2017年3月15日水曜日

「レ点」が無ければ、

(01)
(Ⅰ)レ 一レ 上レ 甲レ 天レ
(Ⅱ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
(Ⅲ)上 中 下
(Ⅳ)甲 乙 丙 丁 戊 己 辛 庚 壬 癸
(Ⅴ)天 地 人
に於いて、
(Ⅲ)上 中 下
が「不足」する場合は、
(Ⅲ)上 中 下
(Ⅳ)甲 乙 丙 丁 戊 己 辛 庚 壬 癸
といふ「順番」を、
(Ⅲ)甲 乙 丙 丁 戊 己 辛 庚 壬 癸
(Ⅳ)上 中 下
といふ「順番」に、変へることになる。
すなはち、
(02)
① 不[欲〔読(マンガ)学(日本語)〕]⇒
① [〔(マンガ)読(日本語)学〕欲]不=
① [〔(マンガを)読み(日本語を)学ばんと〕欲せ]ず=
① マンガを読んで、日本語を学ぼうとは思はない。
であれば、
① 不 マンガ 日本語
であるが、
② 不[必欲〔読(マンガ)学(日本語)〕]⇒
② [必〔(マンガ)読(日本語)学〕欲]不=
② [必ずしも〔(マンガを)読み(日本語を)学ばんと〕欲せ]ず=
② 必ずしも、マンガを読んで、日本語を学ぼうとは思はない。
であれば、
② 不 必 欲 マンガ 日本語
である。
然るに、
(03)
「新潮社版、南総里見八犬伝 一、平成15年、八犬士伝序」の場合は、
其賢 不 虞舜八元、 忠魂義胆、 宜 楠家八臣 年談也。
であるため、「学校で習ふ、返り点」の「ルール」からは、ハズレテゐる。
すなはち、
(04)
学校で習ふ、返り点」の「ルール」からすれば、
其賢 不 虞舜八元、 忠魂義胆、 宜 楠家八臣 年談也。
ではなく、
其賢 不 虞舜八元、 忠魂義胆、 宜 楠家八臣 年談也。
でなければ、ならない。
(05)
 漢文の返り点は大体の標準があったが、細かいところには違いがあった。
例えば、
(A) 欲捨 之
(B) 欲捨 之
(C) 我将 彼 而不一レ 吾力 焉。
(D) 我将 彼 而不上レ 吾力 焉。
 これをどちらにするか協議したが、私が明治四十五年三月二十九日の官報に掲載された「漢文の句読・返点・添仮名・読方法」に従って、(A)に従うのがよいとし、(C)(D)はそれに記載がないが、「上・下」「上・中・下」は「一・二・三」などをまたいで読むときに用いるものであるから(C)を用いるのがよいと決めた。
(原田種成、漢文のすすめ、1992年、一一二頁)
(06)

は、「読みにくい」ものの、
取‐捨 の、
の下に、
Aiが付いてゐる。
従って、
(05)(06)により、
(07)
(A) 欲捨 之
(B) 欲捨 之
であれば、
(A) 取‐捨
(B) 取‐捨
であるが、
(A) 欲捨 之
(B) 欲捨 之
であれば、
(A) 取
(B) 取
であるものの、「学校で習ふ、返り点」としては、
(A) 取‐捨
(B) 取‐捨
である(ことが多い)。
(08)
(C) 我将 彼 而不一レ 吾力 焉。
(D) 我将 彼 而不上レ 吾力 焉。
ではなく、
(C) 我将 彼 而不 吾力 焉。
(D) 我将 彼 而不 吾力 焉。
である方が、「分りやすい」。
(09)
(C) 我将 彼 而不 吾力 焉。
の方が、
(D) 我将 而不 吾力 焉。
よりも、「分りやすい」といふことは、無い。
(10)
(A) 欲捨 之
よりも、
(B) 欲捨 之
の方が、「分りやすい」といふことは無い。
然るに、
(11)
(Ⅰ)   甲レ 天レ
が無ければ、固より、
(A) 欲捨 之
(B) 欲捨 之
(C) 我将 彼 而不一レ 吾力 焉。
(D) 我将 彼 而不上レ 吾力 焉。
これをどちらにするか。といふ「協議」自体が、有り得ない。
すなはち、
(12)
(Ⅰ)   甲レ 天レ
が無ければ、
(A) 欲捨 之
(D) 我将 而不 吾力 焉。
とする以外に、「書きやう」が無い。
(13)
「括弧」であっても、
(A) 欲〔 取‐捨(之)〕。
(C) 我将[任(彼)而不〔用(吾力)〕]焉。
とする以外に、「書きやう」が無い。
然るに、
(14)
大学生に返り点を打たせると、レ点の原則違反から生じる誤りが大半をしめます。
(古田島洋介、これならわかる返り点、2009年、60頁)
然るに、
(15)
大学生に返り点を打たせると、レ点の原則違反から生じる誤りが大半をしめる。
といふことは、「レ点の原則」なるものが、「合理的」であるからに、違ひない。
平成29年03月15日、毛利太。

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