―「07月03日の記事」を、書き換へます。―
(01)
① 自古帝王莫不得之於艱難失之於安逸。
① 自古帝王~~得之於艱難失之於安逸。
に於いて、
① 莫 は、「否定」であって、
① 不 は、「否定」であって、
① ~ は、「否定」である。
然るに、
(02)
このように、管到でいちばん苦労するのは、否定形の場合である。だから、否定形がでてきたときには、どこまでかかるかという判断をしないとしっかり訳せないないわけだ(二畳庵主人、漢文文法基礎、1984年、390・391頁)。
然るに、
(03)
括弧は、論理演算子のスコープ(scope)を明示する働きを持つ。スコープは、論理演算子の働きが及ぶ範囲のことをいう(産業図書、数理言語学辞典、2013年、四七頁:命題論理、今仁生美)。
従って、
(01)(02)(03)により、
(04)
① 自古帝王莫不得之於艱難失之於安逸。
① 自古帝王~~得之於艱難失之於安逸。
といふ「漢文」は、
② 自古帝王~〔~(得之於艱難失之於安逸)〕。
③ 自古帝王~〔~(得之於艱難)失之於安逸〕。
④ 自古帝王~〔~(得之於艱難)〕失之於安逸。
といふ「三通り」の内の、「どれか一つ」、すなはち、「返り点」であれば、
② 自レ古帝王莫レ不下得二之於艱難一失中之於安逸上。
③ 自レ古帝王莫下不レ得二之於艱難一失中之於安逸上。
④ 自レ古帝王莫レ不レ得二之於艱難一失二之於安逸一。
といふ「三通り」の内の、「どれか一つ」である。
然るに、
(05)
P = 得之於艱難=これを艱難に得る。
Q = 失之於安逸=これを安逸に失ふ。
~ = 否定詞
& = 接続助詞
→ = ならば
とする。
従って、
(04)(05)により、
(06)
① 自古帝王莫不得之於艱難失之於安逸。
① 自古帝王~~得之於艱難失之於安逸。
といふ「漢文」は、
② 自古帝王~〔~(P&Q)〕。
③ 自古帝王~〔~(P)&Q〕。
④ 自古帝王~〔~(P)〕&Q。
といふ「三通り」の内の、「どれか一つ」である。
然るに、
(07)
「二重否定律」により、
② ~〔~(P&Q)〕=P&Q
④ ~〔~(P)〕&Q=P&Q
である。
従って、
(06)(07)により、
(08)
② 自古帝王~〔~(P&Q)〕。
④ 自古帝王~〔~(P)〕&Q。
に於いて、「命題」としては、
②=④ である。
然るに、
(09)
② 1 &1 =1
② 1 &0 =0
② 0 &1 =0
② 0 &0 =0
であって、尚且つ、
③ ~〔~(1)&1〕=1
③ ~〔~(1)&0〕=1
③ ~〔~(0)&1〕=0
③ ~〔~(0)&0〕=1
である。
従って、
(08)(09)により、
(10)
② 自古帝王~〔~(P&Q)〕。
③ 自古帝王~〔~(P)&Q〕。
の「真理値(ウソ・本当)」は、「一致」しない。
従って、
(10)により、
(11)
② 自古帝王~〔~(P&Q)〕。
③ 自古帝王~〔~(P)&Q〕。
の場合は、「命題」としても、
②≠③ であって、
②=③ ではない。
従って、
(08)(11)により、
(12)
② 自古帝王~〔~(P&Q)〕=P&Q。
③ 自古帝王~〔~(P)&Q〕≠P&Q。
④ 自古帝王~〔~(P)〕&Q=P&Q。
に於いて、「命題」として、
②=④ であるが、
②=③ ではない。
然るに、
(13)
② (Pであって、Qである。)といふことはない。
といふことは、要するに、
② Pならば、Qでない。
といふことに、他ならない。
然るに、
(14)
1 (01)~(P&Q) A
2 (02) P A
3 (03) Q A
23 (04) P&Q (02)(03)&I
123(05)~(P&Q)&(P&Q) (01)(04)&I
12 (06) ~Q (03)(05)RAA
1 (07) P→~Q (02)(06)CP
