2024年1月11日木曜日

「述語論理」と「のみが(only)」について(Ⅲ)。

(01)
1        (1) ∀x( Kx→x=s∨x=g)  A
 2       (2)~∃x(~Kx&Sx)       A
  3      (3) ∃x(x=j&x≠s&x≠g)  A
1        (4)     Ka→a=s∨a=g   1UE
 2       (5)∀x~(~Kx&Sx)       2量化子の関係
 2       (6)  ~(~Ka&Sa)       1UE
   7     (7)    ~Ka           A
    8    (8)        Sa        A
   78    (9)    ~Ka&Sa        78&I
 2 78    (ア)  ~(~Ka&Sa)&
               (~Ka&Sa)       69&I
 2 7     (イ)       ~Sa        8アRAA
 2       (ウ)    ~Ka→~Sa       7イCP
     エ   (エ)    a=j&a≠s&a≠g   A
     エ   (オ)    a=j           エ&E
     エ   (カ)        a≠s&a≠g   エ&E
       キ  (キ)        a=s∨a=g   A
       ク (ク)        a=s       A
     エ   (ケ)        a≠s       カ&E
     エ ク (コ)        a=s&a≠s   クケ&I
       ク (サ)      ~(a≠s&a≠g)  エコRAA
        シ(シ)            a=g   A
     エ   (ス)            a≠g   カ&E
     エ  シ(セ)        a=g&a≠g   シス&I
        シ(ソ)      ~(a≠s&a≠g)  エシRAA
      キ  (タ)      ~(a≠s&a≠g)  キクサシソ∨E
     エキ  (チ)       (a≠s&a≠g)&
                  ~(a≠s&a≠g)  カタ&I
     エ   (ツ)      ~(a=s∨a=g)  キチRAA
  3      (テ)      ~(a=s∨a=g)  3エツEE
1 3      (ト)    ~Ka           4テMTT
123      (ナ)        ~Sa       ウトMPP
123エ     (ニ)    a=j&~Sa       オナ&I
123エ     (ヌ) ∃x(x=j&~Sx)      ニEI
123      (ネ) ∃x(x=j&~Sx)      3エヌEE
従って、
(01)により、
(02)
(ⅰ) ∀x( Kx→x=s∨x=g)
(ⅱ)~∃x(~Kx&Sx)
(ⅲ) ∃x(x=j&x≠s&x≠g)
(ⅳ) ∃x(x=j&~Sx)
といふ「推論」、すなはち、
(ⅰ)すべてのxについて(xがKをするならば、xはsであるか、または、xはgである)。然るに、
(ⅱ)あるxが(Kをせずに、Sをする)といふことは無い。然るに、
(ⅲ)あるxは(jであって、sではないし、gでもない)。従って、
(ⅳ)あるxは(jであって、xはSをしない)。
といふ「推論」は「妥当」である。
然るに、
(03)
K=合言葉を知ってゐた。
S=銃を盗んだ。
j=ジャック。
s=スミス。
g=門衛。
であるとする。
従って、
(02)(03)により、
(04)
(ⅰ)すべてのxについて(xが合言葉を知ってゐたならば、xはスミスであるか、または、xは門衛である)。然るに、
(ⅱ)あるxが(合言葉を知らずに、銃を盗んだ)といふことは有り得無い。然るに、
(ⅲ)あるxは(ジャックであって、スミスではないし、門衛でもない)。 従って、
(ⅳ)あるxは(ジャックであって、xは銃を盗んでゐない)。
といふ「推論」は「妥当」である。
従って、
(04)により、
(05)
(ⅰ)スミスと門衛のみがが合言葉を知っていた。然るに、
(ⅱ)合言葉を知らない者が銃を盗んだといふことは、有り得ない。然るに、
(ⅲ)ジャックはスミスではないし、門衛でもない。従って、
(ⅳ)ジャックは銃を盗んではゐない。
といふ「推論」は「妥当」である。
従って、
(02)(05)により、
(06)
(ⅰ)スミスと門衛のみがが合言葉を知っていた。然るに、
(ⅱ)合言葉を知らない者が銃を盗んだといふことは、有り得ない。然るに、
(ⅲ)ジャックはスミスではないし、門衛でもない。従って、
(ⅳ)ジャックは銃を盗んではゐない。
といふ「推論」は「妥当」であるといふことは、
(ⅰ) ∀x( Kx→x=s∨x=g)
(ⅱ)~∃x(~Kx&Sx)
(ⅲ) ∃x(x=j&x≠s&x≠g)
(ⅳ) ∃x(x=j&~Sx)
といふ「述語論理式」によって、「証明」出来る
然るに、
(07)
「述語論理」は「命題論理」の「拡大(enlargement)」であって、それ故、
「命題論理」の「記号」だけ
を使って、
(ⅰ) ∀x( Kx→x=s∨x=g)
(ⅱ)~∃x(~Kx&Sx)
(ⅲ) ∃x(x=j&x≠s&x≠g)
(ⅳ) ∃x(x=j&~Sx)
といふ「論理式(Well formed formulae)」を書くことは出来ない。
従って、
(06)(07)により、
(08)
「命題論理」によって、
(ⅰ)スミスと門衛のみがが合言葉を知っていた。然るに、
(ⅱ)合言葉を知らない者が銃を盗んだといふことは、有り得ない。然るに、
(ⅲ)ジャックはスミスではないし、門衛でもない。従って、
(ⅳ)ジャックは銃を盗んではゐない。
といふ「推論の妥当性」を「証明」することは、「出来ない」。
因みに、
(09)
(ⅰ)すべてのxについて(xが象であるならば、xは動物である)。然るに、
(ⅱ)花子は象である。従って、
(ⅲ)花子は動物である。
といふ「推論」、すなはち、
(ⅰ)象は動物である。然るに、
(ⅱ)花子は象である。従って、
(ⅲ)花子は動物である。
といふ「推論の妥当性」も、「命題論理」では、「証明出来ない」。
然るに、
(10)
その一方で、「述語論理(の表現力)」に関しては、
日常言語の文から述語計算の文の翻訳のためには、一般にあたまが柔軟であることが必要である。なんら確定的な規則があるわけでなく、量記号に十分に馴れるまでには、練習を積むことが必要である。そこに含まれている仕事は翻訳の仕事に違いないけれども、しかしそこへ翻訳が行われる形式言語は、自然言語のシンタックスとは幾らか違ったシンタックスをもっており、また限られた術語―論理的結合記号、変数、固有名、述語文字、および2つの量記号―しかももたない。その言語のおもな長所は、記法上の制限にもかかわらず、非常に広範な表現能力をもっていることである(E.J.レモン 著、武生治一郎・浅野楢英 訳、論理学初歩、1973年、130頁)。
Flexibility of mind is generally required for translating from ordinary speech into sentences of the predicate calculus. No firm rules can be given, and practice is needed before full familiarity with quantifiers is reached. The activity involved is one of translation; but the formal language into which translation is being made has a rather different from that of a natural language,and has only a narrow terminology―logical connectives, variables, proper names, predicate-letters, and two quantifiers. The chief merit of the language is that, despite its notational limitations, it has a very wide expressive power(E.J.Lemmon, Beginning Logic, First published in Great Britain 1965).
との、ことである。
令和6年1月11日、毛利太。

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