2017年3月13日月曜日

「漢文の補足構造」と「返り点」(Ⅱ)。

(01)
① 人有喜与不如己者為友之心。
といふ「漢文の補足構造」が、
① 人有〈喜{与[不〔如(己)〕者]為(友)}之心〉。
といふ「括弧」によって、表はされてゐる、とする。
然るに、
(02)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。
すなわち、その補足構造における語順は、国語とは全く反対である。
(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、二九六頁)
従って、
(01)(02)により、
(03)
① 人有〈喜{与[不〔如()〕者]為()}之心〉。
② 人に〈{[〔(己に)如か〕不る者]与(友と)為るを}喜ぶ之心〉有り。
に於いて、
① は、「漢文の補足構造」であって、
② は、「訓読の補足構造」である。
従って、
(03)により、
(04)
③ 人有〈喜{与[不〔如(自分)〕者]為(友人)}之心〉。
④ 人に〈{[〔(自分に)如か〕不る者]与(友人と)為るを}喜ぶ之心〉有り。
に於いて、
③ は、「漢文の補足構造」であって、
④ は、「訓読の補足構造」である。
然るに、
(05)
① 人有喜与不如己者為友之心=
① 人 有 之 心
② 人 己 之 心
② 人に己 に如 か不 る者 に為 るを喜 ぶ之 心り=
② 人には、己よりも劣った者と友となることを喜ぶ心が有る。
(06)
③ 人有喜与不如自分者為友人之心=
③ 人 有 自分 友人 之 心
④ 人 自分 友人 之 心
④ 人に自分 に如 か不 る者 友人 に為 るを喜 ぶ之 心り=
④ 人には、自分よりも劣った者と友人となることを喜ぶ心が有る。
従って、
(03)~(06)により、
(07)
① 人有〈喜{与[不〔如( 己)〕者]為( 友)}之心〉。
③ 人有〈喜{与[不〔如(自分)〕者]為(友人)}之心〉。
といふ「括弧」と、
① 人 有  己  友 之 心
③ 人 有 自分 友人 之 心
といふ「返り点」は、
① 人有喜与不如己者為友之心。
③ 人有喜与不如自分者為友人之心。
といふ「漢文の、補足構造」を、表してゐる。
然るに、
(08)
学校で習ふ、返り点」としては、
① 人 有 之 心
といふ「返り点」は、「マチガイ」であって、
① 人 有 之 心
といふ「返り点」だけが、「正しい」。
然るに、
(10)
① 人 有 之 心
③ 人 有 自分 友人 之 心
であれば、
① の「返り点」と、
③ の「返り点」は、「同じ」ではない
従って、
(11)
① 人 有 之 心
③ 人 有 自分 友人 之 心
ではなく、
① 人 有 之 心
③ 人 有 自分 友人 之 心
であるならば、その場合の「返り点」は、
① 人有〈喜{与[不〔如( 己)〕者]為( 友)}之心〉。
③ 人有〈喜{与[不〔如(自分)〕者]為(友人)}之心〉。
といふ「補足構造」を表してゐるとは、言へない
(12)
⑤ 読
⑥ 読 漢文
ではなく、
⑤ 読
⑥ 読 漢文
であるならば、その場合の「返り点」は、
⑤ 読(書)。
⑥ 読(漢文)。
といふ「補足構造」を表してゐるとは、言へない
(13)
⑦ レ 下 中 二 一 上レ
に於いて、
⑦ レ レ を除いた場合、
⑦ 囗 囗 下 二 一 中 上
でなければ、ならない。
従って、
(14)
(Ⅰ)レ 一レ 上レ 甲レ 天レ
(Ⅱ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
(Ⅲ)上 中 下
(Ⅳ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(Ⅴ)天 地 人
から、
(Ⅰ)レ 一レ 上レ 甲レ 天レ
を除いた場合、
(Ⅲ)上 中 下 囗 囗
に於いて、
(Ⅲ)      囗 囗
が「不足」する。
然るに、
(15)
(Ⅱ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
(Ⅲ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(Ⅳ)上 中 下
とするならば、
(Ⅲ)      丁 戊
であるため、
(Ⅲ)      囗 囗
は「不足」しない。
従って、
(16)
(Ⅰ)レ点
は、「それ」がない場合であっても、「不都合」は、生じない
平成29年03月13日、毛利太。

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