∴ (08)~(P&Q)├ P→~Q
1 (01) P→~Q A
2 (02) P&Q A
2 (03) P (02)&E
2 (04) Q (02)&E
12 (05) ~Q (01)(03)MPP
12 (06) ~Q&Q (04)(05)&I
1 (07)~(P&Q) (02)(06)RAA
∴ (08)P→~Q ├ ~(P& Q)
∴ (09) ~(P&Q) = P→~Q
∴ (10)~(~(P&Q))=~(P→~Q)
といふ「命題計算(Propositional calculation)」は、「正しい」。
然るに、
(15)
③ (Pでなくて、Qである。)といふことはない。
といふことは、要するに、
③ Pでないならば、Qでない。
といふことに、他ならない。
然るに、
(16)
Pに、~(P)を「代入(replace)」した「結果」である、
1 (01)~(~(P)&Q) A
2 (02) ~(P) A
3 (03) Q A
23 (04) ~(P)&Q (02)(03)&I
123(05)~(~(P)&Q)&(~(P)&Q) (01)(04)&I
12 (06) ~Q (03)(05)RAA
1 (07) ~(P)→~Q (02)(06)CP
∴ (08)~(~(P)&Q)├ ~(P)→~Q
1 (01) ~(P)→~Q A
2 (02) ~(P)&Q A
2 (03) ~(P) (02)&E
2 (04) Q (02)&E
12 (05) ~Q (01)(03)MPP
12 (06) ~Q&Q (04)(05)&I
1 (07)~(~(P)&Q) (02)(06)RAA
∴ (08)~(P)→~Q ├ ~(~(P)& Q)
∴ (09)~(~(P)&Q)= ~(P)→~Q
といふ「命題計算(Propositional calculation)」は、「正しい」。
従って、
(13)~(16)により、
(17)
② (Pであって、Qである。)といふことはない=~( P &Q)
③ (Pでなくて、Qである。)といふことはない=~(~(P)&Q)
といふことは、要するに、
② Pであるならば、Qでない= P →~Q
③ Pでないならば、Qでない=~(P)→~Q
といふことに、他ならない。
といふことは、「直観」としても、「命題計算」としても、「正しい」。
従って、
(17)により、
(18)
全ての「人類」が、「同じ論理」で「推論」を行ってゐる。のであれば、
② (Pであって、Qである。)といふことはない=~(P&Q)
③ (Pでなくて、Qである。)といふことはない=~〔~(P)&Q〕
といふことが、それぞれ、
② Pであるならば、Qでない= P →~Q
③ Pでないならば、Qでない=~(P)→~Q
といふ「命題」に、「等しい」。
といふことは、「日本語」で考へても、「英語」で考へても、「古代漢語」で考へても、「正しい」。
従って、
(06)(18)により、
(19)
② 自古帝王~〔~(P&Q)〕。
③ 自古帝王~〔~(P)&Q〕。
といふ「命題」は、それぞれ、
② 自古帝王~(P→~Q)。
③ 自古帝王~(P)→~Q。
といふ「命題」に「等しい」。
然るに、
(20)
② 自古
② 自古
の「訓読」は、
② 自古=古自=古より=いにしへより
③ 自古=古自=古より=いにしへより
である。
然るに、
(21)
和文の否定は文の最後尾につきます。「・・・ではない」という形式です。すると、直前の語を否定しているのか、文全体を否定しているのか、別の語や句読点を補わない限り区別がつかなくなります(新井紀子、数学は言葉、2009年、123頁)。
従って、
(20)(21)により、
(22)
② 自古帝王~〔~(P&Q)〕。
② 自古帝王~(P→~Q)。
