(01)
子曰、 「巧言令色、鮮矣。」
子曰く、「巧言令色、鮮いかな仁。」と。
先生が言われた、「ことばじょうずで、顔つきがよくして、人の気に入るようにする人間は、ほとんどないものだな、仁の徳は。」
(三省堂、明解古典学習シリーズ16、1973年、5頁)
然るに、
(02)
ク語法
動詞の未然形に、準体助詞の「く」がついて、「・・・こと、・・・ところ」など名詞化した意味を表す語法。
(江連隆、漢文語法ハンドブック、1997年、199頁)
従って、
(01)(02)により、
(03)
子曰く、「巧言令色、鮮いかな仁。」と。
であれば、
先生が言ふこと、「巧言令色、鮮いかな仁。」と。
である。
然るに、
(04)
・「と」・・・最も多いのは、いわゆる引用の「と」で、「曰(いは)ク」「云(い)フ」「聞(き)く」「以為(おも)ヘラク」「聞説(きくなら)ク」などよって導かれた引用文の終結を表します。
(古田島洋介、これならわかる漢文の送り仮名、96頁)
従って、
(02)(03)(04)により、
(05)
① 曰く AはBなりと。
② 以為くAはBなりと。
③ 聞説くAはBなりと。
であれば、
① 言ふこと=AはBなり。
② 思ふこと=AはBなり。
③ 聞くこと=AはBなり。
である。
然るに、
(06)
あら‐な-く-に【有らなくに】① ないことだなあ。
[品詞分解]動詞ラ変「あり」の未然形「あら」+打消の助動詞「ず」の古い形の未然形「な」+接尾語「く」+助詞「に」。
なくに ②(終助詞的に用いられる場合)・・・ないことだなあ。
《参考》「に」は格助詞・接続助詞・終助詞、また、断定の助動詞「なり」の連用形などとする諸説がある。
(三省堂、全訳読解古語辞典、65・885頁)
従って、
(06)により、
(07)
④ あらなく
を、「ク語法」とすることは、可能であり、それ故、
④ あらなくAはBなりと。
であれば、
④ あらざること=AはBなり。
である。
然るに、
(08)
任意の表述の否定は、その表述を’~( )’という空所にいれて書くことにしよう。
(W.O.クワイン著、杖下隆英訳、現代論理学入門、1972年、15頁)
従って、
(07)(08)により、
(09)
④ ~(AはBなり)。
といふ「それ」は、
④ あらなくAはBなりと。
といふ風に、読むことが、出来る。
然るに、
(10)
④ ~(AはBなり)。
と書いて、
④ あらなくAはBなりと。
と読むのは、「恐らク」は、私だけである。ものの、
因みに、「恐らク」といふ語は、「曰ク、以為へらク、聞説ならク」等と同じく、本来は、「ク語法」である。
(11)
⑤ AはBである。といふことはない。
といふ「それ」は、
⑤ AはBである。
といふ「表述(statement)」の「否定」である。
従って、
(08)(09)(11)により、
(12)
④ あらなくAはBなりと。
⑤ AはBである。といふことはない。
に於いて、
④=⑤ である。
然るに、
(13)
④ あらなくAはBなりと。
といふ「語順」は、
④ ~(AはBなり)。
といふ「それ」に、対応し、
⑤ AはBである。といふことはない。
といふ「語順」は、
(AはBなり)~。
といふ「それ」に、対応する。
従って、
(12)(13)により、
(14)
④ 任意の表述の否定は、その表述を’~( )’という空所にいれて書くことにしよう。
としても、
⑤ 任意の表述の否定は、その表述を’( )~’という空所にいれて書くことにしよう。
としても、要するに、「どちらでも、良い」。
従って、
(15)
④ ~( ).
⑤ ( )~。
に於いて、
④ は、「論理的に、正しい語順」であり、
⑤ は、「論理的に、正しい語順」ではない。
といふことには、ならない。
平成29年04月08日、毛利太。
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