2017年6月12日月曜日

「その璧」は「その璧」ではない。

(01)
① 相如持(其璧)睨(柱)欲〔以撃(柱)〕。② 秦王恐〔其破(璧)〕⇒
① 相如(其の璧を)持ち(柱を)睨み〔以て(柱に)撃たんと〕欲す。② 秦王〔其の(璧を)破らんことを〕恐る=
① 相如は(其の璧を)手に持ち(柱を)見据へると〔それを(柱に)撃ち付けようと〕した。② 秦王は〔其の者が(璧を)を砕いてしまふことを〕恐れた。
(史記 列伝 廉頗藺相如列傳 第二十一)
従って、
(02)
①(其の璧を)
といふのは、「普通に」、
①(其の璧を)
といふ、「意味」である。
然るに、
(03)
② 秦王恐〔其破(璧)〕⇒
② 秦王〔其の(璧を)破るを〕恐る=
② 秦王は〔其の者が(璧を)砕いてしまふことを〕恐れた。
に於いて、
②「璧を、砕こうとする」のは「相如」であって、
②「砕かれるのを恐れた」のは「秦王」である。
従って、
(03)により、
(04)
② 其の(璧を)
に於ける、
② 其
といふのは、
② 相如
といふ、「意味」である。
従って、
(02)(04)により、
(05)
①(其の璧を)
に於ける、
①「其の」は、「英語」で言へば、
①「定冠詞(the)」に相当し、
② 其の(璧を)
に於ける、
②「其の」は、「英語」で言へば、
②「人称代名詞・三人称主格(he,she,it,they)」に相当する。
cf.
【1】[][
(a)主語を示す。日の暮るるとき。汝が去りし日。
(中村菊一、重点整理 基礎からわかる古典文法、1978年、154頁改)
従って、
(05)により、
(06)
① (其の璧を)
② 其の(璧を)
に於いて、
①=② ではなく
② である。
(07)
③ 鳥吾知其能飛=
③ 鳥吾知(其能飛)⇒
③ 鳥は吾(其の能く飛ぶを)知る。
といふ「それ」は、「史記、老子韓非列傳第三」である。
然るに、
(08)
③ 其の能く飛ぶ。
に於いては、
③ 飛ぶ。
が、「動詞」である。
従って、
(05)(08)により、
(09)
③ 鳥は吾其の能く飛ぶを知る。
に於ける、
③「其の」は、「人称代名詞・三人称主格」である。
従って、
(09)により、
(10)
③ 鳥は吾(其の能く飛ぶを)知る。
といふ「訓読」は、蓋し、
③ Birds, I know that they can fly.
といふ、「意味」である。
然るに、
(11)
③ 鳥吾知其能飛(鳥は吾其の能く飛ぶを知る)。
に於いて、
③ 鳥  =鵬之背
③ 知  =不知
③ 其能飛=其幾千里
といふ「代入」を行ひ、尚且つ、
③ 吾
を、「省略」し、
③ 也
を、「加へる」と、
④ 鵬之背不知其幾千里(鵬の背は、其の幾千里なるかを知らざるなり)。
といふ「漢文(荘子、內篇 ‧ 逍遙遊)」が、成立する。
cf.
「幾千里なる」は、「形容・動詞」。
従って、
(09)(10)(11)により、
(12)
④ 鵬の背は其の幾千里なるかを知らざるなり。
に於ける、
④「其の」も、「人称代名詞・三人称主格」であって、
④「知らざるなり」の「主語」は、「省略」されてゐる。
然るに、
(13)
⑤ 鵬之背不知其幾千里也(鵬の背は、其の幾千里なるかを知らざるなり)。
に於いて、
⑤ 鵬之背=先生
⑤ 幾千里=何許人
といふ「代入」を行ひ、
⑤ 其
を「省略」し、
⑤ 也
を「除く」と、
⑤ 先生不知何許人(先生は、何許の人なるかを知らず)。
といふ「漢文(陶潜、五柳先生伝)」が、成立する。
従って、
(10)~(13)により、
(14)
⑤ 先生、何許の人なるかを知らず。
といふ「訓読」は、
⑤ 先生、吾其の何許の人なるかを知らず。
といふ「意味」、すなはち、敢へて、「英語」にするならば、
⑤ My teacher, I don't know where he comes form.
のやうな「英語」に、「相当」すると、思はれる。
但し、
(15)
私自身は、ほとんど、「英語」を勉強してゐないので、
⑤ My teacher, I don't know where he comes from.
のやうな、「英語」が、実際に、有るのか、無いのか、私には分らない。
平成29年06月12日、毛利太。

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