③ 自古帝王~〔~(P)&Q〕。
③ 自古帝王~(P)→~Q。
といふ「それ」を、「和文の語順」にすると、
② 古より帝王〔(P&Q)~〕~。
② 古より帝王(P→Q~)~。
③ 古より帝王〔(P)~&Q〕~。
③ 古より帝王(P)~→Q~。
といふ、「語順」になる。
従って、
(05)(22)により、
(23)
② 古より帝王〔(P&Q)~〕~。
② 古より帝王(P→Q~)~。
③ 古より帝王〔(P)~&Q〕~。
③ 古より帝王(P)~→Q~。
に於いて、
P = これを艱難に得る。
Q = これを安逸に失ふ。
といふ「代入(replacement)」を行ふと、
② 古より帝王〔(これを艱難に得る&これを安逸に失ふ)~〕~。
② 古より帝王(これを艱難に得る→これを安逸に失ふ~)~。
③ 古より帝王〔(これを艱難に得る)~&これを安逸に失ふ〕~。
③ 古より帝王(これを艱難に得る)~→これを安逸に失ふ~。
といふ、ことになる。
従って、
(05)(06)(23)により、
(24)
② 古より帝王〔(P&Q)~〕~。
② 古より帝王(P→Q~)~。
③ 古より帝王〔(P)~&Q〕~。
③ 古より帝王(P)~→Q~。
といふ、「これら」は、
② 古より帝王〔(これを艱難に得て、これを安逸に失は)ざるは〕無し。
② 古より帝王(これを艱難に得るならば、これを安逸に失はない)といふことはない。
③ 古より帝王〔(これを艱難に得)ずして、これを安逸に失ふ〕といふことはない。
③ 古より帝王(これを艱難に得)ないならば、これを安逸に失はない。
といふ、「意味」になる。
然るに、
(25)
かんなん【艱難】つらいこと。難儀。hardships; difficulties.
あんいつ【安逸】① 気楽にたのしむ。ease ② ぶらぶら遊んでいること。indolence.
(旺文社、英訳つき 国語総合辞典、1990年、45・277頁)
従って、
(25)により、
(26)
~(P)=(これを艱難に得)ない=これを安逸に得る。
である。
(25)(26)により、
(27)
③ 古より帝王〔(これを艱難に得)ずして、これを安逸に失ふ〕といふことはない。
③ 古より帝王(これを艱難に得)ないならば、これを安逸に失はない。
に於いて、
③ (これを艱難に得)ない=これを安逸に得る。
といふ「代入(replacement)」を行ふと、
③ 古より帝王〔これを安逸に得て、これを安逸に失ふ〕といふことはない。
③ 古より帝王、これを安逸に得るならば、これを安逸に失はない。
といふ、ことになる。
然るに、
(28)
(Ⅰ)② 古より帝王〔(これを艱難に得て、これを安逸に失は)ざるは〕無し。
(Ⅱ)② 古より帝王(これを艱難に得たならば、これを安逸に失はない)といふことはない。
に於いて、明らかに、
(Ⅰ)=(Ⅱ) であって、
(Ⅲ)③ 古より帝王〔これを安逸に得て、これを安逸に失ふ〕といふことはない。
(Ⅳ)③ 古より帝王、これを安逸に得たならば、これを安逸に失はない。
に於いて、明らかに、
(Ⅲ)=(Ⅳ) である。
然るに、
(13)~(19)により、
(29)
② 自古帝王~〔~(P&Q)〕は、② 自古帝王~(P→~Q)に、「等しい」。
③ 自古帝王~〔~(P)&Q〕は、③ 自古帝王~(P)→~Qに、「等しい」。
といふことは、「証明済み」であったため、
(Ⅰ)古より、帝王、これを艱難に得て、これを安逸に失はざるは無し。
(Ⅱ)古より、帝王、これを艱難に得るならば、これを安逸に失はない、といふことはない。
(Ⅲ)古より、帝王、これを安逸に得て、これを安逸に失ふ。といふことはない。
(Ⅳ)古より、帝王、これを安逸に得たならば、これを安逸に失はない。
に於いて、
(Ⅰ)=(Ⅱ) であって、
