2024年1月6日土曜日

「述語論理」と「のみが(only)」について。

(01)
さて次の論証を考えてみよう(これはQuine〔17〕の翻案である)。
 (12)スミスとその門衛のみが合言葉を知っていた。合言葉を知っていたある者が銃を盗んだ。故に、スミスかあるいはその門衛が銃を盗んだ。
    Only Smith and the guard at the gate knew the password; Someone who knew the password stole the gun. Therefore, either Smith or the guard at the gate stole the gun.
これは明らかに健全である。しかしその健全性を、等号を含まない述語計算の中で示すことはできないのである。
「のみ(only)」という語の通常の意味を念頭におくならば、(12)の第1の前提は次のことを意味する。
 (13)合言葉を知っていたすべての人は、スミスであったか、あるいはその門衛であった。
    Everyone who knew the the password either was Smith or was the guard at the gate.
 (13)において、2つの「であった(was)」は同一性の「であった(was)」である。従って、
「K」が「合言葉を知っていたこと」を、「m」がスミス、「n」がその門衛を表すとするならば、(13)はつぎのように記号化される。
 (14)∀x(Kx→x=m∨x=n)
(E.J.レモン著、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、論理学初歩、1973年、209頁)
然るに、
(02)
1     (1)∀x(Kx→x=m∨x=n)   A
1     (2)   Ka→a=m∨a=n    1UE
 3    (3)∃x(x=o&x≠m&x≠n)  A
  4   (4)   a=o&a≠m&a≠n   A
  4   (5)   a=o           4&E
  4   (6)       a≠m&a≠n   4&E
   7  (7)       a=m∨a=n   A
  4   (8)       a≠m       6&E
    9 (9)       a=m       A
  4 9 (ア)       a≠m&a=m   89&I
    9 (イ)     ~(a≠m&a≠n)  4アRAA
  4   (ウ)           a≠n   6&E
     エ(エ)           a=n   A
  4  エ(オ)       a≠n&a=n   ウエ&I
     エ(カ)     ~(a≠m&a≠n)  4オRAA
   7  (キ)     ~(a≠m&a≠n)  79イエカ∨E
  47  (ク)      (a≠m&a≠n)&
              ~(a≠m&a≠n)  6キ&I
  4   (ケ)     ~(a=m∨a=n)  7クRAA
 3    (コ)     ~(a=m∨a=n)  34ケEE
13    (サ)  ~Ka            2コMTT
1 4   (シ)   a=o&~Ka       4サ&I
1 4   (ス)∃x(x=o&~Kx)      シEI
13    (セ)∃x(x=o&~Kx)      34スEE
1     (ソ)∃x(x=o&x≠m&x≠n)→
         ∃x(x=o&~Kx)       3セCP
従って、
(02)により、
(03)
① ∀x(Kx→x=m∨x=n)├ ∃x(x=o&x≠m&x≠n)→∃x(x=o&~Kx)
といふ「推論」、すなはち、
① すべてのxについて、(xが合言葉を知っていたならば、xはスミスであるか、あるいは、門衛であった)。従って、
  あるxがoであって、そのxが、スミスではなく、門衛でもないならば、oといふxで、合言葉を知らなかったxが存在する。
といふ「推論」は「妥当」である。
然るに、
(03)により、
(04)
① あるxがoであって、そのxが、スミスではなく、門衛でもないならば、oといふxで、合言葉を知らなかったxが存在する。
といふことは、
 (13)合言葉を知っていたすべての人は、スミスであったか、あるいは、その門衛の、いずれかであった。
     Everyone who knew the the password either was Smith or was the guard at the gate.
といふことに、「他ならない」。
従って、
(01)(04)により、
(05)
E.J.レモンによる、
「のみ(only)」という語の通常の意味を念頭におくならば、(12)の第1の前提は次のことを意味する。
 (13)合言葉を知っていたすべての人は、スミスであったか、あるいは、その門衛の、いずれかであった。
     Everyone who knew the the password either was Smith or was the guard at the gate.
といふ「説明」は、「正しい」。
従って、
(05)により、
(06)
「S」を、「銃を盗んだこと」を表すものとして用いるならば、われわれが証明しなくてはならないものはつぎの連式である。
141 ∀x(Kx→x=m∨x=n),∃x(Kx&Sx)├ Sm∨Sn
1    (1)∀x(Kx→x=m∨x=n) A
 2   (2)∃x(Kx&Sx)      A
  3  (3)   Ka&Sa       A
  3  (4)   Ka          3&E
  3  (5)      Sa       3&E
1    (6)   Ka→a=m∨a=n  1UE
1 3  (7)      a=m∨a=n  46MPP
   8 (8)      a=m      A
  38 (9)      Sm       58=E
  38 (ア)      Sm∨Sn    9∨I
    イ(イ)          a=n  A
  3 イ(ウ)         Sn    5イ=E
  3 イ(エ)      Sm∨Sn    ウ∨I
1 3  (オ)      Sm∨Sn    78アイエ∨E
12   (カ)      Sm∨Sn    23オEE
(E.J.レモン著、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、論理学初歩、1973年、209頁)
といふ「計算」は、「正しい」。
然るに、
(07)
 「数学」が得意な学生は、世間では、「論理的な思考」が「得意」であるとされてゐるが、
「論理学」が得意な学生が、「論理的な思考」が「不得手」であるはずが無い。
然るに、
(08)
① ∀x(Kx→x=m∨x=n)├ ∃x(x=o&x≠m&x≠n)→∃x(x=o&~Kx)
② ∀x(Kx→x=m∨x=n),∃x(Kx&Sx)├ Sm∨Sn
といふ「述語論理式」は、「数学(mathematics)」ではなく、『語学(language)』である。
従って、
(09)
「(文法を基礎とした)外国語としての英語の学習」が得意な「学生」は、あるいは、
「数学の学習」が得意な「学生」よりも、「論理的な思考」が得意なのかも、知れない(?!)。
令和6年1月6日、毛利太。

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