(01)
また、「聞鳥啼」を「鳥の啼くを聞く」と訓読することを示すためには、「啼」の文字から「聞」の文字に返って読むので「レ」の符号では間に合わない。このようなときには「一・二」の符号をもちい、「一」のつけられた文字から「二」のつけられた文字に返って読むことを示す。この符号を「一二点」とよぶ。
聞二鳥啼一。
(赤塚忠・遠藤哲夫、漢文の基礎、1973年、19・20頁)
従って、
(02)
① 聞鳥啼=
① 聞二鳥啼一=
① 聞(鳥啼)⇒
① (鳥啼)聞=
① (鳥の啼くを)聞く。
である。
然るに、
(03)
言ふまでもなく、「書き下し文」であれば、
① 鳥の啼くを聞く。
であって、
①(鳥の啼くを)聞く。
のやうに、
①( )
が付くことはない。
然るに、
(04)
① 鳥の啼くを聞く。
といふ「古文」に、その実、
①(鳥の啼くを)聞く。
といふ「括弧」が有るのであれば、
② 雪の降るを詠む。
といふ「古文」にも、
②(雪の降るを)詠む。
といふ「括弧」が有る。
然るに、
(05)
② 雪の降るを詠む。
といふ「古文」に、
②(雪の降るを)詠む。
といふ「括弧」が有るのであれば、
③ 雪の降りけるを詠める。
といふ「古文」にも、
③(雪の降りけるを)詠める。
といふ「括弧」が有る。
cf.
② 雪の(格助詞)降る(連体形)を(格助詞)詠む(終止形)。
③ 雪の(格助詞)降り(連用形)ける(助動詞・連体形)を(格助詞)詠め(已然形)る(助動詞・準体法)。
然るに、
(06)
雪の降りけるをよめる。
という文は、「雪の降りける」という文節に対して、もうひとつ「よめる」という文節が関係しているわけで、全体として「・・・・・を・・・・・する」という形の文節関係になっている。
そのなかの「雪の降りける」において、「雪」が「降りける」の主語であることを、格助詞の「の」で示したのである。こんな場合、
雪降りけるをよめる。
とは言わない。数学の式のようにしてあらわすなら、
(aのb)をc。
となるわけわけであるが、もっと文節関係が加わって、
〔(aのb)がc〕がd。
といった形になることもある。
(小西仁一、古文研究法、1955年初版、2015年、280頁)
従って、
(05)(06)により、
(07)
少なくとも、
① 鳥の啼くを聞く。
② 雪の降るを詠む。
といふ「日本語」には、
①(鳥の啼くを)聞く。
②(雪の降るを)詠む。
といふ「括弧」が有る。
といふ風に、小西先生は、述べてゐる。
平成29年04月20日、毛利太。
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