(Ⅲ)=(Ⅳ) であることも、実際には、「証明済み」であった。ことになる。
然るに、
(30)
(14)で「確認」した、
1 (01)~(P&Q) A
2 (02) P A
3 (03) Q A
23 (04) P&Q (02)(03)&I
123(05)~(P&Q)&(P&Q) (01)(04)&I
12 (06) ~Q (03)(05)RAA
1 (07) P→~Q (02)(06)CP
∴ (08)~(P&Q)├ P→~Q
1 (01) P→~Q A
2 (02) P&Q A
2 (03) P (02)&E
2 (04) Q (02)&E
12 (05) ~Q (01)(03)MPP
12 (06) ~Q&Q (04)(05)&I
1 (07)~(P&Q) (02)(06)RAA
∴ (08)P→~Q ├ ~(P& Q)
∴ (09) ~(P&Q) = P→~Q
∴ (10)~〔~(P&Q)〕=~(P→~Q)
といふ「命題計算(Propositional calculation)」に於いて、「括弧」を、「除く」ことは、出来ない。
すなはち、
(31)
1 (01)~(P&Q) A
から、 ( ) を除いて、
1 (01) ~P&Q A
とするならば、
1 (01) ~P&Q A
となるものの、
1 (01) ~P&Q A
といふ「式」は、
1 (01)~(P)&Q A
といふ「式」に「等しく」、
1 (01)~(P)&Q A
といふ「式」は、
1 (01)~(P&Q) A
といふ「式」とは、「異なる式」であるからである。
cf.
命題論理の「否定(~)」は、通常、文の最初につきます。「Not・・・」という形式です。すると、直後の文だけをを否定しているのか、文全体を否定しているのか、「括弧」を補わない限り区別がつかなくなります(新井紀子、数学は言葉、2009年、123頁改)。
従って、
(32)
(Ⅰ)自古帝王~〔~(P&Q)〕。
(Ⅱ)自古帝王~(P→~Q)。
(Ⅲ)自古帝王~〔~(P)&Q〕。
に於いて、
(Ⅰ)=(Ⅱ) である一方で、
(Ⅰ)=(Ⅲ) とはならず、
そのため、
(Ⅰ)古より、帝王、これを艱難に得て、これを安逸に失はざるは無し。
(Ⅱ)古より、帝王、これを艱難に得るならば、これを安逸に失はない、といふことはない。
(Ⅲ)古より、帝王、これを安逸に得て、これを安逸に失ふ。といふことはない。
に於いて、
(Ⅰ)=(Ⅱ) であったとしても、
(Ⅰ)=(Ⅲ) とはならない。
然るに、
(33)
嘗て侍臣に問ふ、
「創業と守成と孰れか難き。」と。
玄齢曰はく、
「草昧の初め、群雄並び起こり、力を角して而る後に之を臣とす。創業難し。」と。
魏徴曰はく、
「古より、帝王、之を艱難に得て之を安逸に失はざるは莫し。守成難し。」と。
上曰はく、
「玄齢は吾と共に天下を取り、百死を出でて一生を得たり。故に創業の難きを知る。
徴は吾と共に天下を安んじ、常に驕奢の富貴より生じ、禍乱は忽せにする所より生ずるを恐る。
故に守成の難きを知る。然れども創業の難きは往けり。守成の難きは、方に諸公と之を慎まん。」と。
(三省堂、明解古典学習シリーズ18 史記 十八史略、1973年、133頁)
然るに、
(33)により、
(34)
① 太宗は、天下を、艱難に得たものの、
① 昔から、帝王は、天下を艱難に得たならば、天下を安逸に失はない者はゐない。
従って、「これ迄の、前例」からすれば、
① 太宗もまた、安逸の内に、天下を失ふことになる。
従って、さうである以上、
① 太宗は、そのやうなことが、無いやうに、安逸を戒め、慎重に、国家を、運営すべきである。
といふ、ことになる。
従って、
(32)(33)(34)により、
(35)
「十八史略、創業守成」の「文脈」に適ふのは、
② 自古帝王~〔~(P&Q)〕。
② 古より、帝王、これを艱難に得て、これを安逸に失はざるは無し。
