(01)
一般に、訓読で主語に「が」を付けることはありません(古田島洋介、これならわかる漢文の送り仮名、2012年、94頁)。
近代語では「が」で主格、「を」で対格を表すが、古い時代はこういった助詞を使わない言い方が普通であった(佐伯哲夫・山内洋一郎、国語概説、1983年、89頁改)。
従って、
(01)により、
(02)
① 孔子は聖人なり。
② 孔子が聖人なり。
に於いて、
① は、「古文」であって、
② は、「古文」ではない。
然るに、
(03)
② 孔子が聖人なり(終止形)。
③ 孔子が聖人なる(連体形)。
である。
cf.
なら なり・に なり なる なれ なれ
未然 連用 終止 連体 已然 命令
は、「体言(名詞)と連体形」に付く、「断定の助動詞」。
然るに、
(04)
11.連体形準体法
連体形は、もともと名詞と同等の資格を有していて、連体形単独で「こと」・「もの」・「の」・「ところ」・「ひと」などの形式的な名詞の意味を含むという性質がある。
(浅川哲也・竹部歩美、歴史的変化から理解する現代日本語文法、2014年、146頁)
従って、
(03)(04)により、
(05)
② 孔子が聖人なり(終止形)。
に対して、
③ 孔子が聖人なる(連体形)。
であれば、
③ 孔子が聖人である(連体形)こと。
といふ、「意味」になる。
然るに、
(06)
連体形準体法は「連体形+形式名詞」と併存しながら、江戸時代末期まで会話文でも用いられていたが、現代語においては、連体形準体法は全く衰え、連体形には必ず準体助詞「の」や他の名詞・形式名詞が介入するように接続する。
(浅川哲也・竹部歩美、歴史的変化から理解する現代日本語文法、2014年、147頁)
従って、
(05)(06)により、
(07)
③ 孔子が聖人である(連体形)こと。
から、
③ こと(形式名詞)
を除くことは、出来ない。
従って、
(08)
③ 孔子が聖人である(連体形)こと。
に対して、
③ 孔子が聖人である(連体形)。
といふ「日本語」は、本来であれば、「非文」である。
然るに、
(09)
③ 孔子_聖人である(連体形)。
④ 孔子_聖人である(終止形)。
に於いて、
③ は、「非文」であるが、
④ は、「非文」ではない。
然るに、
(10)
古代語の文法を根本的に変化させた大きな内的原因は次の二点である。
(a)活用語の連体形が文を終止させるはたらきを有するようになり、それまでの終止形の語形を駆逐して、終止形が連体形と同じ語形となったこと。
(b)活用語の連用形の語形の影響で、終止形・連体形の語形が変わったこと。
(浅川哲也・竹部歩美、歴史的変化から理解する現代日本語文法、2014年、141頁)
従って、
(09)(10)により、
(11)
(a)終止形が連体形と同じ語形となった。
がために、
③ 孔子が聖人である(連体形)。
ではなく、
④ 孔子が聖人である(終止形)。
である。といふことになり、それ故、
④ 孔子が聖人である(終止形)。
といふ「現代語」は、「非文」ではない。
然るに、
(05)(06)(11)により、
(12)
④ 孔子が聖人である(終止形)。
といふ「言ひ方」は、
③ 孔子が聖人である(連体形)こと。
から、
③ こと(形式名詞)
を除いた「形」である。
然るに、
(13)
【1】[が][の]
(a)主語を示す。 日の暮るるとき。 汝が去りし日。
(b)連体修飾語を作る。 夏草や兵どもが夢のあと。
(中村菊一、重点整理 基礎からわかる古典文法、1978年、154頁改)
【26】[は]
他と区別して述べる意を表す。〈・・・・・ハ〉
草の花はなでしこ(徒然草)
[訳]草花はなでしこがよい。
(中村菊一、重点整理 基礎からわかる古典文法、1978年、191頁)
従って、
(13)により、
(14)
③ 孔子が(格助詞)説く(連体形)道(名詞)。
③ 孔子が(格助詞)聖人である(連体形)こと(形式名詞)。
に対して、
⑤ 孔子は(係助詞)説く(連体形)道(名詞)。
⑤ 孔子は(係助詞)聖人である(連体形)こと(形式名詞)。
といふ「日本語」は、固より、存在しない。
従って、
(14)により、
(15)
⑤ 孔子は(係助詞)聖人である。
に対して、
⑤ こと(形式名詞)
を加へる場合は、
⑤ 孔子は(係助詞)
といふ「それ」を、
③ 孔子が(格助詞)
といふ「それ」に、変へなければ、ならない。
然るに、
(16)
⑤ 孔子は聖人である。といふこと。
であれば、
⑤ 孔子は聖人である。
の「引用」である。
従って、
(14)(16)により、
(17)
⑤ 孔子は聖人であること。
といふ「日本語」は、「間違ひ」であるが、
⑤ 孔子は聖人である。といふこと。
といふ「日本語」は、「正しい」。
平成29年04月13日、毛利太。
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