2017年6月30日金曜日

「返り点」よりも「簡単」な「括弧」(Ⅱ)。

(01)
① より(いにしえ)テイオウなし{ざる[え〔これをに(カンナン)〕てうしなは〔これをに(あんいつ)〕]は}。
に於いて、
① ( )の中を、「読み終へた」直後に、「より」  を読む。
① { }の中を、「読み終へた」直後に、「なし」  を読む。
① [ ]の中を、「読み終へた」直後に、「ざる」  を読む。
① 〔 〕の中を、「読み終へた」直後に、「え」   を読む。
① ( )の中を、「読み終へた」直後に、「に」   を読む。
① 〔 〕の中を、「読み終へた」直後に、「うしなふ」を読む。
① ( )の中を、「読み終へた」直後に、「に」   を読む。
といふことは、
① (いにしへ)よりテイオウ{[〔これを(カンナン)に〕えて〔これを(アンイツ)に〕うしなは]ざるは}なし。
といふ「それ」を、
① 「からへ読む」ことに、「等しい」。
然るに、
(02)
① 自 =より
① 古 =いにしへ
① 帝王=テイオウ
① 莫 =なし
① 不 =ざる
① 得 =え
① 之 =これ
① 於 =を
① 艱難=カンナン
① 失  =うしなふ
① 安逸=アンイツ
である。
従って、
(01)(02)により、
(03)
① 自(古)帝王莫{不[得〔之於(艱難)〕失〔之於(安逸)〕]}。
に於いて、
① ( )の中を、「読み終へた」直後に、「自」を読む。
① { }の中を、「読み終へた」直後に、「莫」を読む。
① [ ]の中を、「読み終へた」直後に、「不」を読む。
① 〔 〕の中を、「読み終へた」直後に、「得」を読む。
① ( )の中を、「読み終へた」直後に、「於」を読む。
① 〔 〕の中を、「読み終へた」直後に、「失」を読む。
① ( )の中を、「読み終へた」直後に、「於」を読む。
といふことは、
① (いにしへ)よりテイオウ{[〔これを(カンナン)に〕えて〔これを(アンイツ)に〕うしなは]ざるは}なし。
といふ「それ」を、
① 「からへ読む」ことに、「等しい」。
然るに、
(04)
中国語の「助字」は、あってもなくてもよいである。
(吉川幸次郎、漢文の話、1962年、49頁)
従って、
(05)
「漢文」の場合は、
① 於(艱難)=(カンナン)に
① 於(安逸)=(アンイツ)に
ではなくて、
①  (艱難)
①  (安逸)
であっても、
①  (艱難)=(カンナン)に
①  (安逸)=(アンイツ)に
である。
然るに、
(06)
①  (艱難)
①  (安逸)
であっても、
①  (艱難)=(カンナン)に
①  (安逸)=(アンイツ)に
であるならば、
② (於艱難)=(カンナンに)
② (於安逸)=(アンイツに)
であっても「良い」。といふ、ことになる。
従って、
(03)(06)により、
(07)
① 自(古)帝王莫{不[得〔之於(艱難)〕失〔之於(安逸)〕]}。
ではなく、
② 自(古)帝王莫[不〔得(之於艱難)失(之於安逸)〕]。
であっても、両方とも、「正しい」。
cf.
① 自古帝王莫之於艱難之於安逸。 

② 自古帝王莫之於艱難之於安逸
従って、
(03)(07)により、
(08)
② 自(古)帝王莫[不〔得(之於艱難)失(之於安逸)〕]⇒
② (古)自帝王[〔(之於艱難)得(之於安逸)失〕不]莫=
② (古)自り帝王[〔(之を艱難に)得て(之を安逸に)失は〕不るは]莫し。
といふ「漢文訓読」が、成立する。
然るに、
(09)
この場合は、「文脈(十八史略)」により、
② 之=天下
である。
従って、
(08)
② (古)自り帝王[〔(之を艱難に)得て(之を安逸に)失は〕不るは]莫し。
といふ「訓読」は、
② (いにしへ)より帝王で、[〔(天下を艱難に)得て(天下を安逸に)失ふ〕といふことはない。]といふ者は、一人もゐない。
といふ「意味」、すなはち、
② (いにしへ)より帝王は、[〔(天下を艱難に)得たならば天下を安逸に)失ふ〕]といふ者が、全員である。

cf.
~(P&Q)=~P∨~Q=P→Q:ド・モルガンの法則、含意の定義。
然るに、
(09)
② 玄齢は吾と共に天下を取り、百死を出でて一生を得たり。
② 玄齢は自分と伴に天下を取り、幾度も、危険な目に会ひながらも、生き延びることができた。
従って、
(09)により、
(10)
② 今の帝王も、天下艱難得た
従って、
(08)(10)により、
(11)
② 「いにしへ」よりの「前例」に従ふ限り、今の帝王は、「天下を、安逸に、失ふ。」ことになる。
従って、
(12)
② 今の帝王が、「いにしへ」よりの「前例」を「覆す」ためには、今の帝王は、「安逸甘んじては、ならない
といふ「意味」になる。
平成29年06月30日、毛利太。

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