であって、
③ 自古帝王~〔~(P)&Q〕。
③ 古より、帝王、これを安逸に得て、これを安逸に失ふ。といふことはない。
ではない。
従って、
(35)により、
(36)
③ 自古帝王~〔~(P)&Q〕。
③ 古より、帝王、これを安逸に得て、これを安逸に失ふ。といふことはない。
に関しては、もはや、「不要」である。
然るに、
(04)(08)により、
(37)
② 自古帝王~〔~(P&Q)〕。
④ 自古帝王~〔~(P)〕&Q。
は、「命題」として「等しく」、尚且つ、
② 自古帝王~〔~(P&Q)〕。
④ 自古帝王~〔~(P)〕&Q。
といふ「それ」は、
② 自古帝王~〔~(得之於艱難失之於安逸)〕。
④ 自古帝王~〔~(得之於艱難)〕失之於安逸。
であって、
② 自古帝王~〔~(得之於艱難失之於安逸)〕。
④ 自古帝王~〔~(得之於艱難)〕失之於安逸。
といふ「それ」は、
② 自古帝王莫〔不(得之於艱難失之於安逸)〕。
④ 自古帝王莫〔不(得之於艱難)〕失之於安逸。
であって、
② 自古帝王莫〔不(得之於艱難失之於安逸)〕。
④ 自古帝王莫〔不(得之於艱難)〕失之於安逸。
といふ「それ」の「返り点」は、
② 自レ古帝王莫レ不下得二之於艱難一失中之於安逸上。
④ 自レ古帝王莫レ不レ得二之於艱難一失二之於安逸一。
である。
然るに、
(38)
「三省堂、明解古典学習シリーズ18 史記 十八史略、1973年、133頁」の、「返り点」は、
② 自レ古帝王莫レ不下得二之於艱難一失中之於安逸上。
である。
従って、
(39)
「普通」は、
② 自古帝王~〔~(P&Q)〕=
② 自(古)帝王莫[不〔得(之於艱難)失(之於安逸)〕]⇒
② (古)自帝王[〔(之於艱難)得(之於安逸)失〕不]莫=
② (古)より帝王[〔(之を艱難に)得て(之を安逸に)失は〕不るは]莫し=
② 古より、帝王、これを艱難に得たならば、これを安逸に失はない。といふことはない。
であって、「まれ」には、
④ 自古帝王~〔~(P)〕&Q=
④ 自(古)帝王莫[不〔得(之於艱難)〕]失(之於安逸)⇒
④ (古)自帝王[〔(之於艱難)得〕不]莫(之於安逸)失=
④ (古)より帝王[〔(之を艱難を)得〕不ること]莫くして(之を安逸に)失ふ。
である。といふことも、「完全に、有り得ない」とまでは、言へない。
然るに、
(40)
(ベルンハルド・カールグレンは、)「漢語においては、文法的な分析は、あまり役に立たず、実際に役立つのは、広い読書を通じて習得した経験、つまり、中国人がどのようにして文をつくりあげているかということに対する感覚が、唯一のものである」と説き、更に、漢語の文の意味を理解するためには、「豊富な直観が、必要である」とも述べている。
(鈴木直治著、中国語と漢文、1975年、293頁改)
従って、
(39)(40)により、
(41)
② 自(古)帝王莫[不〔得(之於艱難)失(之於安逸)〕]。
といふ「括弧(補足構造)」に対して、
④ 自(古)帝王莫[不〔得(之於艱難)〕]失(之於安逸)。
といふ「括弧(補足構造)」は、恐らくは、無い。
然るに、
(42)
1 (01)~(P&Q) A
2 (02) P A
3 (03) Q A
23 (04) P&Q (02)(03)&I
123(05)~(P&Q)&(P&Q) (01)(04)&I
12 (06) ~Q (03)(05)RAA
1 (07) P→~Q (02)(06)CP
∴ (08)~(P&Q)├ P→~Q
1 (01) P→~Q A
2 (02) P&Q A
2 (03) P (02)&E
2 (04) Q (02)&E
12 (05) ~Q (01)(03)MPP
12 (06) ~Q&Q (04)(05)&I
1 (07)~(P&Q) (02)(06)RAA
