囗 下 二 一 中 上
でなければ、ならない。
従って、
(14)
(Ⅰ)レ 一レ 上レ 甲レ 天レ
(Ⅱ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
(Ⅲ)上 中 下
(Ⅳ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(Ⅴ)天 地 人
から、
(Ⅰ)レ 一レ 上レ 甲レ 天レ
を除いた場合、
(Ⅲ)上 中 下 囗 囗
に於いて、
(Ⅲ) 囗 囗
が「不足」する。
然るに、
(15)
(Ⅱ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
(Ⅲ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(Ⅳ)上 中 下
とするならば、
(Ⅲ) 丁 戊
であるため、
(Ⅲ) 囗 囗
は「不足」しない。
従って、
(16)
(Ⅰ)レ点
は、「それ」がない場合であっても、「不都合」は、生じない。
平成29年03月13日、毛利太。
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