∴ (08)P→~Q ├ ~(P& Q)
∴ (09) ~(P&Q) = P→~Q
∴ (10)~〔~(P&Q)〕=~(P→~Q)
に「命題計算(Propositional calculation)」於いて、
P=得之於艱難
Q=失之於安逸
といふ「代入(replacement)」を行ふと、
1 (01)~(得之於艱難&失之於安逸) A
2 (02) 得之於艱難 A
3 (03) 失之於安逸 A
23 (04) 得之於艱難&失之於安逸 (02)(03)&I
123(05)~(得之於艱難&失之於安逸)&(得之於艱難&失之於安逸)(01)(04)&I
12 (06) ~失之於安逸 (03)(05)RAA
1 (07) 得之於艱難→~失之於安逸 (02)(06)CP
∴ (08)~(得之於艱難&失之於安逸)├ 得之於艱難→~失之於安逸
1 (01) 得之於艱難→~失之於安逸 A
2 (02) 得之於艱難&失之於安逸 A
2 (03) 得之於艱難 (02)&E
2 (04) 失之於安逸 (02)&E
12 (05) ~失之於安逸 (01)(03)MPP
12 (06) ~失之於安逸&失之於安逸 (04)(05)&I
1 (07)~(得之於艱難&失之於安逸) (02)(06)RAA
∴ (08)得之於艱難→~失之於安逸 ├ ~(得之於艱難& 失之於安逸)
∴ (09) ~(得之於艱難&失之於安逸) = 得之於艱難→~失之於安逸
∴ (10)~〔~(得之於艱難&失之於安逸)〕=~(得之於艱難→~失之於安逸)
に「命題計算(Propositional calculation)」が、成立する。
然るに、
(43)
∴ (10)~〔~(得之於艱難&失之於安逸)〕=~(得之於艱難→~失之於安逸)
といふ「等式」は、「日本語の語順」で言へば、
(Ⅰ)これを艱難に得て、これを安逸に失はざるは無し。
(Ⅱ)これを艱難に得るならば、これを安逸に失はない、といふことはない。
に於いて、
(Ⅰ)=(Ⅱ) である。
といふことを、「意味」してゐる。
然るに、
(44)
(Ⅰ)~~得之於艱難&失之於安逸。
といふ「それ」は、
(Ⅰ)莫不得之於艱難而失之於安逸。
といふ「漢文」に「相当」する。
然るに、
(45)
「漢文」の場合は、
(Ⅰ)莫不得之於艱難失之於安逸。
と書いたとしても、
(Ⅰ)莫不得之於艱難而失之於安逸。
と書いたとしても、「同じこと」である。
従って、
(43)(44)(45)により、
(46)
(Ⅰ)莫不得之於艱難而失之於安逸。
といふ「漢文」が、
(Ⅰ)これを艱難に得て、これを安逸に失はざるは無し。
といふ「意味」、すなはち、
(Ⅱ)これを艱難に得るならば、これを安逸に失はない、といふことはない。
といふ「意味」であるならば、
(Ⅰ)莫不得之於艱難失之於安逸。
といふ「漢文」には、少なくとも、
(Ⅱ)莫〔不(得之於艱難失之於安逸)〕。
といふ「括弧」が有る。といふ、ことになる。
従って、
(18)(46)により、
(47)
(Ⅰ)莫不得之於艱難失之於安逸。
といふ「漢文」に関して、
このように、管到でいちばん苦労するのは、否定形の場合である。だから、否定形がでてきたときには、どこまでかかるかという判断をしないとしっかり訳せないないわけだ(二畳庵主人、漢文文法基礎、1984年、390・391頁)。
と言ふのであれば、
(Ⅰ)莫不得之於艱難失之於安逸。
といふ「漢文」に於いて、
(Ⅰ)莫 といふ「否定」は、〔不得之於艱難失之於安逸 〕にかかってゐて、
(Ⅰ)不 といふ「否定」は、 (得之於艱難失之於安逸) にかかってゐる。
といふ、ことになる。
平成29年07月04日、毛利太。
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